ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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スランプです。1月くらいぶりの投稿になりましたが、仕事が忙しかったり、風邪でダウンしてたり、スランプだったりで、全然進まなかったです。
そして、スランプはまだ続く……くそぅ!


第七十六話 「狂人に従う大英雄」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第七十六話

「狂人に従う大英雄」

 

「あん? なんだあの女」

「リアス・グレモリーだと……?」

 

 突如、結界内に侵入してアーシア達を救ったリアスの存在に気づいたアーチャー達は、戦いの手が止まった。

 俊足状態のアキレウスを相手に、その速度で翻弄されたセイバーとアーチャーは既にボロボロで、この状況でのリアスの登場でライダーの手が止まったのは僥倖と言えた。

 

「チッ、悪魔の女か……白けるな」

「どうやら、助っ人と考えて良いようだ」

「ああ、リアス・グレモリーが来たからには、アーシアもフリード・セルゼン相手にまともに戦えるだろう」

 

 先ほどまでは苦戦していたアーシアが気になっていたアーチャーだったが、助っ人の参戦でようやくライダー戦に集中出来る。

 セイバーから受け取ったオートクレールを弓に番えてセイバーの後ろからライダーへと狙いを定めたアーチャーは、今まで一度も開放したことの無かったオートクレールの真名を開放した。

 

清煌なる聖十字の剣(オートクレール)!!」

 

 真名を開放された清煌なる聖十字の剣(オートクレール)は激しい光に包まれながら弓から放たれ、光が収束すると刀身が水晶のような姿に変わりライダーへ向かって直進する。

 対人宝具に分類される清煌なる聖十字の剣(オートクレール)は真名を開放する事で刀身が水晶のような姿に変わり、元々持っていた能力殺しの概念をより強力なものとするのだ。

 ランクAの宝具ではあるが、その能力殺しの力は“概念”を超え、最早“権能”に近い域にまで昇華され、この宝具の前には如何な能力、異能であろうと悉くが無効化される。

 

「チッ! 権能一歩手前の宝具かよ!!」

 

 ライダーの宝具、勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)は女神の加護という強力な力ではあるが、所詮はランクBの宝具であり、ランクAであり、能力殺しという天敵の清煌なる聖十字の剣(オートクレール)の前には無いも同然だ。

 

「オッラアアアア!!!!」

 

 ライダーは元々持っていた槍の他に、腰に差していた剣を引き抜いて剣と槍でオートクレールを弾き飛ばした。

 弾かれたオートクレールはそのままライダーの頭上高くへと跳ね上がるが、そのタイミングでアーチャーは剣に内包されている神秘を開放する。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

「ガッ!? あああああああ!!!」

 

 能力殺しの神秘が起こす大爆発は、確実にライダーへダメージを与えた。頭上から来る神秘の熱がライダーの肌を焼き、風圧が膝を付かせる。

 

「セイバー!!」

「承知した!! 最果てに至れ、限界を超えよ。彼方の王よ、この光をご覧あれ!!」

 

 すると、セイバーの持つ無毀なる湖光(アロンダイト)の漆黒の刀身が光に包まれ、黄金の刀身へと変わった。

 それは、約束された勝利の剣(エクスカリバー)と同じく星によって鍛えられた神造兵装、同胞を斬った事で魔剣へと堕ちた無毀なる湖光(アロンダイト)の聖剣としての本来の姿。

 

縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!!」

 

 一気にライダーとの距離を詰めたセイバーは黄金に輝く聖剣を振り下ろし、ライダーの胸から腰までを斬り裂いた。同時に、激しい光が切り口から発せられ、ライダーの体内を光の刃が蹂躙する。

 

「ガッ!! ァアアアアアア!!!!」

 

 神の子と言えど、光の刃が体内を蹂躙する激痛には耐えられないだろうに、それでも英雄としての意地か、ライダーはお返しとばかりに槍による神速の一突きを放ち、セイバーの脇腹を穿った。

 

「グッ!?」

 

 明らかなダメージがセイバーに入ってしまったが、これでライダーの足を完全に止める事が出来た。

 アーチャーが両手に干将・莫耶を投影して一気にライダーとセイバーの頭上を飛び越えると、ライダーの背後に着地して姿勢を低くしたまま横に回転し、干将の刃を一閃する。狙うは一点、ライダーの唯一の不死身ではない場所……大英雄アキレウスの弱点たる踵だ。

 

「なめ、るなぁあああああ!!!」

「っ!?」

 

 ライダーが咆哮と共に足を振り上げて、そのまま渾身の力で振り下ろす。その際に踏みつけられた干将は一撃で砕けるが、アーチャーは干将が消えた事で空いた右手を地面に付け、片手で逆立ち状態になりながらライダーの後頭部へ蹴りを一発入れた。

 更にライダーの後頭部を軸に頭上へと跳ね上がり、莫耶を投擲してセイバーを貫く槍を破壊すると再び左手に黒塗りの弓を、右手に螺旋状の剣を投影する。

 

