ある日、王国と帝国の小競り合いが終了して徴兵されてた親父や他の村のみんなが無事帰ってきた……何人か帰ってこれなかった人はいたようだが、もう毎年のことだと諦めていた。
がその次の日、首輪をつけた耳の着られたエルフの女性が鎧を着た兵士たちと一緒に村に来て俺を含めた同年代の若い衆を王城まで連れて行くことになった。
どうしてそうなるのかは全くわからないのだがエルフの女性の代わりにほぼ一年早い徴兵がされた。
王都リ・エスティーゼの城門前に他の村からも徴集されたのだろうそう変わらない年齢の男性が五百人ほど集められておりそれをにらみつけるように左目にアイパッチを付けベレー帽をかぶった軽装の兵士の格好をした男性エルフが仁王立ちで待っていた。
「よく来た糞ったれども!!これから一年でお前たちを糞虫から真っ当な兵士に育て上げてやる!!一年後の試験、バハルス帝国との殺し合いで死んだ奴が脱落だ!!これに合格した奴は村の農民以外にも兵士という道が開かれる!どうだ?嬉しいだろう?」
その言葉にざわめく俺たち、訳もわからず集められて、来年には殺し合い……いつもの戦争に参加させられると聞いて騒ぐなというのは無理な話なのだが前の方にいた連中が数人まとめて殴られて吹っ飛んだ。
その瞬間に全員黙る。
「よし、静かになったな。これより五人一組の伍を作る、そのリーダーを伍長と呼ぶ。覚えておけゴミムシども」
リストを読み上げながらそれぞれに五人がまとめられていく、俺のところは知らない奴ばかりで同じ村の連中で固まらないようにしているのかもしれない。
「そうだ、言い忘れていたな……逃亡した伍があれば残った奴が棒打ち刑となる。連帯責任という軍の基本概念を頭にねじ込んでおけよ。逃げた奴は群で草の根分けても探すことになるからどうなるかはよく考えてからすることだな」
口の端を上げて悪人顔と言うのがよく似合いそうな笑顔を全員に見せてくれる。
「さぁ、糞ったれのノロマ共。お前たちの装備を受け取り着込んだら走ってもらう。このリ・エスティーゼの外周をな」
渡されるのは重たいだけの銑鉄の鎧、手に持ったことが初めてな槍という武器に円形の盾。
「さぁ、とっとと走るんだ!返事の頭とケツにサーをつけろ!!サーイエッサー以外の返事は許さん!!とっとと復唱して走れぇ!!」
「「「サーイエッサー!!」」」
多くの連中がその怒声に返事を返すが、人数が揃っているのに一人でその声をかき消す大声で罵倒される。
「あぁん!!??聞こえんなぁ!!!腹から声を出さんかぁ!!!」
そんな理不尽に思える様な訓練が始められ……喉がつぶれるかと思う程に声を出してようやく外周を走ることが始まった。
五周も走らされ息も絶え絶えになりながら宿舎だと案内された建物に入っていく、部屋割りはそれぞれの伍で分けられており、互いの監視がしやすく、ということなのだろう。
一年が経って戦場に立ってからわかるが、兵士はひたすらに走る、歩兵ならなおさらのことで半日走りながら戦うなんてのは当たり前だった。
大声を張り上げるのだって戦場では怒声に罵声、声の聞こえない時間なんてものはありはしない。
命令の復唱や、警戒や異変に気付いた時の声かけ、とてもじゃないが普段の暮らしをしていた時の声量では他に届かない。
「一月走り回ったおかげで要らん脂肪は落ちたようだな。逃亡者が居なくて何よりだ。喜べ、この先は戦争が始まるまでカッツェ平原で戦い漬けの生活だ」
後に言われるカッツェブートキャンプであり、負傷者を出しながらも命のやり取りに慣らさせる王国兵の必須軍修練となっていく。
なんでもどこかで言われる「れべるあっぷの儀式」とやらを模したもので、戦闘経験を積ませることで農民上がりの徴集兵でありながら帝国兵並みに戦えるという練度を誇る強兵を作ることに成功しているらしい。
