Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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「てんっっっさい魔導科学者であるオレことセントと愉快な仲間達は、カルミラ島でレベルアップに勤しむ途中、波が近付いていることを知る。なんとか退けたはいいけど、そのあと襲いかかってきたのはあの謎の女・グラスとブラッドスタークと名乗る毒蛇野郎! その正体はなんと、オレの恩人のイスルギ姐さんだった……!」
「ラルク、テリス……あいつらとは仲良くできそうだと思ったんだがな」
「とても気のいい人達でしたものね」
「どーにも裏表があるような奴には思えなかったけどなぁ……毒蛇女はともかく」
「おい! オレの恩人を悪く言うんじゃねぇよ!」
「いや、お前がっつり騙されてただろうが」
「わかってるけど人に言われるのはムカつくんだよ!」
「まぁここで喚いても嘆いても仕方ない。さっさと話を進めるぞ、さてどうなる第6章!?」
「オレのセリフ!!」


第六章 ジャイアントな破壊者〈前編〉
勇者の朝


Side:Naofumi

 

 宝石をガリガリ削って形を作り、表面を磨いて光沢を出させる。

 この削り出しと研磨作業も、始めてからずいぶん時間が経った今じゃ慣れたものだ。昔は結構おっかなびっくりだったもんな。

 

 今のところまだ少ない額だが、大事な領地の収入源だ。

 この先の波に備える為……人を増やして戦力を整える為にも、金はいる。それもより多く。

 

 ただ……今までずっと張り詰めた日々を過ごしていたせいか、こうして無心で作業に没頭するのは初めてかもしれない。

 

 ビッチに騙され、冤罪で立場を落とされ、生きるために必死に足掻いて足掻いて……そんな中でラフタリア達に出会った。

 

 はじめは自分のためにあいつらを利用していたが……いつからかあいつらの為に戦いたいと思うようになった。

 俺を信じ、命がけで助けてくれるあいつらの為なら……正直なんだってできる気がした。

 

 ただ、だからこそこうして気を張る必要なく、のんびり過ごせる時間は貴重でありがたい。ラフタリア達には、しっかり休む時間が必要だ。

 

 願わくば、もうしばらくこんな時間が続いてくれれば───。

 

 

「ふんっ! ふんっ! ふんっ!! ……オラ、キール! もっと腹から声出せぇ!!」

「お……オッス!! せいやぁ!!」

「そうだいいぞ…! お前の力をオレに見せてみろ!! オラァ!!」

 

 

 バキッ! ……と手元が狂って、削っていた宝石が欠けた。

 軌道修正すれば十分使えるが、デザインを少々変える必要が出てきた。……あの野郎。

 

「おい、うるさいぞ筋肉バカ! そのやかましい声をもっと静かにできないのか!?」

「ん? あぁ、悪い悪い。いやぁ、キールの奴が張り切っててさぁ! ついオレも熱が入っちまって」

「兄ちゃん! オレ、頑張って強くなるからな!」

「あぁそうか、わかったわかった……だったらもう少し周りにも配慮してくれ」

 

 俺はたまらず、作業場の近くでスパーリングをしていたキールとリュウガに怒鳴った。

 こいつら……俺がいるのにわざわざこんなところで鍛錬するか!? さっきから我慢していたが、うるさくて仕方がないんだよ!

 

「つーか、キール……お前、こいつが師匠でいいのか? 俺にはこの脳筋が何かを教えられる人物にはとても思えないんだが」

「リュウガ姉ちゃんはオレの目標だ! 強くてカッケェ大人なんだ! だからオレも、リュウガ姉ちゃんみたいな強さが欲しい!」

「よーし、よく言った! ならばお前には、オレの全てを叩き込んでやる! もっぺん組手だ!!」

「オッス!!」

 

 完全に師弟関係が出来上がっている、だと。

 波長が合うのかやたら仲いいんだよなあいつら……まぁ、険悪になるよりはずっといいが。

 

 キールもずいぶん落ち着いたしな。地下牢にいた頃とは雲泥の差だ。

 

 しかし……鍛錬か。

 あれだけやる気を出しているということは、戦う事に結構意欲的なのかね。波の件で怖がるかと思ったが……いや、だからこそか。

 あいつはあのまま、リュウガに任せておいた方がいいかもしれないな。

 

「ごしゅじんさま〜! 遊んで〜!」

 

 とか思ってたら、フィーロがものすごい勢いで突っ込んできた。一人遊びに飽きてきたか、お子様め。

 

「こら、フィーロ。ナオフミ様は今お仕事中です。遊ぶのは我慢してください」

「え〜?」

「……すまんな、ラフタリア。そっちは頼む」

「は、はい……お体をお大事に」

 

 別の場所でリーシアを相手に鍛錬をしていたラフタリアがフィーロを引き剥がしてくれる。いや、本当に助かる。

 

 いろいろ考える事もやる事も多いからな……フィーロはフィーロでキールのレベル上げを手伝ったり、メルティの護衛っぽい事もしてるみたいだし、全員がなかなか忙している状況だ。

 

「ふぇぇ……お手を煩わせてすみません〜…」

 

 当のリーシアは相変わらず情けない声で泣いているがな。樹のところを追い出されてからずっと泣いてないか、こいつ。

 

 まぁ、奴を見返させると約束した以上、最後まで面倒を見るつもりだが……正直不安は拭えないな。

 

 ……次の波まで、そこまで時間はない。今のうちにやれるだけの準備をしておきたい。

 現実逃避のアクセサリー作りもほどほどにして、具体的な鍛錬のメニューを考えなきゃならないな。

 

 と、俺が物思いにふけっていると。

 

 

 ───ドッカァァァァァァァァン!!!

 

 

 と、近くの家から爆発音が轟いた。

 扉は吹っ飛び、真っ黒な煙が機関車のごとき勢いで吹き出す有様。

 

 ラフタリアもフィーロも、ついでにリュウガとキールも、ぎょっと目を見開いて、黙々と立ち上る煙の方を凝視している。

 

 ……まったく、またやりやがったなあの女。

 

「げっほ! えっほえっほ! あ〜、失敗しちまった」

「……おい、セント」

「ん? おぉナオフミ! 久し振り……ん? 久し振り? うん、久し振りだな! 腹減ったからなんか作ってくれ」

 

 煙の中から飛び出してくる白衣の女……セントを睨んででいると、本人は呑気に笑いながら駆け寄ってくる。

 ラフタリア達から覚めた目で見られていることにも気づいていないのか、全身真っ黒のままへらへらしている。

 

「いや〜、今作ってる新兵器がなかなか難しくってさ! 思わず没頭して飯食うのも忘れてて! あ、いまはなんか肉の気分だから肉にして! メシメシ〜!」

 

 ……なんか、頭の奥でぶちって音がした。

 

 人があれこれ悩んで頭抱えている間にこの女は……あれでも行商の商品作りの一環だとかパーティーの強化のためとか、理由があるのはわかってる。わかってるが……!!

 

 

 人の迷惑ぐらい考えんか!!!

 

 

「いっぺん黙れ、バカウサギ!!!」

「ぎにゃあああああああああああああああああああああ〜!!?」

 

 俺の咆哮と共に、胸から紫電を走らせたセントが、思いっきりひっくり返って悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 ……根無し草だった俺達が拠点を得て、国の協力も得て、この先の戦いに少しは余裕が出てくるかと思ったが……俺の負担が増えてるだけにしか思えない。

 

 この先、こんなんで大丈夫なのか……本当に、先が思いやられる。

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