おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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次回からようやく冒険者になる為に動かせる


episode.6 「自壊:アポトーシスの尖兵」

「てめぇが嗤ってんじゃねぇよ!」

 

 横殴りに蹴りを巨大なアポトーシスに叩き込めば、片足立ちだったこともあり簡単に壁に叩き付けることができた。

 片方の肩には紫の腫瘍、金色の織布をキトンのように着込み両脚は具足でも履き込むように金属片が色取り取りに足を飾っていた。

 特徴的なのは肥大化した金槌のような右腕に、やっとこの様な鋏を五つほど横並びにしたような左腕の爪だろう。

 管理者の塔であれば、本来はアドラメレクな筈だが俺の知っているそれではない、という事は他の最上位アポトーシスが発生した世界であり、ルカが辿り着かなった世界と繋がったと見るべきだろう。

 

「このスヴァローグを足蹴にするとは、いったい何者だ」

 

「訊かれれば応えよう。流離いの復讐者、スカルマン」

 

「……その従者、ハニワ大魔神」

 

 あほらしい自己紹介を大真面目に返している間にムジナが片腕と両足を失っている少女を確保していた。あとはこちらがそこまでの道を塞げばいい。

 

「それじゃあ、あっしも名乗りやしょうかねぇ。悪魔超人のザ・ニンジャでさぁ」

 

 偽名とは堂々と名乗るもんである、名前を偽ることにデメリットがないならわざわざ本名を名乗ってやる理由はないからな。

 パンドラもムジナもその辺は情報戦の基礎としてそつなくこなしてくれて何よりだ。

 他の……デミウルゴス辺りなら合わせそうだが、他はそのまま本名を堂々と名乗りそうだな、創造主がつけてくれた名なのだから、と。

 

「(しかしスヴァローグねぇ……確かスラブ神話のトリグラフ(三位一体)の一人と数えられる主神格の火神だったか?水が効けば御の字、蒸発するならそれも利用させてもらうとしよう)」

 

 両手で棒を回しながら先端と石突に魔力を流しながら戦闘の準備を始めていく。

 スヴァローグはこちらを値踏みするように目を離さず、口遊む。

 

「第一種現界接触、か。排除(delete)する」

 

「そいつはこっちのセリフだな」

 

 弧を描くように棒を振り下ろし右腕の振り上げを阻止、まともにダメージは与えられていないが弾かれる勢いを利用して石突をわき腹の叩き込み、反発力をのそのまま身体で回転に変えて水平の横薙ぎへとつなげる。

 

「(物理耐性在り、無効吸収反射ではない。攻撃速度はあの見た目に反して出が早いがそこは脅威でも何でもない……問題は攻撃に合わせた吸収効果か)」

 

 石突を床の上で滑らせルーン文字を完成させ、一文字の魔法(単音魔法)を発動させる。

 

イーサー(フロストプラント)

 

 開放する言葉と共に床を這う氷の蔓が引き離したスヴァローグに絡みつこうとして凄まじい勢いで蒸発して視界を悪くする中、十の光弾が霧の壁を穿ちながら殺到して命中しては消えていく。

 

「ぐっ……むぅ」

 

「やれやれ、こいつは正に焼け石に水って奴だなぁ。んじゃこいつはどうよ『悪夢の王の一片よ』」

 

 霧がこちらの方向に膨らみ、目を見開いた鬼気迫る勢いで霧の中から飛び出してくるが、残念一拍遅い。

 

「唱えさせるものかよ!」

 

 爪が素早く振られるが俺の身体を通り抜けてその姿を揺らめかせて消える。

 

「『世界の忌ましめ解き放たれし、凍れる黒き虚無の刃よ』」

 

 詠唱の途中でありながら集約させた力は掌の内にて、暴走しようと暴れ出そうとする。

 その力を棒に這わせて大鎌(size)のように作り変え、空を切るように振り回しながら、力を安定させるために並行詠唱を行っていく。

 この力を知っているのは先ほどの反応からわかっているが、これで謎も増えた。

 なぜモンパラの住人と思われる存在が、この詠唱を知っている。

 

