おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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アンケートは何やら邪神と魔王、終点が人気ですなぁ
ですが、ちょいとこの世界の敵をなめてるかもしれない
先に投票しちゃった人は大丈夫だろうか?


episode.5 「カルネ村の戦い:裏側」後編

 俺はアルベドとセバスを伴い、村の外周へとまわっていた。

 人目はなくなり二人へと振り返る。

 

「アルベド、お前はシャルティアを此処に呼びシャルティアの班の行動を引き継げ」

 

「そ、そのようなことおっしゃらないでくださいませ!私はモモンガ様の下での護衛をするために!」

 

 アルベドは狼狽えながら俺が下した命令を撤回してもらえるよう懇願してくるが、俺はその姿を冷めた目で見ていた。

 

「で?それがお前が命令を聞かない理由か?護衛であればセバスがいれば過剰なほどなのだが……他のスキルを確認するためにシャルティアを呼べと言っているのだ。何の問題があるというのか言ってみろ」

 

 俺は腕を組み、指で二の腕をリズムよく叩くことで苛立っていることを暗に示しながら、理由をしゃべらぬアルベドを見ていた。

 今は一分一秒がもったいなく問答を切り捨てる判断を下す。

 

「<メッセージ>、シャルティア、ここにゲート繋げ」

 

 その言葉にアルベドはおそらく絶望に似た表情なのだろうがそんなことは気にせず、シャルティアにメッセージを伝えれば秒とかからず転移門が展開される。

 それは俺の出したゲートと変わらぬ形状で現れ、魔法としてのグラフィックは手を入れてなかったなとかつてを思い出す。

 

「シャルティア、アルベドとの交代だ。ぐずるようならそいつはセバスと協力してゲートに放り込め」

 

「「はっ」」

 

 狼狽えるアルベドをよそにセバスが右をシャルティアが左を担当し、即座にアルベドを放り投げれば通過すると同時にシャルティアがゲートを消す。

 

「シャルティア、セバス。広場にいない村での生存者及びに死者を傷つけないようにここに、丁寧に連れて来い」

 

「はっ」

 

「しかしそれではモモンガ様の身の安全が……」

 

 シャルティアは即座に返事をし行動に移すが、セバスは護衛がいないことを心配し即座に動くことはなかった。

 

「ハンゾウが全ての兵士たちを広場に釘づけにしている。何も問題はない、時間がないのだ。早く動け、セバス」

 

 問題のないことを説明しセバスにも動くことを急かす。そんな説明をしているうちにもシャルティアは生者探知を発揮しまだ息のある者たちを運んでくる。

 

「さぁ時間はないぞ。下位治癒(レッサー・ヒーリング)

 

トリアージ(治療の優先順位)なんかがわかればいいのだがな』

 

「う……」

 

 致命傷に近い状態で放置されていたもの、血を流しすぎたもの、次から次へと運び込まれ下位の魔法とはいえクールタイムや詠唱時間が必要であるために追いつかなくなってくる。

 

「息のある者はこちらに運べ。徐々に回復する領域を展開する。安全なる聖域(セーフティ・サンクチュアリ)

 

 地面が白く輝きだし自己回復を高める領域を作り出す。本来であれば自己回復ではなく秒間で回復させるより上位のものの方がいいのだが、怪我人はシャルティアが運んでくるためにこちらにしている。セバスは死者を担ぎ運んでくるがその顔は沈痛な表情をしている。

 

「さて、次はこちらだな……」

 

『本当にこれで正しいのか……命を弄ぶ行為なのではないか……』

 

『悩め悩め、そこに正解はないんだから。正しかったか誤っていたのかなんてどうせ決めるのは他人なんだ。悟、お前が覚悟した道を歩け』

 

 両手で頬を叩き、気合を入れなおして巻物(スクロール)を用意していく。

 真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)というスクロールは本来であれば俺の手元にはなかったはずのものだが、先日入手したワールドアイテムから生産することができた。

 死者蘇生(レイズ・デッド)をはじめとした信仰系魔法の死亡したキャラクターを蘇らせる魔法だが、一部の例外を除きデスペナルティというデメリットを持つが、トゥルー・リザレクションはそのデスペナルティを最小にしたものである。

 数%という微量なペナルティはどうしても発生してしまうが。

 

「すぅ……はぁ……」

 

 それよりも俺は俺の倫理観こそが警鐘を鳴らしていた、「死者の蘇生」という人が憬れながらも忌諱してきた行為であり、その手の怪異的な物語が好きなタブラさんですらその手の成功例になるような物語は多くないと返していた。

 そして大抵の失敗談では死者はアンデッドとして蘇ることが多いのだと。

 だから俺は本当にこれが正しいのか自信が持てなかった。

 

「すぅ……トゥルー・リザレクション」

 

 深呼吸をし改めてスクロールを握りしめて魔法を唱えれば、スクロールは熱の無い白い炎を上げて灰になっていくのと同時に対象として選んだ老婆の死体が水が凍る時のような、氷がさらに冷えて割れるような音を出して……色の無い灰になっていく。

