覚醒してる子たちの会った時の反応はそれぞれ違います
一様に同じ反応とか個人的になんだかなぁと思うことなので……
とりあえず、村の中に入ることにするのだが櫓の上から大声、というか叫び声をかけられる。
「待っていたぞぉ!!マァァイソォオオルブラッザァァァァーーー!!!」
その姿は筋肉が目立つ大柄な男性だというのは逆光から見えるシルエットから判断はできるんだが、その詳しい格好を確認することはできない。
当然顔を見ることはできないのだが、髪型が失敗したスネ夫ヘアというか昔ギルメンに紹介されてやらされた道戦士だっけ?の腕を振るって遠距離攻撃してくるキャラに似ている。
「カズキよぉぉぉぉぉっっ!!」
呼ばれている名前に聞き覚えがあるか皆を見渡すが覚えがある人はいないみたいで全員が首を振るうので、先に入った男性たちの中にカズキという人物がいるのだろう。
小走りで近づいてくるシズとその後ろをゆっくりと近づいてくるモリガン。
「おかえりなさいませ、サトル様、皆様……未来の奥方様?」
「みらいの……ぶっは」
首をかしげるシズに対して、その言葉に噴き出すモリガン、顔を赤らめ俯くエンリ。
「あー……うん、ただいま」
出迎えてくれたシズなのだが……なんで鉄の棒の先に鉄球の付いたモールなんて持ってるの。
しかも素振りしてて怖いのだが。
「同志カズキよ!ともにドージンの王を目指そうではないかぁぁぁぁ!!とぅっ」
掛け声とともに櫓の上で叫んでいた人がこっちに真直ぐジャンプしてくる。
麦畑などがあり村の中心からは200mほど離れているはずなのだが……鳥が飛ぶように真直ぐに飛んでくるのだ。
振り向くシズに気付いたのか男性はシズに声をかける。
「帝王は退かぬ!媚びぬ!省みぬぅ!」
バッターボックスに立つバッターのようにモールをバットのように構え、その男性をボールか何かのように振り抜く。
「ジャストミート……カッキーン」
「惜しい弾道が低い」
「ごぶはぁっ!」
モールの先に付いた鉄球は見事に男の腹部を捕らえ、取っ手である鉄の棒は飛んできた男の身体の衝撃にしなりながらも粘りを見せ、見事男を撥ね退け飛んできた元のやぐらの方へと吹き飛ばす。
そして櫓の方から歩いてくるメイドさんが一人いて、飛んでくる男性の腰を両手で抱えるように掴み、頭を下に向けさせて地面に男性を突き刺した。
突き刺された男の下半身は直立しており、一種異様な雰囲気を醸し出している。
「「「いやいやいや……」」」
その場にいたほとんどの人がそれに顔の前で手を振り、それはないと示す。
村に着いた全員が唖然としている中、静かに近づいてくるメイドを見てニニャが口を押え驚いているのだが知り合いなのだろうか。
「はぁ……」
村に入っただけでなんでこんなことになっているのか、気持ちを落ち着けるために一度深呼吸をし大きくため息をつく。
「ところでシズ、モリガン……さっきの人は一体?」
「パブロフと言うそうです」
「それ、ベル鳴らしたら涎垂らす犬。それとなんかよく似た長い名前の人よ、なんか王様とか言ってたけど……サイボーグでもないし変身もしないし普通の人間よ」
何かが色々とおかしい……王様って普通に人じゃないの?変身ってたっちさんが好きそうな感じなのだろうか……この世界深く考えちゃ駄目なのかもしれない。
「ところで……後ろの長髪の方は……ヘロヘロ様でしょうか?ぷにっと萌え様でしょうか?それともタブラ・スマラグディナ様でしょうか?」
後ろの長髪……黒髪をストレートに伸ばして丸縁の蔓の無い鼻かけメガネをつけてる、有態に言えば怪しい研究員という風体のタブラさんが居たが、ガーネットさんには言及はないのだろうか?
