Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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未知の武器

Side:Larc

 

 よう! 俺の名はラルクベルク!

 世界を股にかける冒険者で、その真の姿はーーーって、いやいや何言おうとしてんだ、俺。

 

 ……とある目的で、旅の途中だった俺は幼馴染のテリスや仲間のイスルギと共に、活性化とかいう現象が起こっているカルミラ島にやってきた。

 

 その島で俺は、自分を悪名高い盾の勇者だと名乗る一人の男、ナオフミが率いるパーティーと出会った。

 そんで話してみれば、こいつらみんな気のいい奴らで、俺もテリスもイスルギもすっかり気に入っちまった。

 

 そんで、前から話してた通りに一緒にレベル上げをしないかって事で、今朝集まったんだが……。

 

「あったまいってぇ…!」

「視界がぐらっぐらしてるぅ〜…!」

「言わんこっちゃねぇ……セント、お前はもう二度と酒を飲むな」

 

 俺とウサギの耳が生えた嬢ちゃん、セント嬢ちゃんは今、とてつもない頭痛に苛まれていた。

 理由は勿論二日酔いなんだが……正直俺は、昨日の事は途中から全然思い出せねぇ。どんだけ飲んでたっけ、俺達?

 

 頭を抱えてうーうー唸る俺達に、ナオフミやテリスが心底呆れた目を向けてきやがる……やめてくれ、その目は俺に効く。

 今日に備えてさっさと寝てればよかったぜ……と、頭を抱えながらの事だった。

 

「……しかしまァ」

 

 俺は小さく呟きながら、さっきからチラチラ全員の視線が向いてる方を見る。

 そこには龍の嬢ちゃん…だよな? が、いるんだけども……昨日の夜に見た時と見た目が全然違ってんだよな。

 

 具体的に言うと、ちんちくりんだった体がボンッ!! キュッ! ボンッ!! のとんでもねぇドスケベボディになってやがる。

 

「でかくなったなぁ、お前」

「おう、やっと前のオレに戻って来れたぜ」

 

 たゆん! とかぼいん! とかいうレベルじゃないんだわ。

 あえて擬音語をつけるとするならば……どばるんっ!! みたいな、そんなデカさだ。

 

 ……テリス、落ち着け。

 俺は確かに大きいのが好きだが、誰でもいいわけじゃねぇ。俺が好きなのはお前のだ。

 ……だから脛を蹴るのはやめてくれ。

 

「……おっきいですね」

「おっきー」

「ねぇ、何なのそのデカさ。オレに対してのいやみか、いやみなのか? でかい乳がそんなに偉いのかコラァ!?」

 

 龍の嬢ちゃんのを、嬢ちゃん達がじっと凝視してる……つーか、若干目が血走ってて怖いんだよ、特に

 ウサギの嬢ちゃんなんて思いっきり嫉妬してるし。鳥の嬢ちゃん、お前さんはまだ子供なんだから羨みなさんな。

 

 ……だからテリスさんや、別にあんたに不満はないから足を踏むのをやめておくれ。

 

「さーてそれはさておき新しいベストマッチの時間だよ〜!」

「どういう思考回路してんだお前」

「またテンション高ぇなぁ……」

 

 真っ青な顔で、これ以上ないくらいに上機嫌で森の中に入っていくセント嬢ちゃん。お前、俺よりひどい顔じゃなかったっけ?

 そんなセント嬢ちゃん達に呆れながら、俺達は命にあふれた森を進んでいくのだった。

 

 ……ってか、ベストマッチって何だ?

 

 

 

「さぁ、実験を始めようか!」

カメラ!】【カブトムシ!】【ベストマッチ!

 

 目の前に現れた、でかいペンギンの姿をした無数の魔物達。

 セント嬢ちゃんはそれを見据えると、腰に巻いたベルトに、二本の小さな瓶のようなものを突き刺す。

 

 それをぐるぐると回すと、二色の鎧が生み出され、セント嬢ちゃんの全身にガシャーンと張り付いた。

 

密林のスクープキング! ビートルカメラ! イェイ!

「どすこい!!」

 

 カブトムシと……カメラ、だっけか? 景色を一枚の絵にするって聞く道具を模した鎧を纏い、セント嬢ちゃんはペンギン達に殴りかかる。

 カブトムシの角が突き刺さり、ペンギン達はぎーぎー耳障りな声をあげて吹っ飛ばされて行った。

 

「さらにもういっちょ!」

トラ!】【ユーフォー!】【ベストマッチ!

 

 セント嬢ちゃんは止まらず、今度はまた別の瓶をベルトに刺し、ハンドルを回す。

 こんどはピンクと黄色、虎となんかよくわかんねぇ船みたいなやつを鎧にして纏って……宙に浮いた!?

 

 普通じゃねぇ軌跡を空中に描き、セント嬢ちゃんはまた別のペンギン達に突っ込んでいく。そんで、虎の爪でぶった切っていった。

 

未確認ジャングルハンター! トラユーフォー! イェイ!

