Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

78 / 97
捨てられた少女

Side:Filo

 

 フィーロだよ!

 今ね、フィーロすっごい気分がいいの!

 

 だって、ごしゅじんさまが帰ってきたらほめてくれそうなことしたから!

 

「ふぇえええ…! 離してくださいぃ…!」

 

 フィーロの足元で、みどりのかみの毛のお姉ちゃんが泣いてる。

 フィーロをおしのけて海に行こうとしてるから、フィーロがんばって止めてるの! だってまたおぼれそうなんだもん。

 

「フィーロ、お前何してんだ…?」

「あ、リュウガお姉ちゃん! あのね、このお姉ちゃんが海で遊んでたのに溺れてたからね、フィーロが助けたの! えっへん!」

 

 セントお姉ちゃんとリュウガお姉ちゃん、それとラフタリアお姉ちゃんが帰ってきたから、みどりの髪のお姉ちゃんをはなしてせつめいしたよ。

 また海に行くのかなって思ったけど、お姉ちゃんはどさってすわりこんじゃった。もう溺れるのはこりごりになったのかな?

 

「遊んでたぁ? 海で……って、お前それは」

「……まぁ、とりあえずファインプレーだな」

 

 セントお姉ちゃんもリュウガお姉ちゃんも、何だか呆れた顔になってたけど、フィーロの頭をなでてくれたよ。

 んー、ごしゅじんさまになでられた方が気持ちいいー。

 

 ……あれ? ラフタリアお姉ちゃん、どうしてそんなこわい顔してるの?

 

「お前さん、なんだってこんな事をーーー」

「ここにいたか、お前達……リーシアも、未遂で済んだようだな」

 

 リュウガお姉ちゃんがみどりの髪のお姉ちゃんに聞こうとしたら、ごしゅじんさまが帰ってきた!

 

 フィーロ、がんばったよ!

 って言おうと思ったらごしゅじんさま、なんにもきいてないのにフィーロの頭をなでてくれたの。

 

 いいことするってきもちいいね!

 

「ナオフミ、未遂ってどういう事だ?」

「……詳しく話すとだな」

 

 ごしゅじんさま、何だかすごくイライラしてる顔でセントお姉ちゃんにおしえてる。

 

 えーっと…このお姉ちゃんはリーシアってお名前でー、弓の人と一緒のパーティーにいてー。

 このあいだの波でがんばって、ごしゅじんさまが危なかったところも助けてくれたけど、それがいやだった弓の人に追い出されちゃったんだって。

 

 ええ〜……弓の人、バカなのかなー。

 

「あの援護はこいつのおかげだったのか……そんで、その功績を妬まれて追い出された、と」

「セントさん…! もう少し言い方に気を配ってください」

「気ぃ使ってどうなるんだよ、こいつもう自殺までしかけてんだぞ?」

 

 セントお姉ちゃんの言葉とリュウガお姉ちゃんの言葉で、リーシアお姉ちゃんもっとおちこんじゃった。

 どうしておちこむの? そんなイヤなこと言う弓の人なんかといっしょにいたって、何にもおもしろくなさそうなのに、へんなのー。

 

「……で、どうする気だ? こいつほっといたらまた……」

「わかっている…正直、樹の言い分には俺もムカついてるんだ…!」

 

 セントお姉ちゃんに聞かれて、ごしゅじんさまはまだイライラしたままリーシアお姉ちゃんの前にしゃがんだ。

 

「リーシア…! お前、このままでいいのか? あいつらにバカにされたままで、見下されたままで、泣き寝入りして自殺して、そんなものが結末でいいのか!?」

「ふぇ…!?」

「正直今のお前は見ていてイライラする…! 抗うこともしないで、逃げようとしてるお前は!」

 

 ごしゅじんさま、何に怒ってるんだろう……弓の人とかがキライなのは知ってるけど、リーシアお姉ちゃんにも怒ってる気がする。

 

 ラフタリアお姉ちゃん達が止めようとしてるけど、ごしゅじんさまは全然怒るのをやめなかった。

 どなられてるリーシアお姉ちゃんはずっと下を見てたけど……だんだん顔を上げて、ぐちゃぐちゃになった目でごしゅじんさまを見つめだした。

 

「それが嫌なら……俺の手を取れ! 俺がお前を強くしてやる! あいつらの鼻を明かせるぐらい、引きずりあげてやる!!」

「……私の気持ちは、樹様だけのものです」

「ああ、それでいい! あんな奴でもそこまで惚れてるんなら、見返せるぐらい這い上がってみせろ!」

 

 ごしゅじんさまは手を出して、リーシアお姉ちゃんを待ってる。

 ラフタリアお姉ちゃん達もしずかになって、ごしゅじんさまとリーシアお姉ちゃんをじっと見つめてる。

 

 そしたら、リーシアお姉ちゃんはちょっとずつ手を伸ばして、ごしゅじんさまの手をつかんだ。

 

「よろしく……お願いします…!」

 

 なんだかよくわかんないけど……リーシアお姉ちゃんがフィーロ達の仲間になったってことでいいんだよね?

 わーい! 友だちがふえたー!

