おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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episode.3 「廃墟のエウリュエンティウ」

 こちらで使用される通貨を持っていなかったので手持ちの価値の低いマジックアイテムをいくつか売って自由都市で一晩宿を取り、地図を確認して改めてエウリュエンティウを目指すことにする。

 

「水に食料、良し」

 

 ガーネットが荷物を指さし点検して抜けがないかを確認しながらインフィニティハウザックに詰めていく。

 

「こちらもワープポータルメモも大丈夫ですよ。少々ブルージェムストーンが心許ないですが」

 

 ニースも再びここに来るための魔法でのワープ先をメモしてくれる。

 この世界に来てから、ユグドラシルの魔法だけではない新しい魔法に触れることが少なくなく覚えることそのものは多いが、それは逆に新しい発見があるということでブループラネットとガーネットはユグドラシルでの始めたばかりのことを思い出すようで、なんというか懐かしいという気持ちにすらなっていた。

 

「なんというかお主等はこれから敵の拠点と思われる場所に向かうというのに緊張感というものが感じられん。知っていることがあるなら情報共有は大切じゃぞ」

 

 ジニーが二人の様子を見て呆れたように情報の提供を求めてきていた。

 他のメンバーには話していたので忘れていたがジニーは途中で加わったのでその辺りを話すのが抜けていたようだ。

 

「そうですね。これから向かう空中都市はここと違って多分僕たちが知っているだろう場所なんですよ……僕たちと同じプレイヤーはすでにいなくてNPCばかりだと聞いているので警戒するべきはトラップくらいかなと。もちろん予想外のことはあるかもしれないですけど予想できない事があるかもしれない、くらいにしか警戒が出来ないんですよ」

 

「なるほど、かつて……五百年前ほどにあった『魔神戦争』というものを知らんと見える。エウリュエンティウ、そこは八欲王というぷれいやーが拠点にしていた場所でありながら一夜にして魔神に滅ぼされた場所じゃ。死骸は贄に使われ門を開いたと言われ、それはその百年前に竜帝という痴れ者が開いた異界に通じる門と同じくして広げたらしい。魔神の首魁リーナという少女の形をした化け物を六祖大縛呪にて封じた、魔王アリスフィーズ、竜王ツァインドルクス、不死王スカルマン、百の勇者サバサ王、天使長ミカエラ、巨神ゲッターを纏め六英雄と呼ばれたものよ」

 

 懐かしそうに語るジニーだが、それに待ったをかけたのがニースだった。

 

「待ってください。リィーナさんがこの世界で封じられているんですか?」

 

 その声は恐れ戦く様に震えていた。

 

「うむ。百にもならん小娘だった時の記憶じゃがよく覚えておるし、何よりもこの砂漠はその戦いで生み出されたというのが動かぬ証拠じゃ。砂漠にあるはずの植生が全く見当たらぬというのはそれが原因じゃ」

 

 言われて初めて気が付くようなものだが、オアシスもサボテンもモン娘、人間、モンスター以外の普通の砂漠で見られるだろう生き物を見かけなかった。

 

「ひと月にも及ぶ戦争が行われたのじゃ。大陸中央部からの者たちも多く参戦した……排他的な巨人族も、本来群れぬ竜族も、食欲ばかりだった獣人どもすら一丸となり……最後には異界の神アイギスという女神を召喚し封印を成し遂げた」

 

 雲霞の如く呼び出された魔神たちに相対したのがこの世界の戦える者たちだったという、その戦火は元々はもっと広がっており、今もその傷跡を治す様にゆっくりとではあるが砂漠は小さくなっているのだという。

 五百年経とうとも尚その傷跡を深く残すこの砂漠という現状、予想外を考えても仕方がないという考えを改めさせるには十分な風景だった。

 

「リィーナさんは……ナシェルさんの妹君です。かつてロードスという島、大陸からは戦乱絶えぬ呪われた島と呼ばれていた土地にいくつもあった国のうちの一つ、スカードという国の王子がナシェルさんで、小国ゆえにヴェノンという大国からの圧力があったと聞きました。それを跳ね除けようとブルーク王は魔神王をリィーナさんを触媒に召喚したと……」

 

「やはりあれほどのものを呼ぶには人身御供が必要じゃということか……アイギスを降ろすための人身御供になったのはバルブロという男じゃった」

 

 二人はその過去話を聞いて想像するだけで、本当にこのまま調べに行ってもいいものだろうかと再び思案する。

 

「なるほど、ニース様もたしか六英雄と呼ばれる御仁だったとお聞きしておりますが?その魔神皇、どのようにして討伐されたのでしょうか。討伐した故に六英雄と呼ばれたともスズキ様から聞いておりますので、もしこの世界でも同じ方法があるのでしたらご教授願いたい」

 

 そんな二人の話にも物怖じせずにパンドラは切り込んでいく。

 その背には何か言い知れぬ覚悟を決めているようで、何とも言えぬ迫力を出していた。

 

「私は確かに六英雄と呼ばれていました。ですが私自身は一度も私を『英雄』などと思ったことはありません……魔神皇を倒せたのも、ナシェルさんの決断があったからこそ……魔神皇を倒すには魔神皇の持っていた大剣、魂砕きでのみその存在に傷を負わせることが出来ます」

