Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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ずっと友達で

Side:Naofumi

 

 国王とマルティ王女改め……クズとビッチの元を後にし、俺達は王城内を歩く。

 ずっと自分の中にくすぶっていた何かが、少しばかり発散されて、俺は久しぶりに爽快な気分になっていた。

 

 ……もし、あのまま二人を処刑する事になっていたら、こうはいかなかっただろう。

 確実に…後悔が残っていた気がする。

 

「さぁ〜て、ようやく肩の荷が降りたな」

「つっかれた〜…」

 

 首や肩をゴキゴキと鳴らし、寛いだ声を上げるセントとリュウガ。

 ラフタリアは声にこそ出さないが、同じくかなり疲れている様子を感じさせる。

 

 治療を受けた後とは言え……精神的な疲労はまだ回復していないだろうしな。

 冤罪で国中を逃げ回っていたわけだし、こいつらにはきちんと、十分な休息を取らせてやりたいな。

 

「メルちゃん! フィーロね、お城のなか見たのはじめてなの! 一緒にたんけんしよ!」

「あ……フィーロちゃん」

 

 俺達とは打って変わって、元気なのはフィーロだ。

 逃亡生活における我慢から解放されたせいか、キラキラと目を輝かせながらメルティの手を引く。

 

 しかしメルティは……その誘いに、表情を曇らせた。

 

 ……時間切れ、ってところか。

 これまでは常に一緒にいなければならなかったが……もう、その必要はない。

 いや、一緒にいられる時間は……終わってしまったんだ。

 

「フィーロ、メルティとはここで一旦お別れだ」

「え…?」

「王女様だからなぁ……今まで通り一緒に冒険ってわけにはいかねぇんだよ」

 

 俺が言うと、フィーロは困惑で固まる。

 続いてセントが、無茶苦茶渋い、言い辛そうな顔で説明を引き継いでくれる。

 

 …悪いな、セント。付き合わせて。

 

「おわかれ…!? や…やだ! フィーロ、エルちゃんとずっと一緒がいい!」

「そりゃ気持ちはわかるがなぁ…」

「フィーロ…あまりわがままを言っては、メルティさんを困らせてしまいます」

 

 意味をようやく理解し、納得ができない様子のフィーロがいやいやと首を横に振る。

 リュウガやラフタリアが説得するが……受け入れられないみたいだ。

 

 考えてみれば、生まれてまだ数ヵ月しかたってないフィーロにとっちゃ、友達との別れは辛さが強いんだろう。

 

「俺達には俺達の、メルティにはメルティのいるべき場所ってのがある……そいつは、ただ一緒にいたいって想いだけじゃどうにもできねぇんだよ」

「むー…!」

 

 リュウガの割と容赦のない言葉に、フィーロは俯き、顔をくしゃくしゃにする。

 目には涙がたまり、今にも爆発しそうなほどになっている。

 

 どうしようもないって事を……どうしても受け入れたくないんだな。

 

「メルちゃん…もう一緒にいられないの?」

 

 縋るように、フィーロがメルティに問いかける。

 ふるふると震え、見つめてくる親友を前に……メルティは、同じく目に涙を溜めながら、首を横に振った。

 

「……ううん、そんなことはないわ。私は、私にできる事をしに行くの。それは、フィーロちゃんとこの先もずっと一緒にいられるようにするためなの」

「ほんとう…?」

「ええ、いつかまた、一緒に遊べるようになるために……私は、頑張りたいの」

 

 メルティのその言葉に安堵したのか、フィーロは引き結んでいた口元を笑みに変える。

 涙がこぼれ、鼻も赤くなっているが、それでもメルティの言葉が嬉しいのか、差し出されたメルティの手をきつく握り返す。

 

「じゃあ、約束だよ? フィーロ、また一緒にあそびたい!」

「ええ…また、いつかまた一緒にね!」

 

 二人で泣きながら、再会を約束し合う。

 その姿を眺め……ラフタリアも目を潤ませて、セントはけらけらと肩を揺らし、リュウガは通路の端っこで号泣していた。

 

 ……二人を見て、俺は決めた。

 俺がいつか元の世界に帰る時……フィーロのことは、メルティに託そうと。

 

 平和になった世界で、こいつらがいつまでも笑っていられるように……俺は、戦い続けようと。

 そう……心に決めたんだ。

 

 

 

To Be Continued…


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