Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Naofumi
「うおらああああああああ!!」
「ぐわあああ!?」
鎧を纏ったリュウガが、青い炎を纏わせた拳を思いっきり振り抜く。
その直後、なんかもう、漫画みたいな勢いで騎士共が吹っ飛ばされて、あちこちに突っ込んでいく。
中には頭に犬ってつくあの映画みたいに、上半身が地面に突っ込んでる奴もいるし…もう無茶苦茶だな、これ。
「…! なんつー馬鹿力だ!?」
暴れ回るリュウガを見たセントが、物凄い戦慄した顔を見せている。
……おい、あれ作ったのお前だろ。ってか、普段あれ使ってんのお前だろ。
いや…それだけリュウガの力が強くなっているって事か。
「力が…湧き上がる!!」
ボッ!と拳の炎を強めて、リュウガが他の騎士を相手に身構える。
いいぞ…あいつら、リュウガの気迫と強さに圧されて若干勇み足になってきている。
このまま押し切れれば、フィーロとセントを救出する時間を稼げる。
だが、不意に騎士共が後ろに下がり、弓に矢をつがえた樹が前に出てきた。
「気は進みませんが…これで倒れてください! ホークショット!」
スキル名を叫んだ樹の手から放たれた矢が、鷹の姿となってリュウガに突っ込んでくる。
マズイ、あれは間違いなく普通の矢じゃない!
よけろ、リュウガ!
「ガァアアア!!」
だが、俺が危険を叫ぼうとした直前、リュウガは自分に向かってくる光の鷹に向かって吠える。
すると、その咆哮に呑みこまれ、鷹は一瞬で消し飛ばされてしまった。
…あ? ちょっと待て。
今マジで何が起こった!?
お前いま何したんだよ、リュウガ!!
「なっ…なんですかそれ!?」
「俺が相手だ……いくぞ!」
「来やがれ!」
樹が絶句する横を、今度は錬が剣を振りかざして飛び出してくる。
それにリュウガは拳を…じゃなくて手を突き出し迎え撃つ。
すると、リュウガの手元に例のパイプが伸び、一本の銀色の剣に姿を変え、リュウガの手に収まった。
【ビートクローザー!】
「!? 剣を…!?」
こんな機能もあったのかよ…!?
ていうか、あいつ剣なんて使えるのか!?
と思ったオレの目の前で、リュウガは手にした剣を思いっきり振り上げ、錬の剣に叩きつける。
…うん、力技だな、逆に安心した!!
「くっ…重い!」
【ヒッパレー!】
「どりゃああ!!」
鍔迫り合いの状態のまま、リュウガは剣の柄頭を引っ張る。
ベルトと同じ声が聞こえ、剣の刀身に光が灯る…ていうかあれ、どう見てもイコライザーに見えるんだが。
それでエネルギーがたまったのか、リュウガは思いっきり剣を振り抜き、錬を吹っ飛ばしてみせた。
「ぐあっ!!」
【スペシャルチューン! ヒッパレー! ヒッパレー!】
倒れ込む錬を睨みながら、リュウガは剣の柄にある窪みに、ロックのフルボトルを差し込む。
そしてまた柄頭を今度は二回引っ張り、全身に力を入れて振りかぶった。
【ミリオンスラッシュ!】
「「「ぐわあああああ!?」」」
剣が振るわれた直後、光り輝く斬撃が剣から放たれ、大勢の騎士共をまとめて吹っ飛ばす。
さっきから何だこれ! 無双アクションゲームみたいだぞ。
リュウガはいったん剣を地面に突き立て、ベルトのハンドルを回しまくる。
すると奴の背後に突如、青い炎でできたような東洋の龍が現れた。
「おらおらおらおらぁ!!」
【Ready GO!】
「おっしゃあ!!」
龍を引き連れて、リュウガが空中に跳び上がる。
思いっきり片足を振りかぶるリュウガの背に、青い炎の龍が口から爆炎を吐きかけ、蹴りの威力と速度を倍増させる!
【ドラゴニックフィニッシュ!】
「うおりゃあああああああああ!!」
ものすごい感じのボレーキックが、残っていた騎士共に炸裂し、また面白いぐらいに吹っ飛ばしていく。
さっきから何だこれ…むちゃくちゃ気分爽快じゃないか!
