Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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まだ死ぬべきじゃない

Side:Sento

 

「おいナオフミ! 大変だ、急いで例の魔物の死骸を処理しないと───」

 

 あの甲羅の魔物達を倒し、そしてその死骸もきっちり焼却処分してきた帰り

 オレとリュウガは急いで村に戻り、ナオフミ達に報告に向かった。早いとこ手を打たねぇと村どころかこの国も危ねぇ、急いで動かなきゃならない。

 

 で、なんかすげぇ大騒ぎしてる声が聞こえる家からナオフミの声がしたんで、リュウガと速攻でお邪魔したんだが……。

 

「いだだだっ!? 何すんだよ兄ちゃん! いで、いででで! そこはダメだって!!!」

「キールぅぅぅ!?」

「……って何やってんのお前ら!?」

 

 ナオフミにベッドに押さえつけられたキールが、ものすげぇ叫び声を上げている。

 何があった!? 何をしてんだお前は!!

 

 え、キールもあの魔物とやりあった?

 幸い軽症で済んだみたいだけど、話を聞いたナオフミがいきなりキールを押さえつけ始めたと?

 

 オレ達が絶句している間に、ナオフミはキールの背中に……あの魔物につけられたものらしい傷口に薬をぶっかけて、ピンセットで何かを強引に引き抜いた。

 

「ぎゃあああぁぁぁっ!!?」

「……よし、取れた。よく我慢したな、もう大丈夫だ」

 

 あだだだだ!と見てるこっちが痛くなるような行動……治療の後、ナオフミは取り除いた何かを、小さな甲羅をオレ達に見せた。

 

「……あの魔物の卵のようなものだ。おそらく倒した魔物や傷を与えた相手にこれを植え付け、体内で増殖させていたんだろう」

「うえっ!?」

「マジかよクソッタレ…!」

 

 マジで? 死骸から増えるのはオレ達にもわかったけど、戦っただけでもそんなん受けるのか? こっわ!!

 ……オレ達大丈夫だよな? 知らねぇ間に植え付けられたりしてないよな?

 

 卵を抜き取られたキールは……なんかめっちゃぐったりしてる。強引に引き抜かれたわけだからな、仕方がない。

 オレ達の前に戻ってきたラフタリアちゃんとエクレールがキールの具合を診てるけど……だいぶ消耗してんな。

 

「魔物を襲っていたのは捕食のためじゃない……苗床にするためだったんだ。すぐに他の死骸も処分しなきゃならない」

「! あ、ああ! オレ達もそれに気付いて、リュウガに燃やさせたところだ」

「すぐに私達が倒した魔物のいる場所に向かいましょう!」

「でも同時に、戦った奴らの傷も診なきゃならねぇのか……」

 

 リュウガの呟きで、思わず全員がハッとなる。

 そうだった、オレ達が来る前にも何人か交戦してたんだっけか……こりゃ本格的にやばくなってきたな。

 

「ナオフミ様、これはもう私達だけで対処できる問題ではないのでは……」

「うむ、国で動かねばならんじゃろうて」

 

 ラフタリアちゃんとバーさんの言葉に、ナオフミも頷く。

 あの魔物を倒すにも死骸を処分するにも、圧倒的に手が足りねぇ。一体一体倒してる間にどんどん犠牲者も敵も増え続けるだろう。

 

 急がねぇと何もかもが手遅れになりそうだ。

 

「よし、報告も兼ねて一度城へ戻るぞ。三勇者も流石にこの状況はやばいとわかるだろう、全員で集まって話し合う必要がある」

「おう!」

 

 方針を固めてから、オレ達は家を出て村を後にしようとする。

 ……その前に、ナオフミがベッドに腰掛けて荒い息をついているキールに視線を戻した。

 

「キールはここで待機だ。傷が癒えるまで動くな」

「!? ちょ、ちょっと待ってよ兄ちゃん! 俺もまだ戦え……うっ」

「おい、キール!」

 

 置いてかれる事が決定し、慌てたキールが止めようと立ち上がって……そのままよろよろと崩れ落ちる。

 あー、こりゃ寄生されて相当力を吸い取られてんな。このまま連れてくのは無理だ、足手まといになっちまう。

 

「っ…! ちくしょう……せっかく……せっかく強くなって、今度こそって……なのに」

「キールくん……」

 

 床に座り込み、涙を滲ませながら項垂れるキールを見つめ、ラフタリアちゃんが悲痛な声を漏らしている。

 

 まぁ、そうだな……あのきっつい修行をなんとかこなして、やっと親や友達の仇である波に立ち向かう準備ができるってとこだったのに、これだもんなぁ。

 ぶるぶると肩を震わせるキールの前に、不意にリュウガがしゃがみこんだ。

 

「……情けねぇツラしてんじゃねぇ、キール。お前は今、重要な役目を果たした。魔物から村人を守って、奴らがどんどん増えてくる秘密を解く鍵を手に入れて……生き残ってみせた。これ以上ないくらいの大戦果だろ」

「ししょー……」

「今は休め、お前はまだ死ぬ時じゃない。お前がくれたチャンスを活かすために、オレ達は行くんだ……今度は、オレ達に任せろ」

 

 ぐずぐずの顔で、リュウガを見つめるキール。

 ズズッ、と鼻を啜って、濡れた目元をぐしぐしと拭ったキールは、リュウガやナオフミに顔を隠すようにしながら、やがてこくりと小さく頷いた。

 

 ……本当にえらく懐かれたなぁ、お前。

 

「……行くぞ、ナオフミ。オレの教え子に手ぇ出したクソッタレの魔物共に目にもの見せてやる」

「ああ、わかった」

「フィーロも頑張る!」

 

 いつも以上に目をギラギラさせたリュウガが、立ち上がってナオフミに促すと、全員が同じ決意を秘めた表情で頷く。

 ったく……こうもカッコいとこ見せつけられちゃ、こっちも頑張らねぇとって気持ちになるじゃねぇか!

