ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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大変お待たせしまして申し訳ございません!! 転職してようやく落ち着いたのもあり、スランプも今のところは大丈夫かなと思いながら少しずつ書いてた物がやっと出来上がったので、最新話投稿します!


第八十一話 「神父の義」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第八十一話

「神父の義」

 

 アーシア・アルジェントとリアス・グレモリーの二人を先頭に、グレモリー眷属一行はディオドラが待つ神殿の奥を目指して走っている。

 途中、はぐれ悪魔や現政府を裏切った旧魔王派の悪魔達が襲い掛かってきたが、最上級堕天使の力を持つ武装聖女のアーシア、滅びの魔力を持つリアス、雷の巫女たる朱乃、赤龍帝の一誠、聖魔剣の祐斗、デュランダルのゼノヴィアと偽・擬態聖剣(エクスカリバー・ミミック)のイリナ、停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)のギャスパーに、仙術使いとして修行を始めた小猫という、豪華にして強力な顔ぶれを前に、そんなものは塵芥同然だった。

 

「討ち取れ! 偽りの魔王の妹を討てば我らの名が上がるぞ!!」

「っ!! しつこいわね!」

 

 もう何度、滅びの魔力で敵を消し飛ばしたか、数えるのも億劫になってきた頃、ようやく神殿内の開けた場所に出た一行。

 そこで待っていたのは映像でも見た事がある……ディオドラ・アスタロトが率いていたアスタロト眷属達だ。

 

「そこまでです、リアス・グレモリー及びグレモリー眷属。これ以上、ディオドラ様の意に反する行動は許されません、大人しくアーシア・アルジェントを差し出しなさい」

「へぇ? 舐められたものね、ディオドラ本人は出てくる事なく、眷属だけで私達を相手しようって言うつもりかしら?」

 

 ハッキリ言おう、アスタロト眷属の質は明らかにグレモリー眷属に劣る。戦力という意味では特にだ。

 強力な神器(セイクリッド・ギア)を持つ者が居るわけでもなく、特殊な血筋の者や力を持つ者が居るわけでもない。ただ見目麗しいだけの美女・美少女が揃っているだけのアスタロト眷属など、グレモリー眷属が相手では戦いにすらならない。

 

「この私の可愛い眷属を侮っているみたいだけど、それが大きな間違いであると教えてあげなさい、朱乃! 祐斗! 小猫! ゼノヴィア! イリナ! ギャスパー!」

「「「「「「はい! 部長!!」」」」」」

 

 一誠を除く全てのグレモリー眷属がアスタロト眷属達とぶつかった。僧侶(ビショップ)が放つ魔力弾を朱乃の雷が掻き消し、その間を縫うように祐斗とイリナが騎士《ナイト》の特性を生かして疾走、アスタロト眷属の騎士(ナイト)が持つ剣と槍をそれぞれが迎撃する。

 

「停まれぇええええええ!!!」

「えい」

「唸れ! デュランダル!!」

 

 更に二人を背後から襲おうとしていた戦車(ルーク)兵士(ポーン)をギャスパーが停止させて、小猫の拳とゼノヴィアのデュランダルを叩き込んだ。

 

「今よ! 朱乃!!」

「ええ、部長……雷よ!!!」

 

 最後に、朱乃の雷がアスタロト眷属に降り注ぐ。これでチェックメイトだとリアスは思っていたのだが……。

 

「うそ!?」

 

 アスタロト眷属の女王(クイーン)僧侶(ビショップ)が展開した防御シールドが朱乃の雷を完全に遮っていた。

 

「そんな……私の雷が」

「フッ、雷の巫女と呼ばれるからどれ程かと思えば……思っていたよりも弱い雷で拍子抜けね」

 

 これは完全にリアスの読みミスだ。朱乃を信じすぎて彼女の力を過信してしまった。

 自身の初の眷属にして右腕たる女王(クイーン)である朱乃とリアスの付き合いは長い。それこそ幼馴染と言っても良い程に。だからこそ、自身の絶対の右腕たる朱乃を信じ過ぎて、自身の眷属内で朱乃が弱い部類に入ってしまっている事に気付く事が出来なかったのだ。

 

「さあ! 敵の女王(クイーン)は恐るるに足らず! 残りも片付けてアーシア・アルジェントをディオドロラ様に献上するのよ!」

「へぇ~? あのお坊ちゃんにアーシアちゃんをあげるつもりなのかにぃ?」

「……え?」

 

 アスタロトの女王(クイーン)の言葉にグレモリー眷属が構えた時だった。突如響いた男の声と共に、肉を貫く音が聞こえた。

 

「あ……ガハッ!?」

 

 見れば、アスタロトの女王(クイーン)の胸から剣の刀身が生えており、心臓を貫いていた。その剣は、リアスとアーシアには見覚えがある。

 

「魔剣リジル……まさか!?」

「やっほ~アーシアちゃん、お久だねぇ?」

 

 息絶えた女王(クイーン)を放り捨てて背後から現れたのは、魔剣リジルを構えた白髪の神父……サーヴァント・ライダーのマスターでもあるフリード・セルゼンだった。

 

