魔法少女リリカルなのは 平穏に暮らしたい… 作:aizaki
お母様のお叱りから解放されましたので、なのはの家に迎えに行きます。
「おはよう!あやかちゃん」
家から出てきたなのはは、今までと違い魔法に目覚めた者の魔力の纏い方をしています。
「おはよう…なのは…」
どうやら、なのはは巻き込まれたようですね、これは忌々しき問題です。
「なにか険しい顔をしてるけど、どうしたの?」
家から出てきたなのはが私の顔を見て、訊ねてきます。
どうも顔に出てしまっていたようですが、このまま続けましょう。
「ええ、ちょっとした事件に巻き込まれてしまった友人の事を考えていました」
「その子、大丈夫だったの?」
「ええ、幸い怪我もなくて安心したのですが、事件の方はまだ解決していない上に厄介な事なので、悩んでいるところです」
「誰だろう?アリサちゃんやすずかちゃんの事じゃないよね?」
「ええ、違いますよ」
なのは…貴方の事なのですが、解っていませんね…
「おはよ~」
「なのは、昨夜の話聞いた?」
学校に着くと、アリサが昨日の事件に関して話しかけてきます。
「へっ?昨夜って…?」
なのはは良くわからないといった返事をします。
アリサ、それでは何の話かわかりませんよ
アリサの説明不足をすずかが説明します。
「昨日行った病院で車の事故かなんかがあったらしくって…壁が壊れちゃったんだって」
「フェレットが無事かどうか心配で…」
「あっ…えーとね…その件はその…」
なのはが困っているので、助け舟を出します。
「なのはが昨晩外出したという話を聞きましたが、そんな事件があった中、大丈夫だったのですか?」
「うん、大丈夫だったよ、その時あの子と道でばったり会ったから連れて帰ったの、だから今は家にいるよ」
「そっか…無事でなのはの家にいるんだ」
「でも、凄い偶然だったよね、たまたま逃げ出してたあの子と道でばったり会うなんて」
「「ねぇ」」
なのは、顔が引き攣っているのがわかりますよ
「ああ、それでねどうやらあの子飼いフェレットじゃないみたいで、暫くの間、家で預かる事になったよ」
「そうなんだ…」
「名前つけてあげなきゃ」
「もう決めてる?」
「うん、ユーノくんって名前」
「ユーノくん?」
「そう、ユーノくん!」
アリサがどうも腑に落ちない顔をしているので、私がなのはをからかいます。
「という事は、そのフェレットを呼ぶとき、ユーノくん君とかユーノくんちゃんとか、なんとも微妙な呼び方になりますね」
「にゃぁ、違うよ!名前はユーノで男の子だからユーノくん!」
授業が終わり、四人でで一緒に帰ります。
最初にすずかの家に着き、次にアリサが車に乗って帰ります。
いつもは私となのはは一緒になのはの家まで帰って別れるのですが、今日はなのはとあのフェレットに用事があります。
アリサと別れたあとの帰り道で、なのはに話をします。
「なのは、ちょっと話をしたい事があるから、この後なのはの家に行っていいかな?」
「ん~」
少しなのはは考えた後
「大丈夫だよあやかちゃん。それだったら一緒におやつを食べながらお話しよっか!」
「ありがとなのは!」
その直後、昨晩と同じ感覚が私を襲います。
なのはも感じたらしく、表情が強張ります。
数は一つ、場所は神社の方角です。
「ごめん、なのは…さっきああ言っておいてなのですが、今日は他の用事があるのを忘れてました、ちょっと急がないといけないので、今日はここで失礼しますね」
「えっ…うん、用事があるならしょうがないよね」
「ごめんね、なのは話はまた今度しましょう」
「うん、バイバイ」
そう手を振って来た道を戻ります。
昼間は目立つので、空を飛んでいくわけにはいかないのがもどかしいです。
ですが、昨日みたいに犠牲者を出すわけにはいきません。急がないと!!
