おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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本の中がどうなっているのか?
わかる人には絶望しかない

グロテスク表現注意


episode.2 「現状の確認と絶望の現状」

 あっちの木は何々という木だ、こっちの雑草はなんとやらだ、鳥だ!初めて見るがなんという種類なのだろうか?と目にうつるもののほとんどに興味を寄せながらも歩きながらカルネ村を目指していた。

 木々の流れる速度からおおよそ時速120㎞で。

 

『歩きでこの速度か、体感時間はどうなっていることやら……あの本からの景色を俺は見ているから知っているがこの際だ。悟君にも知っててもらうかね』

 

 楽しく話している最中で申し訳ないが、確認のためにその会話に水を差す。

 

『すまんが悟君、変わってくれ。蒼井君に確認しておきたいことがある』

 

『むぅ……そうですね確認が終わってからでも……会話はできますしね』

 

 とても残念そうに主導権を俺に譲ってもらえる。

 俺は変わり次第、『白痴蒙昧の瞳』を取り出し中身を確認するが、一時的に書かれていたニースを除きアインズ・ウール・ゴウン全員を含んだ四十一名の名前が書かれている。

 悟君の場合は取捨選択できずその全てを本に収められている者たちに見せることになるが、俺は俺の遺志で取捨選択をし見聞きをその都度途切らせることができる。

 これは俺が、この本の接続者に選ばれたことが関係しているのだろう……そのおかげでこの本の本体である『白痴の魔王』がこの世界にいることがわかる、この世界を見ていることがわかる。

 

「さて、こんな無体な骨の姿で済まんがね。ステータスは確認できるかい?蒼井君」

 

「あぁ、貴方がギルマスを支えていてくれた鈴木さんなんですね。ステータスの確認ですか?いいです……よ?んん??あれ?おかしいな……」

 

 ステータス確認ができるスキルか魔法かを使ったのだろう、思わぬ変化をしているだろう事で狼狽して二度三度と確認しているようだ。

 

「あれ?おかしいな。人化しているはずだからトレントのレベルは消えてる筈なのに……あとマスターホムンクルスなんて取った覚えがないんだけどなぁ……なんで?経験値獲得上昇するけど快楽ダメージ倍化って何さ!?」

 

『え!?俺ももしかして変な職業取ってることになるの!?』

 

 マスターホムンクルスもちってことは触手系の技とオートでの生命魔力回復が特徴だったかな。

 

「まぁまぁ二人とも落ち着け、レベルは?『生前』と変わらず100かな?手から何か出せるような気がしたリは?」

 

 見慣れぬステータスに混乱している蒼井君を落ち着かせながら次の質問をしていく。

 

「手から?」

 

 手のひらに目を向けてハテナマークを浮かべていると、にゅるりと木の根が生えてくる。

 

「なんじゃぁこりゃぁっ!?あ、でもこの根の特徴から広葉樹系かな?樹齢は15年から20年と見た!」

 

 手のひらに生えた根っ子を右から左から眺め、また自由に動かせることを確認した後に引っ込めれるかを確かめ、また出しては他の種類はどうだろうかなどと色々と試しているようだった。

 ユグドラシルでは人間の種族レベルはなく、あくまで職業レベルとしてだけ存在していたらしい、悟君から聞いたまた聞きでの情報になるが、これの確認により世界の法則としては三つ。

 

「この世界での元々の法則と、ユグドラシルでの法則、そしてもう一つ別の法則。現在最低でも三つの法則が確認できているわけだが、これよりも他の法則が増えないとは限らない」

 

「この根っ子とか……ん~人間のまま使える何かしらのスキルを持つ法則がある、そしてそれが種族レベルとしての『人間』が存在する法則である、ということだね」

 

 法則の礼を上げる度に指を一つずつ立てていくと、それの仮説を補足するように蒼井君の言葉が続く。

 悟君は若干ついていけてるか怪しいが、少なくともユグドラシルの常識だけではないという事は把握できているようで一安心している。

 

「さて、この世界での違いというものを実感してもらったところで、次は……蒼井君の『死因』を聞いておこうか」

 

 その質問に蒼井君はとても嫌そうな顔をしながら、ぽつりぽつりと話し出してくれる。

 

「僕はアーコロジーの外に探しに行っていたんだ。まだ……植物の種なんかが残っていないかと。研究と調べもの、外への捜索でマスクを直す余裕なんてなかった。だけど……だけど……」

 

 その先の言葉に詰まりながらも話そうとしてくれるが、その先の言葉の予想がついてしまうが故に言いづらいその言葉を俺が引き継ぐ。

 

「生産できるものはなく、後は消費するだけの社会、だからこそ……『残された時間そのもの』が足りなかった」

 

 俺の言葉に沈鬱そうに小さく頷く。

 

「鈴木さんは知ってます?もうあの時期には企業はどうしようもないところまで来ていた……固形食やゼリー飲料、それをどうやって作っていたか」

 

 力を籠め過ぎた拳は震え、巨体に似合わぬ優しい顔は悲しみと絶望に染まっていた。

 