「我が骨子は捩れ狂う(I am the bone of my sword)」

 

 セイバーが後退したのを確認すると、矢として番えた剣の真名を開放し、解き放った。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

 放たれた稲妻の螺旋剣は一直線にライダーへ着弾し、内包する神秘を開放して大爆発を起こす。

 勿論、今の宝具がライダーにダメージを与えるとは思っていないが、視界を一時的に潰す事には成功しただろう。

 

「セイバー、傷はどうだ?」

「面目次第もない、最高の騎士などと持て囃されていながら、この体たらく……我が身の未熟さを思い知らされる」

「いや、君はよくやってくれた。あの俊足のアキレウスを相手に互角に戦えたのだから、流石円卓最高の誉れ高き騎士だ」

 

 今の爆発でリアス、アーシア、ルフェイと戦っていたフリードが慌てて煙に近づいてきた。それを追ってリアス達もアーチャーの隣へ並び、この戦いは一時的に中断となる。

 

「リアス・グレモリー、何故ここに?」

「結界が張られているのに気づいてね。たぶん方角的にアーシアだろうと思って来てみたんだけど、正解だったわ」

「他の眷属は?」

「状況に応じていつでも来れるようにしてあるわよ」

 

 なるほど、ならば問題は無い。

 

「おーい旦那ー? まさかやられちまったっすか?」

「……んな訳あるかよ」

 

 黒煙が突如発生した突風によって晴れると、中から鎧がボロボロになったライダーの姿が。流石に爆発のダメージは肉体には無いものの、鎧は無傷とはいかなかったらしい。

 

「チッ、まさか俺がここまでダメージを負うとはな……セイバーとアーチャーか、良いぜ、テメェら二人とも俺が必ず殺す相手として確実に覚えたぜ」

「オレっちも、アーシアちゃんは標的にしとくぜぃ? もっと強くなってから戦おうね~」

 

 ライダーは兎も角、フリードの再戦リストに一誠と祐斗に続きアーシアが追加された瞬間だった。今のままではフリードが確実に勝つだろうが、先を見越してフリードはアーシアが強くなるのに期待しているようだ。

 

「一つ、聞かせてください」

「おやん? アーシアちゃんがオレっちに質問かな~?」

「いえ、フリード神父ではなく、ライダーさん……ギリシャ神話においてヘラクレスに並ぶ知名度を誇る大英雄アキレウス様に」

「あ、アキレウスですって!? あのアキレウスなの!?」

「あれ、部長さん……知らなかったんですか?」

 

 どうやら、まだアザゼルから現在判明しているサーヴァントの真名を聞かされていなかったらしいが、今はそれほど重大ではないので、一先ずスルーしてアーシアからライダーへの問い掛けに戻る。

 

「んで? アーチャーのマスターが俺に聞きたい事ってのは、なんだ?」

「何故……貴方程の大英雄が、英雄の中の英雄とも呼ぶべき偉大なる英雄様が、フリード神父のような、狂人に従っているのですか? 令呪の縛りがあるにしては、少し違和感があります」

「ふん、俺がマスターに……フリードに従う理由ねぇ」

 

 アキレウスと言えば友であるパトロクロスの死を嘆き、その仇である大英雄ヘクトールを自身の手で討ち果たす程、義を重んじる人物として知られる。

 そんな義を重んじる英雄が、フリードのような狂人に従う理由が、アーシアには思いつかないのだ。

 

「まぁ、マスターの事情をテメェらに聞かせる義理は無ぇが……そうさな、言うなれば、俺は俺なりに、英雄としてフリードの中に認められるだけの義を見出したから従ってるだけだ。もしこいつが本当に唯の狂人なら即効で令呪の付いてる腕切り落として殺してるさ」

「おいおい旦那、それ以上は……」

「おっと、これ以上喋ると本当に令呪使われそうだから口を閉ざすぜ」

 

 何やらライダー陣営にも事情がありそうだ。だが、だからといって今後手加減するつもりは無い。

 今はセイバーのダメージが大きすぎてライダーの俊足を追い駆けるのは難しいから見逃しているだけだ。

 

「そろそろ戻らないと組織が煩いから、オレっち達は帰るよん。んじゃ、ばいちゃ!!」

「次は絶対に殺すから、覚えておけよセイバー、アーチャー! それからアサシンにもそう伝えておけ!」

 

 フリードが閃光弾を地面に叩きつけて発生させた強烈な光でアーチャー達の視界が一時的に潰れた隙に、ライダーとフリードは立ち去ってしまった。

 アーチャーにとって、そしてセイバーにとっても二度目となるライダーとの戦いは、引き分けという形で落ち着く。

 後は、セイバーとルフェイという明らかに敵側の筈の二人が此処に居る理由を、リアスに何と説明するべきか、アーシアは今から頭を悩ませるのだった。




次回、美人に目が無い騎士様、某マシュマロ盾娘が居なくて良かったね。

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