おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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episode.10 「宿題第二弾」

 シャルティア=ブラッドフォールンはその名前のままにしてクロウ屋という団子屋を立ち上げ、クロウを中心に商売を王都にて開始していた。

 荷物運びに用心棒、手伝いに噂話の収集にオオカミが、外での仕入れ、客寄せ、困っている人を助けたりするセバス、団子づくりなどをして売り子をするクロウとミコ。

 そしてパトロンとして商家の娘という立ち位置となるシャルティアである。

 ただし夜の帳が下りれば本来の顔を覗かせる、シャルティアは眷属である蝙蝠を飛ばし夜ならではの話を拾いに空を走らせ、オオカミも忍びの技を利用しての情報収集へと屋根の上を駆け回る。

 

「今日もアルベドの情報もなければ、他のプレイヤーらしき話もない……この辺りは治安の意識が高い、交番の様なものや衛兵の見回りも頻繁に行われている、魔法使用の網も張られている。プレイヤーかと思ってその根元を調べようとすれば僕が落とされるしで一筋縄にはいかないわね……バルブロという王が怪しいのだけれども経歴を調べたところ王国の生まれだしそっちじゃ怪しいところはないのよね。行いは頓珍漢な真似が目立つのだけど……」

 

「ですが、その政策そのものはやや強引ではありますが下準備を十全に行った上での物のように思われますよ」

 

 報告書をまとめていたシャルティアに声をかけるのはまだ寝ていると思っていたクロウだった。

 手には団子を作るのに使う米粉で、米自体を王国ではいくらか作成されていたために仕入れることが出来ていた。

 まさか西洋ファンタジーな世界で日本米とそう変わらない甘みのある種があるのにも理由があるが。

 それが王の我儘から始まったと噂話を拾えば、本当に何をしているんだここの王様は、と揃って溜息を吐くこととなったが、商売そのものとしては助かっているのも確かであった。

 しかも味噌も醤油もドルイドの魔法のゴリ押しで生産していると言えば、何をしているのか首をひねるばかりである。

 素材が手に入るためにデッドリーレイスが取り立てた金子だけで商売を始めることが出来たのだが、シャルティアとしてはどこか釈然としないものがしこりのように残っていた。

 

「水田になんとか菌だったかしらね。どこまで計画通りでどこからが奇行なのか、読み辛いったらないわ……何よりもここまで見越したものなら気に入らない」

 

 米はあれどもある料理レパートリーは炊いたご飯だけというもの、醤油もかけるだけ味噌も溶いて味噌汁になるだけ、まるで何もないのである。

 その知識があるものが来て利用できるように用意したような不気味さがあった。

 

「ところでまだ起きるには早いんじゃないかしら?」

 

「もう朝日も登るころですよ」

 

 シャルティアの質問にクロウは苦笑しながらカーテンを開ければ、空の星は日の昇る方から星々の輝きが失われ地平線の下の方が白んでいるのが見えていた。

 その景色を見て今度はシャルティアが苦笑した。

 

「根を詰めすぎたかしらね。少し仮眠をとらせてもらうわ」

 

「はい。ゆっくり休んでください」

 

 シャルティアの一日は何事もなければこんな感じで繰り返していく。

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓では現在フロータイボールを使って主だった僕たちを全員玉座の間に集めていた。

 外に出ていないプレアデスに、引きこもったマーレを除いた階層守護者に、恐怖公を除いた領域守護者と集められ玉座の間は見るものが見ればいっそ壮観だと表現するだろう。

 跪いてフロータイボールから発せられる言葉を一心に待つその姿は一糸の乱れもなく、期待と恐怖を綯い交ぜにした感情で占められており、その姿と共に一層の威圧感を醸し出していた。

 その様子を見下ろしてフロータイボールの口が開かれる。

 

「前回の宿題の正解者はこの中にはなし」

 

 その言葉に肩を震わせる二人、アウラとコキュートス。

 そしてその二人に注がれる周囲からの怒気と殺気。

 

「宿題すら出されぬものが怒るのは筋違いだ。出さなかったこちらに怒りを向けろ……出す価値もなかったと判断されたのだと落胆を示すならまだ可愛げがあったがな」

 

