Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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弾劾裁判

Side:Naofumi

 

「初めまして、勇者様方。私がこの国の女王、ミレリア=Q=メルロマロクです」

 

 玉座に座った女王が、並び立つ俺を含んだ勇者に向けてそう名乗る。

 そこだけ見たら普通なんだが……。

 

 俺達の前で、両手を縛られ、膝をつかされているクズ王とビッチの姿に、どうしても目を奪われてしまっていた。

 

「ここにいる者は代理の王ですので、こんな格好をしていますがどうぞお気になさらず」

「お、おお……」

「何か…すごいな」

「ですね……」

 

 三勇者共はドン引きしてる。俺もしてる。

 まぁ……今回の騒動が大きくなった原因でもあるし、この対応は当然なんだが。

 

「さて、このたび皆様にお集まりいただいたのは他でもありません……我が夫と娘の罪、それをこの場で裁かせていただくためです」

「罪!? 罪って言ったのママ! 私が一体何をしたと…!」

「……娘はこの通りですので、罪状を改めてあげさせていただきます」

 

 思った通り、ビッチがキャンキャン叫んで邪魔をする。

 が、女王は全く気にせず、二人のやらかしを一つ一つ上げていく。

 

 まず、他の国をほったらかしにして勇者召還を行った事。

 俺一人を迫害したこと。

 三勇教を野放しにして、国を混乱させたこと。

 あらためて文字にするととんでもねぇな、こいつら……。

 

 そんで、あれだけの事をやっておいて、ビッチの奴全く悪びれた様子を見せない。そこは逆にすごいと思う。

 こいつの思考回路は一体どうなってんだ……女王も流石に呆れてるぞ。

 

「―――よって、オルトクレイとマルティはこの通り捕縛させていただきました」

「そんなのデタラメだ! マインはそんな奴じゃない!」

 

 すると案の定、元康の奴が食って掛かる。

 お前……ほんっとこれまで何を見てたんだよ、お前の女、思いっきり自分の妹殺そうとしてたぞ。

 何ならそれをまるで隠そうともしてなかったぞ。

 

「あんた母親だろう!? どうして自分の娘を信じてやれないんだ!」

「それではもう一人の娘の言葉も、疑わなければなりませんよ」

 

 襲われた被害者ではなく、容疑者の言葉を信じようとしている……俺の時とは真逆だな、ケッ。

 自分の仲間を信じたいんだろうが、相手が性根の腐った輩なら、その優しさはもう滑稽にしか見えないぞ。

 

「私はメルロマロク国女王として、国を脅かす者を放置するわけにはいきません。それが、夫や娘であっても」

 

 非道に聞こえる女王の言葉、為政者としては正しく、母親としては残酷な決意だ。

 だが……気のせいだろうか。

 女王は自分の本心を、必死に内側に隠しているような気がしてならない。

 

 俺のふとした疑問を他所に……女王は無情に、夫と娘の裁判を続ける。

 

「信じられないようですね。では……本人に確かめてみましょうか。マルティ、あなたは盾の勇者様に襲われたのですね?」

「そうよ! 私、怖くて怖くて―――」

 

 泣き顔を見せ、ビッチが女王に叫ぶ。

 一瞬見たら、マジで泣いてるように見えるけど……一度見た俺からすれば、演技ってのがまるわかりな表情だ。

 

 元康はこれに騙されたんだな……と、思った瞬間。

 

 ビッチの胸に魔法陣が浮かび上がり、眩しいくらいに強烈な雷撃が迸った。

 あれは……相当高位の奴隷紋だな。

 

「ぎゃああああさああああああああああ!!!」

「嘘をついた報いです。さ、まだ裁判は終わっていませんから、気絶なんてさせませんよ」

 

 その場に倒れ込み、ばたばたと悶え苦しむビッチ。

 だが女王はまるで意に介さず、冷めた目で娘を見下ろす……同情はしないが、流石に何も思わないわけじゃない。

 

 あんな母親…俺、絶対嫌だ。

 自分の子供に容赦なく雷撃食らわせる親とか、マジで嫌だ。

 

「あなたは三勇教と結託し、四聖勇者を抹殺し、国家転覆を目論んだ。違いますか?」

「そんな恐ろしいことするはずがないじゃない! 勇者の抹殺なんてこと、奴らが勝手にやったことに決まってるじゃない!」

 

 別の質問をぶつけるが、今度は奴隷紋は反応しなかった。

 それを見て、元康がほっとあからさまに安堵した様子を見せる。

 

「ほ、ほら見ろ! マインがそんな事……」

「言い方を変えましょう。三勇教の陰謀を利用し、自分より王位に近いメルティを亡き者にしようとしましたね?」

「そんな事……ぎいいいいいいいい!!!」

 

 今度はキッチリ雷撃が走った。

 そうか……こいつが企てたんじゃなくて、勝ち馬に乗って利用しようとしてたんだな。

 そんで、逆に利用されたと……。

 

 バカだろ、こいつ。

 メルティは愕然とした顔になっているが……バカにもほどがあるだろ。

 

