職業を決めて組合に提出した後は宿屋を紹介されたのだがまだ時間に余裕はあるので、カルネ村で頼まれていた用事である奴隷市を覗いてみることにする。
奴隷市は活気にあふれており、競り手がファッション会場の舞台のように設置された台の上を歩くエルフを見ていくらだ、こっちはこれだけ出すぞ、といった感じで値段を出していくオークションのような感じになっている。
ファッション会場のように見えるがここは奴隷市だ、エルフたちの首にはその証である首輪がつけられているのだが、ぱっとみチョーカーとかにしか見えない。
いわゆる物々しさというものが感じられない、掲げられる値段も銅貨数枚から銀貨と少々くらいであり、次の奴隷が出てくるのだろう奴隷の紹介をするラミアがメガホンで大きな声を上げている。
「はーい、お次はダークエルフのグレーテルちゃん。近接職で村の防衛教練、商隊の護衛、冒険者ならスピードファイター!ちょっとトブの北部から出てきたばかりだからわからないことも出てくるかもしれないけどそこはちゃんと教えてくださいね。それじゃグレーテルちゃん一言よろしく」
グレーテルと呼ばれた少女は一歩前に出てきてステージの一番前にて口を開ける。
「よろしくお願いします」
その声は小さく後ろの方で見ていた俺達には聞き取り辛いものだった。
藍色のフードを被り同色の服装とマント、それと褐色の肌。
『ダークエルフと言っても黒人のように黒いわけじゃないんだな』
酷く小柄に見えるのだが……ユグドラシルだと小柄でも他と遜色はなかったし、大柄でも見かけだけの見掛け倒しとか、蒼井さんも筋力よりも体力型だったから俺よりも筋力低いんだっけ。
見かけによらないってことかな。
「村付き銅貨八枚」
エンリちゃんがいつの間にか競りに参加していた件について……銅貨数枚って安いんじゃないかって思われるかもだけど、村での教練主体だと家屋の提供つまり住み込みでのものになるから宿屋代食費込みと考えれば十分になるんだそうな。
さらに言えばこの国だと奴隷というか、国営の派遣会社のような扱いで雇い主がオークションのように払う給金を先に決めることになる、で奴隷の設定された額を稼いで王宮に報告することで首輪を外すことになるって渡されたパンフレットに書いてあった。
首輪も防犯や人権を守るための魔法がかけられており娼婦や強制労働など望まぬ仕事を強要させる場合、即座に知らせるものとなっている。
また奴隷は法国から圧力掛けられ買わされていた過去がある為にエルフが多く、またその開放の手助けという意味合いも含まれるのか今の形になってからは積極的に参加する人が多いらしい。
寒村などからの出稼ぎという形で参加する子供いるので人間の子もいるがその表情に暗さはないのが救いだろうか。
そんなことを考えていれば競りは終わったのか、銅貨12枚でエンリちゃんが競り買ったみたいだ。
「これで村も安全になってくれると良いんですけど……」
「ゴブリンの子たちもいるから大丈夫だと思うけどね」
多分あの黒ゴブリンたちLv80前後でゴブリンクィーンはその上だから、他の村を見てないけど村の人のレベル(一部例外を除く)を見る限り最強の村になってるんじゃないかな……どこぞのラストダンジョン前の村みたいに。
「グレーテルさんだね、俺はサトル=スズキ。よろしくね」
「影の中の人もよろしく……」
手続きを終えてこちらに来るエンリちゃんよりも頭一つ分低いのでこちらを見上げて、一度こちらの影を見てもう一度こちらに顔を向けて挨拶を返してくれる。
ムジナの隠密って低くない筈なんだけどどうなってるんだこの街……ツアーは気付かないのにそれに気が付くってどうなってるんだ、不可知の魔法も怖くて使うこともできない。
