ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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さて、今回の話にはとあるフラグが書かれています。


第三十六話 「弓兵と魔王少女」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第三十六話

「弓兵と魔王少女」

 

 今現在、体育館では二人の悪魔が言い争っていた。

 いや、正確には一方がもう一方に対して只管苦言を呈しているだけなのだが、それが姉妹の事情ということもあり何とも口出しし難い状況だ。

 

「お姉さま、私はこの学園の生徒会長として、今のお姉さまの格好は、容認出来ません!」

「そんな! ソーナちゃんにそんな事言われたら、お姉ちゃん悲しい! お姉ちゃんが魔法少女に憧れてるって知ってるでしょう?」

 

 魔法少女に憧れる歳でもあるまい、そう一瞬でも思ってしまったアーチャーだったが、次の瞬間セラフォルーからアーチャーにのみ発せられた怖気が走る程の殺気を感じてしまった。

 まるで氷で出来た巨大な蛇に睨まれているかのような、どこまでも冷たい氷河の如き殺気は、間違いなくセラフォルーが魔王として相応の実力を秘めている証拠だ。

 

「なあ匙、コカビエルが襲ってきたとき、会長がお姉さんを呼ばずにサーゼクス様を呼ぶように言ってたけど、仲が悪いってわけじゃないよな?」

「逆ですわ」

 

 一誠の質問に匙が答える前に話を隣で聞いていた朱乃が答えてくれた。そういえば彼女はリアスの眷属となって長いので、当然だが悪魔社会というか、リアスの幼馴染であるソーナの家族事情にも詳しい筈だ。

 

「セラフォルー様が、妹君であるソーナ会長を溺愛し過ぎているので、呼ぶと逆に収集が付かなくなる……というより、駒王学園どころかこの街全体が消滅してしまう恐れがあるのですわ」

 

 何処の歩く核兵器なのだか。何でもセラフォルーは軽く小国を数分で消滅させられるだけの実力を持っているとかで、もしコカビエルがソーナを傷つけていたらと思うと……考えたくない。

 

「もう! 耐えられません!!」

 

 すると、先ほどからセラフォルーに纏わり付かれていたソーナが突然涙を零しながら走り去ってしまった。

 恐らく真面目過ぎる彼女の事だ、自分が生徒会長を勤めるこの学園にコスプレ姿で現れた姉の存在だけでもストレスなのに、そこに追い討ちを掛けるが如き今回の状況……爆発したのだろう。

 

「待ってソーナちゃん!」

「来ないでください!」

 

 走り去るソーナを追いかけ走り出したセラフォルーだったが、一瞬……本当に一瞬だけアーチャーに目配せをしてきた。

 それが何を意味しているのか理解したアーチャーはアーシアに一言だけ断り霊体化すると、体育館を出て校舎へ向かうと、そのまま屋上へ壁を駆け上がる。

 

「待ってたよ、アーチャー君」

「随分とお早い到着だな」

「体育館を出た瞬間に私に変身させた使い魔にソーナちゃんを追わせて、私はこっちに来たの」

 

 到着した屋上には既にセラフォルーが来ていて、相変わらずのコスプレ姿ではあったが、先ほどまでのノリの軽さが嘘の様に真面目な……妹によく似た眼差しを向けてくる。

 

「サーゼクスちゃんに聞いて、一度会ってみたかったんだけど……うん、思った通り☆」

「何を聞いたのかは聞かないでおこう。それで、何か話があったのではないのか?」

「ちょっと待ってね☆」

 

 セラフォルーがパチンと指を鳴らすと、一瞬で屋上に認識阻害結界と防音結界が張られた。二種類の結界を同時に、それも指を鳴らしただけで一瞬にして張ってしまうなど、流石は魔王と言うべきか。

 

「今回、私とサーゼクスちゃんが来た理由はもう知ってると思うけど」

「三大勢力のトップ会談の為、だな?」

「正解。正確には中立の……つまり人間勢力という形でアーシアちゃんとアーチャー君も居るから四大勢力のトップ会談って名目になるんだけど」

 

 いつの間にかアーシアが人間勢力のトップ扱いを受けていた。まぁ、あくまで形式上の話であり、人間勢力ではなく中立勢力のトップというのが正しい呼び方だ。

 

「多分、和平は確実に結ばれる事になると思うの。和平が成立すれば各勢力から技術提供が行われたりするかな。それで、アーシアちゃんとアーチャー君にも有事の際の戦力として数えさせて欲しいんだ。勿論、それに見合う報酬を三大勢力から予め提供するって事になるけど」

「つまり、今のうちに提供して欲しい物を考えておけということか?」

「そうなるかな。天使側には悪魔の悪魔の駒(イービル・ピース)の技術を提供する予定だし、堕天使勢力からはアザゼルの持つ神器(セイクリッド・ギア)の資料とか、そういうのが提供される予定なの」

 

 天使勢力からは悪魔勢力へ代表して一誠に聖剣アスカロンが贈られる事になっているとの事だ。

 

「ほう、かの聖ゲオルギウスが担った竜殺しの聖剣か」

「みたいだよ? それで、話を戻すけど、悪魔勢力、堕天使勢力、天使勢力、それぞれから提供して欲しい物、何か考えておいて欲しいな☆」

「ふむ……まぁ、考えておこう」

 

 しかし、セラフォルーの話はそれだけではあるまい。それだけで態々こうして二人っきりにして、しかも人払いの為の結界まで張る必要は無いのだから。

 

「それで、本題は別にあるのだろう?」

「あちゃ~、バレちった☆」

「当たり前だ、用件を言えセラフォルー・レヴィアタン」

「もう、レヴィアたん☆って呼んで良いのに~」

 