「『我が力、我が身となりて、共に滅びの道を歩まん』」

 

 考えられるのはその世界と繋がっている存在であること、もう一つは観測側か。

 前者でも後者でもどちらにせよ、目的は変わらんがカオス化が進むことだけは阻止しねぇとな……わかっている防ぎ方は『殺さない事』だったか?生きていた存在を殺してしまうことで世界の乖離が早まり、結果並行から外れて終端が変わることで剪定される。

 

「まだだ!まだ最後の一節は唱えさせん!アトミック・レイ!」

 

 大口を開けてそこからブレスだろう、火力は大きいが隙だらけの大技を向けてくるが本当にこの呪文の恐ろしさを理解しているのなら愚策も良いところだ……わざわざ教えてやる必要も一人でやり合ってやる義理もないがな。

 しかし蘇生魔法が通用するこの世界ではどうなることやら、重要な人物が巻き込まれたなら蘇生させるだろうし法国の動きには要注意かね、炙り出しも兼ねた取り立てだからな。

 

「おっと?私を忘れていませんかな?」

 

 パンドラがいつの間にか道具創造(クリエイト・アイテム)系で作り上げていた大金槌を振り上げ横か顎をかち上げ、放とうとしたブレスを妨害する。

 

「『神々の魂すらも打ち砕き……神滅斬(ラグナ・ブレード)』ナイスアシストだ」

 

 胸の崩玉を輝かせながら何も写さなくなった棒を両手で回し、スヴァローグに余裕綽々で向かい合う、勝ち誇る時が負ける時とはよく言うものだが、アポトーシスは殺した程度じゃ蘇るからな、どうしたもんだか。

 とりあえず、殺してから考えるとしますかね。

 踏み込み突きを放つと同時に先端をグレイブの刃先に変え、引き戻すときには大鎌に、刃を避けるために飛んだ追撃に青龍偃月刀に切り替え、蹴りあげることでその回避を許さない。

 

「巻き込まれない距離でバフ積みを頼む。あの子も生きてるなら回復してやりな」

 

 この魔法の特性上、巻き込めば即死は免れん。

 フレンドリィファイアで殺しちまうなんてアホな真似はできんからな……発狂した馬鹿に右肩撃ち抜かれたことを思い出しちまった。

 言いながら逆手に持ったポーションをパンドラに投げ渡す。

 

「っち……息も脈もありやせん」

 

「彼女が諦めずに叫んだからこそ間に合ったのです。私達が諦めてどうしますか」

 

 ボロボロの肢体から見えるのは配線の青や赤の色に人の骨に当たる部分には金属質の輝き……そりゃ息も脈もないわな、姿形は違うがガイノイド、アンドロイドみたいなものだったか。

 切り飛ばせたのは爪の一部、爪の一部を犠牲にラグナ・ブレードを『弾いた』。

 という事はあの爪には虚無属性も備えられている……発動はリスクを伴うと、スヴァローグの苦渋に歪む瞳から判断する。

 

「こいつは長くなりそうだ。ギアを上げていくとしよう」

 

 もしくは切り札を使わせたってとこかね。

 方天画戟に切り替え、着地までにかかる隙間に身体を引き絞る。

 

「一歩、無間……二歩、帰来……三歩、夢幻」

 

 大半のターン制RPGじゃ素早さなんて軽視されがちだったりするんだがな……現実になれば質が悪いものに早変わりだ、FF(ファイナルファンタジー)のヘイストとスロウがよくわかるだろう。

 下手な時止めよりも効果的になる。

 

「秘儀、五段突き」

 

 穂先がぶれて神速ともいえる速度で『九つ』の突きが同時に放たれる。

 空気抵抗がないから勢い余ったが、身体に掠めながらそれらを躱していくスヴァローグに衝撃が襲い掛かる。

 

「ついでに銀の弾丸(ヨーグルトパンチ)も持っていきな」

 

「おっとこれも持っていってもらいましょうか、道具創造」

 

 パンドラが這わせた魔力を刃先に変えるように剣を作り出し、食らいつくようにスヴァローグの足を絡め捕る。

 

