ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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仕事が忙しすぎる……。


体育館裏のホーリー
第七十話 「サーヴァント召喚とは」


ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第七十話

「サーヴァント召喚とは」

 

 駒王学園の夏休みが終わり、生徒達は長い休みが明けた事に嘆き、一部の生徒は夏休み中に恋人が出来た事を友人達に自慢出来ると意気揚々としていた。

 オカルト研究部の面々の反応もそれぞれで、宿題を最終日になって徹夜で終わらせた一誠、ゼノヴィア、イリナなどはグロッキー状態、夏休み初日で全て終わらせたリアスと朱乃は余裕綽々といった様子だ。

 それから、毎日コツコツと宿題を進めていたアーシア、小猫、祐斗も夏休み最終日には答え合わせを行うなど、それなりに充実している。

 

「んじゃ、まぁ……小猫はイッセーの家からアーシアの家に引越し、それから桐生のオカルト研究部入部と、おいおい俺だって暇じゃねぇのによ、何でこんなに報告書を書かにゃなんねぇんだ」

 

 部室で文句を言いながらアザゼルが書いている書類は、サーゼクスやミカエルに提出しなければならない書類で、それぞれ小猫がアーシアの家に引っ越すことや、桐生藍華がアサシンのマスター兼アーシアの配下としてオカルト研究部に入部する事になった事についての報告書だ。

 

「まだあるぞ、今回判明した敵サーヴァントについての情報と、敵のマスターについての報告書だ」

「てめぇアーチャー! ……手伝って下さい」

「ふむ」

 

 見事な土下座をされてしまったのでアーチャーはアザゼルの手伝いを、アサシンは二人にお茶の用意をしていた。

 現在、このオカルト研究部部室にはアザゼルとアーチャー、アサシンという、何故か男三人だけしかいない状態で、潤いが無いのもアザゼルが怒る原因なのかもしれない。

 

「……そういやぁ」

「ん?」

「一つ気になってたんだがよ。確かサーヴァントってのは、お前さんやアーシア、桐生の魔術を使える人間、つまり魔術師なら召喚可能なんだよな?」

「そうだ。ただし、魔術師なら誰でもという訳ではない。今回のサーヴァント召喚が聖杯戦争を擬似的に再現しているという可能性を考慮するのであれば、聖杯に該当する何かに選ばれなければ魔術師であろうとサーヴァントを召喚する事は出来ん」

「その選ばれた証ってのが、アーシアや桐生の手にある令呪ってやつか」

 

 アーシアの右手にある天使の羽と十字架を模した令呪と、藍華の右手にある盾の中に鳥が翼を広げたような形の令呪、形状は人其々だが、この令呪を宿す事がサーヴァントを召喚出来るマスターの証だ。

 

「因みに、例外として令呪を持たない魔術師でも令呪を持つ魔術師から移譲もしくは奪取する事でマスターになれる」

「もう一つの例外だが、魔女メディアの宝具でサーヴァントごと令呪を奪うという方法もあるな。確か、そのような方法でサーヴァントを奪われたマスターも過去には居た筈よな」

「なるほどなぁ……因みによ、アーチャーも魔術師なわけだろ?」

「そうだが……」

「お前でもサーヴァント召喚は令呪さえあれば可能なのか?」

「……聖杯戦争的には反則手段だが、可能だ」

 

 実際、アサシンは過去の聖杯戦争でキャスターのサーヴァントが召喚したサーヴァント、魔術師であればマスターになれる可能性があるという点を突いて反則召喚された存在だ。

 

「だが、これは擬似的に聖杯戦争を模している可能性があるだけで、聖杯戦争じゃねぇよな?」

「確かにそうだ。だから私とてサーヴァントを召喚することが出来ないという保障は無い」

「ならよ、やってみねぇか? 確かにまだお前に令呪があるわけじゃないけどよ」

「遠慮させて貰う。そもそもサーヴァントを召喚したとして、維持する魔力が足りない以上、そもそも論外だ」

「んだよ、魔力が足りないって」

「召喚自体に膨大な魔力を消費する上、サーヴァントの維持にも常に魔力を消費する。私がサーヴァントを召喚するという事は、私がそのサーヴァントに魔力を供給するという事で、即ち私の維持に使用しているマスターの魔力を更に新たに召喚したサーヴァントの維持に回さなければならないという事だ」

 

 つまり、アーチャーが召喚するということは、アーシアにサーヴァント二騎分を維持する魔力を出させる事になるのだ。

 現在、アーチャーの本来の宝具の使用不可能という状態でアーチャーの維持が精一杯のアーシアにこれ以上の負担を強いれば、間違いなくアーチャーは戦えなくなる。

 いや……下手をしたら戦闘にでもなればアーチャーと、召喚したサーヴァントが消滅する危険すらあった。

 

「なるほどなぁ、つまり魔力不足を解消しない限り、新しくサーヴァントを召喚する事も、お前の切り札とやらを使うことすら出来ないって訳か」

「そうだ。もっとも、魔力を増やそうにもアーシアの魔術回路の本数は生来決まっているから16本より増える事は無い。生成される魔力の量も堕天聖女の弓籠手(ダウンフォール・セイント・ドレッドノート)禁手化(バランス・ブレイク)させたところで増える量は微々たるもの」

 

 宝具の使用時間こそ延びて、ステータスも一部だが上昇するが、それでもアーシアはアーチャー一騎を使役するのが精一杯で、二騎目のサーヴァントなど不可能だ。

 