 続いて放った言葉に場は一気に凍てついて悲壮感に溢れるものとなる。

 

「(本当に喜怒哀楽の差が激しいな。零か百しかないんじゃないかと思ってしまうが、普段の生活ではそうではない。仲間同士の掛け合いでは食料がアレだったりはするがその辺の人とそう変わらない。だが外のものに対してはいっそ苛烈ともいえる対処をしようとする。全く困ったもんだ)」

 

 少なくとも柔和な対応を望みたい。無駄に敵を増やす趣味はない。虐殺による利点は皆無。焦土作戦などもってのほかである。見せしめを好むようなものはギルドメンバーには居ない。必要とあればやるが、それも必要なだけの材料があればこそ。

 その辺りを自分で気づいてもらわなければならない。

 こちらから言うのは簡単だ、実に簡単だ。

 ただ言うだけで済む。

 だが、言葉を理解しても納得するとは限らない、その行いがストレスとなる。

 自ら行うと命じられて行うでは意味合いが変わる。

 創造主と被造物達の意識の差を自覚してもらう必要が出てくる。

 

「では宿題の第二弾を出す」

 

 悲壮感満載の場が一気に驚きへとシフトする。

 

「『自身の創造主が戻ってきたとき共にしたいこと』をこれから渡す紙に書きだし期日までに提出すること。期日は二週間、早くてもかまわないが早い事への加点はないのでしっかりと考えるように。全員立って紙をメイドから受け取りなさい」

 

 メイドの一人が紙の束をもってゲートを潜り抜けて一人一人に紙を配っていく。

 ただその中で一人肩を震わせたものがいたことを見逃さない。

 

「(ふむ……デミウルゴスは多少強引な手が必要か。この宿題の事もわかっているようだ)」

 

 カルマがニュートラルに寄っているアウラとコキュートス辺りは面白い解答を持ってきそうだが、デミウルゴスはこの宿題に対してどう対応するか。

 

「受け取ったものから下がり普段の業務に戻れ」

 

 紙を受け取ったものは嬉々として業務に戻りながらも、挽回のチャンスが与えられたと期待に胸を膨らませ想像を巡らせている事が手に取るようにわかる。

 ある意味で分かりやすいが、デミウルゴスを除いた全員が全く同じ反応というのが実に気色悪い。

 まるで姿形が違う者であるのにも拘らず、画一の同一集合体を見ているようだ。

 気色が悪いと思いながらも別のところではそれが当然だと、これが当たり前の姿だと、あれこそが正しい姿だと囁いて浸透させようとしてくる。

 その囁きを息を吐く様に唾棄する。

 

「(っち、ナザリックの支配は依然強力か……リィーナの能力が予想通りならこちらから切り離せないと乗っ取られるというのに。無理に引きはがすのは下策、自己を持たねばどちらにしろ良い様に操られる)」

 

 切り離しが成功しているのはシャルティア、パンドラ、シズ、ルベド、ガルガンチュア、メイド達がいくらかしかいない。

 メイド達の多くは図書館で(メイドマンガ)を読み耽るだけで切り離せたというこちらも驚きの方法ではあったが、僥倖ではあった。

 他のものが出払った後にデミウルゴスが一人、佇み残っていた。

 それを見咎めてメイドが声をかける。

 

「デミウルゴス様。業務には戻られないのですか?」

 

「いえ、私は……モモンガ様にご相談がございまして……」

 

 メイドがいては話し辛いと考えての歯切れの悪さではある。

 

「構わん、このまま話せ」

 

 が、俺はそんなものは気にしない。

 尻尾が一瞬震え、跪き首を垂れるデミウルゴス。

 

「申し訳ありません!不敬だとはわかっているのです。ですが……ですが!」

 

 決死の覚悟でデミウルゴスは自身が出した答えを吐き出そうとしているのだろうが、こちらもナザリックの事で出される書類に目を通して証人と却下のハンコを押さなければならない仕事が待っているので空気をぶった切って急かす言葉を吐く。

 

「そんな悲壮感出したところで、大体どんな答えが出てくるかわかってるんだから早くしろ」

 

 俺の急かす言葉に意を決して答を吐き出す。

 

