ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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お待たせしました。相変わらずこっちの投稿です。


第七十五話 「神話と伝説の激突」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第七十五話

「神話と伝説の激突」

 

 ライダーと最初に激突したのはセイバーだった。ライダーが持つ業物の槍とセイバーが持つ投影されたオートクレールの激突は、たったの一合で衝撃波を発生させ、地面を僅かにだが陥没させる。

 更にセイバーの後ろから飛び上がったアーチャーが、易々とセイバーの頭上を飛び越えて両手の干将・莫耶をライダーに叩き付けた。

 当然だが、干将・莫耶ではライダーの肉体に傷は付けられない。それはアーチャーとて百も承知、狙いはライダーの意識を少しでもセイバーから削ぐ事にあるのだから。

 

「ぬん!」

「チッ!」

 

 槍を弾いて、そのまま流れるように下段から斬り上げてきたセイバーの剣を、ライダーはギリギリで避けたのだが、若干だが腕を掠ってしまった。

 能力殺しの概念を付与された宝具、聖剣オートクレールはライダーの持つ不死の肉体の宝具“勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)”の能力を打ち消して確かな切り傷を、ライダーの腕に付けたのだ。

 

「良い剣じゃねぇか……この俺の肉体に傷を付けられるってことぁ、神性……いや、対神性持ちか、あるいは」

「確かに、この剣は見事な業物。アーチャーが言うには能力殺しの概念武装という話だが、いやはや中々どうしてライダー相手に役に立ちすぎる、このような聖剣など持つ資格、今更私には無いというのに」

 

 清煌なる聖十字の剣(オートクレール)、真名開放せずとも発動する能力殺しの力は大層魅力的だが、これで真名解放をしたら、如何ほどの能力と力を発揮するのか、それを知るのは投影したアーチャーのみである。

 そして、肝心のアーチャーはと言えば、セイバーとライダーが激しく激突し、剣戟を繰り広げている後ろで、干将・莫耶を消して新たな剣を投影していた。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

 アーチャーの右手に投影されたのは、一本の剣だった。しかし、この場面で投影する以上、それが唯の剣である筈が無い。

 

神殺す宿木の枝(ミストルティン)!!」

 

 神殺しの神剣ミストルティン、それは北欧神話にて登場するヤドリギを意味する剣であり、光の神バルドルを死に至らしめた神殺しの概念武装でもある宝具だ。

 神殺しの代名詞と呼ばれる槍がロンギヌスなら、神殺しの代名詞の剣はこのミストルティンという程、神殺しの剣としては有名過ぎる程の名と、力を、この剣は秘めている。

 

「っ! 神殺しの剣か!!」

 

 アーチャーが真名開放し神殺す宿木の枝(ミストルティン)を弓に番えたのを見て、ライダーは急ぎセイバーから距離を取って回避行動に出ようとするのだが、相手は円卓最強の騎士として名を馳せたサー・ランスロット、如何に大英雄であろうと、その剣撃から逃れるのは難しい。

 

「セイバー!」

「承知!」

 

 真名開放、そしてバルドルを殺した時と同じ矢として使われる事により、最大級の力を発揮した神殺す宿木の枝(ミストルティン)を射った瞬間、セイバーがライダーの槍を大きく弾いて飛び退いた。

 そして、ライダーも回避しようとしたのだが、それも間に合わない。如何に俊足を誇るアキレウスとて、それは戦車(チャリオット)を降りた時の話であり、戦車(チャリオット)に乗っている現状で、その俊足も発揮出来ない。

 

「糞がぁああああ!! 疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・ドラゴーイディア)!!!」

 

 土壇場で、ライダーも戦車(チャリオット)の宝具を真名開放する。

 光を帯びて疾走する疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・ドラゴーイディア)はさながら疾走する巨大芝刈り機の如き勢いで神殺す宿木の枝(ミストルティン)と激突、大爆発を起こした。

 

「ふん、神殺しの神秘爆発を間近で受けておきながら、随分と頑丈な男だ」

「……アーチャー、テメェ」

 

 爆発の煙が晴れて出てきたのは、地面に降り立ったライダーの姿だった。どうやら戦車(チャリオット)は先ほどの爆発により消滅したようで、ライダーにとっては宝具を一つ失った事になる。

 

「さて、槍を奪われ戦車(チャリオット)も破壊されたというのに、それでも状況が好転していないような気がするのは、私だけか?」

「いや、アーチャーの予想は正しかろう。奴は戦車(チャリオット)を降りてからが一番手強い」

 

