ってことでベリークルシミマス
苦しみ増すとは全く関係ないが、プレゼントだ
冒険者として旅立つ前日の夜、悟はもう眠り俺が書類の確認をしている横でモリガンが暇そうに椅子に座って寛いでいる。
「モリガン」
「んー?」
声をかければ面倒くさそうに生返事を返してくる。
「お前はやはり悟に……『今』から見れば悟にとっては未来、お前にとっては過去の悟になるが、出会っているのか?」
「随分と説明的だけど、その通りだよ」
「ただの確認だからな。だがやはりそうか……」
確認は済んだ、予測を外れてはいない、未来でそうであるのならば、結果が覆ることはない。
結果を覆してはいけない、それは今のモリガンを否定することだ。
「しんみりしちゃってさ……サトルは……いつもあんたを信じてた。あんたに教えられたことを頼りにしてた……あんたが指示した道を、自分だけの未来を歩いたさ。ルカもエンリもあんたを超えることはできなかった……あんたは卑怯者さ、だから逃げることは許さないからね」
「そうか……そうか……なら、期待せずに待たせてもらうさ」
「わたしが愛した男は諦めが悪いんだ。私だって一緒に目指してやるさ、|誰もが笑って迎えるハッピーエンドっていう奴を《あんたが遺した言葉を》、さ」
こちらを笑って舌を出して揶揄ってくる。
その返しに表情があれば苦笑で返していただろう。
暗闇の中、鎖に縛られた歯車が空回りしている、廻る歯車と縛られた歯車がかみ合わないまでも触れ合いながら着実に時間を進めていく。
無情な短針が一つ進む。
『クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがああああぁあぁぁぁぁ』
身体の奥底から響く慟哭を締め上げて黙らせる。
『黙れよ、狂骨……お前がサトルを否定するならば俺が相手になってやるよ』
俺は蓋だ、狂ったオーバーロードを出さない為の。
書類の確認が終わるころに、扉をノックする音が聞こえてモリガンが来客を確認する。
来客はアウラとコキュートス二人が揃って来ており、コキュートスの表情は変わらないがアウラの表情は落ち込みが見てわかるほどにしょげていた。
「アウラ様とコキュートス様が来られています」
「入れろ」
「「失礼します」シマス」
二人が来た理由は宿題の提出期限を過ぎたから、その謝罪という事だった。
「ふむ……マーレはどうした?まだ来ていないが」
「えっと……それは塞ぎ込んでいて……引っ張っても出てこないんです」
「そうか。なら朝起きたときにでも声をかけてやれ。朝だと知らせてやるだけでいい、無理に引っ張り出すこともない」
しばらく時間はかかるだろうが自発的に出てこれる様に、時間の経過だけ知らせるように、無理やりをしないように教えてやる。
「え?」
「ヨロシイノデスカ?」
「むしろ何がだめなのか、俺にはわからんがな。何か予想を裏切るような言葉だったかね?」
アウラは予想外の言葉をかけられてきょとんとしていて、コキュートスもマーレに何かしらの罰を与えるものだと思っていたのか確認の質問をしてくるが……本当にこいつらは俺をなんだと思っているのか。
血も涙もない骸骨ではあるが、思考方法までそこに落とすつもりは一切ないぞ。
「まぁ、マーレの事はそこまでにしておこう。お前たちはせっかく回答出来なかったのに来てくれたのだ、何がわからなかったのかを一つ紐解いてみようじゃないか。アウラは何がわからなかった?」
太ももの高さで指を組み背もたれに体重をかけることで椅子の軋む音が質問に答えるまでの静寂に重く響く。
「え……えっと……忠誠の儀の何が悪かったのだと思いましたけど、どこが悪かったのか……わかり、ませんでし、た……」
涙をこらえるように最後には嗚咽を噛み殺しながら途切れ途切れになるが喋りきる。
「ふむ、アウラは忠誠の儀に間違いがあり故に受け取ってもらえないと考えたと……」
「……はい」
今にも泣きだしそうな目は潤みながらもこちらを確かに見て頷く。
「ふむ。間違いでもあり正解の問題点でもある。着眼点は悪くないぞ、アウラよ。だが、アルベドに命じたのはお前たちに異常がないかの確認を頼まれたはずだな?」
「はい……」
「そして異常はないと報告した。なぜお前たちに異常を探させたか、それはわかるか?」
「モモンガ様の手を煩わせるほどの事もないから、なのでは無いかと考えてました」
「アウラニ同ジク、デス」
体勢を変えずに一度頷き、アウラとコキュートスの考えが変わっていないことを確認する。
「あれはお前たちが俺の気が付いた異常に気が付けるかのテストでもあった。事実シズとパンドラはそれに気が付き答えを得ている為に俺は外での任務を任せている。そしてシャルティアもあの狂戦士との戦闘の前だがそれに気が付いた故に任せている」
一呼吸入れて俺の考えが二人に浸透するのを待つ。
「気ガ付カナイカラ……仕事ヲ任セテモラエナイノデスカ?」
「仕事は任せているだろう?異常が起こる前のいつも通りの物のみではあるが。コキュートスは何がわからなかった?」
「ム……ゥ……」
コキュートスは四つの腕を器用に組み合わせ、唸りながら答えを出すために頭を悩ませている。
そんな悩みに暮れる二人を前にモリガンはあっけらかんと。
「ところでそんなにもヒントを出しちゃっていいの?」
「構わんよ。答えをそのまま教えたとしてもそう振舞うだけでその振る舞いを見せて忠とほざくなら俺はそいつを完全に見捨てるだけだ」
俺はモリガンの問いかけに毅然とした言葉で答を出す。
「まぁ、そりゃそうか。そんな真似をすればあんたを虚仮にしてるも同然だものね……そんな偽装も見抜けない間抜けだって」
モリガンの敬いもない気楽な言葉にアウラもコキュートスも殺気立つが俺はその殺気を柳のように受け流し、モリガンも頭の後ろで手を組んで暖簾に腕押しという様ににやにやと笑っている。
「それよりも珍しいな。モリガンが二人に助言をするというのも」
「いやぁ、だって見ていて滑稽なんだもの……勝手に見捨てられてると思って悲劇ぶっちゃってさ。宿題出すのってあんたたちが解けるのを期待してるからだよ?その辺わかってる?」
モリガンの顔は笑っているが、目は笑っておらず二人に向かってのみ殺気が放たれている。
「仮に……仮にだ。あんたたち受け入れられて忠義を受け取ってもらって外の仕事任されてたとしてさ……あいつの望んだ物を一体どれだけ叶えてやれるのかわかるか?」
その剣幕と真剣さに二人は「どんなことでも実行して叶えてみせる」と返すことができなかった。
「「……」」
ただ黙って歯を食いしばることしかできなかった。
「お前たちみたいなあいつを勘違いした奴が!」
「そこまでだ。モリガン」
俺はその先を告げようとするモリガンを止める。
その先は言ったところで既に意味の無いもしも話にしかならない。
「もしもの話なんぞ何の価値もない。例え……お前がそのもしもの世界を知っていたとしても、だ」
そして部屋の中を見渡せば、三人の気当りで散らばった書類に横倒しになっているベッド、部屋の隅に転がっている机に傾いた照明、壁には冷気で霜が降りている。
「そもそもにだ、他人の部屋を荒してんじゃねぇ!」
三人を部屋から蹴り出す。
あらすじに書いてる通りに『モモンガ』に憑依で
悟に憑いてるわけじゃなかったりする
この時点で気が付いてた人ってどのくらいいるんだろうか?