神社の階段を全速力で駆けあがる間に戦装束を身に纏います。
神社に辿りつくと、女性が地面に倒れこみ、その傍に大きな黒い犬がいました。
私は急いで女性と犬の間に割り込み槍を構えます。
犬と暫く睨みあいますが膠着状態です。
この女性をなんとかしない限り私はこの場から動く訳にはいきません。
この犬が昨晩と同じくらいであるならば、女性の事は気にせず一気に片をつけてしまうのがいいのですが、リスクを考えるとできればその手は選びたくありません。
なんとか自由に戦える状況にできないものでしょうか…
そう考えていると、階段から誰か上って来るようです。
しまった!また結界を張る事に意識が向いていませんでした。
それを感じた犬は階段の方に向かって走り出します。
それを追いかけるように私も走り出しますが、このままでは出会い頭の最初の一撃だけは阻止することができません。
階段の下から話し声が聞こえてきます。この声は恐らくなのはとフェレットの声です。
私が階段の途中に居るなのはを見た瞬間に犬となのはがかち合いましたが、彼女は桃色の魔法の盾を出して犬の攻撃を防ぎます。
犬はジャンプして鳥居の上に乗ります。
「なのは、何しに来たの!早く逃げてください!」
私の姿を見たなのはは、一瞬誰?といった顔をした後
「あやかちゃんなの?どうしてここに…それにその格好…」
「君はなのはの友達の…」
二人は私が居る事に驚いていました。
「そんな話は後です!来ますよ!」
犬は鳥居の上からなのは目がけて飛びかかりますが、私が槍でそれを邪魔します。
その間になのはは戦装束を身に纏い杖を構えます。
そうですか、あの赤い宝石の魔法支援機(デバイス)を譲り受けて、魔導師になったという事ですね…
「なのは、私が前に出ますから、出来るようなら援護をお願いします」
「うん、任せてあやかちゃん」
私が槍で犬を追い詰め、なのはが魔力の布で犬を拘束してから仕留めます。
「リリカル!マジカル!ジュエルシードシリアルXVI 封印!」
『あの石の名前はジュエルシードというのですか…』
なのはの封印魔法により石が封印された後、小型犬が地面に横たわっていました。
私は封印されたジュエルシードを取り、アルスに収納します。
それを見たフェレットが私に向かって
「返してください!それは危ない物なんです!」
「知っているわ、だからこうして回収しているのです、これのせいで昨晩一人死んだのだから…」
その言葉になのはとフェレットは驚き
「昨日のもう一つのジュエルシードを封印してくれたのは貴方だったのですね、死んだというのは?」
「言葉通りの意味です。その石を手にした野良犬が一人の女性を食い殺したのです。私は間に合いませんでした」
「そんな…僕のせいだ…」
私の言葉を聞き、フェレットは項垂れ、なのはは目を伏せます。
私はフェレットに向かって
「それと貴方はさっき、私に向かって返せと言いましたね、という事はこの石の持ち主は貴方という事でいいのでしょうか?」
「そうです…僕の…物です…」
「そう…それじゃぁ素直に答えてくれるとは思えませんが、この石をこの街にばら撒いた貴方の目的は何なのでしょう?」
「待ってあやかちゃん!ユーノ君は悪くないの!事故なんだって!」
なのはが私達の間に割って入りますが、なのはの聞いた事が真実とは限りません。
「私はそこのフェレットに聞いてるのです!なのはは今は黙っててください!!」
「あやかちゃん…」
なのはは目尻に涙を浮かべ今にも泣きそうになります。
「事故だったんだ…僕が見つけたジュエルシードを運んでいる船が事故に遭って…」
「それでこの街にばら撒かれたと…」
「はい…」
「それを証明する術はなにかあるのですか?」
「それは…ありま…せん…」
「貴方がこの街に来た理由は?」
「危険なジュエルシードを早く回収した方がいいと思ったからです。」
「あの場所に倒れていたのは何故?」
「ジュエルシードを一つ回収できたのですが、僕の力が足りずに力尽きてしまったから…」
「それでこの地に居る魔導の資質のある者に助けを求めたという事ですか?」
「そうです…僕の力が回復するまでの間だけ助けてくれれば、あとは自分でなんとかするつもりでした」
話自体におかしな点はありませんが、それを信じるだけの背景に穴がありすぎますが…
「確かに言ってる事におかしな点はないですね」
二人は私の言葉に喜びを表しますが、話は最後まで聞いてください。
「ですが、私はその話を信じられません、それに私はこういう可能性も考えました」
