Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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海の旅

Side:Filo

 

「たー!」

 

 ひろいひろーい海をおよいでたら、フィーロのまえにおっきな魚がやってきて、フィーロのこと食べようとしてきた。

 でもフィーロはそいつをけとばして、ごしゅじんさまのいるお船の上にぶっとばしてやったの。

 

「おお〜! これまたでっかいの獲れたな!」

「うん! ごしゅじんさま〜、今日のごはんはこれがいい〜!」

 

 セントお姉ちゃんもほめてくれて、フィーロすごく気持ちよかった。

 そしたらセントお姉ちゃん、フィーロが捕まえたおっきな魚にちかよって、またあの入れ物を取りだしたの。

 

「ちょっと分けてもらっていい?」

「いーよー」

「わーい、成分成分〜!」

 

 セントお姉ちゃんが魚に入れ物をむけたら、おっきな魚がしゅるしゅるーって、ちっちゃい入れ物の中に入っちゃった。

 そしたら入れ物のかたちがかわって、青い魚の形になったよ。

 

「サメフルボトルってところか……向こうでいろいろ手に入れられるといいんだけどな」

「またおもしろい鎧ができるの?」

「おう! カッコイイのいっぱい作るぞ!」

 

 お姉ちゃんはあの入れ物をたくさん使って、いろんなよろいをきて戦う。

 ウサギとかライオンとかタコとか、あとせんしゃ? とかしょーぼーしゃとかかいうのりものの力も使うんだって。

 

 お姉ちゃんが変身すると、すっごいいろんな音がなって面白いから、フィーロ楽しみ〜!

 

 ……でもセントお姉ちゃん、さっきまで楽しそうだったのに、なんだかむずかしいかおでよこを向いちゃった。

 

「……それはそれとして」

「う、うぅぅ……」

「誰か……助けて……」

「視界が……視界が揺れる」

 

 セントお姉ちゃんは、お船のはしっこでうーうーいってる槍の人とか弓の人とか剣の人とか、いっしょにいる人達を見てる。

 お船が動いてから、ずっとあんな感じなんだよね……あ、剣の人が吐いた。

 

 ごしゅじんさまもなんかくしゃってしたかおで、槍の人達の方に行っちゃった。

 

「おい、お前らちょうどいい。このあいだの会談で共有できなかった、それぞれの強化方法についてなんだが―――」

「今は勘弁してくれ……吐く」

「…お前らなぁ」

 

 ごしゅじんさまがなんか言ってるけど、槍の人達はぐったりしたまま。

 ご主人様がなにかだいじそうなお話ししてるのに、みんなぜんぜん聞こうとしてない。

 

 怒るかなって思ったけど、ごしゅじんさまははーっておおきなためいきをつくだけだった。

 

「リュウガ、お前は平気そうだな」

「昔から、酔いには強くてな。酒をたらふく飲んでも平気だし、どんだけ足場が揺れる乗り物でも全然何ともなかったりしてたし」

「ウワバミだったか。俺もだ、酔った事がない」

「ラフタリアは平気……だな、馬車で慣れたか」

「はい。……アレに普段から乗っていれば、いやでも慣れると思いますよ」

 

 そういえばリュウガお姉ちゃん、ぜんぜん気持ちわるそうじゃないね。

 ラフタリアお姉ちゃんだったら、まえはフィーロの馬車にのって、あとでゲーゲーやってたのに……ウワバミがなにかはしらないけど、強いんだね。

 

「オレはアレが好きだったんだよな……ルコルの実。濃厚な味わいがたまんねぇんだ」

「ほう……高いのか?」

「それなりってところだな。島の酒場に置いてあるといいんだが」

「どうせ飲み代も女王持ちだし、時間があったら呑みに行けばいいだろう」

「まじか、じゃあたらふく飲むとするか」

「あの……ほどほどにしていた方がよろしいのでは」

 

 ごしゅじんさまとリュウガお姉ちゃん、すっごい楽しそうにお話ししてる。

 フィーロのカンだと、おいしいものの話をしてると思うんだけど……そんなにおいしいのかな。フィーロも食べてみたい!

 

 ラフタリアお姉ちゃんは、なんだかちょっと青い顔になってるけど。

 

「フィーロも平気そうだな。ってか、あいつに関しては泳いでるから関係なさそうだし」

「オレも泳ごっかな……暑くなってきた」

「あ、それはやめておいたほうがいいかと」

 

 フィーロがバチャバチャしてるのをみて、リュウガちゃんも服をぬごうとしたけど、ラフタリアお姉ちゃんに止められちゃった。楽しいのにー。

 

「もう時期、嵐が来ると思います。空気の感じが変わってきましたから」

「マジで? ってか、そんなことわかるのか?」

「沖合の天気は変わりやすいので……だいぶ激しい嵐が来ると思いますよ」

「まだ揺れるのか…!?」

「しかもこれ以上に…!?」

 

 お姉ちゃんがせつめいして、リュウガちゃんが目を丸くしてる。それで、槍の人たちがぎょっとした声を出してる

 お船が揺れるの、そんなに苦しいのかな? フィーロはゆらゆらしてるの楽しいけどなー。

 

「フィーロ! 戻ってこい!」

「はーい!」

 

 もっと遊んでいたかったけど、ごしゅじんさまに呼ばれちゃったからもう帰る!

 あー、楽しかった! またおよいであそぼーっと!

 

 

 

Side:Motoyasu

 

 俺の名前は北村元康!

