Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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理屈屋と脳筋

Side:Filo

 

 フィーロだよ!

 今ね、ごしゅじんさま達がね、メルちゃんのお母さんが呼んだっていうすっごい強いおばあちゃんにきたえてもらってるとこなんだよ!

 

 でもね、ほかの人達にぜんぜんやる気がないの。

 槍の人もー、弓の人もー、剣の人もー、それとその仲間の人達みーんなしゅぎょーなんてやだーってイヤがってるの。

 

 剣の人なんて、エクレアのお姉ちゃんを怒らせちゃって、けっとーまで始めちゃった。

 あっというまにボッコボコにされてたけど。

 しかもスキルは使っちゃダメーって言ったのに使ってごしゅじんさまに怒られてたし。

 

 それでなにも言い返せなくなっちゃったみたいでね。

 みんなしぶしぶごしゅじんさまと一緒にしゅぎょーを始めたの!

 

 

 ……でも、やっぱり長持ちしなかったみたい。

 

「……し、死ぬ。なんだこの感じ、懐かしいぞ……」

「学校の授業を思い出しますね……無駄な勉強で長時間拘束され続けて……」

「いつまで続くんだ、この時間は……」

 

 槍の人達、みーんなぐったりしてる。

 どよーんってくうきまでよどんで見えるね。

 

 でもこういう時でも槍の人はフィーロに近付いてくるから、なるべくあの辺にはいかないようにしとこ〜。

 

「つーか、この修行マジで意味あんのかよ。レベル上げりゃ十分だろ? なんだってこんな面倒臭い事、勇者がしなきゃならないんだよ……」

 

 槍の人がぶつぶつ文句言ってる。

 

 なんでってそれは……フィーロやごしゅじんさまががんばってる横でぜんぜん何にもできてなかったからだと思うよ。

 

「お前らな、そうやって本気にならないから、何度も敗北を喫してるわけだろうが。いい加減理解しろよ、ここはゲームじゃ……」

「あーもー! 説教なんかたくさんなんだよ!」

 

 見ててイライラしたのかな、ごしゅじんさまが槍の人を怒ってる。

 でも槍の人ってば、ぜんぜん聞く気がないみたいで耳をふさいでそっぽを向いちゃった。

 

 ごしゅじんさまも呆れて、はーっておっきなためいきをこぼした。

 

「ったく、今の段階でこうじゃ先が思いやられる……」

 

 そう言って、ちょっとつかれてるっぽいごしゅじんさまはフィーロたちの方を見てきた。

 

「キールの方は、順調……か?」

「うん! いっぱい魔物ひいてきたから!」

「そ、そうか」

 

 キール君はでろでろになっちゃったからあっちで休ませてるよ。でもいっぱいレベルが上がったからいいよね!

 

 フィーロは元気だよ! リュウガお姉ちゃんも元気!

 

 ラフタリアお姉ちゃんもぜんぜん平気そう、さっきもエクレアのお姉ちゃんと一緒にくみてするって走ってったし。

 ……あれ? エクレアのお姉ちゃん、フィーロたちのしなんやくなんじゃなかったっけ?

 

 リーシアお姉ちゃんはぐったりして……って、あれ?

 

「セントお姉ちゃん、なんで地面で寝てるの?」

「……ってお前もか!? 先からぜんぜん喋らねぇと思ったら!!」

 

 耳をへんにゃりさせて動かないお姉ちゃんに、ごしゅじんさまがあわててかけよって起こしてあげてる。

 イスにすわったセントお姉ちゃんは、「ふぇぇぇ〜」ってリーシアお姉ちゃんみたいな声を上げて机につっぷしちゃった。

 

「しんどい〜、つらい〜、ムリだって〜。オレこういうのマジで向いてないんだって〜、勘弁してくれよ〜……」

「お前なぁ……」

「いや……オレはあくまで科学者なんだよ。そりゃあ、武器を使うならそれなりにやれるけど、こういう体力が物を言う事はマジで苦手なんだって……はぁ」

 

 ほんとにつらそうなセントお姉ちゃんが、ぶーぶー文句を言う。

 それを見て、槍の人たちが仲間を見つけたみたいに顔を明るくして、セントお姉ちゃんに近づいていった。やー!

 

「やっぱそうだよな、こういうのは違うよな! こういう汗水垂らす系のは別ジャンルだよな!」

「あぁ……初めてお前らと意見があったな」

「……レベルを上げれば何も問題はないだろう」

「ですから武器のレアリティが重要だとあれほど……」

 

 どんどんやる気がなくなっっていくセントお姉ちゃんと槍の人たちに、ごしゅじんさまの顔がどんどんこわくなってく。

 

 お姉ちゃん、ごしゅじんさまが怒らないうちに帰ってきた方がいいよ。

 

「……はぁ、ほんっとに先が思いやられる」

 

 あ、怒るのあきらめちゃった。

 うーん……槍の人達が役に立つの、いつになるんだろうね。

 

 

 

Side:Elrasra

 

「…………」

 

 女王陛下より賜りし、大恩ある聖人様の指南役を仰せつかり、はや数日。

 想像以上の出会いに恵まれ、年甲斐もなくはしゃいだものの……修練の成果自体は、未だ種のままというべきですじゃ。

 

 無理もありませぬな、そうそう開眼してはわしの立つ瀬がありませぬゆえ。

 

「……くっ、ダメだ。全然わからん」

「ふぇぇぇぇ……」

 