「私ではウルベルト様の望むものが出来ないからこその宿題なのではないでしょうか!!」

 

「その通りだよ」

 

 

 

 

「お前の創造主は何だ」

 

「神すら凌駕する……」

 

「ただの人間だ。お前の創造主はどのような力を持っている」

 

「万知を超え、世界を滅ぼす魔力を携えた……」

 

「ただの無力な人間の力しかねぇよ。お前の創造主が悪となった理由は」

 

「それは……」

 

「ただの自己満足の行いの結果だ。その上で悪と謗られようと構わないと覚悟したうえでの、な」

 

 デミウルゴスの理想とする創造主の形を砕いていく。

 

「お前は何だ?」

 

「私はウルベルト様につくら……」

 

「最高悪魔?ウルベルトの考えもわからずに?ギルドの行ってきた弱者救済を否定して?自分たちが強いからと弱者を虐げていいと?お前にとっての悪とはなんだ?」

 

「あ……ああ……ああぁぁ……」

 

「ナザリックにあらずんば家畜の如くを地で行くような連中がギルメンが認めてくれると思うか?」

 

「う……あああああ……」

 

 頭を抱えながら苦しむ。

 

「お前は何だ?」

 

「私は……私は……」

 

「お前にとっての悪とはなんだ?」

 

「悪……悪とは……」

 

 舌打ちしそうになるのを抑える。

 

「(心理学極めるよりも精神分析ももうちょいまじめに勉強しておくんだった。付け焼刃のものしかできんのがきついな……何よりも呪縛がここまでひどいとはな。揺り戻そうとするのが鬱陶しくてかなわん)」

 

 こちらの望む方向に手引こうとすれば元の精神に戻そうと働きかける力がある。

 NPCで在れかしという力が働いている、ギルメンとしての精神操作がNPC達を受け入れろと働きかけてくる。

 呑まれれば決定的な敗北しか待っていない。

 呑まれずともこの力からNPC達を切り離せれなければ、数的敗北に近付く。

 俺の姿を観察することで俺になり切ることが出来るドッペルゲンガーがこの世界には居る事が判明している。

 パンドラがドッペルゲンガーという種族だとわかった時点から警戒していたが、グレーターデーモンのドッペルゲンガーは神ですら欺く存在の乗っ取りを得意とする。

 魔法でもスキルでも看破することはできない、ユグドラシルにはドッペルゲンガーを見破る技能かアイテムがあるようだが率先して試せない以上過信するわけにはいかない。

 見破れない、それを前提に動くべきだ。

 

「お前の望む創造主とはどのような者だ?」

 

「私は……私の理想は……」

 

「憧れは理解から最も遠い、お前たちの憧れを俺たちに押し付けるな」




ドッペルゲンガー 出展:オーバーロード、ロードス島伝説、千年戦争アイギス

RPGで程々の頻度で見かけられるモンスターもしくは怪異
物理反射や姿を真似ることでステータスやスキル、魔法を変身した対象と同じにしてくるものなどが出てくる事が多い
都市伝説の怪異として見たものが近いうちに死ぬというものが有名
ソードワールドのドッペルゲンガーでは黒いのっぺらぼうに一文字の真っ赤な口、とがった耳が特徴の巨人として描かれる、下位に小型のダブラブルグというものも存在している
変身する対象を観察することで癖や行動、思考方法を一時間ほどの時間をかけて読み取り対象そのものになり切ることができる
姿に差異は全くなく武器や防具といった身に付けているものすら再現する者であり、嘘を看破する魔法や魔法に反応する魔法、邪なるものを看破する魔法すらも効果を発揮しない
スキルや技能、身体能力も全く同じであるが、本来の姿でも最高レベルの強敵らしいステータスを誇り高レベルの古代魔法を行使してくる、素の知力も高いのでGMとして扱う場合注意が必要かもしれない……扱いきれた時は最高のシナリオになるが扱いきれなければグダグダになる可能性が高い


おっさんは至高のオーラもコピーできるものとみており、至高の方と一辺倒な反応をする僕が騙されることを警戒している
疑うことを知らないために見破ることも、疑えども疑うことこそ不敬と飲み込み看破すらしようとしない危険性が存在している、ある意味ナザリックとは相性最悪の敵である

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