「いやっほぅ!!」

 

 はは〜……あれがベストマッチ。

 なんかとなんかの力を掛け合わせて、一番相性がいいもの同士を鎧にして戦ってるわけか。

 

 ……でもなんでそんな変な組み合わせばっかなんだ?

 

「おいおいセントぉ、ずいぶんボトルが増えたなぁ!」

「おう! でもまだまだいくぜ!」

キリン!】【扇風機!】【ベストマッチ!

 

 敵を蹴り飛ばしていたイスルギが、長らく離れていた相手に不敵な笑みを浮かべてみせる。

 セント嬢ちゃんはそれに得意げに笑い返し、また別の瓶を取り出した。

 

嵐を呼ぶ巨塔! キリンサイクロン! イェイ!

 

 今度は……えっと?

 確かあれはキリンとかいう種類の生き物と……どっかの国で見たセンプウキとかいう道具だな。

 

 嬢ちゃんが左腕lを向けると、羽が回ってとてつもない風が生み出される。

 発生した竜巻によってペンギン達は巻き上げられ、そこを右腕のキリンの顔がぶん殴ってぶっ飛ばしていった。

 

 そうか……キリンって首が伸びるのか、初めて知った。

 

「嬢ちゃんの武器、スゲーな。何がどうなってあんなんなってんだ?」

「俺に聞くな。割と長い付き合いになるが、本人が記憶喪失なのも相待って全くわけがわからないんだ」

「はー……なーんかどうも気になるなぁ」

 

 具体的に言うと、なんか心惹かれるんだよな。

 俺もアレを使ってみたい……嬢ちゃんが言う「変身」を俺もやってみたいと、魂が叫んている気がするんだ。

 

 坊主……お前も同じ気持ちなんだろ? わかるぜ、俺には。

 

「さて、いい加減俺達も活躍しねぇと、獲物全部あいつらにとられちまうぞ」

「だな! いくぜ、飛天大車輪!!」

 

 坊主の言葉で、俺も気合いを入れ直す。

 

 自慢の大鎌を振り回して、ペンギン達をバッタバッタと斬り伏せていく。

 嬢ちゃん達に比べれば地味かもしれんが、強さならまだまだ負けちゃいないぜ!!

 

「今度は私に任せて。ナオフミさんが作ってくれたこの子の力、見せていただきましょう! 輝石、紅玉炎!」

 

 今度はテリスが前に出て、ペンギン達を足止めしている坊主に向けて炎を放つ。

 慌ててる様子だが……無用な心配だぜ。テリスの攻撃は敵だけを焼き、味方を癒す浄化の力だ。

 

 それを証明するように、ペンギン達は焼き尽くされ、坊主は傷一つなくその場に立っている。

 

「なんだあれ……すげぇな、あいつら」

「おうおう、楽しそうだねぇ……そんじゃ、オレもいきますか」

 

 セント嬢ちゃんが呆然とした声を漏らし、目を見開いて俺達に見とれる。

 その隣から、イスルギがやや億劫そうに歩き出し、周りよりやたらとでかいペンギンの元に向かう。

 

 そして次の瞬間、イスルギの足から紫の液体が噴き出し、でかペンギンの首に叩きつけられた。

 

「うわ出た! 姐さんの毒攻撃! 致死性のない麻痺毒から猛毒まで何でもぶっかけるえげつねぇ攻撃だ!」

「本当に恐ろしい攻撃ですね…!」

「…どうやって出してるんだ、あれ」

 

 セント嬢ちゃんやラフタリア嬢ちゃんが戦慄の声を上げる前で、でかペンギンはぶくぶくと泡を吹き、その場にどしゃっと倒れ込んだ。

 前に何度も見てきた技だが……マジで怖ぇな、敵じゃなくてよかったと思うぜ。

 

「やるじゃねぇか! オレも負けてらんねぇ!!」

スペシャルチューン! ヒッパレー! ヒッパレー! ヒッパレー!

 

 イスルギの戦いに興奮したのか、龍の嬢ちゃんが剣を取り出し、金色の瓶を一本突き刺す。

 剣の柄頭を何度も引っ張り、答申に光の線を走らせた嬢ちゃんは、ものすげぇ形相で剣を振り回す。

 

ビリオンスラッシュ!

「オラアアアアアアアアアアア!!!」

 

 直後、でかい光の刃が飛び出し、ペンギン達が根こそぎぶった切られていく。

 うーむ、体がでかくなったせいなのだろうか、威力も間合いもすげぇな……前の嬢ちゃんの戦いを知らんからなんとも言えんけど。

 

 そんでもって……すっげぇ揺れてたなぁ。

 あ、すいませんテリスさん、お願いなんで蹴りの構えを取らないで。

 

「そっちこそ、大したもんだ」

「へっ、まだまだこんなもんじゃねぇよ!」

「フィーロもやるー!」

 

 からかうような声をかけるイスルギに、龍の嬢ちゃんは鼻を鳴らし、また雄叫びと共に魔物に向かって走り出す。

 鳥の嬢ちゃんもそれに続き、でかい鳥の姿で暴れ回る。

 

