Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Liscia
「うし、そんじゃ相手はオレが務めようか」
「胸を借りよう」
私達の前で鎮座する広場の前で、ナオフミさんの仲間のラビット種の亜人さんとメルロマロクの女性の騎士の方が向かい合っています。
ふぇぇ……どうしてこんな事に。
さっき手を取り合って頑張りましょうってしたばかりじゃないですかぁ〜…!
【ユニコーン!】【ダイヤモンド!】
「変身!」
あわあわと私が狼狽えていると、セントさんの周りに透明な管がいっぱい伸びて、それがぐるぐるって塊になって、変な形の鎧になって……そのまま前後からセントさんの全身にまとわりつきました!!
えっと……ユニコーンとダイヤモンド?
言われて見たら確かにそんな感じに見える形をしてます。
右手からユニコーンの顔が伸びてて、左手は全部宝石みたいに輝いてて、顔には左右がそれぞれ形の違うサングラスがついてます。
セントさんが戦うところはちょっとだけしか見れてませんでしたけど、こういう感じなんですねぇ……。
「では……参る!」
ふぇ!? もう始まっちゃいました!?
エ、エクレールさんがすごい速さで飛び出して、細剣で突きを放ちました!
でもセントさんは、宝石の左手でそれを受けて、身を守ります。そしてそのまま、右手のユニコーンの角を伸ばして反撃しました!
でもエクレールさんはそれを軽く躱します!
そしてお二人で、ものすごい速さで打ち合いを始めちゃいましたぁ!!
「うお、速っ!」
「まだまだ!」
ぜ、全然目で追えない……速すぎて見えないですぅ。
で、でもなんとなく……セントさんが押されてる、ような? ちょっと焦ってる顔が見えます。
「単純な剣技じゃ流石に本職には勝てねぇか? あいつ、そこまで武器の扱いが上手いわけじゃないし」
「まぁ、科学者や魔法使いが鎧着てガンガン前線に出てんのがそもそもおかしいしな」
「なんで相手の武器に合わせてんだよあのバカウサギ……」
ちょっとずつ押されているセントさんを見ながら、ナオフミさんとリュウガさんが話しています。
って、え、セントさんって戦士じゃないんですか? ……って、よく考えたらあの鎧を作ったのがそもそもセントさんなんでしたよね!?
ど、どうしたら……こ、このままじゃ負けちゃいますよ!?
……あれ、そういえばそういう戦いじゃないんでしたっけ。
「くっ…だったらこれだ!」
【消しゴム!】
エクレールさんの突きをいなしながら、セントさんは懐から何か……えっと、フルボトルっていうんでしたっけ、いまつけてるのとは別のそれを取り出して、腰につけてる機械にはめ込みました!
【ベストマッチ!】
がきん、と一度エクレールさんを弾き飛ばして、距離を取ってから、セントさんは機械についてるハンドルを回し始めます。
そうすると、また透明な管がいっぱい飛び出してきて、別の鎧になってセントさんにくっつきました。
【一角消去 ユニレーサー!イェイ!】
ふぇぇぇ……変な声が響きました。
鎧によって鳴る音が違うのはわかりましたけど……言ってる言葉の意味が全然わかりません。
あれ、もしかして全部セントさんのセンスですか…!?
違う意味で怖いですぅ!!
「それが噂に聞く……では、改めてお相手願おう!」
見た目が大きく変わったセントさんに、エクレールさんは全然臆さずに突っ込んでいきました。
向かってくる突きに、セントさんはおもむろに左手を上げて……ふぇ!?
セントさんの姿が掻き消えました!!?
「何っ!?」
ふぇぇ!? ふぇぇぇぇ〜〜!?
ほ、ほんとに消えちゃってますぅ!
ど、どこ行っちゃったんですかぁ!?
「消えた……いや、消した? まさか、消しゴムとは…!!」
「当たり〜」
キョロキョロとセントさんの姿を探すエクレールさんが、はっと振り向いて細剣を構えます。
そこに、セントさんがいきなり現れてユニコーンの角を突き出して……ふぇ!?
エクレールさんの剣が折れちゃいましたぁ!!
「勝負あり……だな!」
「いや、まだだ!」
セントさんが勝った───と、私は思い込んじゃいましたが。
エクレールさんはまだセントさんを見据えたまま、折れた細剣に手を添えて小さく早く魔法を詠唱しました。
すると、折れた細剣から魔力の光が迸って、刃に変わりました!