 ライダーが戦車(チャリオット)から降りる事で自動発動する宝具、彗星走法(ドロメウス・コメーテース)は俊足のアキレウスを、俊足たらしめる宝具。

 地面に降り立った彼の疾走は、英霊一と言っても過言ではない。彼の疾走を捉えられる英霊もまた、いないだろう。

 

「これは、私も本気を出すべきか……アーチャー、この剣をお返しする」

「ああ」

 

 オートクレールをアーチャーに手渡したセイバーは、先ほど被った兜を脱ぎ、全身の黒い霧を晴らす。

 そして、右手に顕現した漆黒の剣を握った瞬間、彼の全ステータスが1ランクアップを果たした。

 

「行くぞ無毀なる湖光(アロンダイト)よ……我が王と、我がマスターに捧げし剣と技、神の子に通用するか否か、試そうではないか!」

 

 俊足を遺憾なく発揮するライダー相手に、セイバーとアーチャーの戦いは続く。ただし、これからの展開は先ほどまでの攻めの一手とは打って変わり、防戦一方にならざるを得ないのは、言うまでも無いだろう。

 

 

 サーヴァント同士の戦いの場から少し離れて、こちらはマスター同士の戦いだった。

 魔剣リジルを片手に素早い動きで迫り来るフリードを相手に、アーシアは光の槍と黒鍵を投擲しながらフォーリンで受け流し、逆に突刺で返すも、剣の腕も才能も無いアーシアの攻撃などフリードにとって脅威にはならない。

 

「ヒャッハー! 強そうなのは見た目だけかぁい? アーシアちゃ~ん!!」

「っ! ルフェイさん!」

「はい!」

 

 ルフェイが杖を振り、発生した炎がフリードに襲い掛かる。だが、その程度ではフリードにとって攻撃にすらなっていない。

 リジルを一閃する事で炎を掻き消したフリードだが、その隙に距離を取ったアーシアが上空から放った大量の光の槍が降り注ぐ。

 

「おっほぉおおお!? やるねぇアーシアちゃん! だ・け・どぉ!!」

 

 すると、フリードは開いていた左手を亜空間に突っ込むと、何かを取り出した。

 金色に輝く十字を模した剣、聖剣でも魔剣でもないが、それでも見事な装飾が施されたその剣を左手に、右手のリジルと共に二刀流となったフリードは降り注ぐ光の槍を全て叩き切る。

 

「そ、そんな!?」

「どうよ! このクロケア・モースの切れ味!!」

「クロケア・モース……共和政ローマ期の英雄ガイウス・ユリウス・カエサルの剣ですか」

「おやおや、やっぱアーシアちゃん剣に詳しくなったにぃ?」

 

 ルフェイの横に降り立ったアーシアは首を傾げているルフェイにフリードが持つクロケア・モースについて説明を始めた。

 どうやらルフェイは剣についてや歴史、英雄などについて然程詳しいわけではないようなのだ。

 

「クロケア・モースとは、ブリタニア列王史に登場する剣でして、共和政ローマ期のローマの政治家だったガイウス・ユリウス・カエサルの所持していた剣なんです」

「ガイ……ゆり、えっと?」

「ガイウス・ユリウス・カエサル、古代ローマ最大の英雄の一人でして、ガリア戦争やブリタニア遠征などで名を馳せた将軍であり、帝政の基礎を築いた人で、ローマ帝国誕生に欠かせない人物です。そんな彼が所持していたとされるのが、フリードさんの持つクロケア・モース……所謂、王剣というものですね」

 

 魔剣リジルと王剣クロケア・モースの二刀流となったフリード、手強い相手が更に手強くなった。ましてやアーシアもルフェイも、後方支援型の人間なので、バリバリの前衛型であるフリードと戦うのは厳しい。

 

「どうしましょう……」

「私の魔法も、あまり効果が無いですねぇ」

 

 手詰まりとは正にこの事か。剣の才能どころか前衛の才能が皆無のアーシアはとにかく距離を取って戦うしか無いと再び翼を広げると、フォーリンを腰の鞘に収めて右手の籠手の弓を展開し、ルフェイを背負って上空へと飛んだ。

 

