ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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就職活動中ですが、面接したところからの連絡がまだ来ない……。


第四十七話 「夏休み、冥界へ出発」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第四十七話

「夏休み、冥界へ出発」

 

 駒王学園が夏休みに突入した。

 学生達は長期の休みに歓喜し、各々が予定を組んでサマーライフをエンジョイする為に色々計画している。

 それはオカルト研究部も同じで、夏休みに入ってから真面目なアーチャーとガブリエル監修の下、夏休みの宿題をやっていたアーシアとイリナの下へアザゼルが訪れたのだ。

 

「悪いな、突然来て」

「いや、オカルト研究部顧問という立場上、アーシアと紫藤イリナの様子を見に来たと思えば頷ける……まぁ、それだけが理由ではなさそうだが」

「相変わらず察しが良いねぇ。実はな、夏休み中はグレモリー眷属もシトリー眷属も冥界に行く事になっていてな、イリナにそれを伝えに来たんだ」

「冥界! わぁ、私行くの初めて!!」

「だろうな……それでだ、アーシア、アーチャー、お前らにも来て欲しいってサーゼクスとセラフォルーが言ってるんだが」

 

 用件は恐らく人間の力(ヒューマン・システム)の事だろうか。

 まさか魔王として多忙な二人を呼び寄せる訳にもいかないので、冥界でも宿題をやることを条件にアーシアの冥界行きを了承した。

 因みにルイーナも一緒に来てくれるらしいが、ガブリエルは一度天界に戻って仕事を片付けてから来るとの事なので遅くなるらしい。

 

「んじゃあ、冥界行くのは明日だから今夜中に用意しておけよ。待ち合わせ場所は駒王町の駅前ホームだ」

「ふむ……ああ、そういえば一つ確認しておきたい事があるのだが」

「あん?」

「私とマスター、それにルイーナの宿泊場所は何処になる?」

「それならリアスの実家って話になってるぜ」

「そうか……それと、出来れば鍛冶場があるか確認しておいて貰えると助かる」

「鍛冶場? まぁ、確認しとくが、必要なのか?」

「ああ」

 

 春頃から製作しているアーシア専用の魔術礼装となる剣を夏休み中に完成させて置きたかったので、冥界に行くのであれば冥界で作業を進めて完成まで持って行きたいのだ。

 アザゼルが帰宅した後、アーシア達は早速旅行の準備という事で自分の部屋に引っ込んだので、現在リビングには昼食の準備をしているアーチャーと、テーブルの前で紅茶を飲みながら芸人が司会を勤める平日昼間の人気情報バラエティ番組を鑑賞しているガブリエルの姿があった。

 

「アーチャーさん」

「……何か?」

「ずっとお聞きしたかった事があります」

「デュランダルの事だな?」

 

 ガブリエルがずっと気になっていた事など、先日のバーサーカー戦でアーチャーが投影した絶世の名剣(デュランダル)の事しかあるまい。

 デュランダルは、元々ガブリエルがシャルル王に授けたという伝承があるのだから、彼女が初代デュランダルの姿を知らぬ筈が無いのだ。

 

「あれは私が生前に見たデュランダルの複製だ」

「生前に……では、あなたはフランスの英雄なのでしょうか?」

「いや、生憎シャルル王とも騎士ローランとも会った事が無い。あのデュランダルは正確に言うなら古代メソポタミアの英雄王が蔵の中に所持していたデュランダルの原型、つまりデュランダルと呼ばれ有名になる前の剣を複製したに過ぎん」

「まぁ! かのギルガメッシュ王の!!」

 

 英雄王の死後、彼の蔵に所蔵していた宝物は世界中にばら撒かれ、デュランダルはその過程でガブリエルの手に渡ったのだろう。

 そして、それを後にフランスのシャルル王へと贈られ、ローランがシャルル王よりデュランダルを賜った事で有名となったのだ。

 

「ギルガメッシュ王とお会いした事があるのですね」

「生前にな……まぁ、なんともいけ好かない、傲慢かつ慢心の過ぎる暴君だった」

 

 記録上では冬木の聖杯戦争に召喚された時にも邂逅しているらしいが、それはあくまで“座”にある英霊エミヤ本体の記録であり、今この場に居る英霊エミヤの記憶ではない。

 

「ところで、ルイーナさんはどうされたんですか?」

「彼女なら部屋に戻った。初めて会うイリナ以外のグレモリー眷族の顔と名前を覚えるんだと、アザゼルから写真を貰ってな」

「なるほど、勤勉ですね……本当に、どうして彼女は堕天したのかしら?」

「数日共に生活してみたが……私も疑問だ」

 

 二人は知らない。今、部屋で小猫の写真とギャスパーの写真を凝視して、鼻血を垂れ流しながら血走った目をしているルイーナの姿を。

 

「あら、このご当地キャラ……可愛いですね」

 

 テレビに映った梨をモチーフにした某ゆるキャラを見て笑みを浮かべる大天使に苦笑しながら、弓兵は昼食のそうめんの仕上げに入る。

 数分後、一般家庭では味わえない極上のそうめんを食べてご満悦になる聖女、聖剣使い、上級堕天使、大天使が居たのだが、特に語るべき事でもあるまい。

 