「うそぉ!?」
ふぇぇ!? あんな事できたんですかぁ!?
セントさんも目をまん丸にして驚いて、慌ててユニコーンの刃を引いて受け止めようとしてます!
でもほんのちょっとですけど、エクレールさんの方が早いかもです!
だ、大ピンチですぅ〜!!
「そこまでぇ!!」
ふぇ!?
いきなりすごい声が聞こえて、セントさんとエクレールさん、お二人ともぴたっと動きが止まりました。
さ、さっき叫んだのは……リュウガさんでしたか! ビ、ビックリしました!
「それ以上は訓練にならねぇ。やめろ」
「す、すまない。つい、心が踊ってしまい……」
「ていうかセント、今回はこいつの技量を見るための戦いなんだから、ガチで戦ってどうすんだよ」
「……だって、割と危なかったんだもん」
「いい年した奴がもんとかいうな、気持ち悪い」
「なんだと脳筋!」
「うっせぇ、バカウサギ!」
……え、えっと。
と、とりあえず、大変な事態になるのはまぬがれたみたいです……ふぇぇ。
「セント殿、中々貴重な仕合だった。感謝する」
「ん? あぁ、いやいや。こっちこそ」
「それで……盾の勇者殿。いかがだっただろうか」
魔力を纏わせるのをやめた細剣を下げて、エクレールさんがナオフミさんに話しかけます。
ナオフミさんは……なにやら真剣な表情でエクレールさんを見つめてます。
「お前のさっきの剣……剣に自分の魔力を付与したっていう認識でいいのか」
「はい、我が流派の極意の一つです」
「それに防御比例攻撃や、特殊な攻撃を乗せることは可能か?」
「我が流派にはありませんが、失伝した武術にはそういった技術があったという話を聞いております。……私では、役不足だろうか」
細剣を鞘に収めたエクレールさんが、どこか不安げに尋ねています。
ふぇぇ……私まで緊張してきました。
ど、どっちですか? 合格ですか、不合格ですか!?
しばらく黙り込んだナオフミさんは……やがてにやっと笑って、エクレールさんに手を差し出しました。
「いや、是非とも力を貸してもらいたい」
「喜んで」
「よろしくな、騎士の姉ちゃん!」
「よろしくお願いします、エクレールさん」
がしっ、とナオフミさんとエクレールさんが固く握手を交わします。
よ、よかったぁ〜……私の隣で、ラフタリアさんとキール君もほっと安心した笑みを浮かべていますぅ。
「こちらこそ。ラフタリア殿、キール殿」
「呼び捨てでいいですよ。これからこちらがお世話になる立場なんですし」
「おう!」
「……では、改めてよろしく。ラフタリア、キール」
ラフタリアさんとエクレールさんも、ぎゅっと握手を交わして笑いあっています。いい話ですねぇ……みなさん本当にいい人たちでよかったです。
……もしかしたら、私もこの人達と一緒なら、本当に今よりずっとずっと強くなれるかもしれません……!
「わ、私もよろしくお願いします!!」
私もみなさんに倣って、思いっきり頭を下げてお願いします。
得意分野なんてないですし、不器用で足を引っ張ってばかりかもしれませんけど……せ、精一杯頑張りましゅ!!
……噛んじゃった。
「さて、そんじゃナオフミ? 何から始めるよ」
「ふむ……まぁ最初にこいつらの要望通り、成長補正をつけるために奴隷商のところで契約する必要があるが、先に方針から伝えておくとしよう」
セントさんに確認されて、ナオフミさんは改めて私達に向き合いました。
けれど……その……。
その、にたぁ…!ってとてつもなく不気味で恐ろしい笑顔は、一体何なんでしょうか…!?
「お前らを強くしてやると断言した手前……手を抜くつもりは一切ない。血反吐はいてもやめてやるつもりはないから、覚悟しておけ」
向けられた笑みに、ぶるっと背筋に寒気が走りました。
隣ではキール君が真っ青な顔になって、足の間に尻尾を隠しちゃってます。がたがた震えてて、本気で怯えてるのがわかります。
ふ……ふぇぇぇぇ!!
や、やっぱり盾の勇者様は悪魔だったんですかぁ!?