 わしの目の前におりますのは、聖人様と龍神様、そしてリーシア門下生じゃ。

 座禅を組み、まずは己の中の『気』の存在を感じる修行をしてもらっているのじゃが……うまくはいっておらんな。

 

 最も気の習得に近いと思われた龍神様なのじゃが……やはりこれまで無意識に使い続けたせいか、うまくそれを実感し操ることができぬようですじゃ。

 

「戦ってる時は普通に気とやらを使えてるんだよな?」

「左様。気を体内で循環させ、身体能力を大幅に上げておられる。じゃが意識して使っておらぬ分、無駄が生じておりますのじゃ」

 

 ふむ……これは少々手がかかりそうじゃな。

 しかし聖人様に受けた恩に報いるため、しっかりと役に立ってみせると誓ったからの。

 

「使えはしてるけど使い熟せてないって感じか……流石に、ステータスにも表記されないものを自覚しろってのは難しいよな」

「別に特別なことは何にもしてないんだけどなぁ……気を感じるってどうすりゃいいんだ?」

「疲れましたぁ……座禅って組んでるだけでも大変ですねぇ」

 

 ふむ……今宵は流石に限界か。無理をさせすぎても気の習得に至れるわけではないからのう、今日はもうやめにするべきか。

 

 む? 聖人様が何やら思い出した様子で、小瓶を取り出しましたぞ。

 

「忘れていた……練習終わりの休憩ついでにこれでも飲んでみろ」

「何だこれ?」

「『命力水』というらしい。薬屋の親父に相談したらくれたものだ、味はまぁまぁいいぞ」

 

 命力水……聞き慣れませぬな、どのような薬じゃろうか。

 ほ、わしにもくださるのですか。では、ありがたくいただきますじゃ。

 

 ほぅ、これは確かに美味とは言えずとも体に染み渡る───む!?

 

「お、何だこりゃ」

「体がポカポカしてきますぅ〜」

 

 わしが目を見開くそばで、龍神様とリーシア門下生が薬を飲んで目を丸くしておる。

 ぽかぽか……まさか、いやまさしく!

 

「お二人共! それじゃ! それを体内にとどめ続けるのじゃ!!」

「ふぇっ!?」

「おぉっ!?」

 

 なんと……まさかこのような形で!

 慌て、戸惑う龍神様とリーシア門下生に指示を出しつつ、修練場の中心においた岩の前にお二人を導く。

 

「さぁ、今のうちじゃ! その力を感じながらこの岩を突くのじゃ!!」

「ふぇ!? え、えっと……えいっ!!」

 

 右往左往としておったリーシア門下生が、意を決した顔で岩を人差し指で突いた。先ほどは突き指をして苦しんでおったが───

 

 

 リーシア門下生の指が触れた瞬間、大岩に確かな亀裂が走った。

 

 

「……ふぇ、ふぇぇぇぇ!?」

 

 ほっほ、突いた本人が誰よりも驚いておりますじゃ!

 しかし、これは確かな事実……見れば聖人様も龍神様も目を丸くしてそれを見ておられたわい。

 

「い、今の……マジか!? このあったけぇのが……気!?」

「……これにこんな力があったのか」

「ババアも驚きですじゃ。数ヶ月かかっていてもおかしくはない段階に、こうも簡単に到達できる方法があるとは……」

「おい」

 

 聖人様に睨まれてしまったが、じゃが仕方のないことですじゃ。

 人によっては何年もの年月をかける必要のある流派じゃからのう……本来急ぐことはできぬはずなのじゃ。

 

 その時、何やら考え込んでおられた龍神様が突如、聖人様に振り向きなさった。

 

「ナオフミ、アレかけてくれ。カルミラ島にあった碑文に刻まれてたっていう魔法」

「あ? あー、あれか……何で今?」

「いいから!」

 

 いぶかしむ聖人様に、龍神様が真剣な眼差しで頼んでおられる。聖人様は渋々といったご様子で、龍神様に魔法をかけられた。

 アレが噂に聞く、勇者にしか読めぬという魔法の呪文じゃったか。

 

「『ファスト・オーラ』」

 

 む!?

 この気配……よもや!?

 

「きた……きたきたきたきた! この感じだ!!」

「何!? 今ので気を纏えたのか!? ……まてよ、よく考えたらオーラって『気』のことじゃねぇか!!」

 

 聖人が愕然とした表情で、ご自分の手を見つめておられる。

 聞いていたあの魔法の効果は、対象者の全能力を飛躍的に向上させるものだったはずじゃが……よもや気まで与えるとは。

 

 興奮したご様子の龍神様と戸惑うリーシア門下生じゃったが、しばらくするとお二人の気が抜けてしまったようじゃ。

 

「あ……ポカポカしたの消えちゃいました」

「オレもだ。抜けちまった」

「お二人はまだ、気を体内にとどめる事ができずにおられるようじゃな。じゃが……これは大きな一歩ですじゃ」

 

 わしの言葉に、これまでずっと不安ばかりが顔に出ておったリーシア門下生の表情が、わずかにじゃが明るくなった。

 いい傾向じゃな、自信のなさは不利を呼ぶ……自身もまた己の武器じゃ。

 

 わしもようやく、聖人様へのお力に慣れそうで安心しましたじゃ。道はまだまだ先があるが、少なくとも出発点には辿り着けたというもの。

 

 まったく……長生きはするものじゃな。

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