おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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episode.8 「語られる裏側の策略」

 ざわざわとざわめく冒険者ギルドの一角で二人の男性がテーブルを挟みチェスを打っていた。

 駒を置く音ともにそれを知らせるように喋る声が聞こえる。

 

「〇×ナイト」

 

 一人は偉丈夫に王族の衣装を着させ眼鏡を付けた少々独特な髪型をしたバルブロ。

 

「〇×ルーク」

 

 対するもう一人は紅のローブに身を包んだ盲目の魔術師レゾ。

 

「動くのは精々がズーラーノーン、追加で風花法典辺りかと思っていたが◇□クィーン」

 

「えぇ、初戦は圧倒的敗北でのスタートとなりますね▽〇キング」

 

 それを脇で聞いていた太った貴族風の男が声を挟む。

 

「ですが魔神たちは撃退できたのですし……圧倒的というのは……」

 

「いいや、圧倒的敗北だ。この場合は防衛は防衛でも外壁での防衛が出来て辛勝、内で発生させてしまった時点で敗北、そのうえで接触があったことで圧倒的敗北だ。むぅ……悟はまだ起きれんかね?」

 

 バルブロの説明と質問で二人が眉を顰め、レゾは溜息を吐きながら答える。

 

「治療の最中ですからな。もうしばらく……意識が戻るのがモリガンさん、エンリ次第ですが二日後、満足に体を起こせるのが三日後、戦闘に戻れるのが五日後といったところでしょう」

 

 レゾの答えにバルブロは頭をがりがりと掻いて、パナソレイに向かって圧倒的敗北の答えを述べる。

 

「聞いての通りだ。こちらは拠点の防衛こそできたが相手の策略通りに足止めを食らう。街の修復に人足の発足、治療などでの手もいるし、先の襲撃のうわさで商人たちも遠ざかる。それに対し相手は悠々とこちらへの戦の準備を進められるわけだ。どうだ?圧倒的な敗北であろう?」

 

 バルブロの出した答にうめき声をもって応えることしかパナソレイにはできなかった。

 

「パナソレイ都市長に命ずる。二か月での立て直しを目標として三か月を期限と命ず、やって見せろ」

 

「はっ!では御前失礼いたします」

 

 バルブロ王に命じられパナソレイはその重たそうな体を揺らしながら、ギルドのカウンターへと向かいいくつかの依頼を改めて張り出していた。

 

「三か月か、随分と無茶な命令じゃないかな?」

 

「二か月半でやり切ってくれると信じて任せている。うむ、◆▽ナイト」

 

「◆▽ルーク、ここまでは予定通り、相手の試作を見ることはできた訳だが次はどうするのかね」

 

「◆▽ビショップ。ナシェルの結婚式に動くと思うがそこで勝てると思うか?」

 

 手を顎に這わせ少し考える様子を見せながら、近くに声をかける。

 

「黒のアリス、君は参加してくれるのかね?それによって変わるね」

 

「最後の砦にするつもりのカルネ村が落ちてもいいなら参加してあげるわよ?」

 

「ふむぅ、やはりポーンがないと話にならんか。後に十手でこちらの負けだな」

 

 役目を終えたポーンの配置されていない盤上を片付けることでテーブルを開け地図を開き、三人での軍議に入る。

 

「エルフたちは呼べない、そもそもあそこの土地はピサロが治める前から法国が執拗に狙っていた。だからあそこから人を引っ張ることは愚策よ」

 

「アゼリア山脈のドワーフはどうかね?ドラゴンスレイヤーでもある『石の王』であれば魔神皇であろうとも手を貸してくれると思うが……荒野の賢者とも久々に論議するのも楽しいのだがね」

 

「確かアリスはツアー達とも友誼あったな?評議国は動かせんか?レゾ殿にはアゼリア山脈に飛びお二方と『鉄の王国』を動かしてほしい。恐らくどちらも妨害が入るだろうがな」

 

 地図の上に二つの駒を動かし、そしてそれに対して別の色の駒を二つ近づける。

 

「私たちを囮にするわけね」

 

「俺はドロテア殿に話をしてみる。悟が回復次第リザードマンの集落に協力を仰ぎに行ってもらうつもりだ」

 

「そちらも何かしらの妨害が入ると思うが、何とかできるのかね?」

 

「物見からの伝言(メッセージ)でな。不死身(イモータル)が王国に向かっているという情報を手に入れた、存分に働いてもらおうじゃないか」

 

 レゾはふむと一つ頷き。

 

「不死身と言えば、もう一人がいましたか。なるほどならば防衛にはちょうどいいでしょう」

 

「カルネ村にはモリガン嬢がいることは確認済みだ。女王と女帝が揃っているのであれば最悪の事態にはならんだろう」

 

「不死身はなぜこちらに向かっているのかしら?」

 

「聞いた話では双子を連れての強行軍らしいからな、帝国の貴族……いや元貴族かその辺りが阿保な真似をしていたのだろう。帝国での噂でも臀部だか澱粉だかの奴隷の扱いが気に入らずに蹴り飛ばし闘技場の壁に突き刺さらさせたという笑い話があるからな。双子の親が借金でも重ねて双子が抵当に入りかねんと考え非合法な手段でも使ったのではないか?と見ている」

