Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Ryuga
オレ達が身構えたその瞬間、空に魔法が打ち上げられる。
それはオレ達の真上で弾けると、雷の檻となってオレ達を閉じ込めやがった。
「雷檻……ここから逃がさないつもりだな」
「この関所には大勢の兵士が集まってる! 覚悟しろ、逃げ場なんてどこにもないぞ!」
槍の勇者がそう言って、オレ達に……って言うかナオフミに槍を突き付ける。
仲間の女共もこっちに敵意をぶつけてきて……つーか、ほんとに女ばっかだな!!
こいつはマジで、一発どぎついのを食らわせた方がよさそうだな…!
「上等だ! かかってきやがれ!」
【忍びのエンターテイナー! ニンニンコミック! イェイ!】
「たー!」
「おらあああ!!」
【Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON! イェイ!】
オレとセント、フィーロで同時に奴らに向かう。
忍者の格好になったセントが忍術でほん……ほん……派手に暴れて気を引いて! フィーロが思いっきり蹴りかかる! そんでオレがおもっきりぶん殴る!
避けんじゃねぇぞ、女共!
お前ら全員のして、オレ達はさっさとお暇させてもらう!
「許してくれ…フィーロちゃん、リュウガちゃん! 君達を救うためには、君たちを止めなくちゃいけないんだ!」
フィーロに槍を突きつけ、槍の勇者がなんか語る。
戦闘中に何甘っちょろいこと言ってんだ、こいつは。
「そのためになら俺は……心を鬼にする!」
「ドラゴンフィスト!!」
「ごべっ!?」
槍の勇者がべらべら話している間に、奴の顔面にガチで拳を叩き込んでやった。
あんまりに隙だらけなもんだから、思わずがぶっ飛ばしちまったよ。
チッ…もうちょっとであの雷の檻にぶつけられそうだったのに、あとちょっと届かなかったか。
「救われる必要なんざねぇんだよ、大馬鹿野郎!」
「よくも…! 死になさい、このトカゲ!」
ぺっ!と唾を吐きながらオレが吠えると、バカ女がなんか激昂してオレに魔法を放ってくる。
はっ! ふいうちはお前の十八番だもんな!
だがな、騙しならこっちだって負けてねぇんだよ!
「あなたの考えることは大体予想がつきます」
「てめーが死ね、バカ女」
どろん!と煙とともに現れたセントとラフタリアが、バカ女の後ろに現れて蹴りを放つ。
すげェな、あんな近付いても気配を悟られないのか……いや、単に向こうがザコ過ぎて気付かなかっただけか?
どうせならぶった斬ってやりゃよかったのに……ああ、殺したら駄目なんだっけ? 勇者以外は別によくね?
「ぐっ……この! 俺はまだやれるぞ! 勇者として、悪は裁かなければならないんだ!!」
オレが殴り飛ばして倒れ込んでいた槍の勇者だが、それでも諦めることなく立ち上がり、ナオフミを睨みつける。
軽かったか? いや、向こうの執念がすごかったのか…?
すごいすごい、物語の主人公みたいだ……だがな、今のお前は単なる道化でしかないんだよ。
「本当におめでたいやつだな、お前は」
「「暴風雨で薙ぎ払え! タイフーン!!」」
ナオフミの合図で、メルティとフィーロが同時に魔法を放つ。
二人の手の間から暴風が吹き荒れ、槍の勇者とその仲間をみんなまとめて空に巻きあげてみせる。
あれが噂に聞く合体魔法ってやつか!
相当コンビネーションがよくねーとできねぇって聞いたぞ? スゲーな、あいつら…。
「こ、これが盾の……洗脳の力なのか…!?」
「そう思うんならそう思っておけばいいさ……どうせ話しても信じないだろう、お前は」
まだそんなこと言ってんのか…。
洗脳で強くなるってどうやるんだよ、考えてからもの言えよ。
「俺はな、元康……お前らが元から知ってるゲーム知識で俺TUEEEEしてる間も、地道にコツコツ戦力を鍛えてきたんだよ」
いい加減苛々してきてるな、ナオフミの奴……それでも我慢してる。
だが、フィトリアに言われてるからな。
他の二人はもう死んじまってるようだし、これ以上勇者を死なせるわけにもいかねぇからな。
「…わかったら話を聞け。俺達が争ったところで、何一つ解決したりはしない」
「こと…わる!」
あ?
今断ったのか、こいつ?
槍の勇者は槍を杖代わりにしながら、ふらふらしたまま立ち上がる。
他の連中も同じように……いや、単にこっちを憎んだ様子で続々と立ち上がってくる。
しぶってぇな、こいつらマジで……。
「俺は……勇者は悪に屈するわけにはいかないんだ…! 俺を信じてくれる……俺が守りたい人達のために、俺は負けられないんだ!!」
「テメェは…!」
バカか? マジでバカか!?
仲間……いや、女に言われたことだけ信じて、こっちの話をまるで聞こうとしやがらねぇ。
ああもう……フィトリアの言ったこと無視してぶっ殺してやりてぇ!!
そう、オレの我慢が限界に達しかけた時だ。
えげつないくらいの寒気が、オレの背中に走った。
近づいてくるそれに気付いた瞬間、オレの身体は勝手に動いていた。
「うおおおおおおおお!!」
「やああああああああ!!」
フィーロもオレと同じものを感じていたらしい。
同時に走り出し、槍の勇者共の元へ駆け寄る。
そして奴らの後ろに回って、全員まとめてナオフミ達の方へと蹴り飛ばしてやっていた。
「なっ、え!? ちょっ、フィーロちゃん何を……へぶっ!?」
「ちょっと! 高貴な私に対してなんて無礼な……ごべふっ!?」
「黙ってろ!!」
困惑する槍の勇者とクソ女だが、ぶっちゃけこいつらに構っている暇はない。
やばい……ヤバいヤバいヤバい!