 そうして、俺達のレベル上げは丸一日……夕方になるまで続いたのだった。

 

 

 

 日が暮れ出した頃、俺達は一旦狩りをやめ、集めた魔物や素材の山を前に、顔を見合わせていた。

 今日のレベル上げはもう終わり……あとは素材の山分けをする時間だ。

 

「さて……素材の半分はそっちのだ。量が多いが大丈夫か?」

「問題ねーよ。それじゃ、お先に失礼するぜ」

 

 坊主が聞いてくるが、俺は構わず、半分に分けた素材の山に近づく。

 訝しげに眉をひそめる坊主の前で、俺は自前の大鎌の切っ先を下ろし、素材に近づける。

 

 直後、素材の山がぐにゃりと形を歪め、俺の鎌の中に吸い込まれていった。

 

「!?」

 

 後ろで、坊主達がギョッと息を飲む姿が目に映る。

 あー、いつもの癖が出ちまったな……まぁいいや、そんな珍しいもんでもないだろうし。

 

「お前……今の、どうやったんだ?」

「ん? ああ、これか? 俺の武器はちと特殊でよ、こういうことができるのよ」

「まるで、ナオフミ様の盾やセントさんのボトルのようですね…!」

「マジかよ…すげぇな」

 

 俺は努めてなんとでもないという風に語り、大鎌を坊主達に見せる。

 ほら、こうして対してなんも隠してるようなそぶりを見せなきゃ、そんなに怪しまれる事なんてないんだよ。

 

 ……だからテリスさんにイスルギさんや、そんな冷たい目で俺を見ないで遅れ。

 

「おい、ちょっと待て! そんな武器が四聖武器以外にあるなんて、聞いたことねぇぞ!」

「まぁ……ずっとこの国にいたんなら、知らなくても仕方ないんじゃねぇか? うちの国の特殊な得物ってことでよ」

「そんなものを作れる奴が、オレ以外にいるってのが悔しいんだよ!」

 

 セント嬢ちゃんは科学者として譲れない何かがあるのか、ものすごい剣幕で俺に詰め寄ってくる。

 変なこだわりがあるな……お前さんだって十分とんでもないもん作ってんだろうに。初めて見た時めちゃくちゃびっくりしたぞ。

 

「ラルク、今度それ作った奴紹介してくれよ! もしかしたら新しい発明を思いつくかもしれねぇ!」

「お、おう。できたらそうするよ、できたらな……」

 

 できたら、ってもしもの話をしてるから、嘘はついてないよな?

 正直、こいつを作った奴が誰かなんて皆目検討もつかねぇしなぁ……ていか、だ。

 

 ーーーこいつらには、いずれ俺達の正体もバレるだろうし、其の場凌ぎの誤魔化しにしかならないだろうけどな。

 

「やっぱり坊主は……」

「ん? 何だ?」

「い、いや…何でもねぇ」

 

 思わず思った事を言いかけて、慌てて口を閉ざす。

 っぶねー……危うく妙な事口走って、せっかく仲良くなったこいつらを怪しませるところだった。

 

 ……迂闊な事は言えない。今の俺は、ただのちょっと腕が立つ冒険者なんだからな。

 

「今日も今日とて大量大量!」

「かなりの収穫だったな。やっぱメンツが多くなると、成果がまるで違うな……」

 

 両腕でどっさりと、復路に包んだ大量の素材を抱え、セント嬢ちゃんと龍の嬢ちゃんが戻ってくる。

 おお、確かに大量だ。ナオフミのサポートがあったお陰か、いつもより軽い疲労で倍の収穫を得た気分だな。

 

「礼を言うぞ、ラルク、テリス、イスルギ。今日はかなり助かった」

「お、珍しいな。ナオフミが素直に礼を言ってる……明日は槍でも降るかな?」

「誰がツンデレだ。俺だって最低限の礼儀ぐらいわきまえてるわ!」

 

 坊主が礼を言ってくると、それを見たセント嬢ちゃんがニヤニヤと揶揄い出す。坊主はギロリと鋭い目を向けているが……若干頬が赤く染まってんのに気づいてないな。

 

 ……そういう反応されると、なんつーか、申し訳なさが芽生えてきちまうな。

 

「…また組める日があったら誘う。その時は頼む」

「…ああ、俺もそう願ってるよ」

 

 坊主も相当俺を気に入ってくれたのか、最初の頃よりはるかに柔らかくなった表情で誘ってくる。

 本音を言えば、すぐにその手を掴んで約束をしたいところだが……それは、許されない事だ。笑みを返すぐらいしか、俺には自由がない。

 

「じゃあな、()()()()殿()。いずれそのうちに―――」

「…? あ、ああ…」

 

 イスルギがそう告げる様を、俺は居心地の悪さを感じながら横目で眺める。

 ……本当に残念だよ、坊主ーーーいや、ナオフミ。

 

 お前といつか、世界を懸けて殺し合いをしなくちゃいけないんだからさ。

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