Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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海底のタイムリミット

Side:Ryuga

 

 あれから、イスルギ達とは出会わなくなった。

 あんだけわきあいあいとレベル上げしたんだから、次も絶対誘ってくると思ってたのに……なんかあったのか?

 

 そういえば、別れる時のあいつら微妙に反応がおかしかった気がするし。

 

 うーん……気になる。気になるけど……本人達と会えもしないんじゃ、何考えてんのかわかりゃしねぇ。

 

「ねぇねぇ、ごしゅじんさま! フィーロ、すっごいの見つけちゃったの!」

「何だ? なにかあったのか?」

「うん! うみの底にね、おっきなおうちがあったの!」

 

 …オレがウンウン悩んでると、フィーロのやつがなんか騒がしく駆け込んできた。

 なんだ、最近は海で泳ぐのにハマってるらしいけど、なんか珍しいものでも見つけたのか? おうち……とかなんとか言ってたけど。

 

「おうち……それはもしや古代の遺跡とか神殿とか呼ばれるものではなかろうか」

「海の底にか?」

 

 セントのつぶやきに、ナオフミは胡乱げに、オレとラフタリアは筋トレをしながら不思議そうに聞き返す。

 

 ……ん? どうしたナオフミ。

 なんでそんな微妙な顔でオレとラフタリアを見つめてんだ? 普通に筋トレを……ラフタリアは腕立て伏せで、オレはスクワットやってるだけなんだけど。

 

 まぁそれはともかく、海の底の遺跡か……こいつがすげーすげーていうくらいじゃあんまり期待はできねぇが、まぁ暇つぶしくらいにはなるか。

 

「行ってみようぜ、ナオフミ。こういう時のフィーロちゃんは、意外ととんでもないものを見つけている可能性がある」

「……動物的、いや、魔物的直感か?」

 

 セントがそう言って、ナオフミに促してる。

 そういやフィーロのやつ、意外と鋭い勘とか持ってたりするもんな……あと頭が子供で、妙なところまで遊びに行ってるかもしれないし。

 

「わかった、行ってみよう」

 

 右と左から、それぞれセントとフィーロにねだられて、そのうちナオフミは頷いた。

 

 ……ってか、横からねだられる様が完全にどっかの家の親父みたいだったのは笑えたけどな。

 

 

 

 そんなこんなで、オレ達はフィーロが見つけた海中遺跡を調べるために、浜辺へやってきたわけだが……。

 

「な、何ですかこれぇ〜!?」

 

 頭を抱えたラフタリアが涙目で……って顔見えないけど半泣きな声で叫んでる。

 

 海の中じゃ生身の人間は呼吸ができない。

 そんな不都合を解消するのが、セントの発明―――ではなく、ごく最近、ナオフミがアイテムドロップで作り出せるようになった着ぐるみだ。

 

 ペックルとかいう、昔この島を開拓した魔物だっていう、嘘か本当かわからない伝説の存在。

 その能力を模した着ぐるみ……らしい、詳しくは知らん。

 

「おお、なかなか優秀な装備が手に入ったな。さすが聖武器のアイテムドロップだ―――っておい!!」

「調べさせろ! もっとよく調べさせろぉ!!」

 

 着ぐるみのステータスを確認して、満足げに頷いていたナオフミに、眼をぎらつかせたセントが飛び掛かった。

 お前は……いい加減にしろよな、一々変なタイミングで欲望に呑まれやがって。

 

 …ってわけで、暴走したセントはオレがぶん殴って大人しくさせておいた。ちったぁ反省しやがれ、バカウサギ。

 

「ナオフミ様! こんな恥ずかしい格好イヤです!」

「優秀なんだからいいじゃないか。お前、見た目より機能を重視するだろ」

「ですけどぉ…!」

「俺だって着てるんだ。ちょっとの間だから我慢しろ」

 

 そう言って、すでにペックル着ぐるみを着たナオフミがラフタリアを諭す……まずいな、思わず吹き出してしまいそうだ。

 あの仏頂面があの中に入ってくると思うと、シュールすぎて笑いがこみ上げてきやがるぜ。

 

「お前らは必要……ないか」

「泳ぎは得意だ」

「オレはこれがあるから大丈夫だ……変身!」

【サメ!】【ライト!】

 

 オレもセントもベルトを腰に巻いて、ボトルをセットして鎧をまとい、準備万全な状態になる。

 

 今回のセントの鎧はベストマッチじゃないみたいだな……確かに、暗い海の中じゃ、明かりがあった方が便利だしな。

 ただそれ、攻撃に使ったらオレ達まで感電したりしないだろうな…?

