Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Filo
フィーロだよ!
今ね、フィーロすっごい気分がいいの!
だって、ごしゅじんさまが帰ってきたらほめてくれそうなことしたから!
「ふぇえええ…! 離してくださいぃ…!」
フィーロの足元で、みどりのかみの毛のお姉ちゃんが泣いてる。
フィーロをおしのけて海に行こうとしてるから、フィーロがんばって止めてるの! だってまたおぼれそうなんだもん。
「フィーロ、お前何してんだ…?」
「あ、リュウガお姉ちゃん! あのね、このお姉ちゃんが海で遊んでたのに溺れてたからね、フィーロが助けたの! えっへん!」
セントお姉ちゃんとリュウガお姉ちゃん、それとラフタリアお姉ちゃんが帰ってきたから、みどりの髪のお姉ちゃんをはなしてせつめいしたよ。
また海に行くのかなって思ったけど、お姉ちゃんはどさってすわりこんじゃった。もう溺れるのはこりごりになったのかな?
「遊んでたぁ? 海で……って、お前それは」
「……まぁ、とりあえずファインプレーだな」
セントお姉ちゃんもリュウガお姉ちゃんも、何だか呆れた顔になってたけど、フィーロの頭をなでてくれたよ。
んー、ごしゅじんさまになでられた方が気持ちいいー。
……あれ? ラフタリアお姉ちゃん、どうしてそんなこわい顔してるの?
「お前さん、なんだってこんな事をーーー」
「ここにいたか、お前達……リーシアも、未遂で済んだようだな」
リュウガお姉ちゃんがみどりの髪のお姉ちゃんに聞こうとしたら、ごしゅじんさまが帰ってきた!
フィーロ、がんばったよ!
って言おうと思ったらごしゅじんさま、なんにもきいてないのにフィーロの頭をなでてくれたの。
いいことするってきもちいいね!
「ナオフミ、未遂ってどういう事だ?」
「……詳しく話すとだな」
ごしゅじんさま、何だかすごくイライラしてる顔でセントお姉ちゃんにおしえてる。
えーっと…このお姉ちゃんはリーシアってお名前でー、弓の人と一緒のパーティーにいてー。
このあいだの波でがんばって、ごしゅじんさまが危なかったところも助けてくれたけど、それがいやだった弓の人に追い出されちゃったんだって。
ええ〜……弓の人、バカなのかなー。
「あの援護はこいつのおかげだったのか……そんで、その功績を妬まれて追い出された、と」
「セントさん…! もう少し言い方に気を配ってください」
「気ぃ使ってどうなるんだよ、こいつもう自殺までしかけてんだぞ?」
セントお姉ちゃんの言葉とリュウガお姉ちゃんの言葉で、リーシアお姉ちゃんもっとおちこんじゃった。
どうしておちこむの? そんなイヤなこと言う弓の人なんかといっしょにいたって、何にもおもしろくなさそうなのに、へんなのー。
「……で、どうする気だ? こいつほっといたらまた……」
「わかっている…正直、樹の言い分には俺もムカついてるんだ…!」
セントお姉ちゃんに聞かれて、ごしゅじんさまはまだイライラしたままリーシアお姉ちゃんの前にしゃがんだ。
「リーシア…! お前、このままでいいのか? あいつらにバカにされたままで、見下されたままで、泣き寝入りして自殺して、そんなものが結末でいいのか!?」
「ふぇ…!?」
「正直今のお前は見ていてイライラする…! 抗うこともしないで、逃げようとしてるお前は!」
ごしゅじんさま、何に怒ってるんだろう……弓の人とかがキライなのは知ってるけど、リーシアお姉ちゃんにも怒ってる気がする。
ラフタリアお姉ちゃん達が止めようとしてるけど、ごしゅじんさまは全然怒るのをやめなかった。
どなられてるリーシアお姉ちゃんはずっと下を見てたけど……だんだん顔を上げて、ぐちゃぐちゃになった目でごしゅじんさまを見つめだした。
「それが嫌なら……俺の手を取れ! 俺がお前を強くしてやる! あいつらの鼻を明かせるぐらい、引きずりあげてやる!!」
「……私の気持ちは、樹様だけのものです」
「ああ、それでいい! あんな奴でもそこまで惚れてるんなら、見返せるぐらい這い上がってみせろ!」
ごしゅじんさまは手を出して、リーシアお姉ちゃんを待ってる。
ラフタリアお姉ちゃん達もしずかになって、ごしゅじんさまとリーシアお姉ちゃんをじっと見つめてる。
そしたら、リーシアお姉ちゃんはちょっとずつ手を伸ばして、ごしゅじんさまの手をつかんだ。
「よろしく……お願いします…!」
なんだかよくわかんないけど……リーシアお姉ちゃんがフィーロ達の仲間になったってことでいいんだよね?
わーい! 友だちがふえたー!