「行きます!!」

「よっしゃ来いやオラァ!! って、それはちょっとずるく無いっすかぁ?」

「フリードさんこそ、二刀流なんてズルです!」

「オレっちは剣士だから良いんだよ~ん!」

「なら私も堕天使の末裔ですから飛んでも良いんです!」

 

 何とも低レベルな言い合いをしながらも、アーシアは光の矢を放ち続け、フリードはそれを両手の剣で叩き落していた。

 時折、ルフェイが放った魔法も光の矢に紛れていたのだが、フリードにとっては叩き落す的が増えた程度でしかないのか、特に気にした様子も無い。

 ならばと、アーシアは両手の指の間に計6本の黒鍵を挟み、刀身を魔力で展開すると、魔術回路へ魔力を奔らせる。

 

「主よ、この者の罪を主の御許にて御赦しください」

 

 すると、黒鍵の刀身が炎に包まれ、鉄甲作用を用いて投擲される。それに対してフリードは直感で嫌な予感を感じ取ったのか、弾くのではなく回避するという選択を取った。

 結果としてそれはフリードにとっては正解で、地面に突き刺さった黒鍵は、突き刺さった瞬間に地面を大きく抉り、巨大なクレーターを作りながら灼熱の炎で焼いている。

 

「ちょ!? アーシアちゃんてば随分とまぁ過激でステキ! オレっち思わず惚れちゃいそう!」

「嬉しくありません!」

 

 好いてもいない相手に惚れられても困る。最近そんな関係の話で嫌な事があったばかりのアーシアは不愉快だという顔をしながら次々と光の矢を放ち、時折だが鉄甲作用を用いた黒鍵の投擲でフリードを追い詰めた。

 

「う~ん、飛んでばかりじゃ流石のオレっちもお手上げ……んじゃ、これでいっちょどうよ?」

 

 突如、フリードの持つ魔剣リジルが黒いオーラを纏った。そのオーラはやがて龍の形となり、フリードがリジルを振った瞬間、アーシア達に襲い掛かった。

 

「っ! ルフェイさん!」

「は、はい!! これで!!」

 

 咄嗟にアーシアが光の槍を、普段の数倍の力を込めて作り上げ、ルフェイがそれに魔法で様々な属性を付与する。

 迫り来る黒い龍のオーラに対して、二人の合作である光の槍を放つと、オーラと光が激しく激突し、衝撃波を発生させた。

 

「ヒャッハアアア!!」

「っ!?」

「余所見厳禁、バイチャ! ってねぇ!!」

 

 

 いつの間に上空に居るアーシア達の所まで飛び上がったのか、両手の剣で襲い掛かるフリードに対し、慌ててフォーリンを抜いて斬撃を受け止めたアーシアだったが、細剣では受け止めるには強すぎる一撃により、防御したままアーシアとルフェイは地面へと叩き付けられてしまった。

 

「う、ぐっ……」

「あぅ……うぅ」

 

 不味い、やはりアーシアとルフェイではフリード相手に戦うには力不足だったようだ。

 着地したフリードが嗤いながら剣を構えて歩み寄るのを見つめながら、アーシアとルフェイは死の危機を感じ取り、何とか立ち上がろうとするのだが、地面に叩き付けられた為に全身を激痛が襲い、身動き出来ない。

 

「っ!」

 

 でも、まだアーシアの心は死んでいない。何故なら激痛で動けないのであれば、癒せば良いだけの話であり、そして癒しはアーシアにとっての本領、癒しの聖女たる彼女にとって癒す事が本業なのだから。

 聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の光がアーシアとルフェイを包み込み、全身の痛みと傷が一気に消えて、立ち上がった二人は突進してきたフリードの攻撃をフォーリンと杖で防御、何とか距離を取った。

 

「へぇ、やるねぇアーシアちゃん……んじゃあ、第2ラウンドと行こうか、あぁ!?」

「っ! 今のは……」

 

 突然、フリードの真横から魔力攻撃が襲い掛かった。それはフリードのリジルによる斬撃で霧散したが、見間違いでなければ今の魔力は、滅びの魔力……つまり。

 

「私の可愛い後輩を、随分と可愛がってくれたみたいね」

「部長さん!」

「リアス・グレモリーさん……」

 

 そこに居たのは、紅髪を美しく揺らす美女、オカルト研究部部長にして上級悪魔、グレモリー家次期当主リアス・グレモリーだった。




サルベージ、まだ終わりません。
回収しなければならないデータが多すぎて……仕事も忙しくて時間が(涙)

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