おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:黒龍なにがし

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責任の取り方は何も受け入れるだけではない
NPC達の創造主たちと合わせるというのもまた責任の取り方だろう


まぁ、この作品だと忠誠の儀で大半のNPC達がやらかしちゃってるからギルメンたちからの信用はマイナススタートだが……


episode.13 「二人目と三人目」

 爆音の様な腹の虫の音が収まると少年が目を覚ます。

 なんというか顔つきは人懐っこく、人の事は言えないがとても二枚目とは言えないものだが愛嬌があり人を引き付けるものがあると思う。

 せわしなく動く顔は周りを見て状況を把握しているようにも見えるし、周りを見た結果更に訳が分からなくなっているようにも見えるのは、俺が最初にこの世界に来た時にも似ているからだろうか。

 

「ここはどこなんだ!?おいらは一体どうなったんだ!?」

 

「待って待って……まずは落ち着こう!?」

 

 近くに居た俺が肩を掴まれ激しく揺さぶられた。

 

「混乱しているようだ、エンリ。サニティをかけてあげてくれるかい?」

 

「は、はい」

 

 手のひらが光ったと思えば、少年の慌てぶりが嘘のように納まり大人しくなる。

 

「た、助かった……」

 

 肩から手を放され、揺さぶられることでまだ視界が揺れている様な気がしてくる。

 少年は悪いことをしたとわかっているのか、落ち込んだ様子で大柄の身体を小さくさせている。

 

「すいません……」

 

「まぁまぁ、あれだけの音を出してたんですしお腹も空いているでしょう。食べながら話を聞いても良いのでは?」

 

「すいません……」

 

 同じようにもう一度謝るが、今度の謝罪には腹の虫を聞かれていたことへの羞恥も含んでていたものだった。

 串に刺されスパイスを混ぜた塩を振られただけの簡単なはずの澄んだ油と肉汁が滴る串焼きにされたものを頬張りながら、目を白黒させている少年を皆して見守っている。

 

「うっま!?」

 

 思わず声が出たのだろう。

 ぺロスという竜種は初めて狩ったものだそうだがテッドが毒の有無を判断してから血抜きをしてから皆で解体して、こうして食べてみたのだが同じように皆その味をかみしめるように無言になっていたのだから。

 そしてシチューも渡されゆっくりと食べることなどなくまるで飲み物でも飲む様に一気飲みで無くなったのを見て俺が思ったのは野菜結構でかいのにどうやって咀嚼したのだろうか?だった。

 そしてお腹も膨れて落ち着いたのだろう……ほぼ1tのぺロスが骨だけになった現状をどう受け止めるべきなのだろうか、とりあえず落ち着いて少年の現状を話し始めてくれる。

 簡単に纏めると少年の名前は巴武蔵、アメリカは聞いたことがあるけどもニューヨークとは都市の名前だろうか、そこでメカザウルスという先の倒した恐竜と機械がくっついたような怪物をゲッターロボという宇宙開発用ロボを改造した正義のロボットで倒そうと自爆したと……言う話だったのだが自爆して気が付けばここで最後にメカザウルスの首を切ったところで記憶が終わっていた。

 

「どう思います?レゾ」

 

「ふむ、考えられるのは私達と同じ異邦人という事でしょう。死亡がキーだと思われますが……どうにもそうでない方もいるようなので二つの法則がある可能性と、全く違う法則の可能性がありますね」

 

「法則がわかれば……?」

 

 一通り話し終えた武蔵君の話を統合して法則を考えるレゾさんだが、俺にはなんでそんな法則が出てくるのかがわからない……死んでいる人がこの世界に来てる?じゃあ……もしかして俺も?

 

「わかりませんね、少なくともそれを確約することはできません。私の居た世界、ナシェル君の居た世界、ノブナガ君の居た世界、そして武蔵君の居た世界は違う世界だと思われます。聞いたことの無い地名が多く生態が違っているようにも感じられる。仮に移動できる方法が分かったとしてどの世界に辿り着くのかは保証できません……今いる全員の知らない全くの未知の世界だとしても不思議ではないですからね。この辺りはスズキさんの方が把握しているかもしれません」

 

「「え?」」

 

 最後に締めくくられた言葉に含まれていた名前は鈴木さんであり俺の事を指したものではない。

 

『鈴木さんは……今の状況をどれだけ知っているん、ですか?』

 

 俺の尋ねる声は絞り出すように小さく震えて、なんで話してくれなかったのかという怒気と猜疑、そしてそんなにも頼りないのかと信頼されていないのかという悔しさを含んでいた。

 

『わはは、そう褒めんでくれ……わかっているといってもおおよそ三割(八割)か。法則はおそらく三つ混じり合っている。死んだはずの人物、悟君のようにゲームに紐づいた人物、そしてその物語(人生)を終えた人物。死んでいるかもしれないと教えれば恐慌状態になるかもしれなかったからな』

