Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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逃亡者

Side:Naofumi

 

 あっ…ぶねぇ!

 こいつら、一国の王女を狙うとか何考えてやがる…!?

 間一髪俺が間に合ってたからいいものの、そうじゃなかったら本当にこいつ死んでたぞ!!

 

「おのれ、盾の勇者め! 姫を人質にするとは卑劣な!」

「あ?」

 

 俺に斬りかかってきた奴が、なんかおかしなことを抜かした。

 人質だと…お前らが攻撃してきたんだろうが! どう見ても正当防衛…ってか、助けてる側だろが!!

 

「そっちが攻撃してきたのに…!」

「盾の悪魔から王女様を救え!」

「神の鉄槌を下せ!」

 

 こっちの話を聞く筈もなく、騎士共は俺達に向かってくる。

 何考えてやがるか全くわからんが、舐められてるってのは間違いないな!

 

「なめんな!」

「オラァ!!」

 

 セントやリュウガが即座に応戦し、向かってくる奴らを片っ端からねじ伏せる。

 幸いというかなんというか、騎士連中はそこまで強くなかったからすぐに制圧できた。が、のこった連中が嫌に素直に引き下がっていったな…。

 

「ちっ…何人か逃しちまった」

「何でしょう…妙な感じでしたね。最初から最後まで」

「そうだな…」

「メルちゃん、だいじょうぶ?」

「え、ええ……」

 

 ピンチを乗り越えた、というには…いやな予感がする。

 こいつら、本気で第二王女を殺す気でいた……この国の騎士がだぞ? 本来、命をかけて守る相手だろ。

 

「まさか、ヤベェな…」

「は? 何でだ?」

 

 すると、昏倒させた騎士達を見下ろしていたセントが、何かに気付いた様子で息を呑んだ。

 おいやめろよ……お前がそういうシリアスなテンションで話し出したら、何かあるの確実じゃないか。

 

「連中、映像記録用の水晶を持ってた……あれ、多少映像を加工できるんだよ」

「…ん? ど、どういうことだ?」

「だから…!」

 

 セント自身も頭の中がぐちゃぐちゃなのか、説明に困っているみたいだ。

 だがリュウガはともかく、俺もこいつが何を言おうとしているのか……いや、こいつらが何を考えているのかわかってきた気がする。

 すると、顔色を悪くする俺達を嘲笑うように、倒れた騎士の一人が鼻を鳴らした。

 

「フン、悪魔の配下は少しは頭が回るようだな」

「…どう言う意味だ?」

「あいつら、言ってたよな。王女を人質に云々って……さっき撮った映像をそれっぽく編集すりゃ、いくらでも証拠を捏造できるぞ」

「なっ…!」

「しかも王族の誘拐だ。国外逃亡しても指名手配がつく」

 

 リュウガが絶句しているが、俺だって信じがたいわ!

 俺を貶めるために、娘まで利用するのかこの国の国王は!? もう一人の方は溺愛どころか、取り返しのつかないところまで甘やかしてるくせに!!

 

「……! また冤罪かよ…!」

「くそったれ!!」

 

 リュウガ達だけでなく、ラフタリアも表情を強張らせて口を手で覆っている。

 フィーロだけだな、状況がよくわかってないのは。…いや、雰囲気が悪いのだけは察しているのか、やや不安げな顔だ。

 

「とにかく逃げるぞ! できるだけ痕跡を残さないようにするんだ!」

「がってんだ!」

「フィーロちゃん、馬車はいらない!」

「えー!?」

 

 ああもう…! 新天地でやり直す筈だったのに、何でこのタイミングで厄介事が降りかかって来るのか!

 ばたばたと逃げる用意をしていると、まだ呆然と立ち尽くしている第二王女に気付く。何やってんだ…! 呆けてる場合か!!

 

「お前も早く来い!」

「あ…え…!?」

「守ってやるから、早く来い!」

 

 戸惑う第二王女を無理矢理引っ張り、馬車にしがみつくフィーロを引きずり、俺達は最低限の荷物で走り出す。

 ほんっとうに…最悪の日だ!!

 

 

Side:Raphtalia

 

 私はフードで顔を隠し、町の様子を伺います。

 広場では、メルロマルクの騎士が住人の方々を相手に、水晶で撮影し悪辣な加工を施した映像を見せて回っています。

 私達が、メルティ王女様を誘拐した極悪人だと…。

 

「…どこもかしこも、オレ達の似顔絵でいっぱいだ。動きにくいったらありゃしねぇ」

 

 セントさんが自慢の耳で声を拾いますが、結果は芳しくないようです。

 どこに向かっても、まるでこちらの動きをわかっているかのように騎士の姿があるのです。

 

「あ~ん、フィーロの馬車~!」

「今は我慢して…!」

「どうする? このままじゃシルドフェルトなんか目指しようがないぜ」

「十中八九……途中で邪魔されるだろうな」

 

