ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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連投! いやぁ、久しぶりだと筆が進む進むw


第七十四話 「狂ったエクソシストに魔剣を」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第七十四話

「狂ったエクソシストに魔剣を」

 

 アーシア達が喫茶店に到着し、案内された席に座って注文の品が届いた後、簡易的な人払いの結界を席周辺にのみ張った事で話し合いが始まった。

 まず、話し合わなければならないのは、お互いが持つ敵サーヴァントの情報と、お互いについての情報開示だ。

 

「私達が知っているのは交戦経験のあるバーサーカーさん、ライダーさん、キャスターさんくらいですね」

「それはこちらも知っている。特にバーサーカーとキャスターはマスターと派閥こそ違えど同じ組織に属するマスターを持つ存在であるが故に」

「ライダーさんは、実は私達も戦った事があるんです」

 

 どうやら、アーシアが持っている情報の殆どはルフェイ達も知っていたらしく、二人もライダーとは交戦経験があるようだ。

 だが、恐らくはまだ情報として持っていないであろうランサーの存在だが、これは話しておくべきかとアーシアは判断した。

 

「セラフォルー様から聞いた情報ですが、ルーマニアにランサーさんらしき存在が確認されています」

「ランサーさん、ですか」

「はい。情報によるとルーマニアの吸血鬼一族の中にマスターが居るのでしょう……龍の尻尾のような物を持つ女性、との事です」

 

 もしランサーと交戦する事になったとしたら、現状でセイバーとアーチャーなら勝てる。龍の尾を持つという事は龍属性を持つサーヴァントだという事だ。

 ランスロットは龍退治の逸話を持つ英霊であり、宝具もまた龍属性に強い影響を持つ。エミヤもまた、龍殺しの宝具を投影可能なので、龍属性を持つ英霊が相手でも、余程の規格外でない限り、勝算はある。

 

「一つ、聞きたいのだが……ヴァーリ・ルシファーは何故、アザゼルを裏切ってまで禍の団(カオス・ブリゲード)に入った? 奴が戦闘狂だというのは理解しているが、それでもアザゼル……育ての親を裏切るような愚か者には見えなかったが」

「それは……ヴァーリ様の真の目的にも絡んできますので、私の口からは何とも」

「ヴァーリさんの、真の目的ですか……」

 

 恐らくは、ヴァーリの姓、ルシファー絡みではないか、というのがアーチャーの予想だが、今は考えても仕方が無い。

 それよりも、話し合いを互いの情報開示に移行するべきだ。

 

「まずは私から開示出来る情報を伝えよう。真名はご存知の通り、ランスロットと申す。宝具は4つ、一つは正体を隠す黒い霧の宝具“己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)”、手に持った物は何であれ自身の宝具としてしまう“騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)”、そして我が最強宝具たる星の聖剣“無毀なる湖光(アロンダイト)”と、その真の力を発揮する“縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)”だ。生前は円卓の騎士の一員として騎士王に剣を捧げ忠誠を誓い、畏れ多くも最高の騎士などと分不相応の呼び名を頂いていた。同時にグィネヴィアと関係を持った事で円卓崩壊の切欠を作った大罪人でもある」

 

 円卓崩壊、サー・ランスロットで有名なのは実はその話だ。騎士王アーサー・ペンドラゴンの妻、王妃グィネヴィアと関係を持ってしまい、その不義密通の現場を同じ円卓の騎士だったサー・アグラヴェインとサー・モードレッドに踏み込まれてしまった事が円卓を崩壊させる一因となった。

 その際、ランスロットはアグラヴェインを殺害し、不義密通の罪で火刑に処されそうになったグィネヴィアを救う際にもアグラヴェインと同じくサー・ガウェインの弟であるサー・ガヘリスとアーサー王の甥であるサー・ガレスをも殺害した。