 俺の目の前にうつっているのは昏い水底だ。其処に老婆は両膝をつきこちらを拝んでいた。

 

「ばばの命一つでは安いかもしれませぬが、どうか……どうか……村の皆を、孫たちをよろしくお願いいたします」

 

「ああ!頼まれてやるとも!救ってみせるとも!だから……だから……この手を取ってくれ!あんただって救いたい一人なんだ!」

 

 脳裏に想起するのは、キッチンで倒れていた母親の最後の姿だ。あの時今のような力があれば迷うことなく振るっただろう。

 そんな俺に老婆は顔を上げて、悲しそうに儚く笑う。

 一歩、たったの一歩踏み出せば手の届く距離なのにその一歩が踏み出せない。

 足が石や鉛になってるわけでもない、誰かが掴んでいるわけでもない、これは俺のトラウマだ。

 離れられることが痛む。

 一人また一人ギルメンが来なくなる、それを見てきた。

 失うことが恐ろしい。

 俺は誰かの思い出になれたのだろうか、皆は去っていった。

 亡くすことが怖い。

 母を亡くした時の喪失感は文字通りの世界が壊れる音だった、愛することを止めた。

 なのに愛されたいと願った、その骸が『モモンガ』というアバターだ……身体ばかり大きくしたというのに自分の中身は空っぽ、主体性もなく誰かを推すようなこともなく、ただ分不相応な夢を見ていただけの只人、稀人に憬れながらもそこに手を伸ばすことも歩きだすこともできなかった。

 

『わはは。さぁ踏み出していけ……俺はお前から離れられない、一心同体だからな。失うことはない俺はお前と一蓮托生だ、死ぬときは一緒だろうよ。忘れてんのか?俺はオーバーロードだぞ?悟、君よりも長く生きてやらぁ。不老不死の超越者なめんなよ』

 

 その言葉に勇気をもらう。

 ふっと笑ってしまいそうな言葉だが、それは鈴木さんなりの一緒に背負う(歩む)という言葉なのだろう。

 今まで踏み込むことができなかったただの一歩を踏み出す。

 誰かを救えただなんて胸を張って言えることだなんてなかった、正義を掲げた誰かを救う事が出来るほどに真直ぐに生きることだなんてできない。それでも願ったのだ。

 自分の我が儘を言う為の一歩を。

 誰かの迷惑だなんて考えずにひたすらに造りたい物を創り出し、飽きれば放り出して次を探しに行くような自由に憧れた。だから目を背けていた。

 自分の我が儘をする為の一歩を。

 誰でもない自分が自分で歩く為の力を得ることを望み、その為に偽悪を演じてまで誰かの為に在ろうとしてきた惡の一文字を背負って生きた。だからこそ近づこう。

 自分がわがままであるための一歩を。

 老婆の手を取って立たせればその姿は光になってワールドアイテムの中に吸い込まれていく。

 

「『白痴蒙昧の瞳』よ。その力を示せ!」

 

『鈴木 悟』が何かに接続されるように感覚が拡張される。

 本は光り輝き一刹那にも足りない白昼夢の空間は壊され、それに気が付くものは他には誰もいなかった。それに繋がる本体以外には……

 

『あぁ、久々に面白い(違う)夢が見られそうだ。(モモンガ)(鈴木悟)のモラルを壊し異形(オーバーロード)堕ちて(代わって)いくのはこのシリーズ(オーバーロード)ではいつもの(繰り返されてきた)事……あぁ、本当に楽しみな(変わった)夢になりそうだ』

 

 それを見ていた本体はそっと先を見ることを止め、反芻するようにこの物語を楽しむこととする。

 老婆の姿はなく、老婆が着ていた服を着ている年若い女性がそこには横たわっていた。

 

「すまない……これはどういうことだ!?」

 

 悟はそのあまりな状況についていけず混乱をきたす。このワールドアイテムには『本来の死亡した事実を無くして全盛期の姿でこの世界に呼び戻す』という効果のはずなのだ、若返らせる効果は無い筈なのにどうしてこうなっているのかがわからない。

 

「いやいやまてまて……まだ慌てるような状況じゃない。まずは他の村人たちに蘇生を施さなくては」

 

『アイエエエエ!?ドラゴンテイマー!?ナンデ大ニース!?』

 

 何を知っているのか鈴木さんがものすごく驚いている。何に驚いているのかわからないが、近くにさらに驚いている人がいると頭が冷めて冷静になるというのは本当なんだななどと思いながら改めてトゥルー・リザレクションのスクロールを用意する。

 一日に百本という生産量に制限はあるものの『覚えていない魔法』を含んでどの様な魔法のスクロールも生産ができるというのはありがたいものだ。

 もし言葉は通じても文字が通じない場合はアイテムが一つあるとはいえ、これで通訳(リーディング)という翻訳魔法を使うこともできる。これで日本語に戻して文字の勉強をすることもできるだろう……エキサイト翻訳みたいにならなければいいが。