一人そのことに気が付き冷や汗を流しながら、断りを入れてグレーテルのレベルを調べさせてもらったが、この子Lv90でした……故郷だとこれでも下から数える方が早いとかエルフの里が怖すぎ。
グレーテルからダークエルフの里の事を聞くとミカエラ様やラ・クロワ様から直接指導をしてもらえる上に周りの森にはモンスター退治の為の索敵は苦労しないために強くなることは簡単なんだとか。
法国って王国が腐敗してるから滅ぼしてもらうんだ、とか言ってたけど……強いエルフなんかの子を村に配置して訓練施してる時点でほぼ無理じゃないかな。
前に鈴木さんが王様一人に法国嵌められてるとは言っていたけども、言ってはいたけども此処まで徹底的に情報操作していくとか、ナザリックの事もバレてるんじゃないだろうか。
『ちなみに昨日ラナーに着けてたシャドウデーモンがあっさり見つけられて近日顔を出しに来るとよ』
『なんでそんなことになってるんですか!?』
王女様に会ってるとか、さらにシャドウデーモン張り付かせてたとか初耳なんですが。
『城下で聞ける噂だとラナー第三王女の事ばかりだったからラフィニア王女の愛称だと思ってたんだがな。まさかそのままの名前だとは思わなかったよ……紛らわしい名前にしやがって』
『そこ怒るとこじゃないですから、むしろ俺が鈴木さんを怒るところですから、ホウレンソウくらいはきちんとしてください』
わはは悪い悪いと謝っているが、ふと腑に落ちないことがあった。
第三王女と第二王女を間違えたと鈴木さんは言っていた、これは素で間違えたのだろう、城下での情報収集報告ではラフィニア王女の事は一つも上っていなかった。
なら間違えたのは間違いがない、間違いから手に入れた情報であの塔の事を知ったはずで塔を見過ごすことができないからあの塔に行った筈、それは本当に偶然なのか?俺が『たまたま』目を覚ましたのも?ラスティの視線で見たあの映像は……『誰が見せていたんだ』?L様か?
そこまで考えて背筋が寒くなる。
それだけの手の広さを持つ何者かがこの世界に居ること、そして俺たちに目をつけていること、そうなればまだ姿形もわからぬ何かは姿を隠しているかもしれない。
まるで目的地もわからない薄氷の道を行くような不安感に血の気が引くが、気力を奮い立たせていつものように平静を保とうと努力する、俺が気付いて鈴木さんが気が付いてないわけがない。
「顔色悪いけどどうかしましたか?」
「大丈夫ですか?サトルさん」
駄目でした。
元々予定していたポーションの鑑定を置いておいてまずは宿屋に行こうと提案されるほどに心配されてます……そんなにも顔に出やすいのだろうか、俺は。
「い、いや。人ごみに酔っただだけだから」
『悟君。いいことを教えてやろう、女性は男性の嘘を見抜くの上手いぞ』
何よりも俺も嘘がつくのが下手なのだろう……目が泳いでいるとかどもっているとか言われて、あっさり見抜かれあれよあれよという間に宿屋に引っ張られていくことに。
なんというか俺は押しに弱いのだろうか。
エンリちゃんとグレーテルに両手を掴まれて紹介されたのは想像していた安宿ではなく、それよりも一つランクが高い、冒険者という荒くれものが泊まるような宿ではなく旅行者などが泊まるような宿、貴族や金持ちが泊まるようなものとは違うが小綺麗にされていて女性が一緒でも危険だという感じのしない宿だった。
そんな宿な筈なのに、なんで人の介抱をしているのだろう?なんて言うか尼さんみたいな感じ?いきなり胸を抑えてうずくまって苦しそうにしているんですが。
「助かる……」
付き人だろうか隻眼で髪を縛った男性で、左腕が義手になってる。
ステータスを確認する限り蟲付とかいう初めて見るバフと竜韻の揺り篭というデバフがかかっていてこのデバフが原因だろうか。
「たしか、デバフだけを解除する魔法があったはず……こいつだったかな?
