おっさん憑依でヒャッハーLORD   作:ししお

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前回のあらすじ

ヘロヘロさん演技する
色々されてる仕込み
メイドとの扱い差

以上をお送りしました


episode.11「親と子と」③

 棒と杖が交差し力比べのようにつばぜり合いの音が響く中チョコンガはパンドラへと質問をする。

 少なくともチョコンガの記憶している彼らはここまでの強さを持っていなかった、戦術的、戦略的な向上はあっても戦闘という面での強さが上がるということはなかった。

 

「なぜこんなにも強くなれた」

 

「私は私で強くなる理由を持ちましたので、強くならねばならなかった。それだけですよ」

 

 強くなってほしい、成長してほしいそんな願いはあったし、目の前のパンドラのような強さを得てほしいと言った事もある。

 命じたがそれがこうまで如実に表れる事はなかった。

 

「お前が父と崇めるサトルが命じたのか」

 

「ふっ……命じられなければそのようなことも決断することも覚悟することもできないとは、なんとも無様な。強くなりたい、そう願ったのは私です。意志薄弱な上っ面の言葉だけで殻など破れる訳がない」

 

 鈍い音ともに鍔迫り合いからお互い弾かれ距離が離れる。

 その瞬間にパンドラは魔法を使い地面からチョコンガを間に挟んで槍を交錯させる。

 

「ふん、私に拘束など……何故抜けんっ!?」

 

「敗北の意味を知った。敗北の結果を見た。世界に踏みにじられた跡を通った。それが私の強くなるべき理由に他ならない!未来を!大切だと思う()る方々を!奪わせないために!私は強くなる!」

 

 チョコンガが記憶しているのはあくまでも本来辿るはずだったモモンガの記憶でしかない。

 だからこそパンドラの見た塔の結末を知る(よし)も、人の持つ絶望へと立ち向かった輝きを知れる(ことわり)もない。

 精々最後の至高の御方と崇める自分が死ぬかもしれないという絶望程度だろう。

 文字通りの未来を閉ざし得る強者がいるという絶望を知るパンドラだからこそ、敗北を恐れ強さへと貪欲になれる。

 そしてだからこそ今という平和を大切にしたいと願う。

 

「NPCとて意志を持っている!彼らは私の子供達だ!私の大切なギルメン達が残した宝物だ!それを侮辱するのは許せん!」

 

 たかが差し込んだ程度の槍は簡単に力任せの行動で打ち砕かれその身を自由にする。

 ただその行動をする一手差し込むだけで十分だった。

 パンドラにはたったそれだけの時間で十分だったのだ。

 ヤルダバオトとの戦いを見た、罠の張り巡らせ方を見た、どのような言葉で激昂するか知った。

 

「あぁぁっはっはっはぁっ!ことばをぉ、交わして?わかりませんか?何が違うか。求めた先が違ぁう、求めた者が違う。あなたはずいぶんと寂しがり屋だ、そして何よりも一人になることを恐れている……他の方々と一緒に居られたから、でしょうなぁ。だから離れられることを考えて二の足を踏む、実に無様無様。そして嫌われないように相手の行動を許容するしてしまう相手が暴走しているとわかろうと知らずとも悪と理解しながら人間性から逃げ出してまで孤独になることを怖がる彼方は実に実にじぃつぅにぃ……矮小、でぇすぅねぇ?んん?」

 

 煽りながら怒りでキレる瞬間を待つ。

 チョコンガのみならずスケルトン系の異形種は精神異常無効を持つことを知っている、スズキからもそのことを聞いている。

 少なくとも今まで一度もソレを発動させずに表面上は喜び嗤い怒り驚く振りをしてきた精神的な怪物という評価こそが正しいバケモノ。

 演者であると自信を持つパンドラであってもスズキを演じることは不可能だと判断し、その精神性にこそ感服し、パンドラはスズキにこそ忠誠を誓っている。

 サトルの事は父として慕ってはいるがどちらを取るかと問われれば迷う事なくスズキに付く。

 

「正に無能、正に無知、正に惰弱!さぁ!さぁ!さぁ!そんな器小さきものを主と崇める者が無様といわずになんというっ!!素晴らしい仲間?否!道化と呼ぶのですよ。道化師は他者を笑わせる者、道化は他者に笑われるもの。芸人たるもの後者には堕ちたくありませんなぁ」

 

「そうだ。私はただの会社の社員にすぎん。過ぎた部下に支えられて……」

 

 返ってくるつまらない言葉に心底くだらない言葉だと肩をすくめ、あからさまに落胆するようなジェスチャーをしながらその言葉に見下して返す。

 

「馬鹿なのです?阿保なのですかね?脳みそ入ってますか?あぁ、骸骨なのでもう何もない空っぽでしたな。貴方が上司?これほど意識が違うともう喜劇ですな、社長や総統、王を求められながら部長の立場を目指すとか……ほんっとうに呆れて言葉もありませんよ」

 

 何を思い違いをしている、お前を最上と崇める部下に執る態度がそれか。

 必賞必罰を謳いながら部下の望みを把握もできずに真正面から臨めむ小心さに呆れ果てる。

 

「だからこそ哀れすぎる、こんな愚物が上に立つ俗物の下が哀れに過ぎる。部下は理解もしない、知ろうともしない、変えようともしない。貴方は理解させようともしない、知らせようともしない、変わろうとしない……どちらも道化ですよ」

 

