ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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お待たせしました! これにて冥界地獄のヘルキャット編終了!!


第六十九話 「飼い猫になりたい」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第六十九話

「飼い猫になりたい」

 

 冥界で起きている子供誘拐事件の犯人が禍の団(カオス・ブリゲード)英雄派の一人、聖処女ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ者、聖剣使いジャンヌのサーヴァントであるキャスターこと“青髭”ジル・ド・レェである事は、リアスとソーナのレーティングゲーム終了後、アーシアと藍華からアザゼルに報告された。

 アザゼルに報告した内容は上記の事と、それからバーサーカーのマスターが英雄派のリーダーである曹操である事、その曹操は神滅具(ロンギヌス)最強の神器(セイクリッド・ギア)黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の所持者である事、そしてアーチャーの投影した宝具、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の呪いによって右肩に不治の傷を負った事だ。

 

「んで、俺はこの短槍を預かって厳重保管しとけば良いんだな?」

「はい。この槍が存在し続ける限り、曹操さんは傷が癒える事がありませんので、あちらの戦力を大幅に削る事が出来ます」

「なるほどな。なら下手に研究する訳にもいかねぇか……確か、少しでも傷つけると消えるんだろ?」

「はい」

 

 現在、アーシアと藍華はグレモリー邸の自室に訪れたアザゼルにアーチャーから受け取った必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を渡して厳重に保管して貰うようお願いしている。

 この槍が存在し続ける事で、敵の……それも最強の神滅具(ロンギヌス)使いを弱体化出来るのだから、アザゼルはアーシア達の戦果は上々たるものだと褒めちぎってくれた。

 

「とりあえず、これで禍の団(カオス・ブリゲード)の大まかな戦力が把握出来たわけだ」

 

 トップには無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス、その下に分かれる三つの派閥として旧魔王派、英雄派、そして裏切り者のヴァーリ・ルシファー率いるヴァーリチーム。

 主な戦力としては、英雄派に黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)を持つ曹操と、そのサーヴァントであるバーサーカーこと呂布奉先、正体不明の絶霧(ディメンジョン・ロスト)使い、聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)を持つジャンヌと、そのサーヴァントであるキャスターこと“青髭”ジル・ド・レェ。

 ヴァーリチームには白龍皇ヴァーリ・ルシファー、闘仙勝仏の子孫である美猴、SSS級はぐれ悪魔の黒歌、セイバーのサーヴァントことサー・ランスロットとそのマスター。

 現在判明しているだけでも、これだけの戦力が禍の団(カオス・ブリゲード)には揃っている。

 

「後は俺の勘だが、旧魔王派にカテレアが居たってこたぁ、シャルバ・ベルゼブブとクルゼイ・アスモデウスも参加してる筈だぜ」

「旧ベルゼブブ様と旧アスモデウス様の子孫の方々、ですか?」

「ああ、奴等は前にサーゼクスが話したと思うが、アジュカとファルビウムに実力やその他諸々が劣っていた為に新魔王の座を奪われ冥界の僻地へ追い遣られた……カテレアもそうだったけどよ、その憎しみは一際だろうぜ」

「悪魔は血統と力を重んじる……そして魔王に求められたのは血統ではなく力だった。つまりあれよね、血筋に胡坐かいてたのかは知らないけど、恨むなら自分の実力不足を恨むべきじゃない」

「まぁ、そう言ってしまえばそれまでなんだけどな」

 

 藍華の実も蓋もない言い分に流石のアザゼルも苦笑する。

 確かに藍華の言う通りなのだが、それでも納得出来なかったからこそ、旧魔王派と呼ばれる連中は現魔王を憎み、その体制に甘んじる現在の悪魔社会を糾弾するのだ。

 

「まぁ、後の難しい事を考えるのは俺達大人の仕事だ。お前達はそろそろ人間界に帰る時間だろ? リアス達も準備が終わる頃だ」

「あ、そうでした!」

「ちょ、約束の時間まで5分しか無いじゃない!」

「お~、そりゃ引き止めて悪かったな」

 

 藍華が実体化させたアサシンに荷物を持たせて部屋を出たのに続きアーチャーも実体化してアーシアの荷物を持つと、先に部屋を出た。

 そして、アーシアはアーチャーに続こうと部屋を出る……前に、扉の前でアザゼルの方を振り返る。

 

「そういえばアザゼル先生、伝言があるんです」

「あ?」

「私のご先祖様……アーシェさんから、アザゼル先生とシェムハザ様に、お父様とアザゼル小父さんによろしく、と」

「……あ~、そっか。サンキュー」

「はい、それではお先に失礼します」

「おう、道中気を付けろよ」

 

 今度こそ部屋を出て行ったアーシアを見送ったアザゼルは適当な椅子を寄せて来て座ると、懐から取り出したタバコを一本加えて火を点ける。

 一口、煙を肺に入れて吐き出すと、いつの間に部屋へ入ってきたのか、ガブリエルが灰皿を差し出して来たので、そこに灰を落とした。

 

「少し、貴方やシェムハザ、バラキエルやコカビエルが羨ましく思います」

「あん?」

「娘さん、可愛らしかったんでしょうね」

「まぁ、アーシェはな……うちのネフィリムは人間の食いもん食い荒らすわ共食いを始めるわで、そりゃもう手が付けられねぇじゃじゃ馬だった」

「それでも、実の娘は可愛かったんでしょう?」

「……まぁ、ネフィリムもアーシェも、それに朱乃もコカビエルの娘も、俺達神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部は全員可愛がってたんだよ」

