Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Naofumi
「あの女……それに、コウモリ男……!」
「そうか……お前ら仲間だったのか」
久しぶりに、俺達の前に姿を現した二人組、グラスとナイトローグ。
奴らが空から舞い降りて、ラルク達のそばに立った事で、奴ら全員の関係性を察する。
道理で強いわけだ……さっき勇者共が吹っ飛ばされてった構図なんて、この間とほぼほぼ同じだったぞ。情けない…!
「苦戦していますね、ラルク。イスルギ……あなたならあの方々をすぐに無力化できるという話だったのでは?」
「そういうなよ、嬢ちゃん」
『ハハハ……オレにも情ってものがあんのよ』
ぎろり、と鋭い眼を向けるグラスに、ラルクはやや引きつった顔で、ブラッドスタークはさっきと全く同じ調子でしゃべっている。
あいつ、味方にもあんな腹の立つ喋り方をしてるのか?
って、バカウサギはいつになったら立ち上がるんだよ!? 人数が足りないんだよ!!
「しっかりしろ、セント! 立って戦え!」
「でも…だって……!」
「向こうは完全に俺達を殺す気だぞ!!」
グズグズすすり泣きながら、セントは涙目でブラッドスタークを見やる。
まぁ……言いたい事はわかる。無条件で味方だと思ってたやつが本当は敵だったとか、わりかしありふれてはいるが、実際にあるとだいぶ心にくる展開だ。
俺だって……あいつらが俺の命を狙ってる敵だったとか、考えたくもねぇんだよ。だからってなぁ…!
「姐さん……頼むよ、頼むから……嘘だと言ってくれよ……!」
地面……ってか次元ノ勇魚の死骸の上で膝をつき、項垂れるセント。
俺とリュウガはとっさにセントの前に出て、こちらを見つめてくるグラス達を睨み返す。
「……なるほど、躊躇うのも無理はありませんね」
『だろぉ? ……オレだって心苦しいのよ』
「…どこまでが本音なのかはあえて聞きません。最低限役目を果たしてください」
『はいはい…』
そこまで仲がいいわけではないのか、仲間に向けるにはどこか刺々しい言葉を吐き捨てるグラス。
ブラッドスタークは肩をすくめると、手にした銃になんかこう……メカニカルな装飾がついた短剣を合体させ、ライフルのようにする。
野郎……本気でセントを殺す気か。血も涙もない奴め……って、いい加減動けっつってんだろバカウサギ!!
「セントさん!」
「セントお姉ちゃん!」
「心中お察ししますが、これは波の戦い……敵であるあなた達に情けをかける事は、それこそあなた達への侮蔑に当たります。故に……」
『素直に死んでくれよ、なぁ? ダチ公共…!』
奴はガシャガシャ鎧を鳴らして、獲物をいたぶる肉食獣のような苛立たしい声を向けてくる。
正直、ラルク達だけでも結構苦戦していたんだ……グラスとナイトローグが加わった今、どこまで戦えるか……!
必死に頭を巡らせ、俺は全員が生き残る道筋を探す。
なんとしてでも、ラフタリア達は生かして帰したい……そうじゃなきゃ、俺は絶対に死んでも後悔を残す。
……なんかちょっと、イライラしてきた。
なんでこんな事になってる? 俺はラルク達に気を許したからか? この島に来てしまったからか? レベル上げが甘かったせいか?
いや、違う……!
「いつまでも……メソメソしてんじゃねぇよバカウサギ!!!」
後ろのバカが一向に戦おうとしてないせいだろうが!!!
俺は目を吊り上げて、うつむいたままのセントを怒鳴りつける。ラフタリアやフィーロがビクッと震えてるが、今そんな事を気にしている場合じゃない!!
「いつものお前はどうした!? 能天気にケラケラ笑ってるお前は! 性根が腐った人間を見たら怒りを燃やすお前はどこに行った!?」
「ナオフミ……」
「そうだ! いつまでも腑抜けてんじゃねぇよ、バカ!!」
俺が叫んでいると、リュウガも両腕に青い炎を纏わせて、声をあげてきた。
ナイトローグとブラッドスターク、かつて苦渋をなめさせられた奴らが二人とも揃っている光景に、やる気を漲らせている。
「いつものお前なら、相手が誰だろうと向かっていくだろ! 悪を許せないお前なら、オレ達と一緒に戦ってきたお前なら、あの野郎を何が何でもぶっ飛ばしにいくだろうが!!」
「お前の大事な人を止められんのは! 間違いを犯そうとしてる奴を止められるのは……!」
俺は知っている。闇の道を歩く事がどんなに孤独で苦しいか。
過ちを犯して、もう二度と戻れないかもしれないと思った時の絶望が、どんなに胸を締め付けるか!