 鈴木さんが魔法を使ったのだろうか、あのお婆さん改め女性のステータスが頭の中に流れ込んでくる……種族レベル人間10レベル、プリースト(マーファ)15レベル、ファイター10レベル等々レベルは異常かなと思うのだが、ステータスがなにこれ。

 100相当じゃないかな……他の村人を調べてみるが平均レベルは一桁、この人頭抜けてるんですが。

 

「ふぅ……とりあえずこれで死亡者全員の蘇生は終わりか(深く考えるのはやめよう)」

 

 怪我を癒した村人に死亡から復活したばかりでうまく動けない人たちを任せて、広場の方へと皆で移動し始める。

 ハンゾウは既に鎮圧を終えて、後は心根を圧し折る最終作業に入っているらしい。

 挑むことを許さず、逃げることも許さず、命乞いにはまともに耳を貸さず、相手の信じている正義を否定していく。

 人を、同族を無意味に殺す獣に慈悲をかけてやる理由はない。

 生きたまま、生きていることを後悔させてやる……死して逃れることは許さない。

 

「ひぎぃゃぁぁぁっっ!!」

 

 悲鳴が響き渡り、ハンゾウが振り向くと同時に手を振るえば甲高く乾いた音が円を描くように連続して響く、鉄兜が縦に割れ金属が地面をたたく音が軽く鳴る。

 

「旦那ぁ、お早い到着で……ご注文の通りに心根から折っておきやしたぜ」

 

「ハンゾウよ、ご苦労」

 

 振り向いたハンゾウに労いの言葉をかけてから、兵士()共に目を向ける。

 

「まだやる気はあるかね?」

 

 怒りも殺気もない。ただこれから踏みつぶされる虫けらを見るような、そんな感慨しかわかなかった……むしろ怒りは自分に向かっていた。

 なぜもっと早く見つけられなかったのか、もっと早く気が付いていれば襲われ傷つく人も、痛みを受けることもなかったのではないかと、つい考えてしまう。

 

「はじめまして、法国の諸君。俺はスズキ サトルという」

 

【申し訳ありません、モモンガ様。デミウルゴスです……アウラからの報告ですが村に向かう装備の整った騎馬兵が二十名ばかり。それと囲むように展開されている魔法詠唱者(マジックキャスター)の集団が確認されました】

 

「法国に向かわせるものを一人お前たちで選びたまえ、他は捕虜として捕らえさせてもらおう」

 

 その言葉に殊勝にも辛うじて立っていた最期の一人が膝を地に付ける。

 

「すまないが村長……この村で一番偉い方はどなたかな?」

 

 言葉をかければ他の村人たちよりも一回り体の大きな初老の人が出てくる、服装は幾分マシという程度だが其処からわかるのは、あくまで村でのまとめ役でありそれ以上の権限を持っていないという事なのだろう。

 

「わ、わたしが村長です」

 

「ご無事で何よりです。まずはこの兵士たちを詰め込んでおくことのできる倉庫があると幸いなのですが……残っているでしょうか?」

 

 周りを見渡すが家屋はいくらか壊されているのだが、どれが居住の家で、どれが資材などを置くような倉庫なのかがわからない。年貢を納める倉庫などは無事なのだろうか。

 

「そ、それよりもお助けいただきありがとうございます。倉庫は……あちらに……無事ではあるようです。ところで貴方様は……?」

 

「ああ……紹介が遅れましたな。旅のものではありますが、遠目から火の手が上がっているのが見えまして急ぎ来たのですが……」

 

「やぁ、旦那がきちまう前に全部終わっちまいましたなぁ。こいつぁ見せ場を奪っちまった感じですかねぇ……」

 

 兵士を全員、モンスターの捕獲用ロープで縛りあげ引き摺るハンゾウが近くまで来ていた。

 

「構わんさ、部下の活躍は上の評価にも繋がるのだそうだ。俺には何とも実感のないものなのだがな……これからわかるようになるのだろうか?……」

 

「ああ……御屋形様の教えでやしたか」

 

 額当てを下げてこちらを見るハンゾウ、ただ従うだけのシャルティア、執事らしく後ろに控えるセバス、暴走しているだろうアルベド、本当にどうしたものだろうな。

 あと人間に種族レベルってなんだよ、まさか他の人にもついてるのか?




種族:人間
 レベルに応じてアビリティを獲得、ベース経験値や種族経験値、職業経験値にブーストをかけるものが多い反面全てのアビリティにとあるデメリットが付与されている種族。
 ステータス補正などもなく、ごく一部の特定を除いて弱点を作るものもないので実に平均的な種族となる。



次回「はじめての戦闘そして反省会へ」
『アレを止めろぉぉぉぉ!!』
おっさんの叫びが響く
難易度パラドックス、その意味を知るだろう
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