 

 冥界行き当日、アーチャーとアーシア、イリナ、ルイーナの四人は駒王駅前の広場に来ていた。

 他のオカルト研究部のメンバー及びアザゼルの姿がまだ無い事から、少し早く着き過ぎてしまったようだ。

 

「アーチャーさん、今日来る人達の中に居るんですよね? 姉に殺された事が原因で悪魔に転生したという、赤龍帝が」

「そうだ、兵藤一誠……レイナーレに殺された所をリアス・グレモリーに拾われて悪魔に転生したという話だ」

「そう、ですか……兵藤一誠君、謝らなければいけないよね」

「姉がした事は姉の責任、じゃなかったのか?」

「でも、その姉はもう死んでいるから……だから代わりにっていうと失礼かもしれないけど、姉が謝れない分、せめて妹の私が」

 

 姉の死は自業自得だと割り切っていても、姉が迷惑を掛けた相手、姉が殺した相手には、本当に申し訳ないと思っているルイーナは、律儀なのだろう。

 随分と歪んだ律儀さだと感じるが、普通に見る分には彼女の人柄は大勢に好かれるタイプだ。

 

「あ、でも気をつけてね? イッセー君ってどうやら堕天使レイナーレの事でトラウマになってるみたいだから」

「トラウマに?」

「うん、これはアーチャーさんの推測らしいんだけど、イッセー君を初めから騙す目的で恋人になって、散々虚仮下ろした挙句にイッセー君は殺されたらしいから、若干の女性恐怖症の症状が見られるって」

「ああ、紫藤イリナの言う通りだ……恐らく奴も無意識に女性を自分の深い所まで近づけさせないようにしているのだろう。ゼノヴィアが迫った時や、最近奴に興味を持ち始めたリアス・グレモリー、それに会談の前日に何やらあったらしい姫島朱乃の事も、表面上は鼻の下を伸ばしていても、絶対に最後のラインまで近づけさせていない」

 

 ある一定のラインが、一誠の中に構築されてしまったのだろう。そのラインを女性が越えて来るのを、無意識に恐れている節が見られる。

 

「リアス・グレモリーと姫島朱乃は、奴がラインを敷いている事に気づいているらしいな」

「あ、だから部長さんも朱乃さんもイッセーさんに興味があっても無理に関係を近づけようとしないんですね」

「そういう事だ。あれは時間が解決すると踏んでゆっくり兵藤一誠の心を解きほぐそうとしているのだろうな……眷属想いの良い主だ」

 

 恐らく、アザゼルも一誠のトラウマについて見破っている筈だ。ルイーナを派遣したのも、リハビリを兼ねてなのかもしれないが、少々強引過ぎる気がしないでもない。

 

「む、来たようだな」

 

 ようやくグレモリー眷属とアザゼルが来たらしい。通りの向こう側に全員揃って歩いている姿が見えた。

 因みに、同じく冥界に行くシトリー眷族は別の日に揃って行くという話なので、今日は一緒ではない。

 

「よう、待たせたな」

「って、ゆ……夕麻ちゃん!?」

「堕天使レイナーレ!?」

 

 顔を真っ青にしてルイーナを見つめる一誠と、警戒心を高め敵意の篭った眼差しを向けるリアス、小猫、祐斗、そして何がなにやら解らないという顔をするゼノヴィアとギャスパーだった。

 アザゼルは予想通りの反応だと言わんばかりに笑いを堪えていたので、アーチャーは投影した短剣……ダーク二本を投擲するも、一本は茂みの中へ、もう一本は簡単にキャッチされてしまう。

 

「そういえばお前らにはまだ話してなかったな、こいつは堕天使勢力からの特使としてアーシアの家に預けている上級堕天使のルイーナってんだ」

「初めまして、ルイーナです」

「ルイー、ナ? レイナーレに随分と似ている気がするんだけど……」

「そりゃそうだ、こいつはレイナーレの実の妹だからな」

「夕麻ちゃんの妹……」

 

 そんな存在が特使になって大丈夫なのかと怪訝そうな表情をアザゼルに向けるリアスだが、当のアザゼルはいつも通り何を考えているのか理解に苦しむ笑みを浮かべるだけだ。

 

「兵藤一誠さんは貴方?」

「え、あ……ああ」

「アーチャーさんから聞きました。私の不肖の姉が、人間だった頃の貴方を殺したと……本当に、ごめんなさい」

「い、いや! 別に、その、俺、こうして生きてるわけだし……悪魔になったけど」

 

 ルイーナに頭を下げられ、青い顔をしていた一誠も慌てて頭を上げさせようとしていた。流石に元・彼女の妹に頭を下げられるというのは困ってしまうようだ。

 

「んじゃ、積もる話は後にして駅に向かうぞ~」

 

 少しは空気を読んで欲しいものだと、全員がアザゼルに殺意を覚えるが、言ってる事も最もなので、一行は駅のホームに向かった。

 しかし、まさか普通の電車に乗って冥界に行くわけでもないだろうと予想していたアーチャーは予想通り自分達の周辺が転移魔法の魔力に包まれた事に納得する。

 