大切な人を傷つけてしまった後悔が、どんなに自分の心を傷つけるか!!
お前だって……俺を見て、知ってるはずだろうが!!
「「実験バカの正義のヒーロー、セントだけだろうが!!!」」
俺とリュウガの声が、辺りに響き渡る。
ラフタリアが悲痛な顔で口元を覆い、フィーロも目を潤ませている。俺からは見えなかったが、メルティもくっと唇を噛み締めていたのだとか。
ラルク達も思わず動きを止める仲、俺達の背後からため息の声が聞こえてきた。
「……最悪だ。見っともねぇ醜態さらした挙句、こんな鈍感野朗と筋肉バカに教えられるなんて」
……筋肉バカはわかるが、鈍感ってどういうことだ。
詳しく問いただしたいところだが……今はそんな場合じゃないから黙っておく。
あとで覚えてろよ、セント…!
「そうだ……あんたはオレの恩人だ。あんたがどう言う目的でオレを拾ったって、その事実は変わらない。だったら今度は……オレがあんたを
俯いたまま、ゆっくりと立ち上がる。
ベルトからフルボトルを抜き取って、ウサギと戦車を模した鎧を消し、脱ぎ捨てる。
そして……ギン、と鋭く覚悟を秘めた目で、ブラッドスタークを……いや、イスルギを見据える。
「オレが掲げた愛と平和を貫くために……オレはあんたを、倒さなきゃならないんだ!!」
『…ほう? だったらどうするんだぁ?』
小馬鹿にするように嗤うブラッドスタークに、セントは銀色の缶をーーーラビットタンクスパークリングを取り出す。
『! そりゃあ…』
【ラビットタンクスパークリング!】
そう、これは俺と出会ってからこいつが生み出したもの。
やつが知らない間に生み出した……ブラッドスタークが全く知らない、セントが執念で作り上げた新しい力だ。
仮面の下で目を見開いているであろう奴の前で、セントはそれをベルトにセットしてハンドルを回す、そして。
【Are you ready?】
「変身……!!」
【シュワっとハジける! ラビットタンクスパークリング! イェイイェイ!
工場のようなギミックの中で、刺々しい、赤と青と白に彩られた鎧を纏う。
現時点での最強装備であるそれが、やかましい声を響かせて、生み出された眩しく輝く装甲を見せつける。
炭酸泡のような光を撒き散らして、セントは再びブラッドスタークを見据えた。
「覚悟しろ……その顔ぶん殴ってでも、あんたの目を覚まさせてやる!!」
『……フッ、フッハハハハハ!!』
勇ましく吠えるセントに、ブラッドスタークが不気味に笑いながら迫る。
銃弾を放ちながらどんどん近づいていくが、セントはそれらを難なく躱し、握り潰し、突撃してきた奴を受け止める。
その衝撃で、辺りにものすごい暴風が吹き荒れたのだった。
「いくぞ、お前ら!!」
「おうよ……かかってこい!!」
「っ……行きます!」
「うおー!」
「…どうやら以前とは異なる様子、相手にとって不足はないようですね!」
俺達も負けていられないと、目の前に立ちはだかる相手に向かって走り出す。
ラルク……お前も俺にとっては気のおけない相手になったが、俺に敵意を向けるののなら、俺は手加減なんかしないぞ!