 

 

 

Side:Raphtalia

 

「く……苦しい」

「帰りもこれだって事すっかり忘れてた…!」

「い、医者……」

 

 カルミラ島の活性化が収まってしばらく、私達は船に乗り、メルロマロクへと帰還しました。

 城に帰還し、女王様に感謝の言葉を述べてから、ナオフミ様と共に馬車に乗り、ナオフミ様が目指すどこかへ向かいます。

 

 ナオフミ様……一体どこへ向かわれているのでしょう?

 そちらも気になりますが……今は特に、新たに仲間となったリーシアさんの事があります。

 

「あの、ナオフミ様。リーシアさんを鍛えるとおっしゃいましたけど、具体的にはどうするおつもりなんですか?」

「まずはこいつの実力を調べてからだ。メニューを決めるにしても、改造……もとい、強化方法を考えるにしても、能力をきちんと調べておかないとな」

「……今改造って言った? もしかしてオレがやんなきゃいけないの?」

 

 なんでしょう、ナオフミ様が言うと恐ろしい響きに聞こえますね……セントさんも少し引いています。

 実力をあげて、弓の勇者様を見返してやると言うお考えは納得しましたが……そう簡単にできるとは思えません。普通じゃないのは確かですよね。

 

「ねぇごしゅじんさま、メルちゃんにはいつまた会えるかな?」

「大丈夫だ、近いうちに会えるぞ」

「ほんとー!?」

 

 フィーロはマイペースですね、まぁ、仲がいいのはいい事ですけど。

 

 それにしても、どういう意味でしょうか?

 旅が終わって、今回の波の時のような場合でない限り、メルティさんとはそうそう会えなくなってしまったはずですが。

 

「あの……すぐに会えるとは一体どういう意味で」

「見てのお楽しみ、ってところだな」

 

 そう言って、ナオフミ様は私にウィンクをされました。

 むぅ……ずるいです。そんな風に、カッコよく言われてしまったら許す以外にないじゃないですか。

 

 …あの、どうしてリーシアさんは、そんなに怯えた目でナオフミ様を見ているのですか?

 

「…! この方角って確か…?」

 

 馬車が進んでしばらくして、私はだんだんと、辺りの景色に見覚えがし始めた事に気付きました。

 はっと息を飲む私の後ろから、リーシアさんがきょとんとした顔を覗かせます。

 

「えっと……あの廃墟は、もしかして」

「…はい。私が生まれた故郷で、最初の波の被害を受けた場所でーーーえ?」

 

 徐々に見え始める、領主様の家があった場所。

 屋根も壁も崩れ落ちた残骸が残っているだけの、私の心にズキンとした痛みをもたらす景色……が、見えるはずでした。

 

 ですが、廃墟が残っていたはずの場所には、真新しい建物が建っていて……!?

 

「ーーーあ! もう…やっと来たのね、ナオフミ!」

 

 私達がそこへーーーかつての私の故郷、ルロロナ村の跡地があった場所に着くと、なぜかメルティさんが出迎えました。

 その隣には、工具を持った兵士さんがいて、壊れた家を撤去し、新しく作る作業を行なっています。

 

 それだけではありません。

 辺りを見ればちらほらと、見覚えのある方々がいて、色々な作業を行なっている姿が目に映ります。

 

「よぉ、盾の兄ちゃん! 無事で何よりだぜ!」

 

 武器屋の親父さんに、薬屋のおじさんに、服飾屋のお姉さん……私達のこれまでの旅で出会った方が、大勢集まっています。

 

「兄ちゃん! ラフタリアちゃん! おかえり! 見てくれよアレ、すごいだろ!!」

「キール君……すごいって、何が」

 

 キール君も、前に助けてくださった領主の方もいらっしゃいます。

 駆け寄ってくるキール君を抱きとめて、一体ここで何が起こっているのかと、呆然と立ち尽くしてしまいます。

 

 ふと、視線をあげた私の目に、あるものがはためく様が映りました。

 

「旗が…! 村の旗が……!?」

 

 最初の波で倒れ、その後暴徒と化したこの国の兵士達によって奪われたセーアエット領の旗が、そこにありました。

 これでは昔に……波が起こる前に時間が戻ったみたいじゃないですか。

 

「これまでの波での功績で、領地を貰えることになった。まだ正式じゃないが……こうして、前々から知り合いに呼びかけて人を集めていた。セントやリュウガの伝手も借りてだけどな」

「結構大変だったんだぜ〜?」

「ま、こんだけ集まりゃ色々できんだろ」

 

 ナオフミ様の説明に、セントさんとリュウガちゃんが続けて語ります。

 

 そういえば、以前に親父さんのところで何か意味深に話していたような……あれは、この事だったのでしょうか。

 あの時からずっと……この地を復興させるために、皆さんで。

 

「ルロロナ村は復活する……お前の帰る場所を、完全ではないが、元に戻してやれるんだ」

 

 そう微笑みかけるナオフミ様の言葉で、私はつい、目を涙で潤ませてしまいます……私に秘密で、こんな。

 

 ……でも、それは喜びではなくて、胸を刺すような悲しみのためでした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。