「ジュエルシードがどのくらいの性能を発揮するのか実験する場所としてこの街が選ばれたというものです」
「具体的にはジュエルシードをバラ撒き、資質のある者にしか解らない方法で危険を知らせ資質のある者を集めます。集まった資質のある者に魔導の力を与え対処に協力させるという名目で同行しジュエルシードが起こす現象とどのレベルでなら対処可能かのデータ収集が目的の実験ではないかと」
「ひどいよあやかちゃん、ユーノ君は嘘を言って居ないよ!」
「何故それがわかるのです?なのは」
「なんとなくそんな気がするの」
「私はそんな不確定な要素で相手に命は預けられません。それにその考えに至った理由についてもちゃんと説明できます。」
「どんな理由からそう考えたのですか?」
フェレットが質問してきましたので、答えましょう。
「第一にどんなに資質があっても訓練した人間には敵いません、訓練した人間の手に余る事を才能があるだけの人間に当たらせるという事自体、徒に被害を増やすだけです。しかもそれは命に関わる事件です。正気なら関わらせようとはしません」
「第二に一人で現れて危機に対応するというのも不自然です。本来危機に対する対応は二人以上で対する事が基本です。それが不可能で一人で対応しなければならない事もあるでしょう。ですが、自分ひとりでは手に負えないと解った時点でやる事は情報を公開し避難させ、関わる人を減らし被害を最小限りにする事です」
「第三に封印したジュエルシードを返せという処です。被害を防ぐ事が目的であるならば、回収に関わった誰が持っても問題ではありません。自分が持たなければならない正統性はありません」
「でもそれは、僕がジュエルシードを見つけて一番よく知っているから、僕が持つのが一番安全だと思って…」
「そうであるならば、それをまず最初に相手に説明してから言う話です。」
私の言葉にフェレットは俯いているので、話を続けます。
「最後に私の知る魔導師という輩は魔法を知らない人間を軽んじている傾向があります。それこそモルモットとしか思っていないような輩です」
その私の言葉を聞いてフェレットは顔を上げて
「ち…ちょっと待ってください。貴方も魔導師なんですよね?」
「そうですが、私は自分から望んで魔導師になった訳ではありません。強制的にならざるを得ない状態にされて魔導師になりました」
「あやかちゃん、私からもお願い。ユーノ君に協力してあげて…」
「私からもなのはにお願いがあります。今すぐ魔法との関わりを止めて今までの生活に戻ってください。魔法に関わるのは命の危険が高すぎます」
「それは出来ないよあやかちゃん、あやかちゃんやユーノ君が命を賭けていて、私はそれを手助けする力があるのに、黙っているなんて事はできない」
私はなのはの言葉とその強い眼差しを見て説得は無理だと感じました。
「……わかりました。私の負けです。なのはが一度決めたら考えを改めさせるの無理ですから、私の出す条件が飲めるのであれば協力しましょう。」
「条件とはなんですか?」
「一つ、ジュエルシードについて知りうる情報の提供、二つ、所持しているジュエルシードの管理は私がする。三つ、ジュエルシードの捜索は別行動で行う。こんなとこかしら」
「確認させてください。二つ目のジュエルシードの管理に関しては、僕の疑いが晴れたらジュエルシードを渡していただけますか?」
「ええ、貴方が言う事を信じる事が出来たらジュエルシードはお渡しします。」
「三つ目の探索は別行動ですが、見つけた後の回収は協力してもらえるのですよね?」
「別々に対処の必要がある場合を除いて、基本的には協力して回収するつもりです」
「…わかりました。協力していただけますか?」
「ええ、これからよろしくねユーノ、あなたも質問があれば何でも聞いて、答えられる範囲でなら答えるから」
私のその言葉になのはは笑顔で
「ありがとう!あやかちゃん」
その後、なのはの家でジュエルシードについて聞き、今後の方針を決めた後、私の力でユーノの怪我と魔力を回復させると、矢継ぎ早にユーノから質問され、誤魔化すのが大変でした。
私の使う魔法が主流であるミッドチルダ式でもベルカ式でもない事から、ユーノの魔法についての解説があったり、私の魔力がとても少ないのにそんな芸当ができるのが何故か疑問にもったユーノへ説明とか、聞いてもいいと言わなければ良かったかもしれません。
実は私はユーノの事をそんなに疑ってはいません。あんな事を言ったのは今後に活かして欲しいと思ったからです。
ジュエルシードは暫くしてから全て渡してあげればいいでしょう。
次はフェイトと初めて出会うところです。