 

 確かにあの日の覚悟がないままにそれを聞いていたらどうなっていただろうか……鈴木さんの言葉を疑うことはなかっただろう、今もその言葉が真実だと思う。

 疑わず信じるからこそ、自分が死んでいるかもしれない、という事を受け止められなかったと思う。

 受け止められ切れずにタガが外れていたのではないだろうか、死んでいるのだからと好き放題しようとしたかも知れない、自暴自棄になるのか、やけくそになって全てを破壊したのか、それはもうわからないが碌なことにはなってなかったと思う。

 

『さて、解決法というか帰還法と言えばいいのか……本の中にL様(ロードオブナイトメア)級が四人居るって言ったな?恐らくだがその四人が満足する結果を出せば帰れるかもなぁ……帰してくれると良いなぁってとこだ』

 

『希望的憶測ぅ!?』

 

『こっちから見る限りこっちの行動見て楽しんでるからなぁ。まぁ、なんとかなるだろ異世界旅行なんて三回目だし』

 

『なんで経験者!?』

 

 なんかとんでもないことを知ってしまい精神的疲労を与えられながら、自分でもわかっている部分を掻い摘んで話してみる。

 

「つまりその四人をどうにかすれば戻れるのか?」

 

「俺にもわかんないですよ?楽しんでいるそうですから……そもそも俺は帰りたいと思っていません。でも協力はしてあげたいと思っています」

 

 説明が終わって本当に帰れるのか不安が募るし、何よりも俺にはこの世界に居たいと思える理由ができてしまった。

 武蔵君には協力はするが、最悪L様に頼み込んでこの世界に居させてもらえないだろうか。

 とりあえずの目的が出来たのはいいが、其処に辿り着く為の道は全く見えないことに武蔵君は頭を悩ませているが、そんな武蔵君にレゾは軽く言葉を投げかける。

 

「それならこの世界で戻れるように努力しながら、力をつける修業期間だと思えばいいのでは?」

 

 食後のお茶を飲みながら投げかけられた言葉を咀嚼していると、電子音でのどこぞのお店の入店音のような音が俺の懐から鳴り響く。

 

「ガーネットの召喚確率が100%になりました。タブラ……なげぇの召喚確率が100%なったぞ!とっとと呼びやがれ!この腐れポンコツが!」

 

 懐から飛び出てきた『白痴蒙昧の瞳』には表紙には血走った目が浮かんでおり、開いたページには乱杭歯の鋭い牙、さらには長い舌が生えて宙に浮いていた。

 

「なんぞこれ!?」

 

「モンスターか!?」

 

「なんですかこれぇ!?」

 

「じゃかましい!呼ばねぇなら本体に突撃させて発狂させて確率リセットすんぞゴラァ!?」

 

 俺はその言葉に慌てて『白痴蒙昧の瞳』を手に取り、呼びかける。

 

「『白痴蒙昧の瞳』よ!その力を示せ!」

 

 唱える呪文というには余りにも短すぎる『力ある言葉』と叫び、届かせれば世界は凍り灰色の世界に変わる。

 今見ているキャンプの風景が見えている、それとは別にもう一つ同時に見ている灰色とは違う白と黒の二色に彩られた四十一の扉が並ぶ空間。

 一つの扉は蝶番が壊されぶち破られ破壊された跡が見れ、一つは十二の鎖に雁字搦めにされそれぞれに南京錠がつけられた異質な扉、他の三十九の扉は普通に木製の扉で真鍮の取っ手が見える。

 そのうち二つがゆっくりと開くのが見えたとき、白と黒の世界は音を立てて砕け散る。

 時間が動き始めたときキャンプ地にはつぎはぎの肌に頭に突き刺さった巨大な螺子、むき出しの巨大な心臓に背中にいくつもの真空管が生えたフランケンシュタインの怪物であるガーネットと水死体の様な青白い肌に膨らみたるんだ皮膚をボンレスハムのような衣装で締め上げ醜悪な蛸を頭部に持つ脳喰らい(ブレイン・イーター)であるタブラ・スマラグディナがキャンプの近くの草地の上に立っていた。

 

「「ご飯ください!」」

 

 俺は素早くツッコミハリセンを取り出し二人の頭をぶっ叩いた。




竜言語魔法 《ドラゴン・ロアー》
竜信仰が魔法となったものであり野性的な生活をすることでそのレベルを伸ばしていくという基本的には敵用の魔法レベル
ナシェルが使える理由としては彼の死亡時の状況が影響している

身体に鱗を生やしたり火を噴いたり、翼を得ることで高速で空を飛ぶこともできるようになる
最高レベルでは古龍と呼ばれる最強級のドラゴンになることもできる

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