Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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男の浪漫

Side:Motoyasu

 

「だからなお前ら、こうやるんだって!」

 

 今日も今日とて始まった、憂鬱で退屈で最悪な修行の日々ぃ……。

 

 昨日の疲れが全然抜けてなくて、なのに朝早くから叩き起こされて山の上に連れてこられて、ひたすら座禅やら精神統一やら。

 唯一の救いは、他の勇者パーティーの可愛い女の子が見れる事ぐらいか……?

 

 ナオフミのところのリュウガちゃんは……まぁ、アレだ。見ていて大変眼福でございますが。

 

 ただし……何いっ言ってんのかさっぱりわからない。

 指南役だとかいうバーさんが言ってた気?とやらについて一生懸命説明してくれてるんだけど……全く意味がわからない。

 

 あと正直、動くたびにブルンブルン揺れるからそっちに目が行くんだよな、ハハハ。

 

「……あの謎言語は本当に同にもならないのか……!?」

「アレだな、名選手が名監督になるとは限らないっていうアレだ」

「言いたいことはわかりますけど、もうちょっと仲間に対して言い方があるんじゃないですか……?」

 

 錬も樹も、あとナオフミも呆れた目でリュウガちゃんを見てるし。

 前見たときはもっとこう、愚直に強さを求める無人キャラっぽかったのにな……割とアホの子だったんだな、あの子。

 

「あぁん、もうつかれた〜!」

「おいこら、そこ! 勝手に休むな!」

 

 へたり込んだ俺のパーティーの仲間で恋人のマ……ア、アバズ……考えるだけなら別にいいだろ! マインだマイン!!

 ぐったりしてしまった彼女に、リュウガちゃんが声を荒げて注意する。

 

 女の子にこういう事は言いたくないんだけど……流石にちょっとイラッとしてきたな。

 

 なんかこの間のカルミラ島の波イベントでボロクソにやられた事を危惧して、マインのお母さんである女王が訓練するってことになった訳だけど……。

 

 マジで面倒臭い……何だよ気だのなんとか流だの。

 レベル上げりゃいいじゃん、そんなわけわかんない修行とか必要ないじゃん。

 

 ……まぁ確かに、最近全然イベントで勝ててないけど。

 

「この修行! 本当にいつになったら終わるんだよ!? こっちは波とかクエストとか色々やらなきゃいけないんだぞ!?」

 

 最近、マジでうまくいってない。

 尚文に強姦されて辛い目にあったって聞いてたマインが実は嘘吐きで、お父さんの王様と一緒に尚文を迫害してたとか聞かされて。

 その上今じゃ活躍の場が全然巡ってこなくって……あぁ、くそ!

 

 最初の夢いっぱいの異世界生活はどこ行っちまったんだよ!!

 

「そこんところどうなんだ? ババア」

「うむ、人にもよりますがの……大抵の者は最低でも一月、あるいは一年。深く長く集中し続け、ようやく体得できるものじゃ」

 

 尚文が婆さん……なんとか流の指南役だっていう人に聞いたら、そんなとんでもない事を言われた。

 なんだよそれ、聞いてないぞ!?

 

「冗談じゃない! そんな長ったらしく付き合ってられるか!!」

「そうですよ! どうしてこんな無駄な時間に何ヶ月も何年も付き合わされなければならないのですか!?」

「それこそレベル上げの邪魔だ! そんな事をしなくても俺達は十分強い!」

 

 錬も樹も、俺と同じ気持ちみたいでいきり立った。

 そうだよな、絶対無駄な時間過ごしてるよな!? 絶対意味ねぇよ、こんな時間!!

 

 俺達はスキルを放って、その辺にある大岩を粉々に砕いてみせる。

 婆さんがなんか指先で壊してたけど、別にスキルを使えば同じことはできるだろ! 偉そうにしてんじゃねぇ!!

 

「やってられるかよ、こんな事!」

「おい、お前ら……」

「尚文もやめろよ、そういう修行はやりたい奴がやりゃいいんだ! いっそ、そいつらが勇者になって世界を救えばいいだろ!」

 

 マジでうまくいかねぇ…! 全然楽しくないぞ、こんな異世界召喚!

 俺達がダメだってんなら、最初からもっと強い奴らを勇者に選んでりゃよかったんだ!

 

 なんか言いたげな尚文をおいて、その場を後にしようとした時だった。

 

「……なるほどなるほど、だったら努力せざるを得ない条件を出してやろう」

「あ?」

 

 さっきまで呆れた目で俺達を見ていたリュウガちゃんが、なんか……不敵な笑みを浮かべてそう言ってきた。な、何?

 

「確かに……修行は辛ぇ。長いこと頑張って我慢して、なかなか成果が出ないことに悶々して、やがて目的自体を見失う事もある。その気持ちはよ〜くわかる」

「お、おう……」

「そう、ですね」

「ああ……」

「だが、これはやらなきゃならねぇ事だ。お前らには必要不可欠な壁だ……その壁を超えられないってんなら、越えたくなる目標を授けてやろう」

「おいリュウガ……お前、何をする気だ?」

 

 な、何だ……!? まさか、あんまりにもうるさかったから変なスイッチ入っちゃったのか?

 し、仕方ないだろ! マジでやる価値を感じないんだから!

 

 ……いや、ま、まさか習得するまで監禁するとかじゃないよね……!?