「因みに、サーヴァント召喚には通常、英霊と縁のあった聖遺物が必要となるが、もし私がサーヴァントを召喚可能であれば何を召喚させようとしていた?」

「あ~……前のライダーの件もあるからよ、出来れば大物を呼びたかったんだよなぁ。ギリシャ神話のヘラクレスとか、インド叙事詩のカルナとかよ」

「……カルナに縁のある物を、私は投影出来ないし、ヘラクレスは消費魔力が馬鹿みたいに大きすぎて召喚した瞬間に私は消滅、アーシアは干乾びるぞ」

「あ、やっぱり?」

 

 当たり前だ。どちらも英霊としては最上級クラスで、しかも片方は宝具の原典が、かの英雄王の蔵にすら存在していないという英霊だ。

 どの道、どちらともアーチャーが召喚出来るような存在ではない。

 

「でもよぉ、敵のサーヴァントに対して、こっちの戦力が心許ないのは事実だから、少しは強化したいところなんだよなぁ」

「まぁ、確かにそうだが」

「ふむ、アザゼル殿の意見も一理ある。私もアーチャーもサーヴァントとしては上等な存在ではないのも事実故」

 

 アーチャーのエミヤシロウとアサシンの佐々木小次郎がこちらの戦力となるサーヴァント。対して敵側はセイバーの“湖の騎士”サー・ランスロット、ライダーの“駿足”アキレウス、キャスターの“青髭”ジル・ド・レェ、バーサーカーの“猛将”呂布奉先。

 英霊としての格が特に高いのはアキレウスとランスロット、次いで呂布、守護者のエミヤ、亡霊の小次郎と怨霊のジルといったところか。

 

「キャスターなら十分勝算があるが、アキレウスとランスロット、呂布は流石に厳しいものがあるな」

「私はバーサーカーであれば勝機があると見ているが?」

「貴様は戦い方がバーサーカーにとっての鬼門だからだろう。だがライダーの神性宝具の肉体は私の持つ対神性宝具か不死殺しの宝具でなければ傷が付けられない上、戦士としての技量がライダーにもセイバーにも劣っている」

 

 順当に行けばバーサーカーにはアサシンで勝機があっても、ライダーとセイバーを相手にした段階でアーチャーは詰む。

 アサシンならセイバーに剣で互角の戦いを挑めるかもしれないが、それでもまだライダーが残るのだ。

 

「恐らく、次にライダーと戦う事になれば奴は真っ先に私を警戒し、私のみを狙ってくる筈だ。奴に傷を付けられるのが私だけである以上、奴が確実に潰しておきたいのは間違いなく私だろうからな」

「己の弱点を突けるアーチャーを真っ先に殺したいってか……まぁわからんでもないな」

 

 最悪のパターンはセイバー、ライダー、キャスター、バーサーカーが揃って現れた場合だ。そうなったら、こちらに勝ち目は無い。

 

「せめて、ライダーとセイバーのマスターが判明すれば良いんだけどなぁ」

「少なくともバーサーカーのマスターとキャスターのマスターは禍の団(カオス・ブリゲード)の英雄派、つまりは仲間だ。今後、二騎のサーヴァントが揃って現れる可能性は十分考慮するべきだ」

「そして、セイバーもまた派閥が違うものの、彼奴らと同じ組織に属する者……バーサーカーとキャスター、セイバーが同時に来る可能性は十分高く見積もるべきよな」

 

 ハッキリ言ってジリ貧状態だ。今後もサーヴァントの相手はアーチャーとアサシンがやらなければならないとなると、戦力差があり過ぎる。

 リアスや一誠達はむしろ自分達も一緒に戦うと言っているが、正直な話をするのなら、リアス達ではサーヴァントを相手に、それもアキレウスやランスロット、呂布を相手に戦力としては数えられない。

 そもそも実力の差があり過ぎて、恐らくリアス達ではアキレウス、ランスロットを相手にした場合は瞬殺されるのが落ちだ。

 

「ったく、ヴァーリの事でも頭が痛ぇってのに……」

「ふむ、やはりアザゼル殿でも息子が心配か?」

「たりめーだ、何だかんだ言っても、あいつは俺にとっちゃ息子も同然で、大昔に死んだ娘と同じくらい大切な存在に、いつの間にかなっちまったからなぁ……」

 

 そこで、アーチャーは一つだけ可能性としては可能なのではないか、という道が浮かんだ。

 

「アザゼル、ヴァーリ・ルシファーを何とかしてこちら側に戻せないのか?」

「戻せるなら、俺だって戻してぇさ……」

「もし、ヴァーリ・ルシファーをこちら側に戻す事が出来れば、ヴァーリチームの一員らしきセイバーのマスターもこちらに引き込める可能性がある」

「ん……? って事ぁ、セイバーを味方に引き込める可能性があるって事か?」

「そうだ」

 

 アザゼルの心情的にはヴァーリには戻って来て欲しいのだろう。そしてそれが成されれば、こちらは白龍皇という最強クラスのカードと、セイバーという最優のカードを味方として迎え入れる事が出来る。

 

「なるほどな……まぁ、戦力増強って理由は気に食わないが、俺としても何とかしたかったし、ヴァーリの説得を、何とかしてみるかねぇ」

 

 それが、義父としての役目だろう。そう言ってアザゼルは義手となった腕を摩った。あの日……この腕を無くした日に自分の下を去った義息子と、もう一度親子になる。

 アザゼルが目指すべきなのは、戦力がどうこうというより、まずはそれなのかもしれない。




次回、皆大好きwwwディオドラ君の登場!!

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