 王族誘拐なんて大それた冤罪をかけられてしまった今、隣国に移る事なんてほとんど不可能に近いです。

 フィーロが嘆き、全員で苦悩の声をこぼしていると、メルさん……メルティ王女様が不意に呟きました。

 

「…ごめんなさい」

「王女様が謝ることじゃねぇだろ。オレ達が今土下座させたいのは、あのクソ王の方だ」

 

 メルティ王女様…私達を追いかけて来たことを悔やんでおいでなのでしょうか。それは、あなたの責任じゃないというのに…。

 セントさんが慰めますが、メルティ王女様はそれに首を振ります。

 

「…ううん、父上じゃない。こういうことは、姉上が好んでやりそう」

「うっわ……妹にこんなん言われる姉って」

「姉上は、欲しいものはどんな手を使っても手に入れたがる人なの……でも、父上はそれをわかってない」

 

 …セントさんの言う通り、身内の方にここまで言われてしまうほど、あの方の性格はひどいのですね。

 いえ、ちゃんとこの目で見てきたつもりではありましたが……それでもあまりにも。

 

「んじゃあ、王女さんが狙われたのは…はい、リュウガ」

「えっ…あー、どさくさ紛れに妹を亡き者に?」

「正解。やればできるじゃねぇか」

 

 そう考えられてしまうのが、悲しいですし腹立たしいですね。

 血の繋がった唯一の家族を、自分の欲のために害そうとするなんて…!

 いいえ、そもそもあの方はそういう方でした……自分の欲のために、ナオフミ様を苦しめ続ける酷い方です。

 

 ですが、いくら王女であるあの方に、このような事が可能なのでしょうか。

 いくらなんでも、国の力を自由に使えすぎているのでは…?

 

「女王様はなにやってんだ? あいつらを止められんのはその人くらいだろ」

「…今回の勇者召喚の責任を取って、各国と交渉しているわ。休む間もないくらいに…」

「あー、そっか…」

 

 セントさんとメルティ王女様の会話に、ナオフミ様が首を傾げています。

 そうでした…このあたりの話はこちらでは結構常識でしたが、ナオフミ様は知らない情報でしたね。

 訝し気に、ナオフミ様がセントさんに尋ねます。

 

「どういうことだ?」

「ああ、うん。メルロマロクってな? 代々女王が国を統べてんの。不在の時に、国王が指針を取るの」

「は?」

 

 セントさんの説明に、ナオフミ様はぽかんと口を開けて固まりました。

 そしてやがて、ヒクヒクと頬を震わせたかと思うと、お腹を抱えて嗤い始めてしまいました。…あの、今のどこに面白い要素がありましたか?

 

「じゃあ、何か!? あいつ…婿養子だったのかよ!」

 

 滅多にないくらいの笑顔で、ナオフミ様は肩を揺らします。

 えっと、確かに婿入りした方が、奥さんのいない間に好き勝手して偉ぶっている姿は滑稽かもしれませんが……そんなに面白いのでしょうか。

 案の定、笑い転げるナオフミ様にメルティ王女様が食って掛かってしまわれます。

 

「父上を笑うな!」

「いいじゃないか、お前を捨てた父親なんてかばわなくたって」

「ち、違うわよ…父上は…」

 

 ナオフミ様、なんてことを言うのですか!?

 信じていた騎士に命を狙われ、精神的にも追いつめられている女の子に、そんな追い打ちをかけるようなことを…!

 反論しようとするメルティ王女様の目に、見る見るうちに涙が溜まり…。

 

「父上は私を捨てたりなんてしないもん…うわーん!!」

 

 ああ、やっぱり泣き出してしまわれました。あげく、まだ笑っているナオフミ様にぽかぽかと殴りかかる始末……。

 これには、私達全員の冷たい目がナオフミ様に向けられます。

 

「…お前なぁ」

「こんな小さい子を泣かせるなんて最低ですよ!」

「お前とそう変わんないだろ……」

 

 そういう問題ではありません! というか、身体はもう大人です!

 ですがナオフミ様は気にした様子もなく、ご自身が気になっている事への質問を続けました。

 

「それよりその……勇者召喚の責任っていうのは?」

「それよりって…あー、国同士の取り決めがあってな」

「勇者を召喚するのに決まりごとなんてあるのか?」

「そりゃあ…」

 

 セントさんが詳しい説明を行おうとしたその時、ぴたりとその表情が変わります。

 私も、近付いてくる沢山の足音に気付き、固まってしまいました。

 …あまりにも、早すぎる…!

 

「見つけましたよ、ナオフミさん……メルティ王女を返してもらいましょうか」

 

 そう告げるのは、お仲間と共に完全武装でやってきた弓の勇者様。

 そして、同じくこちらに敵意をぶつけてくる槍の勇者様と剣の勇者様、そしてメルロマロクの兵士達。

 国そのものが、ナオフミ様を敵と見定めて、集まっていました。

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