 

 それぞれアザゼル、シェムハザ、バラキエル、コカビエルといった神の子を見張る者(グリゴリ)幹部の娘達だ。

 彼女達は確かに、幹部達に愛されていたし、守られていた。現代の子である朱乃はともかく、太古の娘であるアーシェ達が亡くなった時は、それはもう悲しんだものだ。

 

「だから、俺は命を懸けてでもアーシアと朱乃を守るぜ。あの二人は俺達堕天使の宝なんだ……あいつらが笑って生きて行けるのなら、俺は死ぬ事だって惜しくねぇ」

 

 そう断言したアザゼルの姿を傍らで眺めていたガブリエルは、少しだけ微笑みを浮かべつつ、窓の外に見える光景へ目を向ける。

 そこには、慌てて馬車に駆け込むアーシアと藍華の姿があり、その微笑ましさにもう一度だけ、ガブリエルは微笑みを浮かべてアザゼルに灰皿を差し出すのだった。

 

 

 人間界行きの電車に乗り込んだグレモリー眷属及び、アーシアと藍華、アーチャー、アサシン、それと駅で合流したルイーナはそれぞれ思い思いの席に座って歓談を楽しんでいた。

 特に、話題に上るのは先日のリアスとソーナのレーティングゲームであり、リアス達が何とか辛勝した結果となった内容についてだ。

 

「なるほど、匙元士郎は兵藤一誠相手に相打ちまで持っていけるだけの実力を手にしていたか」

「そうなんすよ、まさか血を抜かれるとは思わなかった」

「戯け、そこは貴様の油断だ小僧」

 

 何でもタンニーンとの修行の間、八極拳の鍛錬をしている暇が無くて腕が鈍ってしまったのが膠着状態になった原因らしい。

 人間界に帰ったらもう一度修行のやり直しだとアーチャーに宣言された時、一誠は声にもならない悲鳴を挙げたが、誰も気にしなかった。

 

「そういえば兵藤少年は剣も使うのであったな、であれば私と剣の修練をしては如何か? 流石に私の邪剣は人に教えられる程ではないが、剣の打ち合いであれば相手になろう」

「あ、でしたらその時は僕も良いですか? 師匠以外の有名な剣豪と打ち合えるのは僕にとっても有意義ですし」

「では私もお願いしたい」

「私もー!」

 

 アサシンの正体が佐々木小次郎という事もあり、祐斗やゼノヴィア、イリナまでもが興味を示した。因みに祐斗の師匠というのはサーゼクスの騎士(ナイト)で、なんと幕末の日本において活躍した新撰組一番隊組長、沖田総司なのだとか。

 その話を聞いたアサシンはいずれサーゼクスに頼んで沖田と試合をさせて貰えないものかと検討したらしいが、それはまたの機会ということで。

 

「あの~、ところで何故誰も私の膝について何も言わないのでしょう……?」

 

 そんな時だった。アーシアの声が聞こえて、全員がずっとスルーしていた事柄に触れなければならなくなったのは。

 全員、アーシアの方を向くと、そこには椅子に座るアーシアと、そのアーシアの膝を枕にして横になりながら猫がマーキングするかの如く頬を摺り寄せている小猫の姿があった。

 

「えっと、小猫ちゃん……?」

「にゃぁ……アーシア先輩、温かいです」

「はぅぅ……」

 

 アーシアの膝はもう自分の特等席だと言わんばかりに自分の匂いを付ける白猫の姿に主であるリアスは頭痛がするのか頭を抑えていた。

 

「もうすっかりアーシアに懐いちゃったわね……ねぇ、アーシア? 小猫と魔法使い契約する気は無いかしら?」

「契約……」

「はぅ……契約ですかぁ」

 

 アーシアの膝の上で小猫の頭の猫耳がピコピコ動いている。その様子から察するにアーシアとの契約に期待しているのだろう。

 

「正直、私はまだまだ魔術師として未熟ですし、小猫ちゃんの契約相手として選ぶにはまだ時期尚早ではないかと……」

「そんな事は無いわ。アーシアの魔術師としての実力は確かなものだと思うし、何よりアーチャーっていう強力なゴーストライナーを使役しているんだもの、小猫の契約先としては極上よ」

「私、アーシア先輩の飼い猫になりたいです」

 

 何故、契約が小猫を飼い猫とする事になるのか、という疑問は置いておくとして。

 

「じゃ、じゃあ……小猫ちゃんが中級悪魔になったら、その……契約します」

「っ! 絶対に、今年中に中級悪魔になります」

 

 ふんすっ! と鼻息荒く気合を入れる小猫に、アーシアも諦めたのか、そっと頭に手を置いて白髪の髪を優しく撫でる。

 

「にゃあ~♪」

「そういう事でしたら、アーシアさん。よければ私が堕天聖女の弓籠手(ダウンフォール・セイント・ドレッドノート)に堕天使の光の加護を与えますよ? これでも上級堕天使ですし、光の加護はあって困らないと思います」

 

 小猫に続いてルイーナまでもがアーシアに構い出す。流石に容量オーバーになったのか、アーシアが念話でアーチャーに助けを求めたのだが、そのアーチャーと言えば……。

 

「うむ」

 

 グレモリー家から貰った冥界の珍しい食材をチェックして、グレイフィアから教わった冥界料理のレシピを満足気に眺めながら悦に浸かっているだった。




次回より体育館裏のホーリー編の始まりです。
別名、お坊ちゃんフルボッコ編、お楽しみに!

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