 

 ……まぁ、いいか。

 

「おし、それじゃあ行ってみっか!」

 

 五人全員で列になって、ザブザブと波をかき分けて海に入っていく。

 膝下くらいから、またした、腰、そして胸のあたりまで届く高さになった頃に、思い切って潜り込む。

 

 サンゴやら小魚やら、太陽の光でキラキラと照らされる美しい景色の中を、オレ達は息継ぎなしでスイスイ泳いでいく。

 今のところ、快適な時価が続いてるけど……おっと、さっそく相手がお出ましのようだな。

 

【ボルテックフィニッシュ!】

 

 オレ達の気配につられてやってきた、サメ型の魔物の群れ。

 水中をすげぇ速さで泳いできて、ギザギザの葉をオレ達に突き立てようとしてくるけど……残念、ムダだ。

 

 オレが先に思いっきりぶん殴って戦闘不能にさせてやってるからな……舐めんなよ、魚め。

 

 そうこうしているうちに、オレ達はついに、フィーロが言っていた海中遺跡の元へと辿り着いた。

 そんで外観をざっと見てみんだが……これ、神殿っぽいな。何の神を崇めてたのかはしらないけど、なんらかの祈りを捧げる場っぽい。

 

 んで、扉っぽい部分を見つけて全員で押してみたけど、錆びついてんのかうんともすんともいいやしねぇんだ。

 どうしたものか、と考えていると、ナオフミ達の息がそろそろ持たなくなってきたらしい。

 

 一旦上がるか―――そう考えて、神殿から踵を返そうとした瞬間。

 

 ナオフミの盾から光が迸り、神殿の扉に当たって、あれだけ硬かった扉が最も簡単に開いてしまったのだ。

 

 マジかよ……これって、勇者の武器がその場になきゃ開かないようになっていたのか!? じゃあ、この中には一体何が……。

 

 一瞬悩んだオレ達だったが、ナオフミが先頭を進み、遺跡の中へ入っていく。

 慌ててオレ達も後に続き、奥へ進んでみると……なんと一番奥は空気があって、えらく広い空間が広がっていたのだ。

 

 ますますわけがわからなくなったが、遺跡の正体を突き止めるために、オレ達は先に進んだ。そして―――。

 

「こ、こりゃあ……!?」

 

 空間のど真ん中に鎮座する、巨大な砂時計―――古びた龍刻の砂時計の姿を目の当たりにし、みんな言葉を失った。

 

 そして砂時計は、残り二日というあまりにも短い時間を示し、刻一刻と砂を落とし続けていたのだった。

 

 

 

 ナオフミが他の勇者達を集めに行って、オレ達は放置されていた。

 海底で見つけた砂時計、そこに示された波へのカウントダウンについて、早急に伝えて対処しなければならないからだ。

 

 ラフタリアとフィーロは鍛錬に行ったらしく、セントはどっかで発明してる。そんでオレは、波止場に腰を下ろしてぼんやり空を眺めていた。

 

「ただなぁ、残り二日でどんだけ何ができるかって話なんだよなぁ……」

 

 場所が場所だけに、対処の方法にひどく悩まされるのだ。

 もし海に転送されるなら船が必要だし、陸地に放り出されたら船は役立たずになるし……どう動くべきか本当に悩ましい、との事だ。

 

 兵の手配も必要だから、女王と話さないといけないみたいだしな……やる事が多いのなんの。

 

 ん? あれ、あっちからやってくるのはナオフミ達か?

 なんだ……なんでか知らないけど、思いっきり藻搔いてる剣の勇者を引きずってるし。

 

 そんで喚く剣の勇者を……海に放り投げた。

 

「!? お、おい何をする!? やねろ! 離せ……離せぇえええ!!」

 

 剣の勇者は元気に騒ぎながら、どぼーんと海に沈んでしまう。

 ボコボコと浮き上がる泡を見下ろしてから、なぜか無表情でやってくるナオフミ達に、じとっと呆れた視線を向けた。

 

「……何やってんだお前ら」

「ああ…立てばいいのにな」

 

 ナオフミと一緒に、なんとも言えない顔で海の中に沈んだ剣の勇者を見つめる。

 そこは浅くて……そりゃあもう子供が入っても大丈夫そうなほど浅い場所で、体を起こせば十分呼吸ができるようなところだ。

 

