おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:黒龍なにがし

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episode.5 「アインズ・ウール・ゴウンというギルド」

「モ、モンスターだああァァァァァァァァっっ!!」

 

 街の警鐘が鳴り響く中モンスターの群れは疾駆していく。

 エルダー(古き者)と呼ばれる老人の様な老木の皮膚を持つ人型の怪物はその暗がりを思わせるような洞の瞳で人を睨みつけながら腰まで伸びる髭をもごもごと動かしながら魔法を発動させる。

 

石の彫像と化せ(ストーン・スタチュー)

 

 その身体を怒りで燃やしながら人の恐怖がために上げられる悲鳴を無視して引きちぎる音とともに目的をこなしていく。

 ゆっくりと四肢から石になりながら涙を流し助けを乞う男を無視して、次の男を目指していく。

 

石柱の投げ槍(ストーン・ジャベリン)

 

 武器を持って向かってくる男性戦士に石の槍を射出して腹を打ち破り地面に縫い付ける。

 

「う……がああああ……っ!」

 

「黙れ!」

 

 痛みから叫び声をあげる男の顎を掴み、物理的に黙らせ魔術師型でありながら巨木(トレント)という体質を持つエルダーは男の顎をその握力を以って砕く。

 

「お前たちの所業、許さず。天が許そうと、地が許そうと、我らが許さぬ!」

 

 しゃがれた声で叫び声を、本来喋るための器官として機能しない口を開きありったけの声量を込めて憤怒の叫びをあげる。

 かつて(ユグドラシル)にて至高の方々に呼ばれていた時の記憶が蘇る。

 四十一名全てがそろっていたわけではない、六名ごとに分かれ活動されていた時の話だ。

 助けていた姿を思い出す。

 エルダーは所詮召喚モンスターでその時の自我はない、無いうえに本当にこの記憶がエルダー個人のものとは言い切れない。

 それでも至高の方々の行いを『是』として生きたいと願う。

 

『よっしゃ!無事か?』

 

『一人に寄って集ってとかイジメかっこ悪い』

 

『助かった!異形種が助けてくれるなんて思ってなかったぜ!』

 

『なに無事なら何よりだ』

 

『って極悪で有名のアインズ・ウール・ゴウン!?』

 

『異形種が人助けして悪だっていうなら、僕たちは悪で構わないよ。それで笑ってユグドラシルをプレイできる人が増えるなら、それでいいさ』

 

 もしあの時に喋ることが出来たのならその言葉を否定させてほしい。

 

「不当に虐げるものが善であるものかぁっ!!虐げられたものを助ける者が悪であるものかぁっ!!」

 

 ただの召喚されただけのモンスターでしかないエルダーですら、末端のウィロー(切り株お化け)達ですらその思いを誇りにしているというのに、ナザリックの者共の多くはどうだ!私利私欲の嗜虐を是とする者どもを仲間と思えというのか、本当に奴らはナザリックという至高の方々が部屋持つ場所にいる資格があるというのか。

 憤懣やるかたないこの怒り、どうすれば伝わるというのか……至高の方々のためなどと嘯き虐殺を計画する者たち、人となった至高の御一人悟様を前にして人の分際等とほざく元守護者統括の糞アマ、忠義を拒否されたと狂う様を見せる無様な者たち。

 我らはただ只管に御方々の願いを叶えることに全力を尽くすべきだ、御方々に重圧を与えるものではない、我らはただ御方々の命ずままに動く駒であればよい。

 次の目標を見る、強化外骨格と呼ばれるタイプの人が一人乗るのがやっとな機械の塊に乗せられている裸の少女、その背後で狂笑を上げる男ども。

 腕には掴むためのアームの他にガトリングを装備しており、その照準はエルダーに向かっている。

 

石の壁(ストーン・ウォール)

 

 石の壁を後ろに造り、助けたばかりの女が被弾しないようにし銃弾の中を駆けて進んでいく。

 

「ひひゃひゃひゃ!!あのモンスター性奴どもを守ってまっすぐ突っ込んでくるぜ!!」

 

「撃て撃て撃て撃て撃て撃て!!近づけさせるな!」

 

「お前らの代わりなんていくらでもいるんだ!また産ませて増やせばいいんだ!自爆してでも殺せぇ!」

 

 銃弾が肩を抉る、胴体で弾ける、ダメージを確実に蓄積させていくが怯むことなく踏み込んでいく。

 

