ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

3 / 93
他の小説のネタが浮かばず難航していたので、苦し紛れに書いたものです。
続けるか否かは皆さんの反応次第という事で。


プロローグ
プロローグ


ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

プロローグ

 

 かつて、多くの戦場を駆け抜けた紅い騎士が居た。

 多くの人を救いたいと願い、戦い抜け、沢山の不幸を両手に握る剣で振り払ってきた騎士は、結果として救ったはずの人に裏切られて生涯を終えたのだ。

 幼き頃に夢見た正義の味方、大人になれば誰もが実現不可能な夢物語と切って捨てるそれを目指し、無償で人々を救い、戦争を止め、世界すら救った男の末路がそれだった。

 世界を救う、そんな人の身には過ぎた行いを実行した男は、その行いの際の契約により世界へと召し上げられ死後、守護者として以降は人の滅びを回避する掃除屋へと身を費やす。

 それは守護者となった英霊の定め、延々と人の愚かな行いの後始末を行い、人の身であった頃より多くの人を救えると思っていたのに、これでは男が守護者になった意味は無かった。

 何もかもに絶望し、幼き頃から抱いていた夢や情熱は磨耗し果て、いつしか自身すら殺したいと願うほどに男はコワレテしまったのだ。

 

「ああ、それは違う。俺はそんな事の為に守護者になったのではない!!」

 

 ただ、多くの人を救いたかった。全ての人を、などと贅沢な事は言わない。だけどせめて目の届く範囲の人を救えれば、それで良かったのに、何故こうなってしまったのか。

 英霊の座にて自問自答しながら、男は幾度か過去の自分を殺す機会を得た。だけど、そのどれもが殺す事も出来ずに座へと戻ってきてしまう。

 召喚後の記憶が記録となり、答えを得た自分が居たという事すらも記憶にはならないこの身が恨めしく思うのは無理からぬことだ。

 そして、もう何度目になるのか、男は自分が召喚されようとしている事に気がついた。

 

「またか……はたして、私のようなハズレを呼び出す大馬鹿者は、今度は誰なのか」

 

 記録では嘗ての戦友と、それからもう一人しか居ない。恐らく今回もそのどちらかに呼び出されたのだろうが……。

 

「まぁいい。どの道、私がするべきことなど何一つ変わらないのだから」

 

 せめて、ハズレを引いた大馬鹿者に、皮肉の一つでも言ってやろう。そう思いながら、英霊エミヤは現世へと召喚されるのだった。

 

 

 何故、こんな事になったのか、磔にされた少女は自問自答していた。

 孤児として教会の孤児院に居た頃から神を信仰し、シスターとなってからも信心深く主への祈りを捧げて、いつしか聖女とまで呼ばれて、教会と敵対関係にある悪魔を治療した事で魔女と呼ばれて追放された後も、ずっと信仰を捨てず、今の状況は主が自身へと課した試練なのだと、そう思って乗り越えようとしてきた。

 だけど、目の前の堕天使は自分を殺そうとしている。自分は死ぬために故国を離れ日本まで来たのか、自分は死ぬのが主からの試練なのか、そう思うと涙が流れる。

 助けて欲しい。まだ死にたくない。日本に来て初めての友達になってくれた少年の顔が脳裏を過ぎるが、彼を巻き込みたくないと、あの優しい少年をこんな事に巻き込みたくないとも思ってしまう。

 ならば、誰か……こんな自分を救ってくれる人が居るのであれば、主への祈りを捧げる事しか出来ない自分でも、救ってくれる優しい人が居るのであれば、助けてください。少女は生まれて初めて主以外に祈りを捧げた。

 その時だった。突如少女の目の前に紅い魔法陣が展開され、膨大な魔力が教会地下一帯にあふれ出したのだ。

 

「な、何!? 何事!?」

 

 目の前に居る堕天使がうろたえているが、少女は何故かその魔力の奔流が、鮮血の如く輝く魔法陣の光が、何処か心地よく感じた。

 まるで、少女を優しく包み込むかのように、もう大丈夫だと、優しく語り掛けてくるかのように、胸を暖かくする何かを、その魔法陣からは感じ取れる。

 

「やれやれ、召喚早々に随分と殺伐とした状況だ……まぁ、突然空中に投げ出されて自由落下させられるよりは数倍マシか」

 

 強烈な光を放った後、魔法陣があった場所には一人の男が立っていた。

 紅い外套を纏い、黒いライトアーマーで身を包んだ褐色肌に白い髪の男性。彼は磔にされた少女の方を見ると、少しだけ意外そうな表情を浮かべるも、直ぐに真剣な表情になり、口を開く。

 

「サーヴァント・アーチャー、召喚に従い参上した。さて、私のようなハズレを引いたマスターは、君で間違い無いかな?」

 

 まるで臣下の如く、少女……アーシア・アルジェントの前で名乗った男性、アーチャーは鷹の目の如き瞳をアーシアへと向けた。

 

「あ、あの……」

「ふむ、状況から見るに、その磔の状態は君の趣味という訳ではないようだな」

 

 当たり前である。磔にされる趣味がある女など、どこの変態だと言うのか。

 

「な、何なのよ貴方! 突然現れてわけのわからない事を!!」

「少し黙りたまえよ人外の女、私は今マスターに状況の確認を行っているのだ……もっとも、確認するまでも無いようだがな」

 

 アーチャーはいつの間にか両手に握っていた黒と白の短剣を構え、堕天使の女と、その後ろに控える100人近いエクソシスト達に向き合った。

 

「今は、磔のマスターを救うところから始めるとしよう……さぁ、神への祈りは十分か」




アーシアはイッセーのヒロインじゃないと許さないという方、注意です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。