Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Filo
フィーロだよ!
ごしゅじんさまやみんなとがんばってね、あのおっきな亀さんをやっつけたよ!
でもがんばりすぎてフィーロヘロヘロ……。
ラフタリアお姉ちゃんもセントお姉ちゃんも座り込んでぐったりしてるよ。
でもね……いちばんつらそうなのはリュウガお姉ちゃんだったの。
「おご……おごごごご……」
亀さんをやっつけた後ね、リュウガお姉ちゃんてばいきなりぶっ倒れちゃったの。
あの水色の鎧をぬいだすぐ後にね、まっすぐに立ったままビターン!って。
すぐにごしゅじんさまに抱き上げられて馬車の中にねかされたんだけど、それからずっと辛そうなうめき声ばっかりあげてるの。
「あ、ああ、甘く見てた……アレの反動がここまでえげつないとは……か、身体が、全然動かねぇ」
「自業自得だバカ」
「セントがガチで止めたのに使うからだバカ」
リュウガお姉ちゃん、ごしゅじんさま達にいっぱい言われて言い返したいけど、それどころじゃないみたい。そのうちあきらめたみたいにだまっちゃった。
「……とはいえ、アレがなかったら相当に苦戦していただろうな。起死回生の一手になったのは間違いない……褒めはしないが、認めてはいる」
「凄かったですね……スクラッシュドライバー。味方のはずの私達が恐ろしく感じるほどの威力でした」
「うん! すごかった!」
フィーロも見ててびっくりした! とくに亀さんの足をなぐってグラグラさせてた時!
「でもあの時のリュウガお姉ちゃん……こわかった」
「そうだな……あれがスクラッシュドライバーとドラゴンジェリーの恐ろしいところだ。使用者が冷静さを保ってる間は頼もしいかもしれないけど……もし、闘争本能が理性を上回ったらどうなるか」
「こいつはとくに血の気が多いからな」
セントお姉ちゃんははーっておっきなため息をついて、リュウガお姉ちゃんがつけたままのなんとかどらいばーをにらんだ。
「創り出したオレが言うのもなんだが、コイツは世に出すべき兵器じゃなかった。設計図も含めて、跡形もなく破壊する」
セントお姉ちゃん、なんだかすっごい苦しそう。自分が作ったものを壊すのがイヤなのかな?
またため息をついて、なんとかどらいばーを取ろうと手をのばして……その手をリュウガお姉ちゃんがガシッてつかんだ。
「……悪いがコイツはまだ返せねぇ」
「おまっ……!」
えー、そんなにつらそうなのにまだつかうの?
……でもフィーロ、リュウガお姉ちゃんのきもちわかるかもしれない。
「バカ! いくら強力だからってこんなもん何回も使わせるわけないだろ! 今回は急ぎで作ったからこの仕上がりになっただけだ、今度はもっと安全性を高めて───」
「事態はまだ終わっていない」
リュウガお姉ちゃんをしかるセントお姉ちゃんに、ごしゅじんさまがそう言った。
そっかー、ごしゅじんさまもおんなじこと考えてたんだね……見たら、ラフタリアお姉ちゃんもうんってしんけんな顔でうなずいてる。
「どういう事だ、ナオフミ? 霊亀はもう倒しただろ? アイツももう全然動く気配なんてなかったし……」
「……お疲れ様でございます。イワタニ様」
セントお姉ちゃんだけわかってないみたいで、すっごいふしぎそうな顔になってる。
そしたらフィーロたちのとこに、メルちゃんのお母さんがやってきた。
「軍の被害は?」
「イワタニ様達が早急に動いてくださったおかげで、最小限に抑えられました……攻撃を受けた者もすぐに治療し、寄生も防げています」
「そうか……それで、使い魔達の動きは」
ごしゅじんさまに聞かれて、メルちゃんのお母さんはすごくむずかしい顔になってだまっちゃった。
何も言わなかったけど、ごしゅじんさまはそれでわかったみたい。
「使い魔が止まっていない以上、まだ何か原因を取り除けていないんだろう……それをどうにかしない限り、事件はまだ終わりじゃない」
「なっ……」
「霊亀が沈黙している間に、奴の背中……霊亀国に向かって調査をする。それまで少しの間だが、体を休めておけ。リュウガは留守番だ」
うえぇ〜〜……やっぱり〜。
フィーロもうつかれてるのに〜。
Side:Sento
「おーい、三勇者やーい。どこいった〜?」
女王さんが馬車を後にしたあと、霊亀国を調べる隊を編成するために、ちょこっとだけ自由時間ができた。
その間に、動ける奴で3バカの行方を調べて見ることになった……んだが。
まっっっったく手がかりも何も見当たらねぇでやんの。
「ったく……どこ行っちまったんだ? 負けて恥ずかしくて顔出せないのはわかるけどよ、いい加減現実認めて出てこ〜い!」
こ〜い……こ〜い……こ〜い……。
オレの呼び声が虚しくこだまする、もう何十分探してると思ってんだよ。
リーシアも「ふぇえええイツキ様〜!!!」って速攻で探しに行って全然帰ってこねぇし……まぁそのうちナオフミあたりに首根っこ引っ掴まれて戻ってくるだろ。多分。
はぁ……あんだけ必死に戦って勝ったってのに、なんつーモヤモヤする結末だ。
でもまだ使い魔は止まらないし、三勇者も見つからないし、そもそもこんなに急に霊亀が復活した理由もわかってないし、わからない事が多すぎる。
「やるしかない、のはわかってるけど……流石に堪えるなぁ」
次から次へと厄介事が舞い込む……ヒーローってのがこんなに忙しいとは。後悔はしないけど、嘆きたくなるな。
……おそらく、オレ達が強くなるのを待ってくれる事なく、脅威ってやつはどんどん膨れ上がる。今回の一件で、それを痛感した。
正直死にたくないし、逃げたいけど……前に言われた通り、この世界で生きてる以上、逃げ場なんざどこにもない。
あの時はテンパりまくって冷静じゃなかったと今なら言えるが……ヒーローの口にする言葉じゃねぇよな。
生きたいし、逃げちゃいけない。
だったら限られた時間の中で強くなるしかない……言葉にすりゃ簡単だけど、キッツイよなぁ。
そうなるとやっぱ、せめてオレ達だけにしわ寄せが来ないよう、あいつらにもきっちり強くなっててもらわねぇと……面倒臭ぇけど。
「しゃーねぇ、時間いっぱいまでもうちょっと探してやるかぁ」
……そう、独り言ちていた時だった。
『気をつけろよぉ? セント……お前がどれだけ必死になろうとも、運命ってやつは待っちゃくれないんだぜ───』
!?
不意に耳元で聞こえた気がした、聞き慣れたあの人の声に思わずはっと振り向く。だけど、そこには誰もいない。
幻聴…? あの人との事がまだ吹っ切れられてないせいか?
だけどその割には……えらくはっきり耳元で聞こえたような。
「姐さん……」
突然降りかかった不思議な体験に、オレはしばらくの間その場に立ち尽くし……勝手に、気持ちが引き締まっていくのを感じた。