Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Naofumi
「ですから! 武器のレアリティが重要だと言っているでしょうが!」
「何を言っている! 熟練度の高さがものを言うんだ!」
「だーかーら! ステータスの高さと強化精錬が一番大事なんだって!」
気難しいこいつらをセントが説き伏せて、やっと話し合いが始まると思ったら……このざまだ。
どいつも他の奴が語る強化方法が間違ってるとか何とか言って、情報交換なんてあったもんじゃなくなっている。
何だこいつら、この世界についてゲームで知ってるんじゃないのか?
そういえば、最初にこいつらが言ってたゲームのタイトル、全部違う、俺の知らないやつばっかりだったな……どうなってるんだ?
「女王、こいつらの話は誰が正しいんだ?」
「申し訳ありません……聖なる武器をどのように強化するかは、勇者様方本人でなければ詳しくは。文献がほとんど残っておりませんので」
女王に聞いてみるが、肯定的な返事は返ってこない。
くそっ……これじゃ何のための話し合いなんだよ。余計勇者同士の仲が険悪になるだけじゃないか!
「おいおい、落ち着けよ! 教える側のお前らに揉められたら、オレ達どうしたらいいのかわかんねぇじゃねぇか!」
セントが止めるが、頭に血が上った奴らは全く取り合わない。
自分の考えだけが正しいというように、侃侃諤諤と騒ぎまくるだけになっている……ってか、うるせぇんだよ全員!!
俺の怒りが限界に達しかけた、その時だった。
「大変です! 勇者様方のお連れの方々が!」
ああ、もう!
次から次へと厄介毎が降ってきやがって!
「もういっぺん言ってみろゴルァ!!」
「何度でも言ってくれる! 卑しい盾の手下どもは即刻イツキ様の前から立ち去れ!!」
「下品なのはあなたの方じゃないですか!?」
「薄汚い亜人に言われたくはないわね!」
「「あわわわわわわ……」」
俺達が慰労会の会場に戻ると、そんな怒号があちこちから聞こえてくる。
中心になっているのは……リュウガとラフタリアか? あいつらに……ビッチと樹の所にいた鎧を着た奴が絡んでいるのか。
もう……話を聞くまでもなく面倒な連中に絡まれているとわかるな。
「何だこの騒ぎは……」
「あっ、ごしゅじんさま! あのね、お姉ちゃんたちが槍の人と一緒にいるお姉ちゃんとかとね! ケンカしはじめちゃったの」
緑の髪の、何か気弱そうな奴と一緒に抱き合っていたフィーロが、俺を見て駆け寄ってきて説明をする。
ラフタリアもリュウガも、理由なく他人にちょっかいをかけるような奴じゃない。
おそらく……というか間違いなく、ビッチとあの鎧がくだらない因縁でもふっかけてきたんだろう。というかそんな台詞がすでに聞こえてきてるからな。
「おい、リュウガ!」
「だってよぉ…!」
「ラフタリア、お前も落ち着け」
「ですが…!」
セントと一緒に止めに入ったが、二人とも不満そうだ。
どんだけ腹の立つことを言われたんだ。こいつらが……リュウガはともかく、ラフタリアがここまで怒るって、相当だぞ。
「卑しい亜人め、見ているだけで気分が悪くなるわ!」
俺がラフタリア達を宥めていると、鎧の奴が聞いてもいないような罵詈雑言を放ってくる。
何だこいつ、偉そうにふんぞり返りやがって……樹はよくこんな奴と一緒に旅ができるな。まぁ……樹の前じゃ猫を被ってるんだろうけどよ。
「盾なんかと一緒に戦うなんて吐き気がするわ! こんな奴に媚びれるメルティは、なんて卑しい精神をしてるのかしら!」
「んだとてめぇゴルァ!!」
「ぶち殺すぞクソアマぁ!!」
「メルちゃんの悪口言うなー!」
おい、セント。お前まで何暴走してんだ。止める側だろうが、お前は。
ああ、もうダメだ……フィーロも一緒になって罵り合いがヒートアップしてやがる。
つーかこのビッチ! 俺の冤罪事件といい、元康を色仕掛けで操ってたことといい、今回の事といい、どんだけ勇者同士の輪を邪魔すりゃ気が済むんだよ!!