「ほう……」

 

 転移してきたのは先ほどまでとは違う駅のホームで、目の前には電車が一台。どうやら此処が人間界と冥界の境となる場所らしい。

 

「それじゃあ皆、これに乗って頂戴」

「リアス・グレモリー」

「何かしら?」

「この電車に書かれてるグレモリー家所有という文字は、まさか……」

「ええ、そうよ。この車両はグレモリー家所有の物なの」

 

 流石は公爵家、大貴族の名は伊達ではない。まさか電車一台まるまる所有しているなど、一般家庭ではまず考えられない事だ。

 

「さあ、そろそろ出発よ、皆席に座ってちょうだい」

 

 とりあえず、一々驚いているのも馬鹿らしいので、全員電車に乗り込む。

 リアスと朱乃、ゼノヴィアとイリナ、一誠と祐斗、小猫とギャスパーがそれぞれ隣同士で座り、アーチャーとアーシアも同じく隣同士で座る。

 ルイーナはアザゼルと話があるとかで、彼の隣に座ったので、これで準備は完了だ。電車の扉が閉まり、動き出した。

 

「なあ木場、冥界ってどんな所なんだ?」

「人間界とはまるで違うよ? まぁ、でも人間界にある店とかも結構あるから、街中は賑わってるかな」

 

 人間から悪魔に転生した者が多く居るので、そんな者達でも過ごし易くする目的で冥界の街は人間界にある店を多く作っているとの事だ。

 ファーストフードやレストラン、デパートなど、人間界でも普通に存在する物を悪魔が経営して冥界に出店している。

 

「じゃあそんなに退屈はしないか」

「でも、向こうでは部長の家で基本過ごします……」

「え、そうなの?」

「ええ、私達も部長の眷属という事でグレモリー家の屋敷では専用の部屋を用意して貰っているのですわ」

「へぇ~」

 

 因みに、この中で冥界にまだ行った事が無いのは一誠とアーシア、ゼノヴィア、イリナ、アーチャーだけだ。

 他は全員冥界に行った事がある、どころかリアスとアザゼル、ルイーナはそもそも冥界に住んでいた。

 

「人生、わからないものね」

「どうした? イリナ」

「ううん、ただね……教会の戦士だった私達が、まさか悪魔になって冥界に行く事になるなんて、面白い人生だなぁって」

「フッ……確かにな」

 

 それを言えば元・教会の聖女だったアーシアとて同じだ。

 アーシアは悪魔でこそないが、人生の内で冥界に行く事があるなど、昔は全然考えられなかった。

 

「ああ、そうだアーシア」

「はい? 何でしょうか、アザゼル先生」

「冥界では常に聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を出しとけ。向こうの空気は人間にとって毒だからな、神器(セイクリッド・ギア)がフィルターになって吸う空気を無害にしてくれる」

「わ、わかりました!」

 

 着く前には出しておいた方が良いかもしれないと、慌ててアーシアは聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を出しておいた。

 問題はアーチャーだが、どうしたものかとアザゼルは悩んでいたのだが……。

 

「安心しろ、基本私は霊体化しているから空気を吸う事はあまりない。それに万が一の時は魔術回路を開いて解毒可能か確認する」

「ああ、そうしてくれ」

 

 とりあえず心配事も無くなったので、アザゼルはルイーナとの話に戻った。

 電車はまだ走り出したばかり、冥界まではもう少し時間が掛かりそうなので、それぞれ暇を潰しながら真っ暗な窓の外を気にするでもなく移動を満喫する。

 前の席に座るイリナ、ゼノヴィアと会話を弾ませるアーシアを尻目に、アーチャーは弁当を配りつつ、冥界での事に思いを馳せていた。

 

「(さて、今度はどんなトラブルに巻き込まれるのやら……)」

 

 

 オカルト研究部一行が乗る車両とは別の少し離れた車両にて、本来無人の筈の席に一人の女性が座っていた。

 その女性は美しい黒髪をストレートに伸ばし、着崩した着物から見える豊満な胸を隠そうともしない妖艶さが大人の色気を醸し出す、一誠が好みそうな美女だった。

 

「なるほどねん、随分と勘の良さそうな男……ヴァーリが言ってたのはあの男ね……直接会うのが楽しみだにゃん」

 

 ふいに、黒髪が美しい頭上に猫らしき黒い毛の耳を出し、その陶磁器の如く白く美しい手に、ダークと呼ばれる短剣を握り、その刀身に光を当てながら見つめる。

 

「強い男は、大好きにゃん……くすっ」




え~、本編にチラッと出てきたアーチャーが製作中のアーシア専用魔術礼装について。
レイナーレを殺した後に教会の地下をアーチャーの工房にして、そこに鍛冶場を作り、色々と小物を作ってます。
そして、その工房にてアーシア用の魔術礼装を現在作っているところです。
材料は、まぁ……普通に聞けば嫌悪感も出てきますが。

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