 結果として円卓は崩壊、サー・ランスロットとグィネヴィアはお尋ね者となり、グィネヴィアが王の下へ返されて1年ほどの休戦時期こそあったが、フランスへ渡ったランスロットと、ランスロット派の円卓の騎士達にアーサー王の軍勢が攻めて来た際、サー・ガウェインに重症を負わせて、その重症が原因でサー・ガウェインは叛逆を起こしたサー・モードレッドに殺されてしまい、アーサー王も彼と相打ちに終わった。

 後年のサー・ランスロットは出家し、同じく出家したグィネヴィアの死を知った彼は食事を断って死を迎えたと聞く。

 

「私には望みなど無い。そのようなものを持つ資格は無いのです。ですが、それでもあえて聖杯に望むとすれば、ただ一つ……王に、我が王に私という罪人を裁いて欲しい。それだけが、私の聖杯へ託す望みでしょうか」

 

 サー・ランスロットは生涯、騎士王に裁かれることなく、その生を終えた。不義密通の罪で裁かれようとしていたのはランスロットではなくグィネヴィアだったし、フランスへ渡ったランスロット達へとアーサー王達が攻め入ったのもサー・ガウェインの提案だったらしい。

 つまり、アーサー王は、アルトリアは、彼を……ランスロットを裁く事をしなかったのだ。

 

「私の話は以上だ。アーチャー、次は貴殿の話を聞かせ願いたい」

「ふむ、この話をするのはマスター以外では初めてになるが……まぁ、まず話すべきは私は未来の英霊だという事だな」

「なんと……! いや、確かに英霊の座というのは過去・現在・未来とあらゆる時間軸の英雄の魂が納められていると聞くが、まさか未来の英霊を実際に目にするとは思わなんだ」

「未来の英霊という事から予想は出来るだろうが、私には知名度の補正というものが無い。そもそもこの時代、この世界に私……エミヤシロウという英雄は存在していないのだからな」

 

 ランスロットはアーサー王伝説でも有名な騎士であり、日本では然程メジャーではないが、少しアーサー王伝説について齧った程度の人間なら誰でも知っている。

 他にもアキレウスや呂布などはそれぞれギリシャ神話、三国志にて知名度が圧倒的に高い英雄であり、ジルもまた欧州では知らぬ者などいない程の悪名を持つ。

 だからこそ、エミヤシロウという英雄は知名度補正によるステータスアップの恩恵を受けられない。伝承などから弱点が分かりやすい他の英霊と違い、知名度が無いことそのものがエミヤシロウの弱点なのだ。

 

「私の英霊としての能力は至ってシンプルだ。剣を投影し、弓に番えて撃つ。もしくはそのまま白兵戦をする。生前も死後も、私の戦い方はそれだけしか無い」

「投影……つまり貴殿は騎士でも剣士でも、ましてや弓兵でもなく」

「生前は一介の魔術師だった、それだけだ。まぁもっとも……聖杯戦争に参加した事のある魔術師ではあったが」

 

 聖杯戦争、その言葉を聞いてランスロットがピクリと反応した。恐らくずっと疑問に思っていた事の回答が、そこにあると気づいたからだろう。

 

「君の予想通りだ。生前、私が参加した聖杯戦争において、私はセイバーのマスターだった。それも最優クラスに当てるには最高位の英霊……伝説の騎士王アーサー・ペンドラゴンが、私のサーヴァントだったよ」

「なるほど、我が王が貴殿のサーヴァントだったか……それでか、王の失われた剣を投影出来たのは」

「ああ、マスターとサーヴァントは霊的に繋がれる。サーヴァントの過去を夢に見る事が出来るからこそ、私はセイバーの……アルトリアの過去を見て、“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を投影出来た」

 

 方やアーサー王に忠誠を誓い、剣を捧げた者。方やアーサー王に忠誠を誓われ、鞘として共に戦った者。

 ランスロットは騎士王に対して己が罪への裁きを望み、エミヤは騎士王へ今尚続く想いを寄せる。似ているようで似ていない二人だが、共通するのは互いに騎士王への熱い想いがあるという事だ。

 

「いずれ、王について色々と話そう」

「ああ、私も君が知る生前のアルトリアについて知りたいと思っていた」

 