「しかしこれでは……」

 

「『事象の地平に近づけば、相対時間は遅くなります。あなたにとっては一瞬でしょうが、こちらでは永遠です。理解できましたか?』ブラックホールクラスター!」

 

 青き魔神の詠唱を借りてユグドラシルのブラックホールの効果を変質させ打ち出す。

 黒点はスヴァローグの胸部に吸い付き、光ごと飲み込もうとするが伊達に主神様をやってるわけじゃないらしい、特異点に抗いそれを圧し潰そうとしてくる。

 

「今のうちに退くぞ。攻撃を与えてもこっちが吸われて軒並み回復されるんじゃ分が悪い」

 

 こいつで詰みとさせてもらおうか。

 ムジナに煙幕を投げさせ、視界を再び奪い二人でその場を離脱、出口へと向かって走っていくが空間を渡り転移してきたのだろう追いつき、俺とパンドラをそのやっとこで圧し潰そうとしてくる。

 ブラックホールのダメージは尋常ではなかったのか身体をぼろぼろにしながら最後までこちらを殺そうとしてくる。

 

「あー……遅かったか」

 

 肉を貫く音と共にムジナが上から落ちてくる。

 

「っち、しくっちまいましたねぇ」

 

「は……ハハハ……第一種逃がしは……」

 

 もう一度、同じような音がスヴァローグから聞こえる。

 

「……は?」

 

 呆気にとられたような表情を顔に浮かべて、こちらを見ている。

 

「忘れていたな?お前を心底憎んでいる奴が居ることを」

 

 貫いたのは右手とその肩でラグナ・ブレードを纏わせた棒をその軽い体重に自由落下を乗せた一撃。

 

「『神々の魂(皆の仇)を打ち砕け……神滅斬(ラグナ・ブレード)!!』」

 

「はっはっは、奇襲に声殺せってぇのをよく聞いてて、よく我慢したなぁ……叫びたかったろうに」

 

 スヴァローグはその表情のまま虚無に喰われていく、少女がその崩れていく身体を滑るように転がり落ちてくるがパンドラが優しくキャッチする。

 ラグナ・ブレードは一発でしっかり力を放出したのか、俺が造り出した棒のままになっていた。

 

「ところで君は誰だ?」

 

 ここで探索を行ったが少なくとも入り口からここまで、誰かが居た痕跡はなかった。

 なら彼女はここに最初からいたのか?否、ここは「入口」だ。もしもいたのならムジナが気が付いていたはず。

 では入れ違いになったというのか?これも否、少なくとも手早く捜索していた俺達が入り口からここまで調べた時間と彼女が転移の魔法陣からここまでくる速度に釣り合わない。

 ゲーム脳だのと言われても仕方のない考えだが……俺たちが最上階へと辿り着くことでフラグが発生し、彼女がポップした?ふざけるなよ。

 

「(それよりは時間が歪曲しているというほうがしっくりとは来るか……それが起きた原因がわから……あー……居たよ出来そうな御人らが……)」

 

 シアターを見る余裕ができたから見てみれば、乱痴気騒ぎの酒盛りが繰り広げられてるんだがいったい何があった。

 しかも見えるのは人外ばかり、ギルメンはこれに気が付いてないのか身内間でハイタッチとかしていたが、悪羅王にヘパイトス、ジャンクドールにガイストビーネ(動く絵画)にシャドウ娘……その他もろもろ多種多様なメンバーがどんちゃん騒ぎをしている。

 

「私は……ラスティです……」

 

 その錆色の髪に合わせたヨーロッパ方面の愛称に使われる名前だった。

 

「ありがとうございました、スカルマンさん、ハニワ大魔神さん、ザ・ニンジャさん」

 

 名乗り上げの偽名をそのまま覚えていたのだろう、それに俺たち三人吹いてしまったのも仕方がない。

 

「?」

 