ひたすらにスケルトンやゾンビ、たまに出現するスケリトル・ドラゴンも集団で打ち倒す霧に包まれた日々、仲間たちと声を掛け合いながら戦中陣地を築き眠れるようにそれぞれの伍で順繰りの見張りを立ててただランニングが終わってから渡された新しい武器、ワンハンドメイスをただ只管に使いながらアンデッドを狩り続ける日々ではあるが冒険者と同じように腰骨を集めればギルドで換金できるという出来高制が加わることでただ走るあの訓練よりもはるかに皆の士気は高かった。
そんな戦闘漬けの日々、気弱な農民を歴戦と見間違う程の戦士に作り上げるには十分な期間でありながら最終試験、帝国との毎年の戦争の前に汚れを落とし鎧は打ち直され、武器の手入れも万全で俺たちの年は脱落者なく最終試験を抜けることに成功し……半数は兵士に志願し更に鍛え上げられのだとかつて同じ伍だった奴が巡回に来た時になんとなしな世間話で聞いた。
「しかし広い畑だな。麦穂が実をつけたらさぞや壮観だろうな」
「おうよ。あの地獄の年以来な……農具を振るうのが苦じゃねえんだ。おかげで一日で世話見れるだけの広さを拡げちまったぜ」
村付きになった
成長していく畑の作物を見ながら、この国の行き先はきっと明るいんだと俺は思っていた。
帝国兵に偽装した弱兵を大した被害なく追い払い、近くの村でも同じようなことが起こったと聞くまでは……きっと世界が動き始めているんだと戦場で時折感じていた『囁き』の様なものを再び感じたのだ。
はてさて俺は気が付けばバルブロと呼ばれる原作ではバカキャラ筆頭ともいえるバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフという人物になっていた。
「ふむ……年齢としては四歳というところだな。教育係も見受けられん、どうやら想像以上の我儘ガキだったらしい、がむしろこの状態であればむしろ好都合というもの」
扉を開き部屋を抜け出し、レエブン候を探しに城の中を歩き回るがその目的を他者に話すことなく誰かに見とがめられても「散策だ」と突っぱね歩き回る。
しばらく歩き回り一人向かいから歩いてくる蛇を連想させる様な目をしながらもその奥で燃える野心を隠そうとしているやせぎすの侯爵、目的に人物レエブン候である。
「ほう、ようやく見つけたぞ。レエブン候よ」
「これは……バルブロ殿下、いったいどうされたので?」
周りの気配を探り他に人がいないことを確認し、こちらの内側も曝け出す。
「レエブン候よ。貴様は今の王国の奴隷状況と法国の在り方という異常をどう見る?」
「どう……とは?」
俺の言葉が何を意味しているのかレエブン候は顎に手を当て視線を下に下げ考え込む。
レエブン候は六大貴族の内では王国側に建てる人物だ、他には当代のぺスペアとウロヴァーナ辺りか……だがその二人は『今の王国』を求めている、変革を求めて且つ国を良くしようというのはレエブンのみだ。
「何簡単だ、法国は六大神を信仰しているのは知っているな?なぜ信仰しているかも」
「それは当然……っ!?いや、確かにおかしい!?」
「やはり気づくものだな、その上でこの双方の現状を打破する手を取ることが貴公に出来るか?」
レエブン候はそれに口をつぐみ呻く。
「俺にはその手段があるぞ、奴隷を悪と断じることをするつもりはない。それで生き延びることが出来る村人がいるのも確かだ、大のために小を切る。政治でもよくやることだ……そして奴隷そのものに罪があるとも俺は思わん、特に今法国から奴隷と銘打って金まで巻き上げていくものの難民たちには、な」
この国を救うには急速な変革が必要となる。
原作にてラナーが奴隷禁止令を法令として通しそれをクライムは喜んでいたが、ラナーは基本クライムを喜ばせ心酔させることを目的に動いている。
