Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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二人の決意

Side:Keel

 

 朝の鍛錬を終えたオレは、兄ちゃんに連れられて王都にやってきていた。

 

 なんかよくわかんねぇけど、他の勇者と情報交換したり、会議したり忙しいんだって。

 兄ちゃんが忙しいのは、色々やってるのを見てるからわかるんだけど……他の勇者って大変なのか? 兄ちゃんに比べて、あんまり活躍してるっぽくないんだけどな?

 

 カルミラ島の波でもイマイチだったって、村に巡回に来てくれてる兵士達が言ってたぞ。あ、リーシアちゃんはすげー頑張ってたみたいだけど。

 

 でもリーシアちゃん、目立ちすぎて弓の勇者に追い出されたみたいだし、オレからした他の勇者の印象はあんまし良くないな。

 

 まぁ、どうせ会うこともあんまりないだろうから気にすんなって姉ちゃんも師匠も言ってたし、いっか!

 

 

 

「……ったくよぉ。ナオフミの奴、あんなに怒んなくたっていいじゃないか」

 

 ちょっと涙目になったセント姉ちゃんが、奴隷紋のある胸をさすってぶつくさぼやいてる。さっき兄ちゃんにお仕置きされたからだな。

 

 あれ、やられるとスッゲー痛いの知ってるから同情するけど……でもなぁ。

 

「正直に言っていいか? セント姉ちゃんの自業自得だと思う」

「えー」

 

 オレもリュウガ姉ちゃん……いや、師匠との修行中に騒ぎすぎて怒られたけど、オレ、ちゃんと謝ったぞ。

 

 ていうか、セント姉ちゃんの実験は怖いから、村の中であんまりやらないで欲しいんだよなぁ。

 

「セントさんがそう言う人なのはわかっているつもりですけど……ですが、最近は特に生活が酷くなっている気がします。ちゃんと寝てますか?」

「大丈夫だよラフタリアママ……人間寝ないだけで死なないから」

「大丈夫じゃありません!! 誰がママですか!?」

 

 ヘラヘラ笑ってるセント姉ちゃんに、ラフタリアちゃんが厳しく叱る。でも全然堪えてねぇ。

 

 姉ちゃん……無茶苦茶なこと言ってんなぁ。

 ラフタリアちゃんが起こるのもしょうがないだろ。結婚もしてねぇのにママ呼ばわりされてるし。

 

 ……すげぇ綺麗な大人になってるから違和感はないけど。

 

「そう怒るなよぉ……代わりにナオフミのことをパパって呼んでもいいんだぜ?」

「っ……! そういう、問題では……!」

「揺れんな、処女」

「ゆ、揺れてません! 処女で何が悪いんですか!?」

 

 ん? なんかセント姉ちゃんにボソッと小声で言われたラフタリアちゃんが真っ赤になって固まった。何言われたんだろ。

 

「ふふ……でもラフタリアさんは本当にいいお母さんになりそうですよね」

「リ、リーシアさんまで!!」

「ラフタリアお姉ちゃんはラフタリアお母さん?」

「フィーロ!」

 

 ……オレは色々察した気がして、思わずじっとラフタリアちゃんを見つめる。

 

 やっぱ、昔と雰囲気ちょっと変わったよなぁ、ラフタリアちゃん。

 恋愛に興味津々だったリファナちゃんと違って、あんまりそういう話で盛り上がらない子だったけど……兄ちゃんと出会って色々変わったんだな。

 

 ……オレもそのうち変わるのかな、大人になれたら。

 

「……ところで、盾の兄ちゃんはまだ戻ってこねぇのかな。待ちくたびれたぜ」

「勇者会議が長引いてんだろ。今回は色々あったしなぁ」

「あぁ、波のこととか強化方法のこととか……ラルクとイスルギ達のこととかな」

 

 あー……なんだっけ?

 あぁ、そうだそうだ。兄ちゃん達がカルミラ島で出会った冒険者の奴らのことだっけ。

 

 すげー強かったって言ってたし、あとセント姉ちゃんの恩人もいたらしいし……何より、勇者の武器みたいなものを使ってたんだって。それで、兄ちゃん達を殺そうとしてきたんだって。

 ちゃんと教えてもらったわけじゃなくて、兄ちゃん達が話してんのを聞いただけだから、全部わかってるわけじゃないけど。

 

 ……オレもそこにいたら、何かできたのかな。

 いや、多分足手まといになってたな……今のオレは、弱いから。

 

「なぁおい、セント。お前のボトルの技術とか使ってたのを見るに、お前が記憶を失う前からなんか関わりがあったんじゃねぇのか?」

「……否定はできねぇ。姐さんも色々知ってる風だったし、可能性は高いな」

「お前が元々向こう側の奴だった……とか」

「それはねぇよ。だとしたらオレがこっちにいる理由がねぇ。もし、オレがあいつらの仲間だってんなら、自分の拠点に連れて帰って記憶が戻るのを待つなりするだろ」

「だよなぁ……」

 

 師匠とセント姉ちゃんが、なんか難しい顔で話し合ってる。ボトルって聞こえたし、セント姉ちゃんの使ってるアレのことを言ってんのかな。

 

 ……ダメ元で、聞いてみようかな。

 

「なぁ、師匠。オレもセント姉ちゃんの作るアイテムを使えば、もっと強くなれるかな」

「……あぁ、なれるだろうな。確実に。だがーーー」

「駄目ですよ」

 

 さりげな〜く、オレにも作ってもらえないかなって感じで話しかけたけど、やっぱり師匠はいい顔をしなかった。

 それだけじゃなくて、ラフタリアちゃんが先にオレの期待をぶった切ってきた。え、そっち?