「マ、マルティ…!? それは、本当のことなのか!?」

「違う…違うわパパ! 私はそんな事……ぐぎいいいい!!」

 

 クズの方は、ビッチに信じられないものを見る目を向けている。

 こっちは……普通に俺だけを抹殺する気だったんだろうな。ビッチの陰謀には全く気付いていなかったと。

 

 こんな男が父親のメルティに、深く同情する……。

 

「これでわかったでしょう。この子は生来の嘘つきで、血の繋がった妹でさえ手にかけようとする輩、慈悲など必要はありません」

「う、嘘だ! こんな裁判デタラメだ!」

 

 そう言って、また元康が口を挟む。

 うるせぇな……こうやってしっかり証拠を見せてんだろうが。

 

 仕方なく、女王が元康にも奴隷紋で確認させることを提案し、奴は即座に応じる。

 そんで全く同じ質問をして……また嘘で返され、雷撃が迸った。

 

「もうこれ、結果見えてるよな」

「裁判の必要、あるんでしょうか…?」

 

 セントとラフタリアもざわざわしている。

 まぁ……ずっとこいつらが自爆して、無様を晒すところを見せられてるだけだからな。

 異議あり!なんて言う奴もここにはいないし。

 

 最初から証拠が全部そろった状態で、公開処刑されてるようなもんだ。

 

「これらの事実をもって、二人を国家転覆罪の主犯と認定。然るべきのちに、死罪に処す!」

「妻よ! 本気なのか!?」

「ママ! あんまりよそんなの!」

「自業自得だということがまだわかりませんか……!」

 

 女王の無慈悲な決定に、クズもビッチも反論する。

 特にビッチの縋りつきようがすごかった……髪を振り乱して泣き叫ぶわ、きんきん甲高い声で喚くわ、見っともないにもほどがある。

 

 悪女なら悪女らしく、某女スパイみたく格好だけでもつけとけよ。

 

「では……此度の騒動、最も被害を被ったイワタニ様に決めていただくのはいかがでしょうか?」

 

 うわっ、巻き込まれた。

 女王の奴、この場で俺に采配を譲るのかよ……って、ビッチの奴必死に地面を張って、俺の方に近づこうとしてやがる。

 

「ナ、ナオふみ様! どうか、復讐など愚かな行いはおやめください! 恨みを抱く続けたところで、何も解決などいたしませんわ!」

 

 は…?

 こいつ、今なんつった?

 加害者にあるまじき発言が聞こえた気がするんだが……俺の気のせいだよな。そうだよな?

 

「あなた一人が溜飲を下げればいい話なのです! 盾の勇者様であるナオふみ様なら、きっと正しいご判断ができるはずでしょう!?」

「えぇ〜……」

「うぉお……」

 

 気のせいじゃなかった……後でラフタリア達が全員困惑してる声が聞こえてくる。

 ラフタリア達だけじゃない、他の勇者も……元康でさえ、ビッチのこの発言に目を白黒させてるぞ。

 

 おい、目は覚めたか?

 お前が惚れていた女は、こんなにクズでろくでもない奴だったんだぞ?

 

 ……次第に俺の中で、ふつふつと憎悪が再燃し始めた。

 命乞いをするべき場で、あろうことか説教じみた戯言を抜かすこの腐った性根……もう、怒りが止まらなくなる。

 

 俺の中で、こいつらに対する処分が決まろうとした、その時だった。

 

「はい。ちょっとタンマ」

 

 不意に、後ろから挙手と共に、リュウガの声が響く。

 

 ラフタリア達や兵士達の視線を一身に集め、リュウガはオレの方に近づいてくる。

 …お前、一体これは何のつもりだ?

 

「お前、処刑しろって叫ぶつもりだったろ」

「……それの何がダメなんだ」

「そんなに連中にとって一番楽な道に決まってんだろ。苦しみが一瞬で終わるんだから」

 

 む……それは確かに一理ある。

 

 俺がこの何日もの間、汚名と謂れのない差別を受けて苦労し続けていたのに、最近になって罪を問われたこいつらの苦しみはすぐに終わる。

 それは確かに……考えてみると、何とも腹立たしい事のように思える。

 

「じゃあ、どうするって言うんだ?」

「一生苦しむ罰を与えるんだよ。奴隷紋があるし、割と無茶苦茶な命令だって聞かせられるだろ」

 

 なるほど、こいつが言いたいのは、生きたまま受け続けられる罰を負わせるという事か。

 中世的に考えるなら……腕をもぐとか、皮膚を剥ぐとか、目玉をくりぬくとか、結構えぐそうなことか?

 

 それを決行したら、俺の精神の方がイカレそうなんだがな……。

 

 ……ん?

 そうだ……汚名を着せられたんだから、こいつらにも同じことをするというのはどうだろうか?

 

「……でかしたぞ、リュウガ。お前のおかげでいい案を思いついた」

 

 思わず、にやりと笑みがこぼれてしまう。

 そんな俺を見て、ラフタリアは呆れたようにため息をつき、セント達は楽しそうに笑っている姿が見えた。

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