ラナーは気が付いているのだろう、あの時点で奴隷をただ止めただけでは何の意味がないと。
「八本指がしていることはある程度掴んでいるだろう?殲滅とは言わんが半分を奪う。レエブン候よ
差し出した俺の右手を見て戸惑いその手を取っていいのかを悩むレエブン候。
「奴隷の呼称は変えん。王家の名の元に全ての奴隷を集める、そして私兵に育て上げそれを教官に民兵を鍛え上げる。そしてレエブン候には一年でできうる限りの政務を戦闘に向かずとも頭の回転のいいものを鍛え上げてもらう。マジックユーザーの有用性を知らぬわけがあるまい?エルフはその素養が人間よりも高いことも……農地も戦闘も諜報も衛生すらも魔法で解決させることが出来る」
「っ……」
息をのみその先を想像したのだろう。
魔法を軽視しやすい王国ではあるがその重要性に気が付いてしまえば人の生活を支える有用なものとなることに気が付けるものだ。
塩も水も香辛料も魔法に頼るのがこの世界というものだ。
海は塩辛くなく天塩など得ることはできない、香辛料は人の生活圏が狭く多くを自然のもので手に入れることこそ不可能せいぜい手にいれれるとしてもハーブ類位。
「まずは奴隷部門それを手中に収めるそして武力に変え麻薬、娼館部門を潰す。過程によっては警部部門暗殺部門を手中に抑えることも可能だ……あぁ、ブルムラシューは確実にお家断絶させるぞ?さすがに外患誘致をするものを放置するわけにはいかんだろう」
その言葉を聞きレエブン候は意を決したのか俺の右手を力強く握りしめる。
「よろしくお願いいたします殿下」
「三年で殿下ではなくなるかもしれんがな」
俺はレエブン候を伴い街に繰り出す。
奴隷商を抱き込み、奴隷をすべて掌握しそれをレエブンと共に一年で使い物にする、魔術師ギルドにも注文を出しておく。
奴隷を王家のものだと示すための首輪を作らせる、防犯とそれをしようとしたものを証拠とするようなものを残せるものを、な。
奴隷が王家のものとなったのならば、奴隷に無体なことを強要するということは王家のものに手を出すということだ。
不敬罪として処する、血染めの王などと呼ばれるがそれだけ阿呆なものが多いということだ、それで切り取りや没収した領地は直轄領としレエブンが育てた者たちに代官をさせ、育てたドルイドなどを派遣し来年の税収を上げる。
そしてあるタレントを持つものを口説きにかかる。
全くここまで国力を落としているとは優しい王などと父は呼ばれていたが、八方美人をして失敗した甘ったれた王としかうつらなかったな……直轄領の村八つの税収を倍加させ、王家の軍を倍の戦力にするという功績をもって禅譲を迫っても首を縦に振らんとはな、おかげで少々強引な手法を取らざるをえなんだ。
素直に禅譲すればあのようなことにもならなんだろうに……奴隷に手を出した貴族共がいたおかげで約半数を処することになりそれをもって強引に引退させる事になるとはな。
おかげでランポッサは齢七つのバルブロに劣る王と歴史に残ることとなった。
「まったく……要らん手間もかかったが概ね予定通り、まだこの椅子を狙うかね?レエブン候」
「御冗談を陛下。私とて王国を憂い私が王ならばとも思っておりましたが、陛下ほどスムーズには行きません。私には陛下を助け、国を支えるこの宰相の椅子で十分でございます」
玉座の間にて、二人の男が笑いあう。
ザックが徴兵される一週間前のことだった。
ザック レベル21
人間10 兵士8 農民8 栽培師5 注:この世界では総合レベルとは別に種族レベルと職業レベルが存在する
本作でのザックさんのステータス
基本的に王国で徴兵され帝国とバトる際の一般兵の平均ステータスでもある
ティアマトの艦長募集
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