なんかNPC達が違う
蝕まれていく精神
忘れられてたアルベド
をお送りしました
episode.1「異なる過去」
一人、円卓の間に座っている。
これは夢だとわかる。
夢の中で夢だと気が付くのを何というんだったか、思い出せないけども何か聞いた覚えがある様な気がする。
聞こえてくるのは静寂ではなく、歌詞は覚えていないけども歌が聞こえてくる。
ギルドメンバーの半数がそのアイドル達のファンであり、そこと敵対すれば半数が敵にまわり、四分の一が敵対こそしないものの攻略には参加しないという、どう足掻こうとも攻略は不可能と言われたナンバーワンギルド、セラフィムから流れてくる歌。
「確か……あの時はヘロヘロさんがいて、一通りこのギルドが残ってることを感謝されて、光る棒……サイリウムだっけ?とヘロヘロさんが推しだって言ってた子が描かれた団扇もってコンサートの方に行ったんだっけか……」
ぼんやりとユグドラシルが終わるその時を眺めていた事を思い出していく。
アイドルギルド:セラフィム、天使族しかいないし一六名というアイドルメンバーのみで構成されるもののその勢力は絶大であり、常に親衛隊というギルドが徒党を組んで警備に当たっていた……アインズ・ウール・ゴウンも例にもれずセラフィムに攻め込む輩がいればその防衛に参加することが多々あった。
「あー……懐かしいなぁ……後ろから
超位魔法が連続で炸裂し、数百名が消し飛んでいくのだ。
数百名と言えば多いと思うかもしれないが、セラフィムの防衛は万に迫るファンの群れ、しかもワールドの職業を持つたっち・みー、世界格闘チャンピオンのソロ実力ナンバーワンといったワールドチャンピオンの双璧が居たりとユグドラシルの総戦力のいくらがいたのだろうか。
ワールドサーチャーに助力を求められて、直戦力として一緒に冒険したことやにゃんこ王国に女性陣がよく遊びに行っていたこと……割と上位陣のギルドとは仲が良かった気がする。
いや、違うのか。
人気投票でギルドの順位が決まっていたのだから、ある意味では当然だったのかもしれない。
『弱者救済』をモットーに貫き多くのプレイヤーに周知されたからこそ、九位という順位にまでなれた。
全盛期であり、ギルドメンバー全員が揃っていたからこその九位でもあった。
最後に送ったみんなへのメールはなんだったっけ……何人かには送信が完了出来ずに帰ってきた事が寂しくも悲しい事だった。
アドレスを変えたのか、それとも受信が出来ないという状況なのだとわかってしまうから。
鎖が絡まった空席ばかりが見える円卓で少ししんみりとしてしまっていた。
かつてしたようにギルド武器を手に持ち、円卓間のを出るために扉をくぐれば、そこはナザリックではなくなっていた。
「あれ?」
両腕にかかる重み。
動こうにも動かない身体、鼻腔をくすぐる女性の香り、左側にエンリが、右側にはモリガンが俺の腕を腕枕にして眠っている。
「え?何この状況?」
きょときょとと動かせる目を動かすことで状況を把握しようとするが、得られる情報から今につながるものが全く見つからない。
しかも身体から感触から、与えられる体温の温もりから三人とも裸でシーツをかけられているだけという状況である。
とりあえず、思い出せるところから思い出そうとして違和感に気が付く。
『俺はみんながコンサートに向かったことを知っている』なのに『ヘロヘロさんだけが最後にログインしてまたどこかで、と言って
他にも『
「記憶違いは今更だけど、色々とひどいな……」
こんな方法でナザリックというギルドシステムは、俺はそのギルドに執着すると思っていたのだろうか、無機質なシステムに無駄な疑問なのかもしれないが鈴木さんが居らず、NPC達にかつてのギルメンたちの面影を見せられていれば……今の様に覚悟の決まった状態でなく、転移した直後で何もわからず不安定な精神状態であれば、あっさりとそちらに転がったかもしれない。
リアルで集まった、ギルド以外での出会いもあった、クランからギルドを立ち上げるというイベントもあった、愚痴を言いながらリア充を追いかけまわすなんて遊びもやった、ただのんびりと気の合う仲間内で会話ばかりして時間が過ぎることもあった、あれを狩ろうこっちを狩ろうと人それぞれの考えの違いも知っていた、弓という武器の扱い方を教えてもらうこともあった、プレゼントをもらったこともある……本当に懐かしくも大切な思い出で、大切な