「いいぞリュウガ! 力の限り暴れ回れ!!」
「おおよ! オレを止められるもんなら…止めてみやがれ!!」
オレの言葉にうなずき、リュウガは拳を振り回し、まだ動ける勇者共や騎士共に突撃していく。
こいつ一人で、完全に戦況ひっくり返ってないか!?
…と思ったが、向こうはまだ増援がいるらしく、敵の数が減っているようには見えない。
が、あのビッチは焦り始めているように見えた。
はっ! いい顔するじゃねぇか!
「何をしてるの!? さっさとあのトカゲを殺しなさい!」
「―――そうはさせませんよ」
リュウガの勢いに気圧されているのか、冷や汗をかいて怒鳴るビッチ。
その背後から突如、ゆらりと空気を揺らがせてラフタリアが姿を現した。
それに気づいたビッチが、途端に顔色を変えた。
「お前っ……ぎゃああああ!!」
ドスッ!とラフタリアの剣……親父がくれた、魔力剣とかいうあの剣が、ビッチの胸を貫く。
体内でとんでもない痛みが走っているのか、ビッチは俺達がスカッとする悲鳴をあげ、やがてがくりと気を失った。
「マルティ!?」
「ご安心を、物体を斬る剣ではありませんから…気絶しているだけです」
「そんな…ふべ!?」
「槍の人、やっぱりキライ!」
ビッチがラフタリアの手に堕ちたことで、動揺する元康。
すると今度は、奴の顎にフィーロのパンチがキレイにヒットした。
今フィーロが付けているのも、親父がくれたアイテムの一つだ。
腕力を強化するグローブらしい。ほんとはフィーロに何かあった時、俺や他の誰かが馬車を引くためのつもりだったらしいが、別の使い方で役に立ったな。
「食らえ、人間ストライク!」
「ぎゃあ!」
セントの方を見ると、騎士の一人を蹴り飛ばして別の騎士にぶつけて、昏倒させている…あっちはもう、心配する必要もなさそうだな。
「人質なんて卑怯ですよ!」
「先にフィーロを捕らえている方に言われたくありません…この方に傷を負わせたくなければ、ここを通してください!」
「形勢逆転…とまではいかないか」
捕らえたビッチを抱えて、ラフタリアが錬や樹たちをにらみつける。
フィーロも自由になった、セントも…草むらをガサガサ探ってるけど、おおむね無事、メルティもこちら側。
後は、この場から逃げられれば…!
だが、緊迫した空気を切り裂くように、ラフタリアの顔のすぐ横を、一本の矢が通り過ぎていった。
「誰だ、今射った奴は! 人質が…」
こっちを刺激するとまずいと思ったのか、錬が矢の飛んできた方に叫ぶ。
だが、そこにいた連中を……そいつらの目を見て、錬や樹の表情が強張った。
「マルティ王女がやられた!」
「容赦などするな! この場で息の根を止めろ!」
倒れた騎士、傷付いた騎士、一度戦闘不能になったはずの騎士共が…まるで幽鬼のような足取りで向かってくる。
メルティの奪還なんかもちろん思わせない、ただ俺を殺す事だけを考える、狂気の目だった。
「盾の悪魔を許すな!」
「盾を殺せ!」
「盾の悪魔を抹殺しろ!」
「こ、これは…」
湧きあがる怒号、いや、もはや人間離れしたそいつらの声に、錬や樹も困惑気味になっている。
かくいう俺も、連中の狂気に若干体が強張っていた。
そのせいで、こっちに戻ってこようとしているセントを狙う凶刃に、気付けなかった。
「盾の配下は一人残らず殺せ!!」
「ヤッベ…!」
「セント!」
背を向けたセントに、騎士の一人が剣を振りかぶる。
焦りで目を見開き、固まるセントを守ろうと盾を構えるが…スキルの発動が間に合わない!
や、ヤバい…!
「やめろおおおおおおおおお!!」
セントの頭蓋を叩き割ろうと、騎士の剣が振り下ろされた瞬間。
俺の盾につけられたアクセサリーが突然割れ、何かの力が辺りに吹き荒れた。
Side:Sento
濛々と広がる煙…あちこちに倒れ込む追っ手を避けながら、オレ達は森の中を走る。
やがて、気配が全く感じられなくなった頃合いに、オレ達は足を止める。
「…なんとか逃げ切れたか」
ナオフミがそう呟き、荒ぶる息を整える。
その横でオレは……がくりと膝をつき、涙を流した。
「うぅ…! ビルドフォンは回収できたけど、ボトル何本か落としてきちまったじゃねぇか…!」
「お前…それより安心することあるだろ」
懐が…! 懐が軽いよぉ…!
