これはレイナーレがアーチャーに殺されたので目覚める機会が無かったので、別に用意した覚醒シーンです。
ハイスクールD×D
~堕ちた聖女の剣~
番外編1
「赤龍帝の目覚め」
これは、まだライザー・フェニックスが来る前のお話。
アーチャーとアーシアが契約して、アーシアも学校に通い始めたばかりの頃だ。リアスに命じられて早朝訓練をしている一誠を教会の屋根の上から見つけて興味本位で彼らの所にアーシアと共に行くと、汗だくでへばっている一誠がリアスに差し出されたスポーツ飲料をがぶ飲みしている所だった。
「朝早くから精が出るな、兵藤一誠、リアス・グレモリー」
「おはようございます、イッセーさん、部長さん」
「あら、おはようアーシア、アーチャー、二人も早いのね?」
アーチャーは元々睡眠を必要としていないので、寝ていないのと、アーシアは日課の早朝礼拝で早起きというだけの事だが、それは兎も角として一誠も500mlを一気飲みしてから挨拶を返してくれる。
「おはようアーシア、それにアーチャーさんも」
「うむ……見たところ、体力作りといったところか?」
「そうっす、俺ってまだ悪魔になって日が浅いんで、戦いとか全然なんすよ。だから少しでも体力付けておけば
「確か、
「ええ、イッセーの他にも使い手は結構確認されてるありふれた物だけど、一定時間持ち主の力を2倍にさせるっていう能力は使い方次第では強力だからね」
だから、一誠の地力を少しでも上げて、2倍にした時の力が更に高くなるよう毎日早朝訓練を欠かさないようにしている。
「ごくありふれた物、か……確か、木場祐斗の
「ええ、そうよ」
「ふむ……」
それにしては変だとアーチャーは思っていた。
祐斗の
自慢ではないが、アーチャーの解析は、特に剣や武具、無機物に関する解析では一般的な魔術師の追随を許さないというだけの自信がある。
事、投影と無機物の解析に関しては魔術の師である一流の魔術師である遠坂凛にすら負けないという自負を持っているアーチャーが、ありふれた
「(それに……)」
少し、気になるのは一誠から感じられる気配、とでも言うのか、それが悪魔のそれに別の何かが混じっている。
リアスや、彼女の眷属達にも悪魔以外の気配が混じっている者は二名居るが、一誠に混じっている気配は、その二名とは比べ物にならないと、直感スキルを持っているわけでもないのに、直感が働いたのだ。
「リアス・グレモリー、例えばの話だが、上位の
「それは……どうだったかしら? たしか、そんな事例も無かったわけではない、とは聞いた事あった気もするけれど」
もし、アーチャーの勘が正しければ、一誠の
寧ろ、その上位互換……上位の
「アーチャーさん?」
「ああ、いや……そうだな、マスター、悪いが
「? はい」
「ちょっとアーチャー、何する気?」
「いや何、もしかしたら兵藤一誠の
「何ですって!? いえ、でも……」
どうやら、リアスにも何か心当たりがあるのか思案顔になり、ふと顔を上げてアーチャーを見上げる。
「確証はあるの?」
「さて、こればっかりは何とも……だが、もし当たっていれば君の
「
「あの、部長? アーチャーさん? 俺そっちのけで何を……」
「イッセー!」
「は、はい!」
「もし、今より強くなりたいのなら、アーチャーに頼みなさい。どうやら私がやるよりも効率が良さそうだしね」
「今より、強く……」
強くなる事を当面の目標としている一誠にとって、それは願っても無い事だった。
だから、一誠は立ち上がってアーチャーの前に立つと、勢い良くその頭を下げて誠意を見せる。
「お願いします! 俺、今よりもっと強くなりたいっす!!」
「……良いだろう、ならば今日の学校は休みたまえ」
「はい!」
こうして、この日は一誠とアーシアが学校を休み、アーチャーと共に教会の裏手にある雑木林で特訓を行う事になるのだった。
一誠を連れて雑木林に来たアーチャーは林の四方に結界を張る剣を刺して林を覆うように認識阻害と防音の結界を張った。
これで結界の外に何も影響が出なくなったのを確認して、早速だがアーチャーは両手に刃引きした干将・莫耶を投影して構える。
「さて、兵藤一誠……まず君の
「え、そうなんですか? 部長がこれは
「根拠はある。まず、君の
「えっと……」
つまり、潜在能力の高さで駒の数が変わる
「なるほど、それってつまり……」
「そう、君の
「おお! すげぇ!! じゃあ、もし本当の
「今よりも戦力としての価値が上がるだろうな、間違いなく」
早速だが、訓練が始まった。
最初の1時間はひたすら一誠がアーチャーに攻撃を仕掛けていたのだが、その全てをアーチャーに避けられ、悉くが当たらず受け流されている。
その後の1時間はアーチャーからの攻撃も行われ、アーチャーの攻撃の全てを、一誠は避けられずに受けて30分くらい気絶してしまった。
「なんともまぁ……」
アーシアの治療を受けている気絶した一誠を見下ろし、アーチャーはため息を零しながら先が思いやられると首を振る。
「さて、これでは埒が明かないが……ふむ、
早速だが使い魔を作って何かを書いた紙を持たせるとリアスの下へと飛ばした。
鋼の翼を羽ばたいて銀色の鳥が空を飛んでいくのを見送ったアーチャーは、ようやく目を覚ました一誠と再び模擬戦を開始する。
夕方になり、一向に覚醒する気配の無い一誠の
加えている紙は先ほどアーチャーが持たせた物ではなく、新しくリアスが持たせた物らしく、受け取って開いてみればリアスの文字で文章が書かれている。
「どうしたんすか?」
「いや、リアス・グレモリーに
ならば覚醒するとしたら一誠が強い思いを、それも心の底から強く思った思念が働きかければ、
「あれ? アーチャーさん、裏に何か書かれてます」
「む?」
アーシアに言われて裏返してみれば、確かに続きが書かれていた。
指摘してくれたアーシアの頭を撫でながら読んでみると……気のせいだろうか、変な事が書かれている気がする。
「……」
目を擦ってもう一度読んでみるが、どうやら目がおかしくなったわけではなさそうだ。
「アーチャーさん?」
「部長は何て?」
「……あ~……なんだ、最終手段をリアス・グレモリーは書いてくれているのだが……な……」
これを、口にしろと言うのだろうか、あのあかい悪魔は。
「最終手段!? アーチャーさん! 是非お願いします!!」
「むぅ……恨むぞリアス・グレモリー……こほん」
咳払いをして、一度深呼吸をしたアーチャーは真っ直ぐ一誠の方を向く。そして……。
「兵藤一誠! いい加減に覚醒しなければ、リアス・グレモリーの……お、お……おっぱいは私が頂く事になるぞ!!」
「っ!?!?!?」
「あ、アーチャーさん!?」
この日、赤龍帝・兵藤一誠は見事に覚醒した。
しかし、その代わり一人の弓兵が主に令呪を用いて自害させてくれと懇願し、主である聖女が必死に止めるのに2~3日の時を要する事になるのだった。
この後、アーチャーがリアスに制裁を加えたのは、言うまでもない。