 

「なるほどね、となるとその双子も何かしらの関連を持ってると見た方がいいわね」

 

 地図の上に更に駒が増えて、三人は再び地図上の王都を見る。

 竜王国にポーンが、帝国から移動する四つの駒、山脈に移動させる駒達、森の二か所に置かれる二つのキング、評議国に置かれるビショップにナイト、王都に置かれるルーク達、カルネ村に置かれるクィーン、エ・ランテルに置かれるもう一つのクィーン、法国に置かれる黒の軍勢。

 

「そういえば、元八本指だったもう一つのゼロたちの方は使えるようになってるの?あの五人が最低でも上位魔神に勝てない腕前じゃ前提が崩れるわよ?」

 

 王都の上に載っているルークをつつきながらアリスがバルブロを見る。

 

「そちらは問題ない。最後に確認したが五人ともレベルは百だ、宮廷魔術師として立場を与えて置いたデイバーノックはオーバーロードにもなったしな。ガゼフも百越えを成しとけている。特に問題はなかろうボウロローブ候の軍も無いよりはマシという程度だが数も揃っている。戦奴達にも装備を回しているからな即席の魔神もどき程度ならば村人たちでもさばけるはずだ」

 

 他の土地を見ながらバルブロは何でもないように現状の確認して、眉をしかめる。

 

「問題は直轄領以外の弱小貴族たちですか」

 

 バルブロの様子に気が付き問題点をレゾが指摘する。

 

「うむ、ナシェルの結婚式ということで貴族たちを王都に集めるつもりではあるが、ナシェルが平民出ということもあり、どれだけのものが素直に出てくることやら……誇りと驕りをはき違えているものがまだいると言うのが何とも頭の痛いものだ」

 

 バルブロは思わず額に手をやりこめかみを揉む。

 貴族たちは自分たちの地位が誇りである、それは誤りではないがそれに胡坐をかくのは誤りだと気が付いているものはそれなりに発掘することはできたのだが、それでもそれに気が付かないものが残っている現状に今の状況では頭の痛い問題になっていた。

 

「そうなると村の解放とかは難しそうだね……いくつが来なさそうなんだい?」

 

「こことこことここ辺りは来ないだろうな。こことここはそちらと同調するかだな」

 

 三か所に赤の待ち針、二か所に青の待ち針を立てる。

 

「なるほど立地的にまた面倒なところみたいだね……法国の手は伸びているのかい?」

 

「そこは伸びていると考えた方がいいでしょうね、最悪の方を決め打ちしておいた方がまだ傷は小さいわ」

 

「まったく……民の三割が敵の手に落ちるとか本当に洒落にならんぞ。しかも死体は即席魔神もどきに変えられるだろうしな。ため息しか出んわ」

 

 いいことを思いついたようにアリスが手を軽い音を立てながら合わせて二人に提案する。

 

「そうだわ。図書館の司書に聞いてみたらどうなの?あの子が本来の占星千里でしょ?」

 

「いや、勝つにしろ負けるにしろトラウマものだと思うぞ?」

 

「血で血を洗うならまだマシです。普通の生活を望む子には酷でしょう」

 

 バルブロは頭を掻きながらぽつりとつぶやく。

 

「最終局面が間違っていないかの確認に使ってもらうか」

 

「まだ暗躍してる連中がいるというのも困りものね……機械系、海上都市に奈落の監獄のこともあるしあの子たちも何とかしないといけない……なんでこんなにも問題が多いのかしらね」

 

 アリスが付かれたように椅子に体重を預けてぐったりする。

 レゾも同じように額を抑えて、更に爆弾を投下する。

 

「空の果てからも来ていますしね……」

 

 バルブロはそれを聞いて室内ではあるが手で顔を覆って無言で天を仰ぐ。

 

「もう悪評集めるだけ集めたんだからとっととザナックに王位譲って楽したーい……」

 

 バルブロの切ない願いは特に聞かれることもなく宙に溶ける。

 




エルフ 出展:色々
本作では大体千年が寿命と考えているのだが、実はエルフで問題が発生してたりする
人よりも長生きで長く生きれる分、経験が蓄積されているはずなのである……しかもモンスターがたまにしか出現しない平原ではなくモンスターが生息しているだろうと思われる森林が棲み処となっているわけで……
バルブロ「なんでお前たち、遥か年下の人間の奴隷になってたん?」
エルフたち「鬼畜エルフ王ランスに犯されて放り出されたところを漆黒法典に奇襲されて……」
普通に考えれば年齢=レベルの高さになるので、普通の兵士に負けるエルフっておかしかったりするので本作ではこんな感じで奴隷になっていたとしてます
イメージ的にもレンジャーやマジックユーザーが多くなりますのでよっぽどの若輩でなければ即戦力になりますので、バルブロは率先してこれを戦力に変えてます

なお本来はエルフとは妖精の総称でゴブリンやコボルト、ピクシー、フェアリー、トロール、ドライアドなんかをひとまとめにした言葉だったりする
ギリシャのニンフが変化したと思われる
追加でダークエルフは褐色肌で描かれることが多いが本来は『黒色の肌』だったりする
(サーラの冒険に登場する仲間のダークエルフ、ミスリルはこちらで表現されている)

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