ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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セイバー、ついに登場!


第五十九話 「襲撃、猫と猿と剣の英霊・前編」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第五十九話

「襲撃、猫と猿と剣の英霊・前編」

 

 修行期間も終わり、リアス眷属とソーナ眷属のレーティングゲーム前に冥界ではパーティーが行われていた。

 魔王やレーティングゲームに参加する若手たちとその眷属達、ガブリエルにアザゼル、アーシアといった他勢力の代表も揃っている。

 

「それで、何でアーチャーさんは執事さんの格好をしているんですか?」

「む? それはマスターの従者(サーヴァント)だからだが?」

 

 純白のパーティードレスを着たアーシアの後ろで黒い燕尾服を着込んだアーチャーが何を当たり前の事を聞いているのかと言いたげな表情で返してくるが、何故それを当たり前と思っているのかをアーシアは心底問いたかった。

 

「あら、お久しぶりですわね。アーシア・アルジェント代表」

「え?」

 

 突然、後ろから声を掛けられて振り向いてみれば、そこには赤いドレスを着た小柄な金髪の少女が優雅に佇んでいた。

 恐らく、アーシアより年下なのだろう。まだ幼さの残る顔立ちではあるものの、貴族故の気品を醸し出している。

 

「あの……?」

「失礼しました。そういえば以前お会いした時は名乗りもしませんでしたわ……私、レイヴェル・フェニックスと申します。以後、お見知りおきを」

「ふぇ、フェニックス……って」

「はい、そちらの……アーチャー様に敗れたライザー・フェニックスは私の兄ですわ」

 

 そういえば、ライザーの眷属にこの少女が居たような気がするが……まさかあの男、自分の妹を眷属に……それも、自らハーレムと呼んでいた眷族に入れていたとは、軽蔑するしかない。

 

「ご安心を、流石のライザーお兄様も実の妹に手を出すような鬼畜外道ではありません。それに今は交換(トレード)でお母様の眷属になっていますのよ」

「そうなんですか……それで、私に何か御用が?」

「こ、これは失礼しました! 私ったら自分のことばかりで……コホン、改めまして中立勢力代表アーシア・アルジェント様、その従者アーチャー様、今回のパーティーにおいてお二方のエスコート役を魔王様より拝命されました、レイヴェル・フェニックスと申します。本日は、どうぞお楽しみください」

 

 聖女と弓兵を、不死鳥の少女がエスコートする。何とも不思議な光景というか、字だけを見れば聖なる光景と言えるのか。

 

「あれ……?」

「む、マスター、どうした?」

「いえ、今イッセーさんと部長さんが会場から出て行って……何だか少し真剣な表情をしていたから」

「兵藤一誠とリアス・グレモリーが……ふむ、木場祐斗、姫島朱乃、ゼノヴィア、紫藤イリナは居るな……塔城小猫が居ない?」

「小猫ちゃんが?」

 

 となると、二人は小猫を追った可能性がある。何か嫌な予感がしたアーシアは偶々近くに居たアサシンに藍華とレイヴェルの事を任せるとアーチャーを連れて二人を追った。

 幸いにも二人には会場のある2階からエレベーターで降りた1階で合流する事が出来たが、小猫はまだ更に先に居るのか追いつけていない。

 4人は中庭に出て小猫を追うのだが、その途中で異変に気がつく。

 

「これは、結界!?」

「ま、マジっすか!?」

 

 どうやら結界内に居る者を閉じ込めるタイプの結界が張られたらしい。それはつまり、この先に居るのは小猫だけではなく……この結界を張った人物も居るという事になる。

 

「っ! マスター……気をつけろ、サーヴァントの気配だ」

「え!? ま、まさかまたライダーさんですか?」

「わからん……だが、状況は不味いな」

 

 今、敵サーヴァントが結界内に居る状況で小猫を一人にしておくのは非常に不味い。

 

「急ぐぞ」

「ええ」

「うっす」

「はい」

 

 アーシアが全身に強化魔術を施し、アーチャーが燕尾服から戦闘衣装の赤い外套姿になったのを確認し、4人は走る速度を上げた。

 

「見えたわ! っ!? あれは、黒歌!!」

 

 やっと小猫の姿が見えたが、同時にその向こうで小猫と対峙している黒い和服姿に黒い猫耳と二又になった黒い尻尾の女性の姿を見たリアスが驚愕の声を上げた。

 黒歌、それは小猫の姉の名だった筈だ。アーシアもアーチャーもそれは覚えていたし、どうやら一誠も詳しい話はリアスから聞いているのかその名を聞いて驚いている。

 

「小猫!!」

「部長……イッセー先輩、アーシア先輩、アーチャーさん」

「あらぁ? 折角の姉妹の再会なのに、水を差すなんて無粋だこと」

 

 真っ先にリアスが小猫を庇うように前に出て、アーシアは小猫が震えているのに気づいてそっと抱きしめる。

 一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開してリアスに並び、アーチャーは干将・莫耶を構えて同じくリアスの横に並んだ。

 

「ふぅん、白音……どうやらアンタを連れて行くには、こいつらを殺せば良いってことにゃん?」

「っ!? 姉さま、それは」

「んふふ……あの時、これを投げつけた男も居るみたいだし、楽しめそうにゃん」

 

 黒歌が和服を着崩して露出している胸の谷間に手を突っ込むと、一本の短剣を取り出した。

 

「ほう、やはりあの時駅のホームでこちらを見ていたのは貴様だったか」

 