 

「してその剣は?」

 

 その手段を聞き一歩勇むように踏み出すが次の言葉で止まることになる。

 

「同じく戦ったベルドさんが持ち……その後アシュラムという男の手に渡っていたはずです。申し訳ありませんがその後の足取りは……私は寿命を迎えてしまったために、わかりません」

 

「……そう、ですか……」

 

 ニースがいる、ナシェルがいる、ならそのアシュラムという人物もここに来ている『可能性』はある。

 確かに可能性はあるが確実性はない。

 

「ふぅ。あるかないかわからないものねだりをしても始まりません……ならば私は私で『同じような武器』を作れないかチャレンジしてみましょう」

 

 ほんの少し落ち込んだ様子を見せたと思えばあっさりと顔を上げて、帽子の位置を直しながらあっけらかんとパンドラはそんな答えを出していた。

 

「作れるのかい?」

 

「さてまだ鍛冶事にはチャレンジしておりませんでしたので不明、でございますね」

 

 パンドラはその変身技能を使えば八割の性能とはいえアインズ・ウール・ゴウンの四十一人のギルドメンバーの能力を得ることが出来る。

 しかも最近はその体の一部の身のみをそれぞれの姿に変えることで全ての能力を複合した状態にできないかとルシファナと特訓している。

 カルネ村で吹き飛んでいたのはその変身スピードを実戦に使用が出来る様、繰り返し繰り返しルシファナの攻撃を避けながら行うという物だった。

 コンマ一秒ですら遅いと殴り飛ばされてはいたが。

 

「あまのまさんの姿ならマジックアイテムなんかも作れたはずだろ。どうせ目指すならオリジナルを超えるようなもんを作り上げようぜ、素材なら俺のアイテムが残ってるなら好きなように使って構わない……もしかすりゃ救世主の仲間入りだぜ?貧困層出の俺らがよ」

 

 普通の人は普通に生きて普通に死ぬ、そこに覚えている人などほんの一握り。

 それも貧困層の人間であればその記憶に残るさまは言うまでもなく一時残ればいいものだろう。

 それは生きた証が残らないともいえる……どこかで聞いたことがあるだろう。

『人が本当に死ぬときは誰からも忘れられたとき』だと。

 

「それはちょっと……あぁ、ちょっと魅力的だな」

 

 ガーネットが提案した意味はブループラネットもその案に賛同し、素材の提供を申し出る。

 

「んん、責任重大でございますな!このパンドラ、腕によりをかけて作り上げて見せましょう!その為に魔神皇の情報を詳しく!よろしくお願いしますぞ!ニース様ぁ!」

 

 パンドラにとっては足元もおぼつかぬ先知れぬ闇の中光明が差した心地だった。

 その為わずかな希望とはいえその手の武器はユグドラシル時代なぜか誰も作らなかった故にモデルとしてその武器を作ることが叶わなかった。

 魂砕き、魂そのものに傷をつける武器は武器の設定的には存在はしているが所詮はMPにダメージを与えるだけのそれっぽいものであり、二人の求める物ではなかった。

 二人の求めるほどのものではなかった。

 だからテンションがうなぎ上りで本来の在り方の様に言葉を発する度に感情を表現する様に度々かっこいいと思えるポーズを決めていく。

 

「「「「うわぁ……」」」」

 

「「「あっはっはっは」」」

 

 ニースとブループラネット、ルベド、クレマンティーヌがその動きにドン引いて、ルシファナとジニー、ガーネットが笑っていた。

 

「では!張り切ってエウリュエンティウへと参りましょうゾ!とっとと片付けてマジックアイテム制作に入りたいのです!」

 

「それはよいが、エウリュエンティウは何年か前に動く鉄の島に吹き飛ばされて廃墟と化しておるぞ。廃墟に残っているものが多くあるとは思えんが、廃墟ゆえに封印も解けておるかもしれんしのぅ」

 

「あぁ、それで注意していたんですね」

 

 ジニーの言葉に納得するブループラネットだったが、それとは逆にガーネットが叫び声をあげる。

 

「つまりティアマットに吹き飛ばされてんじゃねぇか!!」

 

「あ、それと魔神皇はすでによみがえっております。スレイン法国にて確認済みですジニー様。あの光景はもしかして昔に見たことがあるのでは無いですか?ニース様」

 

 パンドラの予測にニースは沈痛な表情をして絞り出すようにしゃべる。

 

「えぇ、スカード国にて……スカードの民を使いスレイン法国で見たことと同じようなことをしていました」




ワープポータル 出展:ラグナロクオンライン
アコライトの所持するスキルの一つで空間と空間を繋げるゲートに近いもの
複数人の輸送が可能でメモをすることでその場所を三か所まで記憶させることが出来た
自身のセーブポイントを含めて四か所に
その性質上ポタ屋というダンジョン前までの移動を請け負う商売をするプレイヤーも存在し、GvGでは傭兵として待機場所から攻めるギルド前までの転送を請け負うことも
そのスキルを使用するのにSPの他にブルージェムストーンというアイテムを消費して開くので大体500ゼニ―を下回ることは少なかった
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