Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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増殖する敵

Side:Ryuga

 

「うっわ、ここにも死骸だ」

 

 謎の魔物の正体を突き止めるため、オレ達は森……村の連中的には畑なんだっけ? 境界線がわかんねぇけど、とにかく三班に分かれて調査を進めていた。

 

 そんでわかったことといえば……連中が人間だけじゃなくて魔物も襲うこと、そんで生き物だけを狙うこと、逆に農作物とかは襲われてないこと、そのくらいだな。

 全身をズタズタにされた魔物の死骸があっちこっちで見つかってる状況に、思わず顔が歪むのを感じる。

 

 目の前に倒れた熊の魔物の苦痛に満ちた顔を見てると……なんともいえねぇムカつきが腹の奥から湧いて来やがる。

 

「捕食……とかが目的じゃないみたいだな。とにかく殺す事だけ考えてるような……胸糞悪いな」

「ナオフミが確認したところじゃ、使い魔って話だが……何が目的なんだ?」

「わからない……ただ、なんか引っかかる」

 

 オレと一緒に探索をしているセントがなんか考え込んでいる。

 しかしまぁ、胸糞悪いって言葉には賛成だな。死骸の傷口を見た感じ、大勢で寄ってたかって襲いかかった印象がある……その上で食いもせずに放置だ。

 

 どこのどいつがこんなもんを使役してるのかは知らねぇけど、顔を見たらまずぶん殴るべきだな。

 

「……とりあえず、こいつをどうする? ほっといたら魔竜みたいに復活したりしねぇか?」

「それはないだろうが……一応、処理はしておこう。リュウガ、燃やしてやってくれ」

「オレかよ!? まぁ、いいけど。ボトルにゃしねぇのか?」

「こんなやられ方したやつを使うのはなんか、気が引けてな」

 

 それもそうか。

 こっちが魔物を倒して素材を採集するのと、倒れてる死骸から素材を剥ぎとるのは、やってることは結果的には同じだけど……なんか、なんか違うよな。

 

 そういえば、探索を始めてから何体かあの甲羅の魔物が出てきて、倒してセントが成分にしていたが……全部カメのフルボトルだったよな?

 おかげで今のあいつの持ち物はほとんど緑色だ。

 

「しっかしどっから来てんだ、こいつらは」

「目撃証言としては、東から飛んできてるみたいだな。冒険者の話だと、あのでかい雪男みたいなのもその方角から来てたってさ」

「東ねぇ……そういう逸話も知らねぇって話だし、どうなってんだか」

 

 手がかりもほとんどねぇし、歩けど歩けど見つかるのは死骸ばっかりだ。こうも何もねぇとうんざりしてきやがる。

 ……何もなきゃいいのが一番だが、それはそれで不気味だから難儀だよな。

 

「おい、そろそろ頼む」

「ん、あいよ」

 

 忘れてた、死骸の処理しないといけねぇんだった。

 剣の勇者のやらかしを再発させるわけにはいかねぇからな。念入りに焼いておくか……その前に周りの木、燃やさないようにしねぇと。

 

 ───と、オレが魔物の死骸に近づこうとした時。

 

 もぞり、と。

 事切れているはずの魔物が、かすかに動いた。

 

「……ん?」

「どうした?」

「いや、なんかこいつ、ちょっと動いたみてぇな……」

「は? おいおい、まさか本当に魔竜の悪夢が再発するとかベタな展開が───」

 

 険しい顔になったセントが、魔物を睨んでため息をついたその時。

 

 ぐちゃっ!と、目の前の魔物の死骸が起き上がった。

 いや、起き上がったのは死骸じゃない……()()()()()()()()()()()()が、外に飛び出してきた!?

 

 死肉をぶち破り、周りにぶちまけて現れたのは、さっき見た雪男みたいな魔物。

 真っ赤に燃える目と、奴らと同じ甲羅を持ったでかい魔物が雄叫びをあげてオレ達の前に立ちはだかってきた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

「うおおおお!? なんじゃこりゃ!?」

「魔物の死骸から出て来やがった!?」

 

 いきなりすぎんだろ、心臓に悪いわ!!

 

 現れた新たな二体の魔物……あー、ナオフミが見たっていう情報的になんとかの使い魔(○○型)がオレ達に襲いかかってくる。

 オレとセントは距離を取ってからベルトを腰に巻きつける。

 

「くそっ、こんな至近距離から出てくるとかズルすぎだろ!」

「もう遅いっての!」

 

 言いながら、オレはクローズドラゴンにドラゴンフルボトルを。

 セントは二本の……あれ、新しいやつか? カメと時計の模様が浮き出たフルボトルをベルトに突っ込んだ。

 

タートル!】【ウォッチ!】【ベストマッチ!

「ベストマッチキター!」

「言ってる場合か! さっさとやるぞ!」

Are you READY?

「「変身!」」

 

 一歩ずつ向かってくる雪男達を前に、ハンドルを回して、ベルトから作り出された鎧を纏う!

 

時をかける甲冑! タートルウォッチ!イェイ!

Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON! イェイ!

「っしゃあ!」

「いくぞ!」

 

 ばしっと拳を手のひらに打ち付けて気合を入れてから、セントの声に合わせて走り出す。

 走り出す……けど、遅っ! カメの鎧を纏ったセントは……なんか、なんか遅っ! もたもた走ってんじゃねぇよ!

 

「何してんだお前は!!」

「ちょ、ちょっと待っ……このベストマッチなんか重い、遅い!」

 

 作っといて何言ってんだお前は!? カメだからか!? カメだからこんなのったのったしてんのか!? しっかりしろよ設計者!!

 

 とかやってるうちに奴らに狙われてるしああもう!!

