Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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お前と共に

Side:Sento

 

 オレ達の頭上……前の領主の館の廃墟の上で、ナオフミとラフタリアちゃんが復興途中の村を見下ろしながら話してる。

 ラフタリアちゃん、驚いたろうな……フィーロちゃん以外全員知ってたし。

 

 あ、新しく面子に入ったリーシアちゃんも知らないか。

 

「ナオフミ様……これって」

「女王に掛け合ってな……いつか、お前の故郷のみんなも探し出して、ここに連れてくるつもりだ」

 

 まぁ、今まで出会ってきた連中に片っ端から声かけて、手を貸してくれた奴が集まってようやくここまで来たけどな。

 まだまだ物資も金も人も足りないんだよな……。

 

 人より働けるリュウガとフィーロちゃんもいるけど、あいつら若干燃費悪いから、その分食費掛かるんだよな。

 早いとこ、ラフタリアちゃんの同郷のを探し出して、手伝って貰いたいもんだ。

 

「俺にできる、お前への恩返しだと思ってくれ。お前は俺に救われたと言ってくれたが……逆だ。俺がお前に救われたんだ」

 

 おや、おやおやおや?

 なんだか上でいつの間にかいい雰囲気になりかけてない?

 

 ちょっと気になったから聞き耳を立てていると……リュウガにムチャクチャじとっとした目で見られた。

 いいじゃんか、そろそろあいつらの関係にも進展があっていいと思―――。

 

「……いつか、俺がいなくなっても、ここにはお前の仲間がいる。大丈夫だ、もう二度と離れ離れになんか―――」

「イヤです!!」

 

 うおっ、びっくりした!

 聞き耳立ててたせいで、余計にラフタリアちゃんの悲鳴じみた声が聞こえちまった。どうしたんだ、いきなり。

 

「ラフタリア……?」

「イヤです、いなくなってもなんて……そんな未来想像したくありません! そんな事……私の求める幸せじゃありません!!」

 

 あー、なるほど、ナオフミの考えがちょっと先走っちまった感じか。

 ナオフミは前々から帰りたいって言ってたし……ラフタリアちゃんの事を考えてのこの復興作業なんだけどな。

 

 ……ラフタリアちゃんの気持ちもわかるから、どっちが悪いとか正しいとか、一様には言えねぇよな。

 

「だ、だが……ここにはフィーロもメルティも……」

「ナオフミ様がいないじゃないですか!! 私は…! 私はずっと……ナオフミ様の元に、あなたのそばにずっといたいのです!!」

 

 おおっとここでラフタリアちゃんの渾身の告白!

 さすがの鈍感野郎ことナオフミでもこれは気づくか……あ、だめだ、困惑してるだけで気付いてないっぽい。

 

 ……おい、リュウガ。

 お前も聞き耳立ててんじゃねぇか、同じ穴のムジナめ。

 

 んー、どうしたもんか。

 ナオフミの奴、困った顔のままうんともすんとも言わなくなっちまってるし……よし、ここはラフタリアちゃんに味方しておくか。

 

「ナオフミや、もうちょっと真剣にラフタリアちゃんの話を聞いておやんなさい」

「……だが、俺は」

「そんだけお前が大好きなのよ。ここにいるもよし、帰りたきゃ連れていくもよし、選択肢なんざいくらでもあるだろうに」

 

 本人の悦ぶ事をしたいって気持ちは尊重するけど、本人の気持ちを無視するのはもっといけない事だ。

 ここまでやっちゃってるから途中でやめるつもりはないけど、ちゃんとラフタリアちゃんの望みを聞いておくべきだな、なんせ惚れさせた女だもの。

 

「そんな事、できるんなら……」

「それが、死に逝く人間の未来を変えた男のケジメってやつだ。……縁ってのは、千切っちゃいけないもんなんだよ」

 

 オレはその縁を、記憶と一緒に失くしちまったからな……。

 今でこそ、こうやってたくさん仲間ができてるけど……記憶を失う前のオレにも、誰か大切な人がいたかもしれない。

 

 そう考えると……苦しさと申し訳なさが湧いてくる。

 

「……しけたツラしてんじゃねぇぞ、セント」

「……なんだよ、慰めてくれてるのか?」

「うるせぇ、黙れバカウサギ」

 

 オレが遠い目で空を眺めてると、隣に来たリュウガがぶっきらぼうにそう言ってくる。

 けっ、こいつにこんなふうに心配されるようじゃ、オレもまだまだだね。

 

 ……そら、ナオフミよ。ひとまずでいいから、答えを返してやんなさいな。

 

「……最初は最悪な事だらけで、なんでこんな世界を救わなければならないんだ、ってばかり考えていたのに。いつのまにか、そばにいろんな奴が集まって、関わってきて……ほんと、どうしてこうなったんだろうな」

 

 うん、確かにどうしてこうなったんだろうな。

 オレも噂を聞いた後だったから、マジで関わるつもりなかったのに、なんかほっとけなくなっちゃったんだよな。

 