【エレキスチーム!】
俺もすぐ横では、短剣に雷撃を纏わせたナイトローグがいて、リュウガに振り下ろしている姿がある。
だが、リュウガはばちばちと帯電するそれを平然と受け止め、逆にないとローグの顔面を思い切り殴り飛ばして見せた。うっわ、すげぇ吹っ飛んだぞ。
『お前…! いつの間にここまでの力を!?』
「お前らから逃げた後になぁ!!」
ナイトローグは何度もリュウガに攻撃を加えるが、それで後ずさる様子は一切見受けられない。
方に、胸に、腹に強烈な一撃を受けても、リュウガは敵を睨みつけたまま、強烈な拳をお返ししていく。
なんとなく、自衛隊に攻撃食らうゴ◯ラのことを思い出させる姿だった。
「おらおらおらおらおらおらおらぁ!!!」
『くっ……ぐあああ!?』
リュウガはそのままものすごい連打を浴びせかけ、そのままナイトローグを天高くへ吹き飛ばしてしまう。
ガンッ! と思わずビビる音が響いたが、仮面とかが割れてるようには見えない。どんだけ頑丈な鎧なんだよ。
その横を見れば、セントとブラッドスタークがものすごい殴り合いを繰り広げているのが見えた。
だが、両方とも当たってない。寸前で躱すか受け流している。
『フハハハ…! いいだろう、こちらも全力で相手をしてやる……ぬぅああああああああああああ!!!』
ブラッドスタークは一度セントの元から離れると、何か力を溜め込むような雄叫びをあげる。
すると、奴の胸の蛇の衣装が輝き出し、巨大な二匹の毒蛇が這い出してくる。
奴らはそのまま、共学に目を見開くセントにぐるぐると巻きついていく。
「ふん! おおおおおおお!!」
巨大毒蛇に捕らわれたセントだったが、気合いの声とともに力を込めると、毒蛇達はすぐさま引き剥がされた。
セントはそいつらを掴むと、ブンブン振り回してあちこちに叩きつけ始めた。
『ヒュー、想像以上に力を上げてやがるな……!』
「たー!」
「はぁあああああ!!」
ボッコボコにされていく巨大毒蛇の姿に、ブラッドスタークはふざけるような言葉を吐きながら後ずさる。
そこに、ラフタリアとフィーロの声も響いてくる。
二人はそれぞれテリスとラルクを相手にし、雨嵐とばかりに放たれる魔法をよけ、斬りかかっている。
俺もグラスの攻撃を全て受け止め、弾き返して反撃の隙を狙う。
重いが……我慢できないものじゃない! 俺たちが前と同じままだと思ったら大間違いだ! 後悔するんだな!!
「ちっ……こりゃ思ってた以上にヤベェな」
「以前はここまでの強さではありませんでした……彼らの成長度合いを見誤った私の落ち度です」
「グラスの嬢ちゃんのせいじゃねぇよ」
膝をつき、一旦後退するラルク達。
体にも結構な傷が刻まれ、少しずつ息が上がり始めている……まぁ、こっちもそれなりに疲労が見え始めているがな。
だが逃しはしないぞ……この前の借り、まとめて全部返してくれるわ!!
そんな俺の考えに合わせるように、距離をとったセントがぐるぐるとハンドルを回していく。
そして……なぜかその両側に、フィーロとメルティが待機していた。な、なんで?
「合わせろ、お前ら!!」
「はい!」
「うん!」
セントに言われ、二人は小さく魔法の詠唱を始める。
ハンドルが回り、ベルトにはまったボトルからエネルギーが抽出され……セントの全身に行き渡っていく。
同じくリュウガも、でかくなった胸を揺らしながらハンドルを回しまくる!
【ドラゴニックフィニッシュ!】
「おらあああ!!!」
自分の周りに青い龍を召喚し、勢いよく飛び出し跳躍する。
空中へと躍り出たリュウガの背に青い龍が炎を吐き出し、蹴りの構えをとったリュウガに爆発的な加速と威力の割増を与える。
そして、全身を光らせたセントも高く跳び、蹴りの構えをとって叫ぶ。
「あんた達が何かを背負ってるんなら……オレ達はオレ達の愛と平和のためにあんた達を潰す!!!」
「「暴風雨で薙ぎ払え! タイフーン!!」」
宙へ舞ったセントの背中に、フィーロとメルティが生み出した竜巻がぶつかる。
セントの蹴りはその風を受け、さらに威力を増しながら、大量の赤と青と白の気泡を撒き散らす。
【Ready GO!】
「いくぜぇぇぇぇぇ!!」
【スパークリングフィニッシュ!!】
雄叫びとともに空中を貫いたリュウガとセントの蹴りが。
それぞれナイトローグとブラッドスタークの胸に直撃し、奴らをまとめて吹き飛ばしてみせたのだった。