 

「な、なんでダメなんだ!? ていうか、オレは師匠とセント姉ちゃんに聞いてんだ! ラフタリアちゃんの許可はどうでもいいだろ!?」

「ダメなものは、ダメです! キール君が戦場に出るなんて……!」

「オレも波と戦いたいんだよ! みんなの仇を討ちたいんだ!」

「それを許すわけにはいきません! ……もし、キール君まで死んでしまったら……!」

 

 むっか…! なんだよそれ!

 自分で弱いのはわかってるけど……だからこそ強くなりたいって、こうして頼もうと思ってるんだろ!?

 

 弱いままなんてイヤだ!

 そんなの……また何もできずに奪われるだけじゃんか!

 

「ラフタリアちゃんだって、昔は小さくて弱いただの女の子だっただろ!? でも、兄ちゃんと一緒に旅をして、鍛えて、そんなに強くなったんだ……だったらオレだって!」

「そういう問題では……!」

「オレは強くなりたいんだよ! もう、誰も失いたくないから!!」

 

 オレが思わず力一杯叫ぶと、ラフタリアちゃんははっとした顔で黙り込んじゃった。

 

 やべ……言い過ぎたかな、言い過ぎたかもしれない。

 ラフタリアちゃんはラフタリアちゃんで、オレのことを心配してくれてるのに……だけど、それはわかるけど、守られてるだけなんてイヤで、ついカッとなっちまった。

 

 気まずくて、ラフタリアちゃんの方を見れなくて、棒立ちになる。フィーロちゃんとかリーシアちゃんがアワアワしながら見つめてきて、セント姉ちゃんにもじっと見つめられて、すげぇ居心地が悪くなる。

 

 ……そしたら、不意に師匠にぽんっと頭を撫でられた。

 

「熱くなるなよ、お前ら……まったく、昔のオレみたいなキレ方しやがって。どっちも言ってることは正しい。けどな、大事なのはそれぞれの気持ちだ、そうだろ?」

「……ですが」

「んん〜…オレからすると、戦う力は今後必ず必要になると思うんだよね。波に立ち向かうだけじゃない波から自分や仲間、友達(ダチ)を守るためにも……なぁ?」

 

 渋るラフタリア姉ちゃんにセント姉ちゃんが説得してくれる。

 そしたら、ラフタリアちゃんも何も言えなくなってきたみたいだ……顔は全然納得してないけど。

 

 だけど、絶対わかってくれる。わかってくれないと困る。

もう二度と、友達を……リファナちゃんみたいに失いたくないから。

 

「……戦力として鍛えるかどうかは、ナオフミ様に決定権があります。私はもう、反対はしません……だけどどうか、無茶だけはしないで。いつかあの旗を、村のみんなで取り戻すんですから」

「……あぁ! わかってる!」

 

 よかった、受け入れてくれた!

 

 セント姉ちゃんのおかげだな、頼りになるぜ! さすが大人!

 研究のしすぎで時々バカになるけど。

 

「ふぇぇぇ……ふぇええ! 感動しましたぁ!」

 

 オレがホッとしてると、リーシアちゃんがなんかいつのまにか泣き出してた。

 あーあー、顔中グッチャグチャになっちゃってるし……女の子として大分アレな顔になってるよ。

 

「リ、リーシアさん……落ち着いてください。大丈夫ですか?」

「私、私ってこんなドジで、お友達もあんまりいた事なくって、イツキ様の元でも仲良くできた方っていなくて……こんなにお互いに想い合えるラフタリアさんとキール君は、すごく羨ましくて、でもすごくホッとして……ふぇぇぇぇ〜!」

「……お、おおぅ」

 

 うっわ、師匠がドン引きしてる……言いたい事はわかるけど、声に出すのはやめてやろうよ。すげー悲しいこと言ってたし。

 

 すかさずラフタリアちゃんが鼻をかませてあげてる。うん、やっぱラフタリアちゃんの母ちゃん化が進んでるな。

 あ、フィーロちゃんも空気読んで静かに頭撫でてる。ああいう顔するんだ。

 

 なんかもう……めちゃくちゃな空気になっちゃったな。

 

 ……あれ?

 どうしたんだ師匠、なんかすげー考え込んでるみたいだけど。

 

「……なぁ、キール。今後の鍛錬について、お前にちょっと提案があるんだが。リーシアにも」

「「え?」」

 

 なんかちょっと言いづらそうに話しかけてきた師匠が、オレとリーシアちゃんに持ちかけてきた提案に。

 

 オレは思わず……顔をくしゃくしゃにしかめることになる。

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