 だが今は……。

 

「「無粋なサーヴァントを討つ時だ!」」

 

 次の瞬間、店内に居た一般人全員が意識を失って、同時に周囲に強固な結界が張られた。そして感じられるのはサーヴァントの気配と、マスターの気配。

 

「よう、仲良くお茶会か? 俺も混ぜてくれよ」

「よぉよぉアーシアちゃ~ん! お久~!」

「フリード、神父……!?」

「それに、ライダーか」

 

 ご丁寧に店の入り口から入ってきた偉丈夫と白髪の神父、ライダーのサーヴァントと、以前の聖剣騒ぎで戦ったはぐれエクソシストのフリード・セルゼンだ。

 

「ようアーチャー、テメェに預けた槍……返して貰いに来たぜ?」

「……最悪のタイミングだな」

 

 セイバー、アーチャー、そしてライダー、三騎のサーヴァントとそのマスターが勢ぞろいだ。しかも、こんな一般人が多く居る場所で。

 

「まぁ待てや、俺も一般人に危害を加える気は更々無ぇよ。だからまぁ、場所を移そうぜ」

 

 流石は大英雄アキレウス、一般人が居る場所で戦うつもりは無いという事で戦う場所を変えようと提案してきた。

 それには賛成のアーチャーとセイバーは、それぞれ己のマスターへ視線を移し、二人が頷いたのを見て二人を抱えると店の外でチャリオットに乗って移動を開始したライダーとフリードを追った。

 二人を追って辿り着いたのは近くにある河川敷、一般人の姿は無く、既に結界も張られているので、不用意に誰かが入ってくる心配も無い場所だ。

 

「ここならおもいっきりやれるよな? んじゃ、やるか!!」

 

 そう言ってライダーは宝具ではないが、恐らく業物であろう槍を取り出してチャリオットの上で構える。

 対するアーチャーは干将・莫耶を構え、セイバーは兜を被ると黒い霧に覆われて、アーチャーが投影したオートクレールを構えた。

 

「さてさてぇ、旦那達がやりあってるんだしぃ~? 俺っち達もやろうぜ?」

 

 武装を構えたアーシアと杖を構えたルフェイに対し、フリードも亜空間から一本の剣を取り出した。

 それは、柄が青い銀色の刀身を持つロングソードだった。その魔性の美しさから魔剣であるというのは直ぐにわかる。

 

「その魔剣は……」

「おおう!? アーシアちゃんってばちょっと見ない内に剣を見る目が肥えたのかにぃ? そう! これこそは北欧神話に登場した伝説の魔剣! シグルドが邪龍ファーブニルの心臓を抉り出すのに使ったとされる魔剣リジルだよ~ん!」

 

 魔剣リジル、北欧神話の英雄シグルドが邪龍ファーブニルの心臓を抉り出す為に用いた魔剣の名であり、シグルドの養父レギンはその際にファーブニルの血を飲み干したと伝えられている。

 シグルドが持つ魔剣グラムとは別のもう一本の魔剣、それこそがリジルなのだ。

 

「フリードさん相手に、手加減なんて出来ません。最初から全力です!! 禁手化(バランスブレイク)!!」

 

 アーシアは魔剣を手にしたフリードの威圧感を感じ取り、すぐさま堕天聖女の弓籠手(ダウンフォール・セイント・ドレッドノート)禁手化(バランスブレイク)する。

 全身をライトアーマーに包まれ背中から5対10枚の漆黒の翼を広げ、右手に魔細剣フォーリン、左手に黒鍵を構えたアーシアは両手中指に聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)、両耳に聖母の慈愛(トワイライト・グレース)を展開して、武装を完了した。

 

「ルフェイさん、援護をお願いします!」

「はい!」

 

 セイバー陣営・アーチャー陣営VSライダー陣営、唐突に始まった戦いは、マスター戦の圧倒的不利から始まるのだった。




あ、マスター設定の方はサルベージが終わるまで待ってくださいねぇ。
データ全部あっちなので。

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