「不当に虐げるものが善であるものかぁっ!!虐げられたものを助ける者が悪であるものかぁっ!!」

 

 この街の女たちを助けるときに軽く見ただけだが、善悪の区別なく単純に知識がない事がわかる、そうさせたのはこの街の男どもだろう、知識無くば幸せは分からぬ、幸せというものを知らぬ人にしてきた者共が生を謳歌することを善などと呼ぶものが居るだろうか。

 

「と……ッたぁぁァァァァッッ!!」

 

 強化外骨格のフレームを掴み、即座に拘束を解除し少女を引きはがしそのまま包み込むように抱き寄せ覆いかぶさる。

 覆いかぶさると同時に爆音が鳴り響き熱が身体を焼いていく。

 

中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)

 

 視界が歪む、熱に焼かれここまでだろう。

 崩れていく意識の中、目の前にスコップが突き刺さる。

 

「(わしは護れましたか?あなた方の願いを……)」

 

 欠損こそ治せなかったが、出血は止まり穏やかに眠るように気絶した少女が崩れていくエルダーから出てくる。

 

「よく守ってくれました。この先は僕たちの仕事だ」

 

 樹木の腕から幾本もの触手を生やしそれを男どもに向けるのが見えた。

 

「(おほ……め……にいた……だき……)」

 

「カンディルというのを知っているか?彼女たちが受けた苦痛の万分の一でも味わって逝け!ブレイク・ワアァァァァムッッ!!」

 

 細く細く細分化された触手が男たちを飲み込み穴という穴から侵入して内部を食い破っていく。

 食い破られる度に、触手が身体の中で蠢く度に耐えがたい激痛が男たちを襲い、その絶叫がそこかしこで合唱のように上がっていく。

 メイド服を着たマリオネットが女性たちを抱きかかえて作り上げたプラント・シェルターの方へと走っていくのが見える。

 その走り方はメイド三人衆が見たらなんというのだろうか、召喚したガーネットもそれを見ているブループラネットもそういったことに興味はあまりなかったので思うところはなかったが。

 絶叫を上げ過ぎて喉が枯れたのだろう、呼吸音の様な叫び声を上げようとする奇妙なオブジェが街に溢れかえる。

 

「ガーネットさん、そっちはどうでした?」

 

「全然ダメ……本格的な探索系じゃねぇしな。とりあえず、この街にはもうない」

 

 蠢いていた男たちからケーブルを引き抜き、記憶を見終わったらしくその拳で頭を粉砕していく。

 

「あぁ、胸糞わりぃ。ダルマだとか、子宮引きずり出すとか、妊婦の腹掻っ捌いて突っ込む記憶なんぞ見たくなかったぞ!」

 

「教えないでくださいよ!?想像しちゃうでしょ」

 

 ガーネットの見た記憶を軽く叫ぶ事でブループラネットにもこの街でどんなことが行われていたか共有できてしまったせいでリョナと言って殴るとかの暴行が軽く思えるような、文字通りの猟奇的な性交をしていた気違い共の行いを聞かされ叫び返す。

 

「まぁ、あれです。目指せ地上戦艦攻略……今の戦力でどうにかなると思います?」

 

「推定でいい?あの弾幕一発一発が致命傷とはいかないけど、辿り着くころには半分は削れると見てていいよ」

 

「無茶じゃん!?」

 

「しかも空中都市消し飛ばした何かしらがあります!」

 

 そんな報告のし合いで二人して最後には両手を上げる。

 

「まぁ、まずは悟君に連絡かね」

 

「ですねぇ。突発とはいえ女性たち六五〇名ですか……街の規模にしてはあまりにも少ない……」

 

「そいつは『しか』じゃなくて『も』と考えましょう……そうでも考えねぇとやってられるかぁ!」

 

 ガーネットの怒りと共に放たれた蹴りが近くにあった家屋を消し飛ばす。

 




アッザ「ナザリックの忠義って何だろうねぇ」
カオス「認めてもらうことじゃろう」
エル様「でもこの作品の悟君たちじゃ、無理よねぇ」
デウッさん「今の状態で認めたら、それこそ『ご都合主義、展開』だろうな」
アポ「自分の理想を押し付けて、理解しようとしてないもんねぇ」

この作品の悟君達はパラレル世界から来ております
ナザリックは原作とあまり変わりません(多少は変わってる)

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