 ぷんすかしながらセラフォルーは胸元のボタンを外すと、その豊満な谷間に手を突っ込み、恐らく挟んでいたのだろうソレを取り出す。

 

「こういう時に胸が大きくて良かったって思うよ~、ポケットが無い服でも物を挟んでおけるから☆」

「……そうか、それは良かったな」

「あれ!? アーチャー君なんで呆れ顔!? 男の人ってこういうの好きって聞いたのに~」

「それで、何だそれは」

 

 スルーしてセラフォルーが取り出した物について尋ねた。

 セラフォルーが胸の谷間から取り出したのは将棋の駒だった。それも王将、チェスで言うところのキングに当たる駒。

 

「これは悪魔の駒(イービル・ピース)の技術を応用してアジュカ君が作った人間の力(ヒューマン・システム)っていうの☆」

人間の力(ヒューマン・システム)?」

「そう! これはこの先アーシアちゃんが中立のトップとして悪魔、天使、堕天使と付き合っていく中で、もしかしたらレーティングゲームへの招待もありえるかもしれないからって事で、用意した物なの☆これをアーシアちゃんの仲間になる子に持たせるだけで別種族へ転生させること無くアーシアちゃんの仲間として認められるんだ☆」

 

 つまり、悪魔で言う所の眷属を仲間という呼び方にして、アーシアにチームを作らせるという事だ。

 和平が成立すれば、セラフォルーの言うようにアーシアにもレーティングゲームへの招待があるかもしれない。

 そうなった時に使うため、そして何よりアーシアを別の種族へ転生させずに人間のまま参加出来るようにするのが、この人間の力(ヒューマン・システム)という事になる。

 

「今はまだ王将しか完成してないけど、アジュカ君が近々他の駒も完成させるって」

「なるほど、ではこの王将の駒をアーシアに渡せば良いのだな?」

「うん☆でもまだリアスちゃん達には内緒にしててね? それの事については和平成立してから大々的に発表するつもりだから」

 

 和平成立後には天界側にも同じシステムを使った天使転生システムを完成させて提供することになっているとの事なので、人間の力(ヒューマン・システム)についてはその時に説明するらしい。

 

「心得た。では、これは後ほど秘密裏にマスターへ渡しておく」

「お願いね☆……あ、それから」

「む?」

「君のアーチャーっていう名前、意味があるのかな?」

「何故だ?」

「ちょっと、気になる事があってね……ランサー、この名前に聞き覚えはある?」

「っ!?」

 

 ランサー、槍使いを意味するその名だが、アーチャーにとってそれは別の意味を持った言葉になる。

 

「覚えがあるみたいだね」

「その名、どこで?」

「まだ噂の域を出ないんだけど、ルーマニアの吸血鬼一族の王家の一人に仕える騎士が、そんな名前を名乗っているとか」

「……吸血鬼、一族の王家にランサーか……風貌などは判るか?」

「う~ん、噂では龍のような角や尻尾を持った黒服の少女とかなんとか言われてるかなぁ」

 

 その程度の情報しか無いようだ。しかし、それだと何処の英霊なのかは判断出来ない。

 もっとも、一つだけ明らかになったのは、自分以外のサーヴァントがこの世界に召喚されているという点だ。

 

「情報に対する対価が必要だな……こちらからも有力情報を一つ話すか」

「有力情報?」

「私のアーチャーという名と同じようにランサーというのもサーヴァントの名だ。サーヴァントには七つのクラス名が割り当てられていて、私のアーチャーと、そのルーマニアのランサーの他にセイバー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの五つが存在する」

「それってつまり、他にサーヴァントが五人居るって事?」

「可能性の話だ。だが、私やランサーの存在があるという事は、居ると考えるべきだろうな」

 

 セラフォルーからしてみれば、とんでもない情報だったらしい。

 恐らく今の情報を直ぐにサーゼクスの下へ持って行き、あるいは会談の席ではそれが話題に出てくるのだろうか。

 

「情報ありがとう☆じゃあ私はそろそろ行くけど、アーチャー君もアーシアちゃんの所に戻るの?」

「ああ、そのつもりだ。では次は会談の席で」

「うん☆じゃあね~」

 

 屋上の端まで走ったセラフォルーはそのまま飛び降りていった。飛び降りる前にアーチャーへ投げキッスをしたのは、とりあえず無視する。

 

「……ランサーが既に召喚されている、か」

 

 もしかしたら、アーチャーがこの世界の召喚されたのは偶然ではないのかもしれないと思い始めた。

 それに、他のサーヴァントもこの世界に召喚されている可能性があるとなると、いよいよアーシアも色々と面倒に巻き込まれるだろう。

 

「まさか、この世界で聖杯戦争の真似事とはな……コカビエル戦で令呪を使ったのは不味かったか」

 

 これは、夜にでもアーシアに報告するべきだろうと思いながら、アーチャーは屋上を去ろうとしたのだが、突如背後に尋常ではない気配を感じて干将・莫耶を投影しながら振り返る。

 

「我、見つけた……気高き魂の塊」

 

 そこに居たのは黒いゴスロリ風の服を着た黒髪の少女だった。

 だが、少女から感じられる気配は人のソレではなく、ドラゴン特有のモノであり、同時に感じられる気配はサーヴァントなど取るに足らない程の恐ろしさを感じる。

 

「き、さまは……?」

「ん、我、オーフィス」

 

 今、錬鉄の英雄は世界最強の存在と邂逅する。




アーチャー以外のサーヴァント、出場決定!
既に残り六騎のキャスト及びマスターも決まりました。
まぁ、あえて言うと……ランサーは激ヤバで、バーサーカー、ライダーは反則級です。正直、バーサーカーとライダーを相手にした場合、アーチャーは正面からまともに戦っても勝てないですね。

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