「貴様、フリード!? 裏切ったのか!?」

「あん? 裏切るだぁ? 裏切るも何も」

「え? あ、ぎゃあああああああ!?」

「ハナから仲間になった覚えは無いねぇ」

 

 フリードが冷たい眼差しを向ける先では、アスタロトの戦車(ルーク)の一人が緑髪の偉丈夫によって無残に惨殺されていた。

 

「ったく、こんな仕事、俺にさせんのはこれっきりにしろよ?」

「サンキュー旦那」

 

 次の瞬間、フリードと緑髪の偉丈夫……ライダーはアスタロト眷属に囲まれた。全員、武器や魔力弾を構え、いつでも二人を殺せるようにしている。

 

「フリード・セルゼン、ディオドラ様を裏切るというのなら、ここで処刑する!!」

「はぁ、あのよ……テメェらみたいな雑魚がどれだけ群れた所で、勝負にすらならねぇって理解出来ないのかねぇ? なぁ? ……ライダー!!」

 

 それは、神話に語られる瞬足の再現だった。手に持つ簡素な槍を構えたかと思えば、およそこの場にいる誰一人として知覚出来ない速度で走り出したライダーはアスタロト眷属を次々と惨殺していき、最後に残った小柄な金髪の少女……僧侶(ビショップ)の少女の眼前に槍の穂先を突き付けていた。

 

「ヒッ!?」

「さて、お前さんだけが残ったぜ? 死にたいってんなら、この場で殺しても良いんだがな……マスターからはお前だけは殺すなと厳命されているから、殺さないでやるよ」

「え? あ……え……?」

 

 その代わり、少しでも妙な動きを見せればマスターの命令に背いてでも殺すと、ライダーの纏っている殺気がそれを物語っていた。

 

「フリードさん、ライダーさん」

「およ? どったのアーシアちゃん? そんな怖い顔しちゃってまぁ……イッセーきゅんまで」

「どうして、ここに?」

「そ、そうだよ! どうしてお前がここにいるんだ!? 裏切りって、もしかしてディオドラの仲間だったのかよ!?」

 

 そう、確かに先ほどアスタロト眷属の者が言っていた。ディオドラを裏切るのか、と。それはつまり、フリードは先ほどまではディオドラの仲間だったという事を意味している。

 

「仲間ねぇ? 俺っちは一度もあのクソ悪魔を仲間だなんて思った事は無いねぇ」

「なら、どういう事なのか聞かせて貰えるのかしら?」

「……アーシアちゃん、ゼノヴィアちゃん、イリナちゃんや、コイツに見覚えは無いかにぃ?」

 

 そう言ってフリードが指さしたのは、アスタロト眷属の唯一の生き残りである金髪の僧侶(ビショップ)だ。

 彼女について見覚えが無いかと、アーシアとゼノヴィア、イリナに問うたという事は、つまり彼女も教会関係者だったという事だが……。

 

「? えっと……」

「む……そう言えば、どこかで」

「う~ん……?」

 

 会った事があっただろうかと、過去の記憶を遡ってみるが、少なくともアーシアとゼノヴィアには覚えが無かった。

 しかし、イリナはあったのか暫くしてポンッ! と手を叩いてまじまじと僧侶(ビショップ)の少女の顔を覗き込んだ。

 

「やっぱり!! あなた、シスター・クリスよね!? 聖女候補に名前が挙がってたのに行方不明になったシスター・クリス!!」

 

 金髪の僧侶(ビショップ)……シスター・クリスは、名前を呼ばれて身体を強張らせた。それはつまり、自身がイリナの言うシスター・クリスであるという事を何よりも証明する事に他ならない。

 

「シスター・クリス……聞いた事があるな、確か幼いながらもシスターとして教会の戦士のサポートを行っていた聖女候補、確か……彼女と組んでいたパートナーの戦士の名は、フリード・セルゼン」

 

 ゼノヴィアの言葉と共に、全員の視線がフリードへと向けられた。そして、その当人はというと、いつもの狂人染みた顔付きは何処へ行ったのか、酷く悲しそうな、泣きそうな表情をしているのだが、本人は気付いているのだろうか。

 

「フリードさん、あなたはまさか……いえ、だからライダーさんは、大英雄アキレウス様は」

「チッ……アーシアちゃん、勘が良いのも考えモノだぜ?」

 

 一瞬だけ、アーシアに視線を向けたフリードはそのままシスター・クリスの下へ歩み寄り、右手に持った魔剣リジルの刃をシスター・クリスの首に添えた。

 

「俺っちの目的はこの女さ、この女を……俺っちの手で殺す。その為だけに生きてきた、ライダーの旦那と契約したのもその為だ」

 

 今にも泣きそうな顔の癖に、それでも冷たい眼差しで見下ろすフリードを、シスター・クリスは怯えた表情で見上げている。

 そこには、嘗てのパートナー関係にあった二人とは思えない程、冷え切った感情が渦巻いている事を、誰もが悟った。




次回はフリードの過去話を少し語ってからディオドラと対峙かな?

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