 そう、それは最初に冥界に向かう時、アーチャーがアザゼルに投げ付けたダークと呼ばれる短剣だった。

 あの時、アザゼルに一本と、それからその向こう側にあった茂みに一本投擲したのだが、そこからこちらを観察している気配がしていた。それが黒歌だったのだろう。

 

「で・も……貴方の相手をするのは残念だけど私じゃなくて、コイツなのよねぇ」

 

 一瞬、何を言っているのか理解出来なかったが、次の瞬間、黒歌の横に現れた一人の人物に驚かされる。

 現れたのは全身を漆黒の鎧に包み、頭まで同色の冑で覆った全身鎧(フルプレートアーマー)の騎士、その手には漆黒に染まり、赤いラインがまるで血管の如く刀身まで浮かび上がったロングソードを握っていた。

 

「アーチャーのサーヴァントとお見受けする」

「そう言う貴様は、セイバーか」

「如何にも、私はセイバーのサーヴァントとして召喚されし身」

 

 セイバーのサーヴァントが現れたのは、最初からサーヴァントの気配を感じ取っていたアーチャーにとって驚く事ではない。

 しかし、解せないのは何故黒歌の隣に居たのかだ。聞くところによると黒歌は一度眷属悪魔へと転生している。

 つまり、もし黒歌に魔術回路があったのだとしても、その時点で回路は死滅しているから黒歌ではマスターになれないのだ。

 

「貴殿の疑問に答えるのであれば、黒歌殿は私のマスターではない。私のマスターはこの場にいらっしゃっていないが、黒歌殿を心配されたマスターが私を護衛役に付けたのだ」

「ついでに俺っちもいるぜぃ!」

 

 セイバーの後ろからはいつか見た孫悟空の子孫、美候が顔を出していた。これで5対3、この場にセイバーのマスターが来ていないというのは戦力差的に助かったと言える。

 

「う~ん、まだ邪魔が多いにゃん」

 

 この状況でもまだ不敵な笑みを浮かべている黒歌が何かを呟くと、恐らく仙術なのだろう、辺り一面に霧を発生させる。

 同時に崩れ落ちたのは小猫とリアスだった。

 

「部長! 小猫ちゃん!!」

「これ、は……毒ね」

「正解よん♪ この霧は悪魔に対して有効な麻痺毒、人間には即死級の猛毒なのだけど、そっちの聖女ちゃんは平気そうね?」

「私は、即座に解毒魔術を体内で発動させてますから」

 

 それに、アーシアの抗魔力の高さが霧の効果をある程度下げてくれている。そして効果が無さそうな一誠についてはそもそも彼の性質が悪魔よりもドラゴン寄りなので悪魔に効果的な毒もドラゴンには効果が無かったという事で説明出来る。

 サーヴァントには、おそらく一切の効果が無いのだろう。アーチャーとセイバーは特に体が痺れるといった事は無さそうだ。

 

「でも、これで3対3、いいえ聖女ちゃんがリアス・グレモリーや白音を治療するなら3対2かしら?」

「いいや、3対3だ!!」

「っ!?」

 

 上空から声が響いてきた。全員が上を見上げてみれば、そこには紫色の体を持つ巨大なドラゴンの姿が。

 

「タンニーンのおっさん!!」

「待たせたなイッセー! この巨体では会場に入れず暇を持て余していた所に結界が張られたのでな、慌てて飛んできてみれば、まさか禍の団(カオス・ブリゲード)が来ていたとは」

 

 それは、一誠の修行を行ったという最上級悪魔にして元龍王の一角、魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)のタンニーンだった。

 

「カッ! 元龍王が相手なら面白そうだ!! 黒歌! タンニーンの相手は俺っちがやるぜぃ!」

「任せるわ。私は、赤龍帝ちゃんの相手しなきゃだし……うふふ、ヴァーリを退けたって話、本当なら楽しみだわ」

 

 どうやら、それぞれ戦う相手が決まったようだ。タンニーンが美候と、一誠が黒歌と、アーチャーがセイバーと戦う事になった。

 

「さて、アーチャーでありながら剣を構えているのを見るに、貴殿は剣の腕にも覚えがあると見るが」

「ふん、弓兵とて剣を取る時もある。それだけの事だ」

「なるほど道理だ。ならばこれ以上の語り合いは無用、我らに必要なのは剣を交える事のみ」

「……」

 

 最優のサーヴァントとして知られるセイバー、そのサーヴァントとして呼ばれたからには、この男は間違いなく剣の英霊としては有名な人物なのだろう。

 全身鎧で正体が掴めないが、その剣を構えた姿からは一切の隙が見えない事も相まって、アーチャーは己の不利を悟った。

 

「マスター、奴のステータスは見えるか?」

「そ、それが……見えないんです。まるで黒い霧に覆われているみたいな感覚が……」

「奴のスキル、か」

 

 恐らくはスキルか何かの影響だろう。アーシアはセイバーのスキルを見る事が出来なかった。

 セイバーのステータスがアーチャーより上回っているのか、それとも下回っているのか、そもそも上回っているのであればどれだけの差があるのかも、一切が不明の状態だ。

 

「まぁ、構わんか。元よりこの身はアーシアに勝利を捧げる為に存在している。ならば例え相手が正体不明のセイバーであろうと、私に敗走は無い」

 

 一誠達が戦闘を始めたのと同時に、アーチャーとセイバーも同時に走り出した。

 互いの剣がぶつかり合い、衝撃波が発生して周囲の木々を薙ぎ倒しながら始まったサーヴァント同士の戦いは、どちらに勝利の女神が微笑むのか、それはまだわからない。




今回でセイバーの正体に気づいた人は居ると思うけど、まだナイショですよw

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