 槍の聖武器に召喚され、勇者として人々を救う使命を負った大学生の日本人だ!

 

 ……なんかこうして名乗らなきゃならない気がしたんだが、なんでだ?

 まぁいいや。

 

 俺は仲間としてついてきてくれたマ……ア、アバズレのために、こうしてパワーアップのためにカルミラ島へやってきた。

 ……母親である女王に色々言われてたし、証拠も突きつけられたけど、やっぱり俺は彼女を信じたい。彼女の冤罪を晴らしてみせたいと思っている。

 

 それで、長い船旅が先ほどようやく終わったんだが……。

 

「さて、無事にカルミラ島に着いた……ってのはいいが」

 

 そう言って俺を見下ろしてくるのは、マインを襲った最低男とされていた盾の勇者・岩谷尚文。

 強姦まで犯した極悪人のはずだったのに、いつのまにか女王に取り入ってアバズレや国王様を罰したこんちくしょうだ! 同じ地球人として恥ずかしいぞ!

 

 だが、それを言い返す余裕は今の俺にはなかった。

 船でむちゃくちゃ揺らされたせいで俺も仲間達もみんなぐったりしているからだ。

 

「ものの見事にへろっへろじゃねぇか」

「船酔いしちゃってますね…」

 

 周りを見れば、同じ勇者である天木錬や川澄樹もそれぞれの仲間達も、大体俺達とおんなじ感じでぶっ倒れている。

 平気そうなのは尚文達だけ……どんな手を使ったんだこの野郎!

 

 ……叫ぼうとしたら余計気持ち悪くなってきた。

 

「だらしがねぇぞ、お前ら!」

「う、うるさい……!」

「どうしてあなた達は平気なんですか……」

「俺は乗り物酔いなんてした事ないし、ラフタリアは漁村の生まれだからか慣れも早かったしな……体質の差だろう」

「やっぱりチートじゃないですか……うぷっ」

 

 酔った事ねぇとか絶対嘘だろ……あの盾にそういう特殊効果があるに違いない。ていうかそう思ってないとやってられない。不公平だろ。

 

「世話の焼ける奴らだ。おいセント! こいつらを運ぶの手伝え!」

 

 はぁ、と深いため息をついたリュウガちゃん……だよな? ちょっとおっぱいでかくなってる気がするけど。

 彼女は面倒臭そうに俺の方へ来て、襟首を掴んで引きずり始める……あの、もうちょっと優しくして。お願いします。

 

 錬や樹も同じようにして、荷物みたいに乱暴に運びだしていく。それをセントちゃんにも手伝ってもらおうと声をかけて……あ。

 

「おええええええええ!!」

 

 呼ばれたセントちゃんだったけど、彼女も俺達と同じく、船酔いにやられてダウンしていた。

 よかったー、仲間が他にもいた。しかも尚文のパーティーに。

 

「お前もか!! さっきまでの元気は何だったんだ!?」

「す、すまねぇ……船旅なんて滅多にしないから耐性ついてなくてよ……も、もう少ししたら復活するから、それまで待っ……ぼえぇ!!」

「情けねぇ……」

 

 すげぇ真っ青な顔で、何度も海に井の中のものを吐き出すセントちゃん。

 あー、ああいうの前に見た事がある気がする……むかし、サークルの飲み会でしこたま飲んで、帰り際にトイレに駆け込んだ女の子がああなってた。

 

 勇者パーティーのほとんどが動けなくなっている中、一人の見知らぬおっさんがやってきて、俺達に困惑の目を向けてきた。誰だ、あんた。

 

「どうもはじめまして、この島の領主です。あの……勇者様方をお送りしようと思っていたのですが、大丈夫なのでしょうか?」

「…しばらくはそっとしといてやってくれ」

「はぁ……」

 

 ああ、領主、領主ね。

 まともに挨拶もできなくて悪いんだけど、尚文の言う通りそっとしといてくれ……人前で吐くのだけは勘弁だ。

 

「では、簡単な島の説明を行ってもよろしいでしょうか? カルミラ島での活動について重要なお話がありますので」

「わかった。だが移動しながらで頼む……」

 

 領主はどうやら、長旅で疲れた俺達のために馬車を用意してくれたようだが、正直それはとどめでしかない。

 これは歩きの方が楽だな……さっさと宿に行きたい。

 

 

 

 が、宿についたのは日が暮れる頃の事だった。

 延々と街を案内され、島を開拓した魔物の伝説やら勇者のみが使える特別な魔法について刻まれたの碑文やら、あとレベル上げに関するマナーまで教え込まれ、やっとこさ宿に行かせてもらった

 

 魔物に興味なんてないし、碑文は尚文以外読めないし、散々な一日だったぜ……。

 

「や、やっと終わった……」

「つらい…気持ち悪い…苦しい…」

 

 錬も樹も、アバズレもみんなヘロヘロになっている。

 マナーって何だよ、そんなもんとっくにできてるっつの。子供じゃねぇんだからいちいち説明なんてされたくねぇよ、面倒臭ぇ……。

 

 ああ、ほんと……どっと疲れた。

 

「勇者共に色々教えてやらなければと思っていたんだが……あれでは無理だな」

「ですね……また日を改めなければいけませんね」

 

 尚文達がなんか言ってる気がするけど、聞く元気もない。

 あ、ダメだ。なんかすげー意識が遠くなってきたような……で、せめて部屋についてから……あ、だめだ、本当に、もう。

 

 俺の目の前が、真っ暗になった。

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