何がどうヤバいのかはわかんねぇけど、とにかくさっさと動かねぇと!!
オレ達を狙ってる奴らに殺されちまう!!
「ごしゅじんさま、あの黒い盾にして! 早く!」
「な、何を…!?」
「急げ! あれじゃねぇと耐えられねぇ!!」
「わ、わかった…! エアストシールド! セカンドシールド! シールドプリズン!」
オレとフィーロの必死の頼みに、ナオフミは困惑しながらも従ってくれた。
すぐに盾を構え、持っている防御の技を全部出す。
盾の檻の中に全員が入り、じっと息をひそめる。
クソ女がぎゃーぎゃー喧しいけど、それに構っている場合じゃない……そこでオレは、辺りにいたはずの兵士達が一人もいなくなっている事に、ようやく気付いた。
そして次の瞬間、遥か空の上から、オレ達に、受かってとんでもない量と熱さの光が降り注いだ。
「ぐお…ぉ、おおおおお!?」
「何だぁぁ!? 何が起こってんだリュウガぁ!?」
「黙ってろバカウサギ!!」
ドゴッ!とナオフミの足が地面に埋まる。
あと少し遅ければ、オレ達全員が飲み込まれていたであろうその何かを、盾を上に構えたナオフミがたった一人で耐え続ける。
!? ナオフミの盾があっという間に壊れていく音がするぞ!?
どんな魔物の攻撃でも、一発ぐらいは耐えてきたはずの盾だってのに!?
くそ……これ、いつまで続くんだよ!?
それが収まったのは、長いこと経った後だった。
数秒か数分か、必死過ぎて時間の感覚が狂いまくってたぞ……ってか、外もやべぇな。
ナオフミが守ってた部分以外、ドロドロに溶けてやがる。
どんだけ高い熱で焼いたら、地面ってこんなふうになるんだよ…!? ずいぶん深くまで抉られてるし……空が遠いぞ、おい。
「―――はっ、はぁっ……ど、どうにか耐えきったか」
「だ、大丈夫ですかナオフミ様…!?」
「あぁ…何とかな」
むちゃくちゃ息を切らせて、膝をつくナオフミ。
セントとラフタリアが心配してるけど、それ以上動けないらしい。そりゃそうだわな。
「今のって…」
「ま、まさか…どうして……!?」
一方で、何やらメルティとバカ女が真っ青な顔で立ち尽くしている。
おい…まさか、さっきの何かに心当たりでもあんのか?
固まったままのメルティに、オレが問いかけようとした時だ。
パチパチ…と、その場に似合わない、拍手の音が響いた。
「いやいや…さすがは盾の勇者。今ので死なないとは、しぶとさは他の勇者とは比べものになりませんな」
あわてて声がした方を振り向くと、地上に人影が見える。
それも一つじゃない……十人、二十人、いやもっといる!?
その先頭に……気味が悪いぐらいに白い、偉そうな感じの格好をしたジジイが不気味に笑っているのが見えた。
「あいつは…確か教会にいた……!」
あ、ナオフミ……お前が知ってる奴か?
よかった……顔見たけど全く知らねぇ奴だったんだよな。思わず誰だテメェ、って聞くところだった。
ただ……一番驚いてるのは、意外な事にクソ女だった。
「教皇! これは一体どういうことなの!? 次期女王たる私に対し、あんな魔法を使うなんて……これは明確な反逆行為よ!?」
「これはこれは、マルティ王女……ご健在とは申し訳ありません。せめて痛みなく始末して差し上げるつもりだったのですが」
「なっ…!?」
何だ…? 裏切りだの始末だの。
あのジジイが教皇で、クソ女と繋がってて……?
ダメだ、全く構図が浮かんでこない。
「……セント、どういう事だ?」
「つまりだ…あのバカ女が教会を利用してオレ達を貶めようとしたつもりが、あの女も教皇に騙されてて、オレ達と一緒に殺されかけてるって事だ」
「ああ、そういう事か……」
うん、なんかちょっといい気味だな。
ただ……あのクソ女が殺される時は、オレ達もまとめてやられる時なんだが。
「う、裏切ったの!? せっかく盾の勇者の排除に協力してあげたのに! 私が誰にお仕えしているかわかってやっているの!?」
「もちろんですとも……偽勇者とその一味、これを浄化するために我々は参上したのですから」
あ、クソ女がよろめいた。
まぁ、自分が他人をいいように利用したかったのに、逆に掌で踊らされてたんだって知ったんなら、そうなるか。
ていうかあのジジイ……さっきから何言ってんのかまるでわかんねぇんだけど?
「勇者とは……人々を救い、世界を救う者。故に誰からも支持され、誰からも尊敬され、崇められていなければならない存在なのです」
そういったジジイの眼が、一瞬鋭くなる。
おい、あれ本当にジジイか…? ジジイの格好をした別のなんかじゃないのか?
「ですが……彼らは違う。魔物を蘇らせ、疫病を蔓延させ、権威を示さない。そんなものは勇者を名乗る資格はありません」
ああ、他の勇者がやらかしたあれか。
結局、ほとんどのやらかしをオレ達で何とかして回ったんだよな……で、それが何で勇者を殺すことになるんだよ。
理解ができず、首を傾げたまま棒立ちになるオレ達の前に……ジジイは
何処かで見たことのある形状の……一振りの剣を。
「故に私が―――真なる神を代行し、裁きを与えに来たのです」
ジジイがそれを振り下ろす姿を見た瞬間。
オレの背筋に、さっきとは比べ物にならないくらいのヤバい寒気が走った。