Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
大変申し訳ありません……m(_ _)m
Side:Raphtalia
「おやっさ〜ん! おひさ〜!」
街に向かった私達は、まずはじめに武器屋の親父さんの元に向かいます。
逃亡中は、親父さんの餞別に随分助けられました。お礼を言っておかなければ……と、皆さんで意見が一致しました。
「おお! 兄ちゃんに嬢ちゃんたちじゃねぇか! 無事で何よりだぜ」
「ご心配をおかけしました」
「悪いな、すぐに顔出せなくってよ」
セントさんが初めに挨拶をし、親父さんがホッと安堵の笑みを見せます。
逃亡生活はそこまで長くはなかったはずですが、親父さんの顔を見るのも随分久しぶりに会った気がしますね。
本当に……たくさんご心配をおかけして申し訳なく思います。
まさかあの方々が、ここまで馬鹿な事をするとは思いもよりませんでしたから。
「親父のくれた装備のおかげで助かった。礼を言うよ。特に盾につけたアクセサリーは俺達の命を救ったくらいだ」
「いやぁ、なに……実を言うとありゃあ、ちょっとした実験のつもりで作ったんだ」
「実験?」
「伝説の武器を目にできたのは、とんでもない幸運だと思っててよ。今のうちに色々調べてみてぇなと思ったんだ……勝手な事をして悪かったな」
親父さんは苦笑を浮かべ、ナオフミ様に頭を下げています。
実験ですか……ではあの壁が現れたのは、親父さんの意図があってのことではなかったのですか。
ああして役に立っていたのですし、終わり良ければすべて良し、という奴ですね。
「気にするな、そのおかげで助かってるんだからなーーーそれで、親父に一つ頼みごとがあるんだ」
ナオフミ様はそうお答えして、親父さんにあることを頼みました。
それはーーー親父さんの店にある盾を、他の勇者様方が教えてくださったウェポンコピーで複製させていただきたいというものでした。
当然、親父さんはその頼み事に渋い顔をされます……当たり前ですよね。
「兄ちゃん達……そりゃウチで堂々と盗みを働くって言ってるようなもんだぜ?」
「すまないな、頼めそうなのが親父しかいなかったんだ」
「うーん、しかしそうか……それで他の勇者は、武器を見るだけ見て何にも買ってかなかったわけだ」
ああ、あの方々もこのお店に来られていたのですね。そして、ウェポンコピーをしていったと。
…何でしょうか、知り合いが盗みを働いて、そのまま平然としているのだと知ったような、複雑な気持ちになります。
と、そこにセントさんが身を乗り出し、親父さんに耳打ちを始めました。
「…代わりにさ、今後もしかしたら大量に武器とか鎧を発注する事になるかもだからさ、それで許してくれよ」
「何だ、なんか企んでんのか?」
「まぁ、な。……ラフタリアには内緒にしててくれ」
えっと……?
ナオフミ様とセントさんが何やら、悪巧みをされているような?
ナオフミ様があくどい商売をするときとは違う、何といいますか……イタズラを思いついた子供のような顔をされていますね。
「ナオフミ様? 何の話をされていたのですか?」
「んー、まぁ男同士の秘密の話ってやつだ」
「気にしないで〜」
「セントさんは女性でしょう!?」
どうしてこう、このお二人はちょくちょく波長が合うんでしょうか……!?
別にその、男性と女性のあれこれですとか、そういう感情を抱いていないのは雰囲気でわかるのですが……何となくモヤモヤします。
私だけ仲間外れにされているような……ああ、もう、リュウガさんまで混じっていますし!
「よし、わかった! とっておきのを持ってくるからちょちっと待っててくれ!」
私が悶々としている間に、親父さんはお店の奥へ引っ込み、一枚の盾を持ってきました。
普通の鉄ではなさそうな……不思議な色合いと見た目の盾です。
「ほらよ、こいつは『隕鉄の盾』っつってな、空から降ってきた鉄を鍛えて作った装備だ。非売品だから大切に扱ってくれよ」
言葉からもわかる、非常に貴重そうな盾を、親父さんは笑顔でナオフミ様に渡してくださいました。本当に心の広い方ですよね。
そして、ナオフミ様は隕鉄の盾を片手に持ち、ご自分のせいなる盾に意識を集中させ始めました。
一秒、十秒、二十秒と経っていき、何の変化も見られない事に、私達が訝しみ出した時です。
ふわっ……と淡い光を放ち、ナオフミ様の盾の形が変わり出しました。
そしてーーーもう片方の手に持った隕鉄の盾と、全く同じものへと変化します。
「ーーーできた…!」
「おお!」
「やったな、兄ちゃん!」
思わず歓喜の声を上げる私達の前で、ナオフミ様は愕然とした表情になってきました。
「これは熟練度……こっちはレアリティ、強化精錬の項目もある。あいつらの言っていた強化方法が全部載ってるじゃないか!」
「……あの複製品の出力が、本物の四分の一っつってたのが、現実味を帯びてきたな」
「四倍どころじゃないぞ……!」
セントさんの呟きに、私も思わずゴクリと息を呑みます。
三勇教の教皇が使っていた聖武器の複製品は、十分に危険な力でした。それを優に超える力を発揮できるという事実に、私達は震えます。
これは他の勇者の方々にも、必ず伝えなければならない事実ですね……!