「ん、タブラさんだよ。蒼井さんと同じようにこの世界に来てくれた……それよりもガーネットさんも来ているんだが」
驚きに目を見開き、口を押えながら。
「ガーネット様でしょうか?」
武蔵に尋ねた。
「おいらは巴武蔵っていうんだ、ガーネットさんっていうのはこっちだぜ」
「なんてこった……シズに間違わられるなんて……」
武蔵に引っ張り出されたガーネットさんは汚れた()ツナギだったのでこちらで買った服を着てもらっているためにやや地味ではあるが、同じ日本人な為に黒髪で温厚そうな細目の顔立ちをしている。
間違われたことがショックだったのか地面に膝と両手をついて落ち込んでいた。
「申し訳ありません……こう……今のガーネット様から、至高の御方々という感じのオーラが感じられないのです」
「オーラ?」
「オーガ?」
「あー……あれじゃないかな。ギルマスの悟君や俺はギルドメンバーで残ってたじゃん?仲間識別シグナルみたいなものでフレンドリィファイアの判定とかに使われるあれ。ガーネットさんは仕事が忙しくなるってことで抜けてたからギルドのメンバーから外れてる感じなんじゃない?」
「あぁ、なるほど……」
「あれ?それじゃ俺、NPCに会うとやべぇんじゃね?」
そんな問答にシズがとても申し訳なさそうに答える。
「はい。おそらく侵入者と見られ、最悪攻撃されるかと」
『案の定か……ナザリックの方でその変化に気づけないとギルメン呼べても部屋にも戻れないのよな』
過去にギルメンで登録されててもシステム的にはギルドから外れた時点で、システム的には侵入者と変わらない扱いになるのか……自主的に動けるようになってるNPC達だけども、判別方法がオーラを感じられるかどうかとなれば……ヘロヘロさん、タブラさん、ぷにっと萌えさん以外がやべぇ。
『鈴木さんはどこで気が付いてたんですか?』
『そりゃ当然……あの最初の名乗りの時よ』
ガチで最初からNPC警戒してた……俺、独りだとどこまでも真直ぐに使ってもらおうとするNPC達を信じてしまっていたんだろう。
NPC達が俺に願うように、俺もNPC達に裏切られたくないと、見限られたくないと盲目的に信じようとするのだろう。
その原因を探すこともせずに。
嗚呼、本当に恐ろしいものだ……『そうであることが当然だ』と思わされるというのは、ここまで離した心ですらそう思わらされるのだから、どこまで塗りつぶそうとするのだろうか。
俺は確かにモモンガを造った、モモンガは俺のキャラクターではあるが、俺はモモンガではない。
俺は『鈴木 悟』だ。
あの時はNPC達に『俺のナザリック』でのことを語って聞かせようと鈴木さんに相談した、その時に気が付いたのだ。
違うものなのだと。
「そうか……改めて聞くが、シズ。『アインズ・ウール・ゴウン』というギルドは、『悪として振舞い虐殺をしていく』ギルドだったんだな?」
「はい。少なくとも私の記憶に記録されているものではそうなっています」
「「は?」」
その言葉に驚く二人、それと同時に納得する。
「え?いや、ちょっと待って……そう見られていたじゃなくて……」
「いやいやいや……俺らは少なくとも弱者救済で動いてたよな……」
タブラさんは吐き気を抑えるように口を手で押さえて青ざめガタガタと震えだす、ガーネットさんは頭を掻きむしりながら自身の覚えている記憶と違うものを搔き出そうとするかのように覚えている事を呟く。
そもそもユグドラシルは、R-18行為は禁止されている。
Gが付くような方面でも当然のように、切断表現はないし流血表現もない、当然のように死体に何かしらをするようなことも不可能だ。
せいぜいがテキストにする程度の事だろう、ニグレドの方でさえ何度も警告を喰らっていたはず。
だのに、記憶では生贄にすることで魔法を増やした。
二人の視線に合わせて指を三本立てて質問をすることで、今の狂気から目を逸らさせる。
「これが何本かわかりますか?蒼井さんが死亡するに至った原因は覚えてます?」
「あぁ、当然……そうか、そもそもユグドラシルの記憶がおかしい。食人を促すようなものはそもそも禁止されてる、企業が死体を使うのだからそれを横取りされるような真似を赦すはずがない」