 そんで、リュウガと出会ってフィーロちゃんが生まれて、王女さんと遭遇して……他にも色々であって、そんで今、ここで手伝ってくれてる。

 

 ほんとに不思議なもんだ、縁ってのは。

 

「どうせ、波をどうにかするまで帰れやしないんだ。いつまでかかるかわからない……一年か十年か、それ以上か」

「帰る気なんてまだまだ起きねぇだろ?」

「ああ……ずいぶんな重荷をたくさん抱えてしまった。今はまだ、帰れない」

 

 義務感とかそんなんじゃなく、まだ帰りたくないって雰囲気を、今のナオフミから感じる。

 大事な思い出ができたなら、その分帰りたくない気持ちは大きくなる……それが多ければ多いほど、な。

 

「ここから先はもっと過酷な旅にある……それでもついてくるか?」

「あなたのそば以外に、私の居場所なんてありません」

「…しっかり、ついてこい」

「…はい!」

 

 例によって、ラフタリアちゃんの気持ちに気付いてないっぽいけど……まぁ、これからだよな? いつかは振り向かせられるよな?

 このままこの焦れ焦れした感じが続くとかはないよな? 決着つけてくれるよな? 信じてるぞ、ナオフミ。

 

 ……こいつらが少しずつ心を寄せていくのを眺めるのも一興か、せいぜい楽しみにさせて貰おうかね。

 

 ……あ、やべ。王女さんと話してたフィーロちゃんが戻って来ちまった。

 っていうか、なんでか知らないけど、キール君も他の子も興味津々にナオフミの方見てるし。

 

「ごしゅじ……むがっ」

「今はちょっと静かにしてろ……! あいつら何か知らねぇ間にいい雰囲気になってんだから…」

「むむー!」

「ふぇえええ…!」

 

 大声を出して駆け寄ってきたフィーロちゃんを、リュウガががばっと抱き留めて口を塞ぐ。

 お前……たまにはちゃんと空気が読めるんだな。リーシアちゃんもすぐに状況を察して声を抑えてるし。

 

 ただ、ちょっとばかり反応するのが遅かったみたいだけど。

 下で騒いでるリュウガとフィーロちゃんに気付いて、ナオフミがちょっと頬を赤くして睨んできてるし。

 

「おい、やめろ! そんな目で見るんじゃない!!」

「わー! 兄ちゃんが怒ったー!!」

「逃げろー!」

 

 ナオフミが怒鳴りつけて、リュウガ達やキール君達が笑いながら逃げ出していく。

 明るくなったもんだ……その事にホッとしながら、オレはにやりと笑みを浮かべてみせる。

 

「ったく、うるせぇ奴らだ……やーいナオフミのムッツリ〜!!」

「セントてめぇえええええ!!!」

 

 とうとう怒りが限界に達したナオフミが、廃墟の上から飛び降りてオレ達を追いかけてきた。

 はっはっは、捕まえられるもんなら捕まえてみろ……って!

 

 ナオフミよりも先に、ラフタリアちゃんがものすごい速さで追っかけてきた!?

 

「ふふふ……逃がしませんよ、皆さん…!」

「うわああああ!?」

「ぎゃー! 待って待って待ってラフタリアちゃん! オレ達が悪かった! すまん、だからガチギレしながら追っかけてくるのはやめてくれェェェ!!」

 

 おっそろしい笑顔を浮かべたラフタリアちゃんに追い回され、オレ達は皆くたくたになって倒れ込むのだった―――。

 

 

 武器屋のおっちゃん達が街に帰って、ナオフミ達も馬車に戻って寝静まった頃。

 オレは一人、ナミのさざめきが響く砂浜に腰を下ろし、ある物を弄っていた。

 

「……ロック解除、と。さて、色々と見せてもらおうかねぇ……」

 

 オレは手にしたそれ、イスルギ姐さんが落としたと思われるアイテム―――ハザードトリガーを目の前に掲げる。

 すると、メーター部分から光が放たれ、オレが前にした岩の表面に映像が映し出された。

 

 危うく騙されるところだったぜ……まさかこのアイテムに、こんなものが隠されていたなんて。オレじゃなかったら気付かなかったぞ。

 

『―――はじめまして、かな? これを見ている人は、おそらく僕と同じ科学者で、ボク並みに優れた頭脳を持った人間だろう』

 

 そう名乗る、オレと大体同じか少し下の背丈と年齢の女。

 なんとなーく、自意識過剰なインテリ系って感じの、割と整った顔立ちの人間の女が映し出され、語り始める。

 

『このハザードトリガーを見つけてしまった以上、君にはボク達の戦いに巻き込まれる義務がある。ボク達の敵は非常に危険だ。この力が必ず必要になる―――』

 

 やや粗い映像の中、その女はオレを……この映像を見る者に語る。

 と、不意にはっとした顔になり、居住いを正してから笑みを浮かべると……ある聞き捨てならない一言を発したのだった。

 

 

 

『ああ、そうだ。自己紹介がまだだったね。ボクの名前は葛木タクミ…………――の勇者だ』

 

 

 

To Be Continued…

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