 

「くそったれ! おらっ!!」

 

 回り込みながら、近い方の雪男の顔面めがけて拳を放つ。

 生意気にも片腕で防ごうとしやがるが、構わずそのまま振り抜いて、大きく体勢を崩させる。よろけた奴は後ろにいる奴にぶつかって、どっちも体勢を崩した。

 

 雪男達が片足立ちになってぐらぐらし始めたところを狙って、ベルトのハンドルを思いっきり回す。

 

ドラゴニックフィニッシュ!

「ウオラァァ!!」

 

 よろけた手前の雪男の首筋めがけて、渾身の回し蹴りを叩き込む!

 ごきっ!と奴の首から鈍い音が響いて、でかい体が一瞬硬直する。そいつを足場に飛び上がって、雄叫びをあげて向かってきたもう一体にも蹴りを叩き込んでやる。

 

 ゆっくりと二つの巨体が傾いて、やがて雪男は地面に仰向けに倒れ込んだ。

 

 よし、片付いた!

 悪いなセント、お前がもたもたしてる間にオレが仕留めちまったぜ……って。

 

 何かしらねぇ間に別の雪男がわらわらよってきてるだとぉ!?

 

「いやーっやめてっ何する気なの!? 乱暴する気でしょ!? エロ本みたいに! エロ本みたいに!」

「■■■■■■■■■!!!」

「おわーっ!? ぶへっ!?」

 

 セントが自分の鎧に手間取ってるうちに、別の雪男が寄ってきてぶん殴られている。

 ふざけてるあたり割と余裕がありそうなんだが……っていつの間にかさらに集まってきた雪男達に囲まれてタコ殴りにされてんだけど!? 本当に大丈夫なのか!?

 

「いでっ! いででっ! あだだだだ! ……ってあれ? そんなに痛くないな」

「何やってんだお前は!!」

「いや〜悪い悪い。やっぱウサギとカメは相性悪いのかね」

 

 雪男達に殴られながらヘラヘラしてるセント……いやマジで不安になるぐらい殴られてんだけど!?

 動きは遅いけど、その分防御力が高いのか? どうでもいいけどいい加減反撃しろよ!

 

 代わりにオレが寄ってくる雪男達をぶっ飛ばす羽目になってんだろうが! 戦えバカウサギ!!

 

「オラッ! オラァ! くっ……殴っても殴っても湧いて出てきやがる! 面倒くせぇな!」

「…おそらく、どっかにある魔物の死骸を苗床にして湧いてきてるんだ。まずそいつを片付けないと次々に生まれてくるぞ!」

「マジかよクソが!」

 

 焼こうにもこんだけ敵に囲まれてちゃ動けねぇっての…! 一体言ったおはそんなに苦労しなくても倒せるけど、多すぎんだよ一々!

 

 どうすりゃいいんだよ……!?

 

 と、オレが暴れながら悩んでいると、雪男達に囲まれたままのセントがなんかぶつぶつ呟き始めた。何やってんだこんな状況で!?

 

「───なるほどなるほど……リュウガ! オレが合図したらそこから離れろ!」

「はぁ!?」

「いいからいいから……いくぞ!!」

 

 オレが思わず雪男の包囲の中を覗き込むと、セントが殴られながら……いや、攻撃を防ぎながらハンドルを回している様子が見えた。

 あの状況で必殺技でも使う気なのか? そんな強力な技が使えるベストマッチにゃ思えないんだが……ええい、考えてる場合じゃねぇ!!

 

Ready GO!

「今だ!!」

 

 セントの声に合わせて、オレはその場から跳んでセントと雪男達から離れる。

 宙に飛んだオレの視界の中で、セントの鎧の片方……時計を基にした装甲がかちかちと音を立てて───光った!?

 

ボルテックフィニッシュ!

 

 セントの鎧から光がほとばしって、周りの雪男達が全部まとめて吹っ飛ばされる。多分、ほとんどが今の一撃で仕留められてた。

 

 な、何したんだあいつ今!?

 殴り飛ばしたようには……何つーか、あの甲羅で跳ね飛ばしたように見えたぞ!?

 

「ふむふむ……カメフルボトルの効果は衝撃吸収、いや衝撃蓄積か? それをウォッチフルボトルの能力で時間圧縮、一気に放出……咄嗟の判断でここまでやれるとは、やっぱオレって天・才」

 

 こ、こいつ……あの状況でも鎧の能力の検証してやがったのか……人をヒヤヒヤさせておいて勝手な奴。

 

「おいリュウガ!ぼさっとしてないでさっさと死骸燃やせ!!」

「ったく! わかったっつの!!」

 

 セントに言われて、オレはさっきの死骸があった場所に走って、炎で死骸を焼き払う。近くにあった畑の木は燃え広がらないようにへし折っちまったけど、緊急事態だし仕方ねぇ。

 

 メラメラと燃える炎の中で黒い炭になる魔物の死骸を、セントと確かめる。

 

「……湧いてこないな」

「推測通りみたいだな。あいつら、殺した魔物の死骸を苗床にして増えてるんだ……他にもまだ残ってるかもはずだ。探すぞ」

「厄介な敵が出てきたもんだな、くそっ!」

 

 悪態をつきながら、オレ達は森……じゃなくて畑の奥を目指す。

 面倒だが、ここで手を抜いたら最初に逆戻りする羽目になる。しっかり調べておかねぇと。

 

 しかし、こいつらが使い魔ってことは、こういう風に作ったやつがいるわけだよな? 本当に何が目的なんだ?

 

 ……まさかとは思うが、この世の全ての生き物を殺して苗床にするのが目的だったりしないだろうな。

 っ…! なんだ、ちょっと寒気がするな。

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