ハイスクールD×D
~堕ちた聖女の剣~
第五十二話
「新たな力」
若手悪魔との会合が終わった後、用事があって参加出来ないファルビウムとアジュカを除く魔王、サーゼクスとセラフォルーの二人とVIP達は全員大会議室に集まっていた。
この場で話し合うのは今後の
「つっても、今のところ分かってんのはヴァーリの奴と美候、それにオーフィスに旧魔王の末裔……恐らくはシャルバとクルゼレイだな。後はバーサーカーに、そのマスターか?」
「そうだ。現状で判明している戦力はそれだけだ……もっとも、オーフィスが居るという時点で凶悪極まりないのだが」
アザゼルの確認の言葉にサーゼクスが頷き返し、そして敵の親玉に神すらも恐れた世界最強のドラゴンが居るという事に苦い顔を見せた。
「正直に言うぜ、オーフィスを相手に勝つのはこの場の誰も不可能だ。俺も、サーゼクスも、アジュカやミカエルだって勝てない……が、ドラゴンスレイヤーの力ならもしかしたらと思うのだが、アーチャー、お前さんの持ってる武器にドラゴンスレイヤーはあるか?」
「……いくつか竜殺しの概念武装は存在する。だが、世界最強のドラゴンという神秘を相手に並の竜殺しでは通用しないだろうな」
神秘とは、より強い神秘に打ち消されてしまう。並の竜殺しの概念武装を使ったところで、オーフィスという極上の神秘を相手にしても、多少のダメージは期待出来るかもしれないが、確実に殺せるとは思えない。
「まぁ、オーフィスの事は追々考えるとしてだ……アーチャー、お前からバーサーカーについて報告してくれ」
「了解した。まずバーサーカーについてだが、何人かには説明したが、その正体は三国志の英雄、一騎当千の猛将と謡われた呂布奉先だ」
「それは、呂布奉先の子孫とかではなく、呂布本人だという事で良いのかい?」
「ああ、それで間違いない。マスターについては今のところ不明だが、宝具に関しては解析済みだ……かの有名な軍師である陳宮が考案して作られた方天画戟という体の中華ガジェットだな」
5つの形態に変形するらしいが、バーサーカーとして召喚された為、使えるのは戟の形態と弓の形態のみ。
それと、これはアーチャーも流石に知らない事だが、呂布奉先がライダーとして召喚されていた場合、赤兎馬という呂布奉先の愛馬をサーヴァントとして限定召喚して騎乗する宝具もあったのだが、バーサーカーとして召喚されている為に失われている。
「アーチャー君でも勝てなかった相手か~……でも、アーチャー君は自分が戦うつもりでしょ?」
「当然だ。サーヴァントの相手はサーヴァントがする……もっとも、意地などではなく、少々調査すべき事があるのでな。マスターと私はサーヴァントが現れた際はそちらの担当を勤める事になる」
もし、この世界で擬似的な聖杯戦争が行われようとしているのなら、それはサーヴァントとマスターの仕事、つまりはアーチャーとアーシアの担当すべき事だ。
「ヴァーリ・ルシファーに関しては兵藤一誠さんが戦うつもりでいらっしゃるご様子ですわ」
「赤龍帝と白龍皇の宿命か……イッセー君には苦労を掛けてしまうね」
だが、肝心の一誠がまだまだ実力不足だ。勿論、そこについては何やらアザゼルに考えがあるらしく、そちらに任せる事にした。
後話し合う事と言えば
「んじゃ、そろそろ話し合いはこんなところだろ? 俺とサーゼクスからそれぞれアーシアに渡す物があるんだが、良いか?」
「私にですか?」
「ああ、まずは私から……これを」
サーゼクスが懐から取り出したケースの中に入っていたのは、王将が抜けた将棋の駒だった。これは以前、セラフォルーから受け取った駒の残り……
「恐らく、これから先に君たちもレーティングゲームに招待されることもあるだろう。その為のメンバー集めに使うと良い。これは転生システムを採用しているわけではないが、所持しているだけで魔法的な加護を得られる優れものなんだ」
王将は既にアーシアが所持している。なので、アーシアは受け取った駒の中から金将を一つ取り出すと、それをアーチャーに渡した。