「さて……と。オレも何か、新しいパワーアップアイテムを考えるかな」
胸を弾ませる私達の見えない所で、そう呟いたセントさん。
その手に持った黒いフルボトルが、キラリと怪しい光を反射している事に、私達は誰も気づきませんでした。
Side:Ryuga
フィーロが引っ張る馬車に乗って、ガラガラガラガラと揺られるオレ達。
潮の匂いがしてきたな……なかなかいい見晴らしだ。
これから船に乗るわけだし、見晴らしはもっと良くなるとは思うがな。
「…ったく、現金な奴」
「えへへ〜、フィーロの馬車が戻ってきた〜!」
そんで、フィーロのやつはというと、めちゃくちゃご機嫌に馬車を引っ張っている。今朝の絶望顔はなんだったんだよ。
そういや、指名手配されてた時に置き去りにしてたんだっけか。
宝物でも扱ってるみたいに、暇さえありゃ磨いてたぐらいだし、だいぶ思い入れがあんだろうな。
「あの、ナオフミ様」
「ん? 何だ、ラフタリア」
「……少し、寄り道したいところがあるのですが」
不意に、手綱を操るナオフミにラフタリアがそう話しかける。
どうした? なんか真剣な顔してるけど。
そして、ラフタリアの案内で馬車を進ませてどれくらい経ったか……オレ達は、とある廃墟に辿り着いた。
「ここって……」
「…私の故郷、だった場所です」
…そうか、ここが最初に波でやられたっていう。
どこの家もほとんど原型がなくなってて、崩れてるところもある。食器だの服だのが散乱しているのが、生々しい。
って、あそこにいるのは確か、逃げる時に助けてくれた優男……と、ラフタリアの幼馴染だったっていう奴じゃないか?
「キール…」
「ラフタリアちゃん…! 無事でよかった!」
「キール君も……あらためて、生きていてくれて嬉しいわ」
向こうもこっちに気づいて、キール?って奴が駆け寄ってくる。手なんて繋いで、本気で再会を喜んでる感じだ。
オレ達がそれを眺めていると、優男が近づいてくる。
前とおんなじ、にこやかだけど……色々と悩み事を抱えた、疲れた顔をしているように見える。
「復興はどんな感じだ?」
「上手くはいっていませんね……問題は山積みです」
優男が言うには、ここを元通りにするのには色々と障害があるんだとか。
人はいないし、金もないし、食い物もない。
あのクソ王が牛耳ってた頃は亜人の村なんか放置……それどころか、勝手にのたれ死ねって感じだっただろうしな。
女王が助けてくれるって話だが……まだまだ先の事らしいな。
「お互い、頑張ろうとしか言えないな」
「ですね…」
「勇者ってさー、もっとこう、戦っとけばそれでお役御免みたいなイメージ持ってたんだけどさ、全然そんな事ないよな」
「それはオレも思ってた」
「現実はそう甘くないって事だ」
主にクソ王とかクソ女とかクソ教皇オレらの邪魔をしてくる奴らのの所為でな。
4人一緒になって、深いため息が溢れる。
お、ラフタリアがキールと一緒に戻ってきた。
が、なんかキールがナオフミの方を睨んできてる……お前、なんかやったのか?
「お前! 前の事は助けてもらったからいいけど、ラフタリアちゃんに危ない事ばかりさせてないだろうな!?」
「ちょっと、キール君…」
「割とさせているかもな」
「何だとーっ!?」
「ナオフミ様! 煽らないでください!」
ナオフミがそう言うのを、ラフタリアが声をあげて止めているが、まぁ確かにみんな毎回ボロボロになってるよな。
主な原因はナオフミのあの黒い盾だけど……覚悟の上の負傷だしなぁ。
ナオフミ的にも気にしてるみたいだし、今度からもうちょい気をつけていくべきか。
「ラフタリアちゃんに何かあったら、オレはお前を絶対許さないからな!」
「わかっている……絶対に死なせたりしない」
「絶対だぞ! 絶対に守れよ!」
目を吊り上げてそう吠えるキールが、またラフタリアちゃんの方を向く。
なんかこいつ、ナオフミに対して当たり強めじゃねぇか?
「オレ、頑張って強くなるから! ラフタリアちゃんを守れるくらい、強くなってみせるから!」
そう、キールはラフタリアに誓う。
何にもできなかった自分を恥じるように、今度こそ勝ってみせると、ちっこい体に決意を秘めてラフタリアを見つめる。
そんなキールを置いて、オレ達は港へと向かうのだった。
再び、ガラガラと海沿いの道を進むオレ達。
その間、ラフタリアはずっと黙ったまま、村があった方をじっと見つめて、切なげに顔を歪めていた。
……思う事は、たくさんあるだろうな。
まだあの村は、何一つ元には戻っていないし……全部が戻るわけじゃない。キールが生きて見つかっただけでも、大した事だ。
「……今後は、女王の援助も入る。元通りとはいかないが、あの村はきっと復興できる」
たそがれるラフタリアにナオフミがそう語りかける。
それを聞いて、ラフタリアはハッと目を見開いてナオフミを見つめる……心なしか目が赤いが、全員見えない振りをする。
「あと、オレ達もできる限り手伝うからよ!」
「フィーロも!」
「ああ、お前はもう一人じゃねぇんだからな」
オレやセント達も一緒になって、ラフタリアを勇気付けようとする。
何ができるかは……オレは暴れる事しかできねぇけど、だけど仲間のためならなんだってしてやる。
それが、オレをあの場所から救い出してくれたこいつらにできる、数少ない恩返しなんだからな。
「だから……もうそんな顔をするな。次会うときまでに、笑えるようにしておけ」
「……はい」
頷いたラフタリアの顔はーーーもう大丈夫だと思える、明るい笑顔になっていた。