スクロールを取り出し、魔法を唱え経過を観察する。
助けようと思った理由は男性の方がムジナの知り合いのようだったからってのもあるけども、苦しんでいる姿を見るというのは忍びなかったのが大きいんだと思う。
それはきっと俺が人間だと自信を持って言える理由な筈だから。
なによりも『困っている人が居たら助けるのは当たり前』その言葉を嘘にしたくなかった。
こうやってほいほいスクロールだとか魔法だとかアイテムを使用するのはダメなんだろうけども、対価をもらわないとやばいのは確かなんだけど、どうしたものか……と、使ってから悩んでいたら効果があったのか苦しんでいる様子はなくなって呼吸が安定して、胸部から子供が出てきた。
「いや、なんでそうなるの!?」
「おいおい、驚いてる暇があるなら代わりな。そっちの坊主は俺が診るぜ」
厳つい悪人顔のモヒカンに青いジャンプスーツの筋肉盛々な男が俺を押し退けて、男の子の脈を測りてきぱきと道具を用意して即席の手術場所を確保していた。
透明な幕の空間、携帯無菌室だろうかそれの中で透明な輸血パックのようなものから伸びる管を肘の内側に刺し、腹部の傷を針でホイホイと掛け声よく縫い上げていく。
最後に手のひらに電撃を纏って胸部に押し当てると身体が撥ねて、血を吐き出した。
「ふぃ~……息も吹き返したし、安静にしてりゃ大丈夫だぜ。だからその刀を引っ込めてくれねぇかな?隻腕の兄ちゃん」
「九郎様に何をした……」
「ガガガガガガ、緊急だったから術式の説明してなかったか。身内かい?んじゃそっちの兄ちゃんも一緒に来な酒飲みながら説明してやる」
近くのテーブルに引っ張り込まれてなんでか一緒に食事をすることに。
青いモヒカンはテッドブロイラー、隻眼の人はオオカミさんというんだそうな。
ここは場所が変わり王国軍が正規兵を正式に取り入れたことから『死を撒く剣団』という野盗に成り下がった元傭兵団のアジトに使われている洞窟の前、軍服にピンク色をしたハニワ顔、パンドラ・アクターが立っており、その横には見張りをしていたであろう武装した人間が転がっていた。
「ふむ。弱い……所詮は逃亡兵の寄せ集めですか。これでは情報も当てになるのか……」
姿を消していたのかパンドラの横に浮遊する目玉が現れ視線を送られる。
「おっと、フロウタイボールの皆様方の情報を疑っているわけではありませんよ?ですが人間での最強というような人物がなぜこのようなところに力を貸しているのやら」
やれやれという形で首を振るい、
「普通に戦い、音も抑えていないというのに気づかないとは……カルネ村のニース様が例外という事なのでしょうかね、とりあえずは隠し通路の有無を調べておくべきでしょう。
魔法で調べた結果、隠し通路が一つ外への脱出経路としてあるのみであり、他に目ぼしい情報が手に入ることはなかった……範囲がそう大きくはないこの魔法で調べられる程度の広さしかないというこの野盗の評価を下げるような情報しか出てこなかった。
「のんびりと行きましょうか。目的は『ブレイン・アングラウス』、他の有象無象に興味はありません。エ・ランテルでの情報が確かであれば明日にはここに冒険者が踏み込みますから、他に情報を流す理由もない」
軍靴を鳴らしながら言葉通りに洞窟内を我が物顔で歩いていく。
途中で出会う野盗たちをやさしく卵豆腐を箸で崩さないように注意するような繊細さに注意しながら壁に叩きつけて進んでいく。
たまにクロスボウで射撃をしてくるが当たるような矢は四本ある指の内の一本の腹で受け止め、ダーツ遊びをするように足や腕に投げ返して痛みに悶えるままにしておく。