「黙りなさい」
「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
あ、女王が奴隷紋を操ってビッチに電流を走らせた。
相変わらず、女っぽくないすげぇ悲鳴をあげてたな……まぁ、こっちはその方がスッとするからいいけど。
ってか、これを何度も食らっておいてどうして反省しないんだろうな、こいつは。
「マっ……ア、アバズレ! 大丈夫か!?」
「モトヤス様ぁ…!」
「槍の勇者様、甘やかされては困ります。先ほどの言動を見たでしょう、イワタニ様に命を救われておきながらあの始末……反省の色がない者に優しくされては示しがつきません」
ビッチに駆け寄って、抱き寄せる元康だけど、女王のいう事に反論できないのか悔しそうに目を逸らしている。
そうだぞ、お前は甘えられていい気になっていたから気付かなかったんだろうが、そいつの本性最悪だぞ。早く気づけ。
じゃなきゃ、お前もいつか俺みたいに利用価値がなくなった途端に捨てられるぞ! ……なんか腹立ってきたな。
「マルドさん、あなたもですよ。僕達は今後、協力して波に立ち向かわなければならないんですから」
「ですが…! あ、いえ……申し訳ありません」
鎧の奴も、全然反省している様子を見せていない。
……樹の態度がときどきでかく感じるのって、こいつが傍にいるからじゃないだろうな。面子替えた方がいいんじゃないのか?
「すみませんでした、尚文さん。あまり長居しても空気が悪くなりそうなので、僕達はここで失礼します」
「そうか、まぁ、気をつけろよ」
「…俺達も帰る。次はカルミラ島で会おう」
「ご、ごめんなフィーロちゃん」
これ以上話しても無駄……っていうか、相手が信じられないからって感じで、勇者共はぞろぞろ仲間を連れて出ていってしまった。
おいおい、ナミに備えて戦力を強化するための集まりだったってのに、さっそく暗礁に乗り上げたじゃないか。
「……前途多難だな、マジで」
「頭が痛くならぁ」
セントの呟きに、心の底から同意する。
再出発だってのに、どこもかしこもこんな調子で、大丈夫なのか……?
「すみません、ナオフミ様……」
「オレも止まれなかった。悪い……」
与えられた部屋に戻ると、ラフタリアとリュウガが頭を下げて謝ってきた。
まぁ、タイミング的に自分達が騒ぎを起こしたせいで勇者同士の話し合いが中断させられた、みたいな感じだったからな。
「あれは向こうに原因がある。気にするな」
「……悪い」
「どうしてこう、どいつもこいつも人の話を聞かないのか。世界の危機なんだぞ…?」
ビッチにあの鎧、言う事がそれぞれで異なる勇者共。互いが互いを疑って、憎んで、話し合うどころか近くにいる事も疎んでいる。
二人とも、これでは突っかかってもおかしくない相手だ、と本気で同情する。
……俺も、教えられた強化方法がうまくいかずに頭を抱えているところだけどよ。
「今悩んでも仕方がねぇ、今日はもう寝ちまおうぜ。ナオフミもあんまり気に病むなよ」
「ああ、わかってる」
わざわざ変身までして、武器を渡して、ウェポンコピーを実演してみせたセントがそう言う。
……そういえば、あそこまでやってもらっておいて、何故俺はウェポンコピーの項目を見つけられなかったんだろうか。
「フィーロはどうしてる?」
「メルティと一緒に寝てる。あいつらは仲良しでいいねぇ……」
「ああ、心の底から信頼し合えているんだろうな」
この場にいないフィーロの顔を思い出して、思わず俺はフッと笑みをこぼす。まったく、こっちの気も知らないで呑気な奴等だ。
今はとてつもなく羨ましく思う……あいつらみたいに、勇者全員が互いを疑わず、信じあえる人間だったら、こんな事にはなっていないだろうに。
……信じる、疑わない?
「……信頼、か」
ふと、俺は自分の発言に引っかかりを覚え、考え込む。
黙り込んだ俺を心配して、顔を覗き込んでくるラフタリア達に手を振ってから……俺はしばらくの間、頭を回らせるのだった。