それを捨ててナザリックに収束させようと、執着させようとするのは、醜悪なことだと思う。
少なくとも
そして他にもある程度分かったこと、鈴木さんの思惑や目的……いや、便宜上鈴木さんと呼ぶべきだろう。
『鈴木さん……それとも名前が思い出せない四十路のおっさんって呼んだ方がいいですかね?』
『おそようさん。名前なんて呼びやすい方で構わんぜ』
返事は拍子抜けの様に驚きもなく簡素なもの、もっと早くに気が付くと思っていたのかもしれない。
わかりやすいヒントも何度か与えられていた。
『それじゃ、慣れてる鈴木さんで。ところで時間制限のせいで鈴木さんの目的達成は不可能ですが……どうします?』
どう足掻こうともこの
『何かいい考えでもあるかねぇ?おっさんとしちゃあ、あまり悟君と軋みを生むような方法は取りたくなんだがね』
『ですねぇ。俺としても軋みを生む方法はあまりとりたくないんですよ……なので全員を早いうちに呼び出して話し合いたいところですね』
俺はすでに覚悟は決めている……あとはギルメンたちの決を採るだけ。
視線を部屋の隅に移せば、丸まってる赤い羽毛の塊と場違いな鼻提灯を出している甲殻類、いわゆる多頭竜と呼ばれる複数の頭を持つヒュドラが目に映る。
「朱雀さん、あまのまさん、べるさん。俺の荷物の中に人化の指輪あるんでそれで人化して下で飯でも食べててください」
声をかけてみるが起きる様子はなく、何よりも寝ぼけた頭で呼んだのでこちらに声をかけていいのかどうかわからなかったのだろう。
呼んでしまったのが夜ということもあり寝てしまったようだ。
「おーい……だれかいないか?」
虚しく俺の声が響く。
悟君の呼ぶ声が聞こえて階下から部屋へと向って歩いていく。
「もうお昼過ぎだけど入っても大丈夫かな?」
ノックをして部屋に入れば、まだ動けないのか三人仲良く並んだ形でベッドに並んでシーツをかぶったままの部屋の主に、必然的に目に入る三体の異形種。
「朱雀さんにあまのまさんにベルリバーさんじゃないの。どういう状況だい?これは」
「緑谷さん丁度良かった。夜に呼び出しちゃったせいで起きてくれなくてですね、良ければ荷物から人化の指輪もってきて装備させてあげてくれません?ついでに下で食事させてあげてくれるとありがたいです」
夜、メイド達も慌ただしくしてたが、隣の部屋の惨状を思い出してさもありなんと納得したのを覚えている。
血に塗れて赤黒く染まったベッド、転がる空の瓶に所々炎上したかのように焦げてる天井、散らかった家具。
「ん……まぁ、了解したよ。こっちもアルベドのことで相談したいことがあってね」
「あー……アルベドかぁ。好いてくれるのは本来悪い気はしないんですが、俺としてはストーカーは遠慮しますよ」
悟君のすげない返事に肩を落とすが、断った理由を聞いて聞き直す。
「え?ストーカー?」
「えぇ……モモンガのぬいぐるみ作ったり抱き枕作ったり、あまつさえベッドにもぐりこんで匂い付けをしたり、遠視の鏡でこちらの行動を逐一観察したり、好意の目を向けた、仲良くしていたという理由でそれらを排除しようとしたり……すみません。容姿以外琴線に触れる部分がないです」
「おっふ」
悟君のセメントぶりよりもアルベドの奇行の方に変な声が出てしまう。
ちょっと助けない方が良いんじゃないかというダメな考えが頭をよぎる程度には引いてしまう。
「何よりもですね……愛していると言いながら、俺という人物を見てないのが嫌です」
本気で嫌悪していることがわかり、バルブロ王から今回の作戦が無事終了したら悟君を貴族に、僕たちも陪臣としてよろしく、だなんて打診があったから側室にアルベドを推そうと思っていたのが無理筋になってしまった。
「そういえば……TRPGやってる時に出てくるNPCによく似たリアルなドロドロしたのがよくいましたよね?特にタブラさんがキーパーしてた時だと思うんですが、もしかしてその好みが反映されていたりするんですかね?俺はああいったのが怖いというよりも近くにいてほしくないって感じなんですよ」
その言葉に膝をつく。
嫌いを超えた嫌悪ともいうべき感情を持つ以上、関係の修復は不可能だろう……アルベドが根本的に変われない限りは。
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