進軍するパンドラを止められるものはなく、20人もそんな調子で迎撃していたら、ようやく目標の人物が目の前に現れたことに盛大にわかりやすく安堵のため息を漏らす。
「やれやれ、やっと出てきてくれましたか」
「ハッ。こいつは大物だ、まさか物語の英雄の一人『ハニワ大魔神』がこんなちんけな野党のねぐらを襲撃してくるとはな」
「英雄とはいったい何のことやら、思い当たる事柄はございませんが……こちらに協力していただくために逃すわけにはいきませんので。クリエイト・アイテム」
魔法を唱えブレインの背後に複雑に絡み合う剣の壁を作り出し、ブレインの逃げ道を塞いでおく。
魔法で作ったとはいえ、ブレインの武器ではその壁を突破することは難しいだろう……あくまで難しいに留まる程度、斬鉄の心得があれば簡単に切り開けれる程度でしかない。
「チップは貴方の命、勝てば諸手を振っての自由を、残念賞は私に強制的に協力していただきます。さぁ……全身全霊の全力を出してくださいね?」
気絶しない程度の気配を、絶望に直面する程度の戦意を、引き摺りだして恐怖と生存本能から構えを取らせる。
ブレインの取る構えは腰を落とし鞘を佩いたまま、握りに手を這わせる所詮は居合いの型。
本来であれば間合いに入ったものを即座に切り捨てる必殺の型ではあるが、パンドラはあえてその間合いに無警戒な足取りで踏み込んでいく。
その瞬間、刃が閃きパンドラの喉笛にその刃先が食い込むようにブレインには見えた。
「ふぅー……これが、あなたの本気ですか?こんなものが、生死を賭した一撃ですか……」
ブレインの決死の一撃であり必殺のそれは、確かにパンドラの首を捉えていた。が、その一撃はパンドラの薄皮一枚も割くことは叶わなかった。
「馬鹿な……ありえない……」
自身の必殺を記してきた一撃が何の防御態勢も力も込めた様子もない急所への一撃でありながら何の痛痒も与えてはいないことを知り、一歩後退る。
吐き出されるため息は呆れと憐れみと虚しさを綯い交ぜにしたような何でもないそのあたりの道端を這っている虫を見るような眼をしていた。
「俺の力が通用しない……?」
膝から力が抜け、掌からは刀が転がり落ちる。
「まぁ、武技そのものは望んだものですが……これでは他が駄目ですね。貴方の剣は軽い……たかが一撃、それが効かなかったから諦める脆さ!!その程度の絶望がどうしました?それは!自身が強いなどと!最強に至れるのだと!自惚れている証拠ではないですか……貴方自身の重みも、剣に籠められる想いも!そして何よりもぉ!あなたに大切なものが何一つない、その程度の重みしか感じられない軽さでしたよ」
まさにその動きは劇場に立つ役者というような大げさな身振りと声の高低を利用した落胆と侮蔑を込めた台詞回しだった。
最後にはブレインの目の奥底を見るように顔を近づけて、心を圧し折っていく。
お前の自慢してきた大切な心のよりどころにしてきたものは、ただのガラクタで磨いたつもりになって何もしてこなかった無意味なゴミだと突きつける。
「さぁ、残念賞といきましょう。拒否権はございません、私に協力していただきましょう……モモンガ様を殺しうる刃となってもらう為に!!」
それはそうなってほしくない望まぬ未来で、来得る未来を血反吐を吐く様な想いで叫ばれる。
プレゼントの中身紹介
邪神アッザ 例の本(人間性確保のアイテム取得に必須)
魔王L様 部下D(ザエトル壊れたのでそれの代わり)
自壊アポ 管理者の塔(生き方の方向決定)
終焉混沌 モリガン(理解者の補填)
終点??? スパロボ四体(最低限の戦力として)
全て自分たちの元に辿り着かせるための、悟たちで遊ぶための下準備であり善意というものは……多分含まれていない