Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
その日、メルロマロクに一つの通達が行われた。
王都の住民達、各地の村人たちに、兵士の口を通じて放たれたそれは―――
「本日より、国王オルトクレイは名をクズ! 王女マルティはビッチと名を改めることとなった! 元の名、異なる名を使用した者は、厳罰に処す事をここに通達する!」
……という、何とも言い表しがたい内容で。
人々は皆、通達を行った兵士にぽかんと呆けた顔を見せるのだった。
Side:Filo
「おのれ盾ぇぇぇぇ!!」
「許さないわよこのブサイク!!」
フィーロが大っキライなおじさんと女の人が、ごしゅじんさまに向かってなんか叫んでる。
ものすごくおこってて、がんばってこっちに来ようとしてるけど、ヨロイをきた人につかまっててぜんぜん動けないみたい。
ごしゅじんさまがつけたお名前、そんなに気にいらなかったのかな?
「汚名を着せたものに、本当の汚名を着せる……いい落とし所だと思いますよ」
「フン、自業自得というものだ」
「お前ら…! くっ、俺に力がないばっかりに!」
弓の人とか、剣の人はうんうんうなずいてるけど、槍の人だけなんかくやしそう。
ラフタリアお姉ちゃんも、ギャーギャー叫んでるおじさんたちを見て、すっごいくしゃってなった顔をしてる。
顔に手をあてて、どうしたんだろう?
「ああ、もう…またナオフミ様の悪名が重なって……ってまた胴上げですか!?」
「「「「イヤッホ~ウ!!」」」」
「きゃあああ何で私が!?」
ごしゅじんさまと、セントお姉ちゃんとリュウガちゃん。
みんなで一緒に、メルちゃんをもちあげてわっしょわっしょいって放り上げる!
メルちゃんは楽しくない?
フィーロ、前にやってもらってすっごい面白かったんだよ!
「下ろして! 下ろしてってば! 怖い! 下着が見えちゃう!」
「祝杯じゃ〜! 今夜は飲めや歌えのお祭りじゃぁぁ!!」
「ひゃっは――!!」
「お祭り〜!? わーい!」
「お願いだから止めて~!!」
ごしゅじんさまたちはうれしそうだけど、メルちゃんはちょっとつらそう。
きてる服のはしっこをおさえて、大きなこえでさけんでる。
「皆さん! いい加減にしてください、メルティさんが半泣きになっていますよ!」
「うっし、じゃあここまでだな」
「またなんかあったらやろうぜ!」
「イヤよ!」
ラフタリアお姉ちゃんにおこられちゃったから、みんなでメルちゃんを下におろす。
こんどはフィーロが上になりたいな。
フィーロとべないから、あれやってたらとんでる気持ちになって楽しいんだよ!
…でもメルちゃんは違ったみたい。
「はぁ……はぁ……怖かったわ」
「すみません、メルティさん……ナオフミ様達が」
「いいわ…いいのよ。あんなにはしゃいでるナオフミ、初めて見たし」
メルちゃん、よく見たらちょっと泣いてる……そんなに嫌だったのかな。
フィーロ、メルちゃんに楽しんでほしかっただけなんだけどな。
「フィーロちゃん……ナオフミのあれは真似しなくていいからね?」
「えー? でも楽しいよ?」
「楽しくても! ……嬉しいのはわかるけど」
むー、メルちゃんがそういうなら、やめとく。
ごめんねメルちゃん。
メルちゃんと話してたら、むらさきの髪の女の人……えっと、メルちゃんのお母さん?がやってきた。
「ふふ、歓迎されているようで安心しました……勇者様、我が娘をよろしくお願いいたしますわ」
「もう! やめてください母上!!」
「むっ!? まさか妻よ! いかん! いかんぞ! そいつだけは許さんぞ!!」
メルちゃんのお母さんは楽しそうだけど、メルちゃんははずかしそうにしてて、おじさんはものすごくおこってる。
何のはなししてるんだろ? ふぃーろ、よくわかんない。
「しかし、やたら娘との仲を押すな、あの女王」
「多分だけど……政治的な思考があると思う」
「というと?」
セントお姉ちゃんは、何かしってるのかな?
リュウガお姉ちゃんに何かおしえてるみたいだし、フィーロにもおしえて!
「シルトヴェルトの連中にとっちゃ、ナオフミは神様だ……じゃあその神様が敵国のやつらと仲良くしてたら?」
「あー……うかつに手が出せない?」
「そ、そんで今後の争いを抑え込もうとしてんだろうよ」
……きいてもわかんなかった。
ごしゅじんさまとメルちゃんがなかよくすると、何かあるの?
あれ? ラフタリアお姉ちゃん、なんでそんなにフラフラしてるの?
お顔もまっさおになってるよ?
「頑張れよ、ラフタリアちゃん。側室の座は譲ってもらえるかもしれないぜ?」
「どうしてメルティさんが本室であることが確定してるんですか!」
「いや、だって母親ぐるみだし、女王が相手だし」
「私に救いはないんですか!?」
「あるといいね〜」
とうとうラフタリアお姉ちゃん、あたまをかかえてがくってひざをついちゃった。
セントお姉ちゃんもリュウガちゃんも、何かにやにやしてるし……ムー、フィーロだけおいてけぼりにしないでよ!
「さて……勇者様方、此度の一件を鎮めてくださったお礼として、ささやかながら宴の席を設けました。どうぞごゆるりとおくつろぎください」
「そうさせていただきます」
「ああ、今回はかなり疲れたからな……ありがたく使わせてもらおう」
そう言って、弓の人と剣の人は、お城の人と一緒にどっかにいっちゃった。
槍の人だけ、つかまってる女の人をちらちら見てる。
むー! フィーロのことはチラチラみるな!
ラフタリアお姉ちゃんのこともみてるけど……ごしゅじんさまだけはにらんでる。
槍の人、やっぱりキライ!
「マ、マイン…!」
「キタムラ様? いけませんよ、先ほど伝えた決定をお忘れなく……」
「うっ…」
メルちゃんのお母さんになんかいわれて、うめいてる槍の人。
女の人は槍の人を、すっごいつらそうなお顔をしてみつめてる。槍の人もじっとみてる。
「お、俺は必ず…君を助けてみせるからな、マ―――ア、アバズレ!!」
「……!!」
槍の人がそういうと、女の人のお顔がみるみる赤くなった。
恥ずかしがってるのかな、怒ってるのかな?
よくわかんないけど……ごしゅじんさまもリュウガちゃんも、セントお姉ちゃんもそれをみてすっごいわらってた。
「クク、ククク…! 何度でも礼を言うぞ、リュウガ」
「お褒めに預かり光栄至極……ブフッ」
うれしいのがガマンできないみたいで、ごしゅじんさまはなんどもふき出してる。
お姉ちゃんもメルちゃんも、それをみて呆れてた。
何がおかしいんだろう……でも、ごしゅじんさまが笑ってるから、いいや!