 

「オレからお前らに、修行をこなした後のご褒美を提示する!!」

「!? ご褒美 ……いだっ」

 

 予想外の言葉に俺が思わず身を乗り出すと、錬と樹に頭を小突かれた。

 

 おい、何だよお前ら……その「お前がそういうことを言うと自分達まですけべ扱いされるだろうが」的な冷たい目は。

 しょうがないだろ、つい想像しちゃったんだから。男の子なんだもん。

 

「ご褒美って……こいつらが物で釣られるタイプか? レアアイテムならありえるが……ていうか、俺はそんなもんに金を出す気はないぞ」

「いや、そうじゃねぇ。物は物だが……ただの物を差し出す気はねぇ」

 

 尚文の言葉に、リュウガちゃんはまたふっと笑って首を横に振った。

 ま、まぁ相当レアなドロップが手に入るってんなら、やらなくもないけど……でも、言い方はあれだけど、ゲームに不慣れな尚文のところで手に入りそうなアイテム程度じゃなぁ。

 

 と、内心全然期待してなかった俺達に、リュウガちゃんはやがてはっきりと告げた。

 

 

 

「『気』の習得に至った勇者から順に、ライダーシステムを製作する! ……セントが!!」

 

 

 

 ───!??

 

 思わず振り向いて、リュウガちゃんをガン見した。

 俺以外にも、錬も樹もあと尚文もものすごい勢いで振り向いた。多分、全員目がギラって光った気がする。

 

 そのぐらい……そのぐらい魅力的すぎるご褒美だった。

 

「……マジか、マジか、マジか!?」

「ほ、本当に!? いいんですか!?」

「あ、後から返せって言われても返さないよ、セントちゃん!?」

 

 普段クールぶってる錬がありえないぐらい目を輝かせてる。樹も見たことないぐらい大興奮してる。

 

 いやそりゃ誰だってそうなるわ!

 だってアレだぞ!? アレの本物を作ってくれるっていうんだぞ!? 男なら誰でもこうなるだろ!?

 

「お前何勝手なこと言ってんだコラァ!?」

「だってそんくらいねぇとこいつら動かなさそうじゃねぇか」

「だからってそんな約束取り付けんな! 作るのオレだぞ!?」

「落ち着けよ……お前の考えはよくわかってっから」

 

 俺達が呆然となってる間に、立ち上がったセントちゃんがリュウガちゃんに詰め寄った。

 ま、まさか、駄目とは言わないよな!?

 こんだけ期待させてやっぱり駄目とか言わないよな!? なぁ!?

 

「お前がライダーシステムをポンポン作らないでいる理由って、ようは使う奴が弱すぎて盗まれる場合を心配してるからだろ?」

「……まぁ、そうだな」

「だったらちょうどいいじゃねぇか。味方が強くなる上に、さらに強化を重ねられるわけだろ? それに、こう言っときゃこいつらも流石にやる気出すだろ」

 

 なんかぼそぼそ話してるけど、うまく聞き取れない……説得してくれてるのか?

 

 頼む! 頷いてくれ!

 本当に作ってくれるんなら、こんな退屈な修行もちゃんと頑張るから! 絶対続けるから!!

 

 欲しくて欲しくてたまらないけど……声は押し殺して目で懇願する。

 素直に認めるのは、なんか……なんか、負けた気がするんだよ!

 

「さぁ、どうする!? 効果の実感できない退屈な訓練から逃れるか! それとも、男のロマンをその手に掴むか! どっちをお望みかな!?」

「くっ…!」

「卑怯な…!」

「俺達をここまで惑わせるなんて…!」

 

 にやりと笑うリュウガちゃん。

 絶対誘導されてる……利用されてるってわかる。

 

 だけど、だけどそれ以上に心が、魂が叫んでるんだよ……あの頃の夢を今、現実にする時だって心が叫んでるんだよっ……!!

 

「あの方々は何と戦っているのでしょうか……?」

「さ、さぁ」

 

 ラフタリアちゃんや、初めて見た桃色紙の女騎士の子がヒソヒソやってるけど、もう気にしてる暇はなかった。

 だ、駄目だ……保たれてたプライドの堰が……崩れるっ……!

 

「〜…! あぁもう! わかったよ! 最後まで付き合ってやるよ! 」

「モ、モトヤス様!?」

「仕方ないだろ! だって〝変身〟したいんだもの! 夢を叶えたいんだもの!! 男の子なんだもん!!」

 

 俺は負けた……男子の夢にはかなわなかった。

 すまないマイン……辛いだろうけど、でもっ、我慢ができなかったんだ。

 

「……あ〜も〜、しょーがねーなー」

 

 しばらくして、ガリガリ頭をかいて悩んでいたセントちゃんが、大きなため息をつきながら項垂れた。

 よかった……オッケーしてくれるんだね、作ってくれるんだね。

 

 これで「やっぱりお前らには作らない」とか言われたらマジでいっそこの国からもブッチしようと思ってたわ。

 

「デザインについては希望聞くぞ? こんなんがいいっていう意見があったら言え。反映するから」

「はい! スマートなのがいいです! 細マッチョな感じで!」

「華麗な感じがいいです!」

「フン……黒がいい」

「どうせ防御しかできないだろうからごつい感じで頼む」

「ナオフミ様!?」

 

 疲れた顔で要望を聞いてくるセントちゃんに、俺達異世界組は各々の希望を口にする。

 順番抜かしはしない。あくまで平等に、それぞれのなりたいヒーロー像を伝えていく。

 

 俺達は今……初めて心が一つになっていた。

 

 

 

 の、だが。

 この後にとある事件が俺達勇者全員に襲いかかり、翻弄する事になる。

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