 変わらぬ者を、無知なる者を、不理解な者を道化とパンドラは切って捨てる。

 日々を生きる者は変わるのだ、知らぬ者は知ろうと手を伸ばすのだ、理解できぬ者は理解しようと足搔き抗い理解しようとするのだ。

 それが生きる者だとパンドラはカルネ村で過ごし知った。

 最初は知らなかった、ただ村で生きるという多くの事を。

 始まりは変わらないと思っていた、気づき文字通り一変した。

 理解できなかった目的があった、苦汁を呑み、絶望を理解した。

 スズキは始まりに失望を与えた、苦悩しながら理解しようと足搔いた、それ故にナザリックにいる幾人かは変わった。

 ただ自分を語ればいい、そんな安い言葉でNPCという強固な本質は変わらない、変えられない。

 なぜか?設定というプログラムで動く(マシーン)がバグ無しでどう変わる。

 プロトコルを自ら組みなおす?エラーを発生させなければそもそも異常とすら気付かない。

 

「スズキ様は初手で盤面を崩して魅せた。ほんの小さな綻びから……貴方は?おかしいとは思いませんでしたか?怪しいと案じませんでしたか?違和感の一つも感じませんでしたか?何もかもがおかしいこの世界に、森羅万象怪しい事ばかりの出来事に、違和感しかない存在に」

 

「何を……言っている?」

 

 パンドラの言葉にチョコンガは困惑する。

 困惑しながらもその言葉に聞き入ってしまう。

 

「では問いましょう。『お前は誰だ』人間(生者)の鈴木悟でもない、オーバーロード(不死者)のモモンガでもない。中途半端な『お前は誰だ?』」

 

 チョコンガを通して『モモンガ』という存在のレゾンデートルに致命の言葉を投げかける。

 生者と置くには命の軽視、倫理観の欠如、不死者と置くには渇望も羨望も薄い。

 

『お前は誰だ』

 

 チョコンガには『鈴木悟』としての記憶もある、この世界に来てからのおっさんと出会わなかった場合の『モモンガ』としての記憶もある。

 だが、自分が『鈴木悟』であるという確証は何一つない、ログアウトをして自身の体に戻れるのであれば自身を鈴木悟だと定義できただろう。

 しかしそれを証明できるはずであったコンソールは出てくることはない、ナザリックの玉座の間ではキャラクターの存在を示すコンソールは出るのに関わらず、自身が出そうとすれば出すことが出来ないのだ。

 

「あ?」

 

 だからこそPCとして作り出されたはずである『モモンガ』であるかも疑わしくなってくる事に気が付いてしまう。

『もしかしたら』そう考えてしまう。

『もしかしたら』自分は自分をPCの『モモンガ』だと思い込んでいる『NPC』なのではないかと気が付き考えてしまう。

「あ……あぁ……?」

 自己の定義が揺らいだ時、思考できるものはひどく脆くなる。

 今まで立っていた地面が崩れ去る様に感じ、定まっていた自身を失ってしまう。

 まっすぐ見ているはずの赤い燐光を放つ眼光は力を失い、揺れ動き視界が歪んでいく。

 思考は霞み、まともに考えが纏まらなくなって一つの言葉が繰り返される。

 

『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』『お前は誰だ?』

 

 答えのない問いかけばかりが繰り返されていく。

 

「私は……」

 

 自分を鈴木悟だと声を絞り出そうとしてフラッシュバックするのはカルネ村の虐殺を見た時に感じた動揺も何もない、人を人と思わない無感動な場面を見ていた感覚。

 『モモンガ』が本当に『鈴木悟』であれば、吐き出していた光景。

 突きつけられる答えは『モモンガ』は『鈴木悟ではない』こと。

 

「違う……違う……違……う……なら……私は……?」

 

 人を人と思わなくなったのはアンデッドの身体になったからだと思っていた。

 ならそれは進行しているのか?悩み、怒り、苦しみ、悲しみ、笑う。

 そんな感情を持たないから『精神抑制』などというものがあるのに『モモンガ』は強い感情を持つ、矛盾。

 

『お前は誰だ?』

 

 問いかけに答えを出そうとして矛盾がすぐに出てくる。

 音を立てて力の抜けた手から杖が地面に転がる。

 力を無くした膝は地面に付く。

 

「私は……誰……だ?」

 

 呆然自失と目の前に立つパンドラをぼんやりと見上げる。

 

「え?興味も関心も何も在りはしませんよ。えぇ、時間稼ぎはもう終わりましたし」

 

 あっけらかんと先ほどまでの戦意を霧散させて、勝利してきた仲間たちを両手を広げて迎い入れる。

 縄にかけられ引き摺られてくるプレアデス達、タブラさんに俵担ぎをされて連れてこられるアルベド、先ほどまであった歪な樹木は全て伐採されていた。

 

「んっんー、これにて我らが完全勝利。ですなぁ」







ぶっちゃけ相手戦力わかってる状態でパンドラと戦うとこうなるよね
戦術、戦略、心理戦、話術、演技でモモンガが翻弄される姿しか想像できない
ご都合主義の主人公補正だとかが無ければね

『お前は誰だ』 出展:拷問方法
鏡の前に立ちこの言葉を繰り返していくというだけの単純なもの
単純ゆえに効果は高く、アイデンティティやレゾンデートルの崩壊と精神崩壊を引き起こす拷問方法
ドッペルゲンガー、スワンプマン問題に直結する問いかけの一つ

ティアマトの艦長募集

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