弓の勇者めぇ…この恨みはずっと忘れねぇぞ!
後で絶対取りに戻ってやる!
「さっきの煙幕と結界は、ナオフミが?」
「いや…煙幕は知らんが、結界は盾が勝手に出したような……」
…逃げれたのがあれのおかげなのは、確かなんだよな。
一瞬、何かの力が働いて騎士が吹っ飛ばされて…そのあと煙が立ち込めたんだ。そりゃあもうむっちゃくちゃ濃く。
「じゃああの煙幕は誰が…」
「…私、誰がやったかわかるわ」
「なんだと?」
え?
あの一瞬で、何が起こったのかわかったの?
…と思ったけど、ちょっと違ったみたいだ。
「そこにいるのよね、影」
メルティ王女がそういうと、近くの木陰から人影が…あ、あいつって確か。
ああ、そうそう。
前にリユート村でバカ女を止めた黒装束集団の格好だ!
「…どうしてメルティ王女にはわかってしまうのでごじゃるか?」
「その喋り方…たしか女王の影武者の」
「女王の命により、盾の勇者殿を陰ながら助けに来たのでごじゃる」
…何、あのみょうちきりんな話し方。
みんなおんなじカッコだから、個性でも求めたのか?
そんなオレの疑問も放置し、影は語りだした。
オレ達を狙う、盾の勇者以外の三人の勇者を崇める宗教……前に行った教会の大元である三勇教。
そいつらは今、虫の息になってるんだとか。
というのも、他の勇者があちこちでやらかして、それをオレ達が尻拭いをしていることが、教会の求心力を弱めちまってるんだとか。
…ヤダなぁ、そういう面倒ごとの処理まで押し付けられるの。
そんなの、自分が勝手に失敗してるだけじゃん。
…で?
そいつらを国から一掃するのに、女王との合流と協力が必要になるって事か?
「盾の勇者殿には、この方角に向かっていただきたいのでごじゃる」
「シルトヴェルトと真逆じゃないか!」
「亜人の国への道は、すでに包囲網がしかれているでごじゃる」
うん…そりゃそうだよな、素直に行かせてくれるはずがないわな。
強行突破……は、現実味がないから却下。
…指示に従うしかないのかなぁ。
「ことは国を揺るがす大事でおじゃる……勇者殿には一刻も早く、女王と合流していただきたいのでごじゃる」
「…罠に聞こえるのは俺の気のせいか?」
「ナオフミ様!」
この状況で……って、ナオフミの疑念ももっともなんだよな。
これまでが、善意を思いっきり踏みにじられるケースが多すぎたんだよなぁ。
すぐに応じるのは、まぁ難しいか。
だけどそれに対して、女王の影はあんまり気にした様子も見せずに答えた。
「たしかに信じていただくのは難しいかもしれぬが……考えてほしいでごじゃる」
……そうきたか。
これは…ナオフミが散々他の勇者に言ってきたことだな。
言い返された形になったナオフミは、大きなため息をついてばりばり頭をかく。
「…わかった。お前らの案に乗ってやる」
「そう伝えるでごじゃる。…それと、これを」
女王の影が消えようとした時、忘れていたとばかりにオレに何か渡してきた。
…え?
この…紫色で、十字の刃物の意匠をしたこれは…。
「フルボトル!?」
「セント殿が落とした一つが変化したものでおじゃる。この機会にお返しするでごじゃる」
「お前…」
ナオフミがオレに、無茶苦茶呆れた目を向けてくる。
や、やめろ!
オレにそんなどうしようもない奴を見る目を向けないで!
ていうか、オレいつの間に落としてた!? 確かにいつでも作れるようにっていっぱい作ってたけど…もしかして結構ぽろぽろ落としてた!?
は、恥ずっ…!
「では、拙者はこれで」
羞恥に悶えるオレをほっといて、女王の影は闇の中に消えてしまった…。
せめて…せめて何かフォローしていって…!
みんなの視線が…! 痛い…!