「マスター?」
「私のチームに、アーチャーさんが居るのは当然ですよ?」
「……そうだな」
それから、今度はアザゼルからアーシアに渡したい物との事だが、これは以前の会談の席で言っていた物らしく、ようやく渡す準備が整ったので今回持ってきたらしい。
「こいつだ」
「? 籠手、ですか?」
「ただの籠手じゃないぜ? こいつは俺がアーシア用にと思って、アーシアが使うことを前提にして開発した人工神器だ」
「私、専用の人工神器ですか……」
渡された黄金の籠手は手の甲から肘までを覆うタイプの物で、手の部分はオープンフィンガーになっている。
手の甲には空色の宝玉が埋め込まれており、腕の方に伸びた二本のアームが手首の所で左右に伸びる仕組みらしい。
「
しかも、纏う光の種類を選べるらしく、天使の光と堕天使の光、二種類の光を纏わせる事が出来る上、弓としてだけではなく籠手として光を纏った拳で戦う事も出来る他、投擲物にも光を纏わせられる。
「流石に矢は自前で用意してもらう事になるが、それでも傑作だと胸張って言える逸品だ」
「す、凄いです」
「ふむ」
アーチャーのマスターが弓を使う、それはまた面白いかもしれない。
実際に、受け取ったアーシアは早速左腕に装備してみれば、思っていたほど重くもなく、違和感も無いようだ。
「アーチャー、お前さんもいるか? 人工神器」
「いらん」
「そうかい……」
若干残念そうなアザゼルは放置して、今度は何故かガブリエルが前に出てきた。なんと、彼女からも天界を代表してアーシアに渡したい物があるらしく、今回それを持参してきたらしい。
「これはかつて天界に所属していた聖女の持っていた
まだアーシアが生まれる前の、それどころかアーシアの生みの親ですら生まれる前の聖女の話らしく、その聖女が所持していた
追放され、元聖女となったアーシアであったとしても、それでもガブリエルはアーシアにこそ相応しいのだと、そう判断したという事になる。
「これを、受け取ってください」
「イヤリング……ですか?」
ガブリエルが差し出したのは、一対のイヤリングだった。それも、その意匠は何処かアーシアの元々の
いや、似ているどころか、殆ど一緒と言っても良い。むしろ
「これは
「セット……?」
「ええ、本来は
だが、それが今、こうして長い年月の末に再び一つになろうとしている。
アーシアが
同時に、
「どうやら、一体化成功のようですね。長き年月の末、再び二つの
ちなみに、未だ共鳴した時のまま二つの
「それにしても、アーシアちゃんってどんどん重武装になっていくね☆」
「ふむ、
この場では出さなかったが、アーシアには他にもプライウェンや変化の魔術でブーツに加工したヘルメスのサンダルがある。なるほど確かに重武装にも程がある。
だが、人間でありながら中立勢力のトップという立場上、アーシアはこれくらいの重武装でなければならないというのもあるのだ。
特に、アーチャーが警戒しているのは、今日の若手悪魔の中に居た一人の悪魔、その男のアーシアに向ける視線を考えるのなら、これでもまだ足りないくらいだとも思っている。
「さて、これくらいで良いだろ。そろそろ俺はリアス達の所に戻るぜ……アーシア、ガブリエル、お前達も来い」
「はいはい、相変わらずせっかちですね、あなたは」
「うっせぇ」
微笑を浮かべるガブリエルに対し、仏頂面のアザゼルに苦笑しながらアーシアはアーチャーを伴って会議室を出て行った。
残されたサーゼクスとセラフォルーは、微笑ましげに見送っていたのだが、四人が出て行って扉が閉まった瞬間、表情を真剣なものに変える。
「セラフォルー、悪いが……」
「うん、わかってる。調査は任せて」
「頼むよ」
二人が懸念しているのは、奇しくもアーチャーと同じだったのは、偶然なのか、はたまた運命だったのか……。
次回からは修行編突入ですが、アーシアとアーチャーはオリジナル編です。