 

 

Side:Eclair

 

 勇者殿の力……転移によって、我々はメルロマロク城へと帰還し、女王の元へ報告する事となった。

 すでに多くの激務に追われておられる陛下にこのような報告をせねばならぬとは……待つ事を知らない時の流れが恨めしく思う。

 

 急ぎ、謁見の間へ向かい、扉が開くと同時に陛下に呼びかける。

 

「女王陛下、ご報告が───」

「見つかったか!?」

 

 む? こちらが話すよりも前に陛下が過剰に反応を示され……来たのが私と勇者殿だと気づくと、やや落胆した様子を示された。

 どうされたのだろうか、何か悩ましげな顔をされているが。

 

「どうかしたのか? こっちは例の魔物の件でわかった事を報告に来たんだが……」

「…申し訳ありません、イワタニ様。そのご報告は大変ありがたいのですが、こちらにも非常に頭の痛い問題が舞い込みまして」

 

 歯切れ悪く、ため息混じりに、陛下はその問題について話された。

 その内容に、我々も思わず言葉を失ってしまう。

 

 ナオフミ殿以外の勇者方が、追っ手を撒いて失踪してしまった……と。

 

「何やってんのあの三馬鹿は!?」

 

 セントが頭を抱えながら叫んでいるが、正直言えば私も叫びたかった。

 素行というか態度に色々と問題があった彼らだが、とうとうこの非常事態に姿を消すとは……! あぁ、おそらく今、私も陛下と同じ顔をしているのだろうな。

 

「なんだってそんな事を……あいつら、何か言っていたのか?」

「報告によれば、三人とも同じ事を……『事態の解決に向かうだけ』だとか」

 

 事態の解決……?

 言葉から察するに、事態とはあの魔物が大量に発生し襲ってきているこの状況のことなのだろうが、その解決という事か?

 

「……あいつらまさか、この状況の原因が何かわかってるのか?」

 

 陛下の話に、勇者殿がハッと何かに気づいた様子を見せそう呟く。

 そうか……他の勇者方はこの世界にやけに詳しい様子だった。この事態についても何か知っていたという事か。

 

 ただ……何故それを詳しく我々に教えようとしない!!

 

「あいつらぁ…! さては他のやつを出し抜くつもりで……本当にゲーム感覚が抜け切ってない大馬鹿野郎共め!!」

 

 勇者殿が険しい顔でそう怒鳴る。

 そういえば、ナオフミ殿は逆にこの世界については疎く、最初の頃はひどく差をつけられていたのだったか……国の、世界の危機にどうしてそう子供のような意地を張られるのか。

 

「くそっ! もう少し早く戻ってくりゃよかったか……」

「今考えても仕方がありません……事情を知っているのなら話が早いです。追いかけましょう」

 

 ラフタリアの提案に、全員が頷く。

 まったく……何か知っているのなら書き置きなり何なり残せばいいだろうに、それすらもしないとは!

 

 急ぎ、陛下に断って謁見の間を後にしようとした時……不意に、リーシアが自信なさげに手を挙げた。

 

「ふぇ……あの、ちょっとよろしいでしょうか」

「何か?」

「えっとえっと……あの魔物のことなのですが、私、何かの資料で似たものを見た事がある気がしまして……」

「何だと!?」

 

 その言葉に、全員が一斉に立ち止まり振り向く。

 思わず視線に力がこもってしまい、それをいっぺんに浴びたリーシアがかわいそうなくらい震え上がってしまった。

 

「ふぇえええ!! ほ、ほほ本当にそんな気がするだけで! あの、えっと……確か古の勇者の偉業の中に、巨大な亀と戦った記録があったような」

「ドンピシャじゃねぇか!!」

 

 思わずといった様子で叫ぶリュウガに、私も内心で同意する。

 まさにこの状況を表しているとしか思えないなようだぞ……何故そこまで自信なさげになっているんだ。

 

 とはいえ、おかげで重要な手がかりを得られそうだ。陛下も少し顔色が回復しておられる。

 

「なるほど……大義である、リーシア・アイヴィレッド。ならばそなたには城の書庫を解放し、その魔物に関する詳しい情報を調べる役目を与えたい。……構いませんか、勇者様」

「ああ、こっちからそう頼もうと思ってた。お手柄だリーシア、ようやくお前の活躍できる場が舞い込んできたみたいだな!」

「ふぇえええ!?」

 

 勇者殿……もう少し別の言い方があるのではないか?

 リーシアも突然の大役を任され、いつもの情けない悲鳴を上げているが……頼りになるのかならないのか。

 

「よし、なら俺達は三勇者の足取りを追おう。追いつく方法には一つアテがある……もっとも、向こうがそれに頷いてくれるかどうかはわからんがな」

「じゃあナオフミ、オレもリーシアに同行していいか? 調べ物ならオレも得意だ」

「わかった」

 

 セントが手を挙げ、勇者殿と陛下に許可を得る。

 二人が急ぎ足で書庫へ向かうのを見送ってから、勇者殿も足早に歩き出した。

 

「あの三馬鹿め……見つけたらただじゃおかんぞ」

 

 ずんずんと荒々しい歩き方で去っていく勇者殿と、それを追って走り出すラフタリア達。

 その言葉には大いに同意するが……その、何だ。

 

 日頃の不満も大いに混ざってはいないか?

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