 いや、まぁ、人間って膝上くらいの深さの水で溺れるっていうし、でもなぁ……洪水時ならともかく、めっちゃくちゃ穏やかな海だしなぁ。

 

「そうか……お前カナヅチだったのか」

「俺は……泳げる」

「ひざ下くらいの深さで溺れといて何を言ってんだ」

 

 剣の勇者を引き上げると、ポタポタと水滴を垂らしながら項垂れてしまう。

 なのに強がりなんていうもんだから、こいつの意地の張り具合は褒めたもんだか呆れたもんだかわからなくなる。

 

 そっかぁ、こいつ泳げないんだぁ。

 ……いやいやいや、どうすんだよ次の波。お前だけ沈むぞ。

 

「水中で呼吸ができるようになる魔法も存在いたしますが……時間制限もありますからねぇ」

「どうしたもんか、このままだと本当に錬だけ不参加になるぞ」

 

 島の領主も一緒になって首を傾げてる……うん、困惑するよな。頼みの綱の勇者が困難こんなんだもんな。

 …しょうがない、こいつらには一人でも死なれても困るって話だし、ちょっと手を貸してやるか。

 

「おい、剣の勇者よ。これを」

【ビートクローザー!】

 

 あんまりに哀れなんで、一旦変身してオレの剣を手元に呼び出す。

 んで、セントが余分に作ってたっていう、サメのフルボトルも一緒に剣の勇者に手渡してやった。

 

 あいつ、まさかこうなるのを見越してたんじゃないだろうな。

 

「その剣の鍔んところにこれ、挿してみな。そしたら水泳能力が向上する……らしいぞ」

「……なんだと?」

「! 能力を自身に付与できるのですか!?」

「あのバカウサギの自信作らしくてな。ま、とにかくやってみろやってみろ」

 

 ぶっちゃけ、オレが使ってるフルボトルって一本だけだから、他のを使ってどんな感じになるのか知らねぇけど。

 セントが言ってたし、大丈夫じゃねぇの? ……たぶん。

 

「……ふん、なら試してみるか」

 

 そう言って、剣の勇者は言われた通りにオレの剣をコピーさせて、さらにサメのフルボトルを鍔のとこに突き刺す。

 で、ざぶざぶおっかなびっくりって感じで海に入ってったんだが……途中から走り出したかと思うと、ものすごい勢いで飛び込んでいった。

 

 その後、なんか沖の方でイルカみたいに飛び跳ねる剣の勇者の姿が見えたんだが……何やってんだ、あいつ。

 

「―――ィヤッホォォォウ…!」

 

 遠くから、なんかむちゃくちゃ楽しそうな雄叫びが聞こえてくる……めっちゃくちゃ飛び跳ねてるし、ああ、うん。

 その、あの、そんなに喜んでくれんだったら、渡したかいがあるってもんだな、うん。

 

「……ガチで嬉しいみたいですね」

「相当気にしてたみたいだな」

「ダセェ」

 

 それを、ナオフミと他の勇者達が呆れた目で眺めている。

 そんで、オレと一緒でいたたまれなくなってきたのか、みんなさっと目をそらしちまった……うん、そうだよな、そうなるよな。

 

 しばらくの間たのしそーに泳いでいた剣の勇者は……だいぶたってから戻ってきて、いきなりオレの手をつかんで頭を下げてきた。

 

「……ありがとう」

「お、おう。気に入ったんなら、しばらくそのフルボトル貸すぞ」

 

 ぶっちゃけ、オレ泳げるからいらねぇし……これ言ったらこいつ気にしそうだから言わねぇけど。

 ていうか、こいつってもっと気どった一匹狼みたいな奴だと思ってたけど、大分印象変わってきたな。…そんなに泳げないのいやだったのか?

 

「あいつ、最近やたら素直になってきたな」

「あっちが素なのかもしれませんね」

「ダッセェ」

 

 槍の勇者からはっ、と鼻で笑う声が聞こえてきて、オレはどうしたものかと悩んだ。

 

 あの……おい、剣の勇者殿よ。

 お前、これ、オレはいつまでお前に手ぇ握られたままじゃなきゃいけないの? 波に向けての作戦会議とかあるんじゃないの?

 

 オレが解放されたのは……それから大体一時間くらい経った後の事だった。

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