ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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ちょっと早く書きあがったのでうpします。
ちょっと、お勉強タイムですぜ。


第十話 「最弱の赤龍帝と紅髪の殲滅姫」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第十話

「最弱の赤龍帝と紅髪の殲滅姫」

 

 一誠は意外と直ぐに見つかった。

 別荘のリビングにて、強化の練習をしているアーシアの隣で何やら参考書のような物を読んでいたので、何を読んでいるのかと気になりタイトルを覗き込んでみれば、悪魔、天使、堕天使に関する本らしい。

 

「勉強か」

「うわっ!? あ、アーチャーさん……ビックリさせないでくださいよ」

「いや、君が真面目に勉強しているのが意外でね。学校の成績はそんなによろしくないと聞いているが?」

「うっ……その、部長にこの世界の事を少しでも勉強しておけって言われて。アーチャーさんは悪魔の事とかってご存知ですか?」

「ふむ……私が知る知識と、この世界の知識が当て嵌まるかは疑問だが、少しは知っているつもりだ」

 

 例えば、一誠の主であるリアス・グレモリーについて。

 そもそもグレモリーとはソロモン72柱の1柱であり、序列は56番。公爵の位を持つ悪魔としてソロモンの伝説で有名だ。

 グレモリーという名も、様々な別名があり、ゴモリー、あるいはガモリーやゲモリーとも呼ばれ、グレモリーという名が記載されているのはアレイスター・クロウリーらが編集したソロモンの小さな鍵という書物のみなのだとか。

 

「へぇ、部長の名前ってそんな有名なんすか」

「ああ、興味があればソロモン72柱について色々と説明するが?」

「マジっすか? ちょっと興味あります」

「では、そうだな……駒王学園の生徒会長、支取蒼那がいるであろう?」

「あの美人生徒会長ですよね? アーチャーさんも知ってるんですか?」

「ああ、偶々見かけた……彼女も悪魔だ」

 

 驚いた。まさか身近なところにもう一人悪魔が居た事に気付かなかった一誠だったが、一先ずアーチャーの話の続きを聞くことにした。

 

「支取という苗字から、恐らくソロモン72柱の1柱、序列12位の君主、シトリーで間違い無いだろう」

「……まんまっすね」

「そう言ってやるな。続けるぞ……シトリーとは別名ビトル、シュトリなどがあり、望みの男性、または女性を愛させ、裸にさせたり、相手の秘密を暴く事が出来ると伝えられる魔神だ」

「裸にさせたり!?」

「そこに反応すると予想はしていたよ……それから、今度相手になるフェニックスだが」

 

 フェニックス。ソロモン72柱が1柱、序列37位の侯爵であり、巨大な鳥の形をした魔神としてゴエティアには記載されている。

 

「ただし、能力はゴエティアの魔神としてのフェニックスではなく、ギリシャやローマの方で伝えられる伝説の聖なる鳥フェニックスの能力らしいな、あのライザーという男は」

「悪魔なのに聖なる鳥なんすか?」

「能力的に見ればな……正体は悪魔である以上、ゴエティアに記載される魔神の方だ」

 

 続いて魔王についてだ。

 一誠が悪魔である以上、いずれは顔を合わせる機会もあるだろうし、そもそも主であるリアスが魔王の妹である以上、知っておかなければならない知識だろう。

 

「まず、リアス・グレモリーの兄だという魔王、ルシファーについてか……。ルシファーとは元々、悪魔王サタンと同一視されている。この名くらいは君でも知っていよう?」

「ゲームとかでも出ますね、サタンって名前は」

「うむ、そしてサタン……つまりルシファーだが、元々堕天使が魔界で魔王になった存在と言われている。堕天する前は大天使長ルシフェル、明けの明星という渾名を持つ最高位の天使だったのが、神に反逆し、大天使ミカエル率いる天使軍団との戦いにて地獄に堕とされ、堕天使になった」

「んで、その後に魔王になったって事っすよね?」

「そうだ」

 

 因みに現在の堕天使総督であるアザゼルがサタンであるという説もあるが、それは否定されているのは余談である。

 

「次に君が一番気にしているであろう女性魔王で有名なレヴィアタンだが、そもそもレヴィアタンというのは魔王ではなく海の怪物として有名だ」

「海の怪物?」

「リヴァイアサンという名はゲームなんかにも出てくるであろう? あれと同一存在だ」

「ああ! あのリヴァイアサンと! って、えええ!? マジで!?」

「そうだ。レヴィアタンが悪魔として見られるようになったのは中世の頃からだな」

 

 残るアスモデウスとベルゼブブも有名だ。

 アスモデウスと言えば色欲を司る魔神であり、元々は智天使だったと言われている。ゾロアスター教の悪魔を意味するアーシュマがアスモデウスの語源だ。

 そして、ベルゼブブは蝿の王の名で知られる気高き王であり、悪魔であるのと同時にトルコの豊穣神プリアポスやスラブの善神ベロボーグといった神と同一視されている魔神なのだ。

 

「な、何か凄いっすね、元々天使だったり、怪物だったり、神様と同一視されてたり……」

「悪魔なんてものは、皆大抵がそのような存在ばかりだ……フェニックスが良い例であろう? あれは悪魔でありながら聖なる鳥という意味の名でもあるのだから」

「た、確かに……」

 

 悪魔の話はこの辺にして、天使や堕天使についての知識を一誠に聞かせ始めたアーチャーだが、その様子を魔術の練習をしながら見ていたアーシアは、アーチャーは教師に向いているのではないかと思ってしまった。

 もっとも、本人は否定するだろうから、絶対に口にはしなかったのだが。

 

 