 吹き出したことに首をかしげていたのだが、それが猶更笑いを誘い三人でぐしゃぐしゃとかわるがわるに頭を撫でてやっていた。

 が俺はこの選択を、偽名を訂正しなかったことをのちに後悔することになる。

 崩壊していく塔を名残惜しみながら出口を潜っていく、その出口は光り輝き明るい未来を顕しているようだった。

 ラスティはその出口の一歩手前で止まり、後ろからムジナに俵担ぎにされて無理やり潜らされる。

 

「やれやれ本当に止まりそうになりやしたね」

 

「は、放してください!?私は……私は……」

 

「「皆の仇を討てただけでよかった」?生きれる命粗末にするもんじゃないよ、目いっぱい生きてお前さんの歩いた人生を肴にさせろ、強くなるんでしょ頑張りなさい、やっと迎えが来たんです私たちの事は気にしないで、ラスティさんの未来に神様の加護がありますように……」

 

 本を開き、名前の後に書き込まれてきた言葉を伝えれば、その言葉にラスティは大きく目を見開く。

 

「わはは……死の支配者が死者の声を聞けないなんて思わないことだな。お前が自ら死を選ぶのはお前が覚えてきた者たちへの侮蔑だ、お前は生きようとした者たちを背負っているんだろう?」

 

 神の部分はイリアス(ドブ川)だったから差し替えさせてもらったが、その言葉を聞いたラスティは震える手で顔を覆う。

 俺はそんなラスティの頭に優しく手を置いて撫でながら言い聞かせる。

 

「それとな、この世界死んだ奴を生き返らせれるぞ」

 

「!?」

 

 すごくびっくりした顔をでこちらを見ているので視線を上に移動させ、この世界の夜空を見せてやる……あの世界では、この子の造られたときには空ももうなかっただろうから。

 視線に誘導されて一緒に夜空を見上げる。

 第六階層にも空は作られていたが、あれは地球から見た夜空だ、それとは違う世界の空は当然のように星の配置が違う……光害などないために星の輝きがよく見える。

 光害の影響下だと見えるのは確か三等くらいまでだったと思うが、ここからなら……

 

「やべ……八等か九等くらいまで見えてる」

 

 アンデットが所有する暗視の効果もあるのだろうがいよいよ人外じみてきたのを実感してしまう。

 

「クーちゃん、ウーちゃんにも見せたかったなぁ……」

 

 見上げるその瞳からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

 その後ろでは無粋な音を立てて崩れていく塔、ゆっくりと根本あたりから魔力の光が漏れ出していた。

 この魔力の波動はヨーグルトソースのものってことは……まぁ、そういうことなのだろう。

 

「俺から君に渡せるものはこの位だ」

 

 そういって渡したものはただの紙片、書いてあるのも何でもないカルネ村の位置を示したもの。

 その言葉を聞いてきょとんとした表情を浮かべていたが、スカートのポケットからアルアジフの紋章が刻み込まれたアミュレットと何かの紙束を取り出し、俺に渡してきた。

 

「あれ?本がない?」

 

 ポケットを引っ張り出して中を確認するが何かの灰がボロボロと落ちてくるだけだった。

 

「どうやらラスティに本を持たせた奴は過保護だったみたいだな」

 

 光は強くなっていき俺たちを包んで、その輝きに目を細めながらラスティの姿を確認すれば光の中姿を消していくのが見える。

 光が収まれば、そこにラスティも塔も最初からそこに何も無かったかのように森が広がっていた。

 

「お嬢ちゃんはどうなったんで?」

 

「俺たちが俺たちの時代に戻ったように、あの子もあの子の時代に戻ったのだろうな」

 

 俺は最後に本の中に会った名前を呟き、最後に言葉を繋げる。

 

解放(リリース)

 

 その言葉に反応する者はなく、その事実に俺は笑みを浮かべる。




スカルマン
週刊マガジンの読み切りに登場した石ノ森先生が書いたホラー漫画
仮面ライダーの前身なのは有名
1970年に書かれた作品である

大魔神
大魔神の顔面変化をよく真似された
1966年から作られた特撮系時代劇の主人公?

ヨーグルトソース 正式名はヨグ=ソトース
その名を呼ぶ意味を知ってるおっさんは大体ヨーグルトソースと呼んでいる
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