「僕はそれを見てしまったんだ。たまたまだった……いや、必然だったのかもしれない。僕は食料品を作る工場なら質が悪かろうとも、古くなって痛んだものであろうとも……食べることを目的にしたものがあるんじゃないかって……今はあれを見てしまったことを後悔している……それを認めたくなかったんだ。認めたくなかったからこそ、たとえ壊れかけのマスクだと知っていたとしても!僕は見つけたかったんだ!人が人を食べている、そんな悪夢から逃げられるものを!」

 

 それだけの言葉を蒼井君は一気に吐き出し、俺は頬骨をかく。

 生産しようにも生産品が壊滅している以上想像はしていたが、そうなれば発生するのが食料を求めた略奪という『戦争』他のメンバーの多くはこれで命を落としたのだろう。

 根が農耕民族の日本人と、狩猟民族であるゲルマン系やモンゴル系……どちらから先制されたかは言わずもなが、殲滅戦目的な上に『生きていようが死んでいようが関係がない』のなら生き残りはいないだろう。

 

「やはり死者の魂だからこそ、この本に収められた、か。悟君はそれを聞いても……みんなにこの世界を見せていくかね?もしかすれば憎まれるかもしれない。『どうして俺じゃない、なんでお前が選ばれたんだ』と『なんで自分は死んだのに、お前は生きているんだ』と」

 

『俺はそれでもみんなとの再会を、『全員の蘇生』を望みます。それが俺の願いなんです』

 

 本を通して見るその瞳はまっすぐに俺を見ていて、俺の質問に即答で返す。

 

「そんなのは筋違いだろう!先に見捨てて去ったのは僕達だ!僕たちの方こそ、責められる謂れこそあれ、責めるなんてあっちゃいけない!もしそんなことになっても僕は悟君の味方だぁ!」

 

 道理も筋も通らんが、それでもそう思っちまうのが人の心で、死んだ者の形なんだよなぁ……理不尽だろうが不合理だろうがそういった感情に引き摺られやすい。

 あとの確認はナザリックに顔出すかどうかかね。

 

「そこは出てきてからかね。そんな死因だったからこそこの世界の植物見て、まだ来れない筈なのに無理やり押し通ったって感じで発狂してたしなぁ。んでナザリックには顔出すかい?」

 

 アザトゥースの欠片ともいえる本だ、無理やり壁を抜けたときに本体でも見たのだろう。

 激情に動く二人の流れをぶった切って次の質問に移っていく。

 蒼井君は落ち着く為に一度咳払いをして、少し考え頭をひねる。

 

「うーん……ナザリックに置いてる物で必要そうな物ってほとんどないんですよね。装備も変に高級なものを持ってきちゃうと悪目立ちするでしょうし……何よりもあの忠誠の儀を見て思いましたが、NPCが気持ち悪い。僕達の造り上げた設定ではある、あるけども……ただその設定をなぞるだけの人形では自由意思を持った自然な状態とは思えない、だからこそあの忠誠というのは気持ちが悪い」

 

 戻る積もりはないとはっきりと意思表現をしたうえで「あ、パンドラとシズは別ですね」と付け加えていた。

 

「あとアルベドの事は見てましたけど……細かい部分でボロ出してるっぽいけど?」

 

「内政関連のところでな良妻賢母とも読み取れる設定ってがアルベドにあるんだがな、これ誰に対してかけられてると思う?」

 

「うーんやっぱりモモンガさんなんじゃない」

 

 考えながら答えるが、この設定に何の問題があるのかわかっていない様子だった。

 

「正確にはギルマスにかけられるな。で、その上での最終日に変えてしまった『モモンガを愛している』だ……妻であり母でもある状態で『重ねて愛している』となっているわけだ、これがな。……さて、さらに問題が浮上しているんだが、元の『ちなみにビッチである』なのだがなぁ……この設定は本当に消えているのか?ビッチというのは性行為へのハードルが低い女性の事を指されるわけだが、『モモンガ』への積極性、依存度があまりにも高くないか、と思ってな。まるでビッチのままモモンガだけを愛しているように感じれてどうにも」

 

「『あー……たしかに』」

 

 もしかしたら二重奏どころか三重奏になっている可能性を示唆すれば、種族の事も相まって腑に落ちるという感じで納得している二人。

 サキュバスがビッチ、というか捕食者のような行動を取ることに違和感が無い以上……内務担当でありギルマスを補佐する立場からの内心が悪感情ではないという前提、愛しているという設定の変更という洗脳に近い現状……その上での想像されたというNPCという特性からの盲信、狂信に等しい全肯定。

 

「正直、俺は先のメイドと同じ立場にアルベドが居たと仮定したら、押し倒した挙句に精根共に搾り取られるんじゃないかと予想している」

 

「うん。僕もそう思う」

 

『否定できない上に、なんか恐ろしい存在になってる気がする』

 

「で、その上で聞こう……『彼女』にしたいと思うか?」

 