「それよりも……俺たちの記憶はどこまで正しいんだ?」
多少は落ち着いたのか、片手で顔を覆いながらもこちらをしっかりと見てくれる。
「不明です。俺も割とつぎはぎで繋がれてますから……断片的に思い出しますが辻褄が合わないことの方が多いです。不意に思い出すものは疑ってかかる方が吉だと思ってます。特にNPCを見て思い出すのは危険かもしれません」
これからも何かしらがきっかけで同じように、不意に思い出させられるだろうことは容易に想像できる……セバスを見たとき、忠誠を信じようとしたとき……だからナザリックから離れている。
「そういや、パンフだとセバス見てたっち・みーさん思い出すんだっけ?……あの場面じゃあの人がいの一番に突っ込んでいく人でしょうが……笑いでも取ってると笑ってたけど、ダイレクトに来るとキッツいものがある」
タブラさんは何かしらで何かの知識を手に入れているようだが、乾いた笑いを漏らしている。
「あぁ……おいしい食べ物があって、青々しい植物があって、力強い大地があって、人が笑って生きてて、澄んだ水があって、未来を夢見ることができる世界だと思ったけど……」
へたり込んだガーネットさんがため息を吐きながら俯いてた顔を上げて、強がった声で応えてくれる。
「ギルマスが頑張ってるんだ。俺もそんなことで折れてられねぇな、何よりも一回死んでるんだ今度は大往生まで意地でも……みんなと生きてやるさ」
白い歯を見せて笑うガーネットさんの手を取ってシズが立ち上がらせて、ゴブリンたちがガーネットさんの両脇に腕を差し込み固定する。
「んん?」
そしてその前にはモールで素振りをするシズ。
「それはそれとして、殴ります」
「なんで!?」
首を傾げ、ガーネットの叫びに淡々と答える。
「捨てられたことに私は怒ってます。ん……悲しみかも知れない」
「……あ……」
胸の内を探る様に一度目を瞑り、言葉を探す様にモールを握る手に音が聞こえるほど力が入る。
「だからこの、なんといっていいのかわからない感情をガーネット様にぶつけます」
「ど、どんと……こ、こいやぁ!」
歯の根が合わない音を震える声で、振りかぶるシズを真直ぐ見る。
それを俺は止めることもなく見ている。
ユグドラシルでは二時間で一日が経っていた……リアルの一日がユグドラシルでは十二日。
ガーネットさんが辞めてから四年、ユグドラシルでは単純計算で四十八年もの間シズは待っていた。
「ユグドラシルでは、リアルの一日が十二日。それまでに積もった想いを受け止めるのは創造主であるギルメンが負う責任だと、俺は思ってますよ。多少の私怨が籠ってるのは否定しませんがね」
パンドラは俺に何もぶつけてくれなかったから……少しそれが寂しい。
重量武器であるモールがぶつかるには軽すぎる、湿気た火薬が不発音を出す様にシズの頭部がガーネットさんの腹部に押し付けられて叫び声を上げる。
「怖かった!怖かったんです!来る日も来る日もただ立って、あの場所から動けずに……探しに行くことも訪ねることもできずに!今日は来られるかもしれない、明日は……その次の日ならって!捨てられただなんて思いたくなかった!いくら否定したくても!ガーネット様の居ない事実があって!こわかっだ……ざびじがっだ……ぐすっ……ひっく……」
他には誰も声を発することなく、俺はガーネットさんの肩を叩いて村の中心の方へ向かう、それにならって一様にそっとその場を離れていく。
フランケンシュタイン・ズ・モンスター
良く人造人間としての怪物でのフランケンと呼ばれることがあるが、正確にはフランケンシュタイン博士の造った『理想の人間』の事である
ゾンビのように生肉を継ぎ接ぎにしたもの(フレッシュゴーレム)を指すこともあるが……
物語としては南極探検に同行していたフランケンシュタイン博士が狂気を患ったのか創り出してしまった怪物であり、醜さゆえに迫害される怪物は怪物の妻を作ってくれるように博士に頼みにくるがそれを一度飲んだ博士が機器を放棄し、それに怒った怪物が博士の妻などを殺した話であり19世紀に創り出された物語
自身の造ったものに滅ぼされるなどの慣用句としても使われることがあるらしい