 一誠への勉強が終わったところで空も暗くなり、夕食の時間となった。

 当然だが、夕食を作ったのは我等が主夫の英霊、アーチャーなのは言うまでもない事だろう。

 

「ねぇ、アーチャー? あなたウチでシェフやらないかしら? 高待遇を約束するわよ?」

「魅力的な提案だが、お断りさせてもらおう」

 

 料理を口にしたリアスの感想は公爵家の専属シェフへのお誘いだった。

 テーブルに並ぶのは一見すれば普通のカレーだが、そこはアーチャーが作ったカレーである以上、普通のカレーである筈も無い。

 肉、野菜などを炒める時間を正確に計り、ルーに至っては市販の物ではなく数種類のスパイスを配合して作ったアーチャーオリジナル。

 白米も炊く際は最適な研ぎ方をして、水の量を最も理想的な量で焚いたそれは白き宝石の如き輝きを放っている。

 

「アーシア、いつもこんな美味ぇ飯食ってんのかぁ」

「はい! アーチャーさんの作るご飯は本当に美味しくて、ついつい食べ過ぎちゃうんです~」

「あらあら、ある意味女性の敵みたいなお料理ですわね」

「……美味、おかわりです」

 

 因みに小猫、これで5杯目だ。

 

「何か、僕たち凄く良い環境で訓練してる気がするよ……大自然の中で、ご飯もこんなに美味しいんだから」

「だな、俺たち恵まれてるぜ」

「因みに明日から訓練はもっと厳しくなるわよ?」

 

 リアスの一言で一誠のテンションが一気に下がってしまった。

 それを見て苦笑している祐斗だが、その彼も、次のアーチャーの一言で一誠同様にテンションが下がる事になる。

 

「明日は木場祐斗、君の剣の腕を見るから覚悟しておけ……少しばかり厳し目を、君の主はご希望みたいなのでね」

「……はい」

 

 

 夕食の後、全員風呂に入り終えてから就寝の時間になった。

 アーチャーはいつも通り屋根の上で特に警戒する必要も無いが周囲への警戒を行っていたのだが、ふと別荘の離れにあるベンチでリアスと一誠が話し合っているのが見えたので、強化した聴力で盗み聞きしている。

 

「……ふむ、グレモリー家次期当主としてではなく、リアス・グレモリー本人を見てくれる者と結婚したい、か……貴族らしからぬ感情だが、まぁ分らなくもない、か」

 

 リアスが一誠に語っていた内容、それはリアスがライザーとの結婚を嫌がる理由と、自身の結婚に対する願望だった。

 その内容は確かにアーチャーにも理解出来る感情だが、貴族……それも公爵家の次期当主という立場である以上、認められる可能性が低いものでもある。

 

「む?」

 

 一誠が先に別荘に戻り、リアスが一人で読書を続けるようなので、アーチャーは何となくだがリアスと話をする気になり、リアスの目の前に降り立った。

 

「あら、起きてたのね」

「私に睡眠は必要無い。それより、君こそ寝なくても良いのかね?」

「ちょっと、ね……寝れないだけよ」

「先ほどの兵藤一誠との話が理由かね?」

「……盗み聞きなんて人が悪いわよ」

 

 それはスマンと、苦笑するアーチャーに溜息を溢しながら、リアスは読んでいた本を閉じてアーチャーを見上げる。

 

「ねぇ、貴方から見て私達に勝ち目はあると思う?」

「……ライザー・フェニックスの眷属との戦いであれば、向こうの女王(クイーン)以外とはそれなりに戦えるであろうが、まぁ普通に考えれば無理であろう」

「そう、よね……」

 

 そもそも実戦経験が違い過ぎる。

 確かに、リアスの眷属達もはぐれ悪魔討伐などで経験を積んでいるのかもしれないが、それも微々たるものでしかない。

 ライザーの眷属は既に何度も公式ゲームで戦い、実戦経験を積んでいるのだから、そもそもリアスに勝ち目が無いのも当然の話だ。

 

「貴方は、別に私達の勝ち負けに興味は無い、そうよね?」

「そうだ。私はあくまでアーシアを守ることが最優先であり、その結果が君の敗北であろうが興味は無い。手助けくらいはするし、不死殺しの武器も用意したが、それはアーシアに危険が迫らなければ使うつもりは無いと思え」

「そうね……貴方は、そういう人よね」

 

 勿論、わざとアーシアを危険に晒すようであれば即座にアーチャーはリアスを裏切る。

 そして、それはリアスも承知しているだろうし、そもそも彼女の性格からしてアーシアをわざと危険に晒すような真似はしない。

 

「後は、君が眷属を信じられるか否かだ」

「え?」

「君は(キング)だ。君がやられる前に戦意を喪失すれば投了(リザイン)という形で眷属を守れるだろう……だが、それは肉体的に守ったというだけで、彼らのプライドや心意気を傷つける事になり、それはつまり、彼らの心を守れないという事になる」

「それは、私に投了(リザイン)するなと言いたいのかしら?」

「そうは言わない。だが、タイミングを間違えればそうなるという話だ。最後まで仲間を、眷属を信じられなければ、君は最悪のタイミングで投了(リザイン)する事になる……それだけは、気をつけることだ」

 

 それだけ言って、アーチャーは再び屋根の上に戻ってしまう。

 屋根の上に立ち、戻ってくる様子の無いアーチャーを見上げていたリアスも、彼に言われたことを反復している内に睡魔がやってきたらしく、早々に別荘へと戻り、自室のベッドに横になるのだった。




次回はいよいよレーティングゲーム直前、アーチャーがアーシアをフルアーマー・アーシア改へと進化させますw

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