Side:Raphtalia
「く……苦しい」
「帰りもこれだって事すっかり忘れてた…!」
「い、医者……」
カルミラ島の活性化が収まってしばらく、私達は船に乗り、メルロマロクへと帰還しました。
城に帰還し、女王様に感謝の言葉を述べてから、ナオフミ様と共に馬車に乗り、ナオフミ様が目指すどこかへ向かいます。
ナオフミ様……一体どこへ向かわれているのでしょう?
そちらも気になりますが……今は特に、新たに仲間となったリーシアさんの事があります。
「あの、ナオフミ様。リーシアさんを鍛えるとおっしゃいましたけど、具体的にはどうするおつもりなんですか?」
「まずはこいつの実力を調べてからだ。メニューを決めるにしても、改造……もとい、強化方法を考えるにしても、能力をきちんと調べておかないとな」
「……今改造って言った? もしかしてオレがやんなきゃいけないの?」
なんでしょう、ナオフミ様が言うと恐ろしい響きに聞こえますね……セントさんも少し引いています。
実力をあげて、弓の勇者様を見返してやると言うお考えは納得しましたが……そう簡単にできるとは思えません。普通じゃないのは確かですよね。
「ねぇごしゅじんさま、メルちゃんにはいつまた会えるかな?」
「大丈夫だ、近いうちに会えるぞ」
「ほんとー!?」
フィーロはマイペースですね、まぁ、仲がいいのはいい事ですけど。
それにしても、どういう意味でしょうか?
旅が終わって、今回の波の時のような場合でない限り、メルティさんとはそうそう会えなくなってしまったはずですが。
「あの……すぐに会えるとは一体どういう意味で」
「見てのお楽しみ、ってところだな」
そう言って、ナオフミ様は私にウィンクをされました。
むぅ……ずるいです。そんな風に、カッコよく言われてしまったら許す以外にないじゃないですか。
…あの、どうしてリーシアさんは、そんなに怯えた目でナオフミ様を見ているのですか?
「…! この方角って確か…?」
馬車が進んでしばらくして、私はだんだんと、辺りの景色に見覚えがし始めた事に気付きました。
はっと息を飲む私の後ろから、リーシアさんがきょとんとした顔を覗かせます。
「えっと……あの廃墟は、もしかして」
「…はい。私が生まれた故郷で、最初の波の被害を受けた場所でーーーえ?」
徐々に見え始める、領主様の家があった場所。
屋根も壁も崩れ落ちた残骸が残っているだけの、私の心にズキンとした痛みをもたらす景色……が、見えるはずでした。
ですが、廃墟が残っていたはずの場所には、真新しい建物が建っていて……!?
「ーーーあ! もう…やっと来たのね、ナオフミ!」
私達がそこへーーーかつての私の故郷、ルロロナ村の跡地があった場所に着くと、なぜかメルティさんが出迎えました。
その隣には、工具を持った兵士さんがいて、壊れた家を撤去し、新しく作る作業を行なっています。
それだけではありません。
辺りを見ればちらほらと、見覚えのある方々がいて、色々な作業を行なっている姿が目に映ります。
「よぉ、盾の兄ちゃん! 無事で何よりだぜ!」
武器屋の親父さんに、薬屋のおじさんに、服飾屋のお姉さん……私達のこれまでの旅で出会った方が、大勢集まっています。
「兄ちゃん! ラフタリアちゃん! おかえり! 見てくれよアレ、すごいだろ!!」
「キール君……すごいって、何が」
キール君も、前に助けてくださった領主の方もいらっしゃいます。
駆け寄ってくるキール君を抱きとめて、一体ここで何が起こっているのかと、呆然と立ち尽くしてしまいます。
ふと、視線をあげた私の目に、あるものがはためく様が映りました。
「旗が…! 村の旗が……!?」
最初の波で倒れ、その後暴徒と化したこの国の兵士達によって奪われたセーアエット領の旗が、そこにありました。
これでは昔に……波が起こる前に時間が戻ったみたいじゃないですか。
「これまでの波での功績で、領地を貰えることになった。まだ正式じゃないが……こうして、前々から知り合いに呼びかけて人を集めていた。セントやリュウガの伝手も借りてだけどな」
「結構大変だったんだぜ〜?」
「ま、こんだけ集まりゃ色々できんだろ」
ナオフミ様の説明に、セントさんとリュウガちゃんが続けて語ります。
そういえば、以前に親父さんのところで何か意味深に話していたような……あれは、この事だったのでしょうか。
あの時からずっと……この地を復興させるために、皆さんで。
「ルロロナ村は復活する……お前の帰る場所を、完全ではないが、元に戻してやれるんだ」
そう微笑みかけるナオフミ様の言葉で、私はつい、目を涙で潤ませてしまいます……私に秘密で、こんな。
……でも、それは喜びではなくて、胸を刺すような悲しみのためでした。