 そこまでの分析を話したうえで、アルベドを彼女として『お付き合い』したいかと問うてみるが二人して、いやこれを見ているギルメン全員が拒否した。

 女性陣ですら『ないわー』という反応であり、エロゲ―イズマイライフを掲げるペロロンチーノですらそういったのは空想だけで十分、と首を横に振るう。

 その上でギルメン憎んでると思うから注意な、と締めくくったところで、メッセージが繋がる。

 

「シズか。何か問題でも発生したか?」

 

【侵入者と思しき謎のメイドとアルベド様が、モモンガ様の部屋にて戦闘をしようとしたのでパンドラ様が預かっておられた山河社稷図を使用され隔離されました】

 

『侵入者って問題じゃないですか!?え?いつのまに!?』

 

「ふむ、それは青いメイド服を着た、ナザリックのメイド達とは違うメイドの事だな……メイドから手を出したのか?おそらくアルベドから攻撃を仕掛けたとみているが」

 

【はい。その通りです。応戦の為に動いたとみております】

 

 大方の予想通りか、アルベドの事だ他のメイドが居ないうちにアホなことをしようとしたのだろう。

 そこに謎のメイドが汚れた姿で悟の香りをさせてれば……さもありなん、と。

 夜分に入ってきたメイドを見てから考えたものだが、敵対意思はない。あるのなら悟が寝ているときに膝枕してそのまま寝顔を見ながら髪や頬を撫でたりせずに、文字通り寝首をかけばいい。

 

「双方出てきてお前たちに攻撃意思がないなら客分としてもてなしておいてくれ。カルネ村から戻り次第確認するとしよう、それまではお前たちから敵対することを禁ずると強く言っておいてやってくれ」

 

【了解いたしました】

 

『え?あの子侵入者だったの?マジで?』

 

 思いっきり怪しいこと言ってて、さらに疑問に思ってたのにいったい何だと思っていたのか……いくら誘惑されて抵抗下がったところに魅了されたからって、最後に逃げ出したときは正気だっただろうに、なぜ驚くのか。

 

「んじゃこれで俺の方の確認は終わったか、後は引っ込むからのんびり会話してくれ」

 

 人間へと身体を戻し主導権を悟君に返す。

 イメージとしては古いシアターだろうか、その映写機がある部屋から俺は悟君を送り出す。

 スクリーンに映し出されているのは悟君が見聞きしている世界そのもの、席には目立つ四十三名の異形種を始めとして入れ替わる様にスマートフォンを持つ者やノートパソコンを持つ人間たちが多数がこれを見に来ている。

 すぐに立ち上がり立ち去るものもいれば、ポップコーンの山を摘まみながら長い鑑賞を楽しむもの、新しい展開になる度に入り直すもの。

 それこそ様々だが、アインズ・ウール・ゴウンに属さぬ者たちも『これ』を見に来ている。

 

 全てを作り出したものにして全てを滅ぼすもの、全にして一、カオス。

 

 全ては泡沫の夢の世界、微睡の内の生を世界とする、アザトゥース。

 

 並行世界の管理者にして、正史を絶対とした並行世界の抹殺者、アポトーシス。

 

 全ての魔王の母にして、金色の理の絶対敵対者、ロードオブナイトメア。

 

「……なんでさらに増えてんだよ……」

 

 三体でも絶望だってのに更に増えてるとか、マジでどうしろってのよ。全員が全法則側の概念体で真っ当な方法じゃ対峙すら敵いやしない……そもそもに戦おうという方が阿保の所業と言えるような連中ばかり。

 だというのにラスボス達は自分たちの出番はまだかと心待ちにしているという感じがひしひしと感じられるという。

 

「あの人間は私が先に目を付けた、楽しめる人間だ」

 

「あら、それじゃ私は魔王に作り替えてもらっていくわね」

 

「正史とは違うが、歪み切った結果だというのに不思議と安定している。興味深い」

 

「アザトゥースのように皆で贈り物をするというのも面白そうではないかね?」

 

「「なるほどそれは楽しくなりそう」」

 

 止めろ、止めてくれ、止めてください……やっぱり『白痴蒙昧の瞳』はワールドアイテムはワールドアイテムでも別世界のアイテムかよ……さらにワールドアイテム増やすとかこいつら絶対に楽しんでやがる。

 止めさせたら機嫌悪くして何をしでかすかわからん。危険は承知で悟君に持たせるしかないという現状……強くはなれるだろうが大丈夫なのかが心配でしかねぇ。

 スクリーンには蒼井君と和気藹々と話しながら歩き続け、カルネ村が見えてきたところだった。

 無情にも映写機は繰り返し廻り続ける同じ音を奏でる。




触手技
 ユグドラシルには存在しない性技を含めた拘束系を得意とする技。
 主にスキュラ種が使える物で力や器用さのステータスが与ダメに関連している。
 もんむすのスキュラ種は神話のスキュラとは違い、主にタコなどの様な吸盤付きの触手を下半身に生やした女性型モンスターである。
 拘束し丸のみにする技などもあるのでユグドラシルの耐性を過信するのは危険である。
 最大HP分のダメージを与える技であるため、即死耐性が在ろうとも即死するのである。
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